マンション購入者が毎月支払う「管理費」と「修繕積立金」。管理費と修繕積立金が適切に使用されることで、安全で快適なマンション住まいを維持することができるのですが、相場に見合った金額なのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
管理費と修繕積立金は、マンションを売却しない限り毎月払い続けなければなりません。トータルで考えると多額の出費になるため、相場を知って納得して支払いたいところです。
そこでこの記事では、マンション管理費と修繕積立金の違いやそれぞれの相場について解説します。節約方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
管理費と修繕積立金の違い
マンション管理費と修繕積立金はどちらもマンションを維持管理するための費用ですが、使用用途が少し異なります。
管理費は、日常的な清掃や共用部の水道光熱費、軽微な修繕など、快適に暮らすための「日々の管理業務」に使う費用です。日常管理業務を委託している管理会社への業務委託費用も管理費の大部分を占めています。
一方、修繕積立金は、外壁塗装や給排水管工事など、安全な暮らしを維持するための「計画的な大規模修繕工事」、事故や災害が原因の「突発的な大規模修繕工事」に使う将来のための費用です。
大規模修繕工事がおこなわれるのは数年に一度ですが、実施時には多額の費用を用意しなければなりません。修繕積立金は、大規模修繕工事に備えるために、毎月少しずつ積み立てます。
管理費の相場
国土交通省「マンション総合調査(平成30年度)」によると、管理費(駐車場使用料等からの充当額を除く)の平均は、1戸当たり月額10,862円です。また、最も多い価格帯は10,000円超15,000円以下で22.5%。次いで7,500円超10,000円以下で17.2%という結果でした。
しかし、管理費はマンションによって大きく差があります。より正確な相場を把握するためにも、マンションの形態や規模ごとの平均値をみていきましょう。
以下のグラフはマンションの形態別の管理費の平均値を比べたものです。
国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果 概要編 月/戸当たり管理費」をもとに作成
駐車場使用料等からの充当額を除いた管理費は、平均額に大きな差はみられませんが、充当額を含んだ管理費は、単棟型のほうが団地型よりも高額になっています。
つぎに、総戸数規模別の管理費の平均額です。
国土交通省「平成30年度マンション総合調査 管理組合向けの調査結果 27(1)(6)」をもとに作成
総戸数20戸以下と301~500戸のマンションの管理費が高い傾向があります。とくに、タワーマンションのように、設備や付帯施設が充実している物件は、管理に多額の費用が必要です。
実際、駐車場使用料等からの充当額を除く平均額をみると、50戸程度の小規模なマンションの管理費は約10,000円なのに対し、300戸を超えるタワーマンションは約14,000円と顕著な差が見られます。
金額の決め方
マンション管理費は、階数・戸数・グレードで決まります。基本的には、階数が高く戸数が多いマンションほど管理費は低い傾向です。これはスケールメリットがはたらくためです。
たとえば、規模が大きいからといって、管理人の人件費が増えるわけではありません。管理費を負担する戸数が多いほど、1戸当たりの管理費は抑えられます。
ただし、タワーマンションは例外です。前述した通り、タワーマンションは戸数でカバーできないほど多額の管理費用が必要になるため、個数が多くてもそれほど管理費は抑えられません。
管理費の負担を抑えられる条件
国土交通省の調査によると、管理費の負担を抑えられるのは以下の条件です。
- 31~50戸
- 101~150戸
- 6~10階建て
それぞれの条件下での、管理費の平均値は以下に記載しています。
条件 | 1戸当たりの管理費 |
31~50戸 | 9,847円 |
101~150戸 | 9,451円 |
6~10階建て | 10,392円 |
管理費で最も多いのが「10,000円超15,000円以下」のため、相場よりも抑えられていることがわかるでしょう。
管理費を抑えるために重要なことは、階数・戸数・グレードのバランスです。過度なサービスや豪華な付帯施設などのない中規模マンションは、管理費を抑えやすいといえるでしょう。
参照:国土交通省「平成30年度マンション総合調査 管理組合向け調査の結果」
マンションの修繕積立金の相場
国土交通省「マンション総合調査(平成30年度)」によると、修繕積立金(駐車場使用料等からの充当額を除く)の平均は、1戸当たり12,268円です。
修繕積立金も管理費と同様に、マンションの形態によって、平均値に差があるため詳しくみていきましょう。
国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果 概要編 月/戸当たり修繕積立金」をもとに作成
管理費は単棟型のほうが高い傾向がありましたが、修繕積立金は駐車場使用料からの充当額の有無にかかわらず、単棟型よりも団地型のほうが高額になっています。
また、修繕積立金は完成年次による違いも顕著です。以下のグラフをご覧ください。
国土交通省「平成30年度マンション総合調査 管理組合向けの調査結果 29④(4)(7)」をもとに作成
一部例外はありますが、平成11年以降は完成年次が新しいほど、修繕積立金は低額になっています。この差の原因は修繕積立金の値上げです。
値上げの可能性については後ほど詳細を解説しますが、自分のマンションが相場に合っているか確認する際は、完成年次もチェックしておきましょう。
金額の決め方
