長期修繕計画ガイドラインの改定内容と注意点を分かりやすく解説!

  • Update: 2024-02-29
長期修繕計画ガイドラインの改定内容と注意点を分かりやすく解説!

令和3年9月に「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」及び

「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」が改定されました。

本記事では、その具体的な改定内容とこれから気をつけるべき注意点を詳しく解説します。

長期修繕計画を見直すための3つのポイント

長期修繕計画ガイドライン改定のおもな内容

国土交通省によると、長期修繕計画ガイドラインの主な変更点は下の3点です。

改定内容 改定前 改定後
計画期間 新築マンションは30年以上、既存マンションは25年以上 既存マンションの長期修繕計画期間を、新築マンションと同様、2回の大規模修繕工事を含む30年以上に変更
修繕周期の目安 〇年 〇~△年 

※一定の幅のある修繕周期に変更

見直しの周期 5年程度ごと 5年程度ごとに調査・診断し見直す

この改定は、令和4年4月から開始した「マンション管理計画認定制度」の認定基準にも反映されています。

以下からは、それぞれの具体的な改正内容をご説明します。

計画期間が延長した

従来の計画期間は25年または30年以上となっていましたが、今回から「30年以上かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上」に変更されました。

これにより新築と既存マンションの区別が外され、どのマンションでも計画期間を30年以上に延長することが望ましいことになります。

目先の工事だけでなく、その先の工事も視野に入れ計画を立てることで、余裕を持った資金計画を立てることができるようになるでしょう。

修繕周期の目安に幅ができた

大規模修繕工事の修繕周期の目安については、工事事例を踏まえて一定の幅をもたせた修繕周期に変更となりました。

例えば、外壁塗装の塗り替えなら従来は12年と決まっていたところを12~15年に、空調・換気設備の取替えなら15年から13~17年などというように例が挙げられています。

修繕周期に幅をもたせることで、各マンションの劣化状況に見合った修繕工事を検討しやすくなりました。

見直し周期が具体的になった

長期修繕計画の見直しの周期について、以前は「5年程度ごとに見直されることが望ましい」といった表現にとどまっていましたが、改定後は「5年程度ごとに調査を実施し、その結果に基づいておおむね1年〜2年の間に見直しましょう」と、より具体的なものになりました。

長期修繕計画ガイドライン改定で追記されたこと

また、今回の改定を機に追記された項目が2点あります。

・省エネ性能を向上する工事の有効性

・定期的なエレベーター点検の重要性

省エネ性能を向上する工事の有効性

築年数が古いマンションの中には、省エネ性能が著しく低いことで光熱費が大幅に高くなってしまうケースも…。

改定後のガイドラインには、省エネ性能を向上させる改修工事が脱炭素社会の実現と、居住者の光熱費の負担軽減に有意義であることが示されています。

該当する工事としては、壁や屋上の外断熱改修工事や窓の断熱改修工事等が挙げられるでしょう。

省エネ性能の高いマンションは、資産価値の維持・向上にも繋がるはずです。

定期的なエレベーター点検の重要性

エレベーターの定期点検は、「昇降機の適切な維持管理に関する指針(平成28年2月国土交通省策定)」に沿った点検を行うことが重要であると追記されています。

それによると、点検は使用頻度に応じて実施することとされていますが、理想的な目安はおおむね1か月に1回です。

一方で、使用頻度が低ければ3か月に1回というケースも考えられますし、マンションによっては月に数回点検が必要になることもあります。

エレベーター点検の適切な頻度については、メーカーにご相談ください。

修繕積立金に関するガイドラインの改定内容

修繕積立金に関するガイドラインの改定については、既存マンションの区分所有者、購入予定者に修繕積立金の基礎知識や金額の目安がわかるようにするため、下のように変更されています。