修繕積立金を決めるのは、大規模修繕工事にかかる費用です。大規模修繕工事は、長期修繕計画により「工事のタイミング・工事内容・工事費用」がある程度決められています。
修繕積立金は、工事のタイミングまでに工事費用を確保できるように、逆算し金額を決めるのが一般的です。
また、災害や事故など計画されてない大規模修繕が発生する可能性もあります。長期修繕計画に則った最低限の修繕費用しか確保していなければ、突発的な修繕に対応できません。修繕積立金は、余裕を持った金額を設定することが大切です。
修繕積立金の負担を抑えられる条件
国土交通省の調査から、修繕積立金の負担を抑えられているのは以下のケースです。
- 51~75戸
- 3階建以下
それぞれ修繕積立金の平均値は以下の表をご覧ください。
条件 | 1戸当たりの修繕積立金 |
51~75戸 | 9,850円 |
3階建て以下 | 9,745円 |
このほか「76~300戸」および「11~19階建て」についても、マンション修繕積立金の平均値である11,243円を下回っていました。
逆に平均値をあげているのは「20戸以下と300~500戸」および「20階以上」。極端に規模が小さかったり大きかったりするマンションは修繕積立金も大幅に高くなります。
参照:国土交通省「平成30年度マンション総合調査 管理組合向け調査の結果」
修繕積立方式によっては後から値上がる可能性も
修繕積立金には「均等積立方式」と「段階増額積立方式」の2種類があります。値上げの可能性が高いのは、段階増額積立方式が採用されているケースです。
段階増額積立方式の場合、将来の値上げを見越して積立額が設定されています。とくに新築分譲時は、販売促進のために最低限の積立額に抑えられているため、築年数の経過とともに値上げする可能性も少なくありません。
逆に新築時のままの修繕積立金から値上げされないと、築年数が経過するにつれて修繕費用は不足するのは明らかです。
値上げ幅はマンションの財務状況により異なります。段階増額積立方式が採用されている場合は値上げになることも視野に入れ資金計画をしておきましょう。
管理費や修繕積立金を適切な金額にする方法
管理費や修繕積立金を新築時から見直していない場合、過剰に払っている可能性も否定できません。
単なる値下げは将来必要な修繕ができなくなるリスクを先延ばしにするだけのため、値下げが第一優先ではありません。将来を踏まえた適切な金額に見直すことが重要です。
以下で管理組合にコストの見直しを相談する方法について解説します。
専門業者に対等な目線で適正金額を見積もってもらう
工事の見積書は専門用語が多く、マンション工事の知識が無ければすべてを理解するのは困難です。工事見積が相場よりも高額になっていても、気が付いていない可能性もあります。
とくに管理会社に任せきりになっていると、複数社に見積もりを依頼しても出来レースになってしまっていることも。相場より高額だったとしても値下げに苦労するでしょう。
適正価格で工事を発注できれば、管理費や修繕積立金を適切な金額に抑えられるため、専門業者に対等な目線で見積ってもらうことが大切です。
さくら事務所では、日常修繕工事の見積もりチェックや長期修繕計画の見直し・作成を第三者の中立的な立場でおこなっています。プロの力を借りることがコスト見直しへの近道です。ぜひ活用してください。
業務委託費の見直しを提案する
管理費は大部分が業務委託費として使われているため、業務委託費用を削減できれば管理費も抑えられます。業務委託費はおもに管理事務費や、日常清掃、定期点検警備に関する費用、管理人の人件費などです。
管理人の勤務時間や業務内容を減らし人件費を軽減するなど工夫することで、業務委託費用を減額できます。
また、業務委託先の変更を視野に入れることもコスト削減に有効です。複数社に見積もりを取ると価格競争の原理が働き、現状の業務委託先が値下げをしてくれることも。現在よりも業務委託費をダウンでき、管理費を抑えられる可能性もあります。
修繕積立金に関するガイドラインを基準に提案する
国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、修繕積立金の平均額の目安を提示しています。詳細は以下の表をご覧ください。
階数 | 延べ床面積 | 修繕積立金平均額(㎡・月) |
20階未満 |
5,000㎡未満 | 335円 |
5,000㎡~ | 252円 | |
10,000㎡~ | 271円 | |
20,000㎡~ | 255円 | |
20階以上 | 指定なし | 338円 |
マンションの階数と延べ床面積に応じて㎡当たりの修繕積立金平均額が示されています。ほとんどのマンションは平均額よりも下回っていることが多いですが、もし、平均額よりも修繕積立金が著しく高い場合は、ガイドラインをもとに検討することで見直しが図れるかもしれません。
参照:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
管理費や修繕積立金を適切な金額に見直そう
管理費や修繕積立金は安心安全のマンション暮らしに必要な費用なため、単純に安ければよいわけではありません。リスクの先延ばしではなく、適切な金額に見直すことが大切です。
相場はマンションにより異なりますが、国土交通省の実態調査やガイドラインに、目安の金額が示されています。それらと比較し「少し高いかも」と疑問に感じれば、見直す価値はあるでしょう。
しかし、管理組合にとって、管理費や修繕積立金の見直しはそう簡単ではありません。さくら事務所では、工事内容やタイミング、見積もりが適正なのか見極め、管理費や修繕積立金の見直しをサポートいたします。費用の無駄遣いを防ぐためにもお気軽にご相談ください。
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