・目安となる㎡単価を更新

・修繕積立金の目安に係る計算式の見直し

改定前は新築マンション購入予定者のみが対象でしたが、その範囲が既存マンションにまで拡大されました。

目安となる㎡単価を更新

改定後の修繕積立金の平均額の目安は、以下の通りです。

出典:国土交通省「修繕積立金に関するガイドライン 3 修繕積立金の額の目安について」

ちなみに、改定前の平均値は下のようになっていました。

・5,000㎡未満の平均値:218 円/㎡・月

・5,000 ㎡以上~10,000 ㎡未満:202 円/㎡・月

・10,000 ㎡以上:178 円/㎡・月

いずれも、「平均値」が高めに改定されています。

それに応じて「事例の 3 分の 2 が包含される幅」も同様に上がっていますね。

修繕積立金の目安に係る計算式の見直し

改定前の修繕積立金の目安に係る算出式は以下の通りでした。

修繕積立金の額の目安=専有床面積当たりの修繕積立金の額×購入予定のマンションの専有床面積(+機械式駐車場がある場合の加算額)

それに対して、改定後は下記の図のような算出式に変更されています。

出典:国土交通省「修繕積立金に関するガイドライン 3 修繕積立金の額の目安について」

改定のポイントは、修繕積立金の残高が考慮されている点です。

既存マンションの長期修繕計画の見直しにも使われることを想定し、すでに徴収されている修繕積立金額も考慮して今後の積立金の目安を出す計算方法に変わっています。

長期修繕計画ガイドラインの注意点

改定された長期修繕計画ガイドラインを有効活用するために気をつけてほしいポイントがあります。

それは大きくわけて、以下の2点です。

・長期修繕計画ガイドラインも5年程度ごとの見直しが検討されている

・ガイドラインに頼りすぎない

長期修繕計画ガイドラインも5年程度ごとの見直しが検討されている

今回改定されたガイドライン自体も、5年ごとに見直しが実施されます。

そのため、各マンションの長期修繕計画見直しの時期になったら、必ず最新のガイドラインを基に作成されているかを確認してください。

最新のガイドラインに沿っていない場合には、マンションの長期修繕計画も合わせて変更しましょう。

ガイドラインに頼りすぎない

国土交通省のガイドラインは、各マンションが長期修繕計画を作成・見直しする際に役に立つ資料です。

しかし、それ以上にマンションの状況に合わせて適切に計画する必要があります。

修繕工事の方法の違いや劣化状況により修繕周期は変動しますし、特殊な形状のマンションなら通常より費用がかかるケースもあります。ガイドラインによる修繕積立金の目安通りにはいかないマンションも多いのです。

ガイドラインは1つのモデルとして参考にしつつ、それぞれのマンションに合った適正な長期修繕計画を立てましょう。

客観的な調査・診断で長期修繕計画の妥当性を確かめよう

長期修繕計画の定期的な見直しは、大規模修繕を適切な時期に実施できる、不要な工事費用を抑えることができる、マンションの資産価値向上を図れるなどのメリットに繋がります。

最新のガイドラインを参考に、管理組合で積極的に話し合ってみてください。

その際、管理会社や施工会社と利害関係のない専門家による客観的な調査・診断を入れて、長期修繕計画の妥当性をチェックすることをおすすめします!

さくら事務所では、マンション管理のプロが長期修繕計画や積立金の見直しをお手伝いしています。

築年数や劣化状況、特殊性のある形状など、さまざまなマンションを見てきたベテランのコンサルタントが客観的な第三者の立場から診断・アドバイスいたします。ぜひ、この機会にご活用ください!

長期修繕計画の見直し・作成

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ホームインスペクション(住宅診断)をはじめとする個人向け不動産コンサルティングや管理組合向けコンサルティングを行っている。400を超えるマンション管理組合のコンサルティング実績をもち、大規模修繕工事や長期修繕計画の見直し、瑕疵トラブルなどの管理組合サポートサービスを提供している。

【監修】さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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