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各住戸のサッシ(窓)は専有部分ではなく、共用部分
皆さんが住まわれているお部屋の中(専有部内)のリフォームは、管理規約のルールにのっとって、個人で行うことができます。しかし分譲マンションの窓(サッシ)は共用部の扱いになるため、実はリフォームと同じように勝手に交換することはできません。
サッシ(窓)の修繕を行いたい場合は、外壁やそのほかの共用部の修繕と同様に、マンション管理組合として決議をおこなう必要があります。ただしお住まいのマンションの管理規約や使用細則に記載がある場合は、個別にサッシを取り替えることが可能となります。
それぞれのマンションにより状況が異なるため、管理規約や使用細則の確認、理事会への確認をおすすめします。個別でサッシを交換する場合は、交換出来るサッシメーカーや型番が指定されている場合があり、自費での交換となります。ただし災害などでガラス等が破損した場合は、災害である証明ができれば管理組合の保険や経費で交換可能です。
個別でのサッシ交換は、工事の仕様に問題がないかを管理組合でチェックする必要があります。マンションやタワーマンションにおけるリフォーム等の申請チェックも当社で行っておりますので、ご興味があればご確認ください。
「修繕積立金が足りない」「大規模修繕が進まない」「管理会社に不信感」「瑕疵・欠陥が見つかった」「理事同士のコミュニケーションが大変」管理組合の様々な課題の相談はさくら事務所に
なぜサッシ交換は必要? サッシ交換で何が変わるの?
もとのサッシ(窓)の仕様・耐用年数にもよりますが、大多数の住戸で開閉がスムーズにできず生活に支障をきたすようになってきたという声をきっかけに、サッシ(窓)の交換が検討されます。基本的にサッシの耐用年数は竣工後40年以上経過したマンションが対象になってくる場合が多いと言われています。
サッシ交換を検討するケースは、結露や騒音といった問題が生じた場合も多いです。また先に挙げたようなサッシの立て付けが悪くなったことにより、隙間風が生じているケースもあります。 そのような状況になってから対応することになると、施錠するためのクレッセント錠の交換に際し、高額の費用が発生することになってしまうケース(2万円など)や、交換用の部品が既に製造中止となり、欠品になっているケースなど、想定外の負担を強いられることがあります。
一般的にサッシの交換にあたっては、基本的に「カバー工法」という手法がとられます。カバー工法とは既存サッシのレール枠の上に、新たな枠を取り付ける方法です。ベランダから部屋のあいだがフラットなタイプのサッシの場合は、「カバー工法」でサッシ交換をした場合は、部屋の外と内に段差ができ、サッシの枠(レール)を跨いで行き来するようなイメージになります。
【タワーマンションのサッシ交換事情】
タワーマンションでもカバー工法による改修工事が行われています。ただし、框部や材質の肉厚増など耐圧強化を行ったうえで、改修工事を行っているため、他のマンションよりもコストが高くなることが考えられます。
サッシを最新のものに交換することで、断熱性や気密性、遮音性などの性能は向上しますが、サッシの交換だけでは目的を達成できない場合もあります。つまり断熱性・気密性・遮音性をしっかりと向上させる目的がある場合は、サッシの交換と合わせて、玄関ドアの交換、コンクリート壁の断熱や遮音も検討するべきです。竣工から25年程度以内のマンションであれば壁の断熱性能は問題ない可能性が高いですが、それ以上の築年数だった場合は、壁の断熱が十分でない可能性も考えられます。またサッシの交換等で気密性が高まる結果、品確法で24時間の換気が義務付けられる前のマンションについては、サッシ交換をすることで結露を招く結果になることもあり注意が必要です。
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サッシ交換の費用は? 費用は長期修繕計画に入ってる?
次にお金の問題です。
まずは、サッシ交換が、「そもそも長期修繕計画に含まれているか?」「将来的に計画されているか?」を確認しましょう。もし含まれていなかった場合は、これまで積み立ててきた修繕積立金とは別にサッシ交換のための費用を積み立てる必要があります。
サッシ交換が長期修繕計画に含まれていないケースは多々あります。このとき、問題になるのは、長期修繕計画に入っていると思っていた(交換に別途費用が発生すると思っていなかった)場合です。
上記のような場合、生活に影響が出るほどの経年がすすみ、サッシ交換が必要になったタイミングで、ただでさえ不足している修繕積立金に、追い打ちをかける可能性もあります。
たとえば、サッシとドアを交換すると約100万円/1戸程度の費用発生が見込まれます。 生活に影響が出てから急に支払うことになると、金額的にとても大きな負担になるでしょう。
こういったことから、マンションの長期修繕計画に、玄関やサッシの交換費用を入れるのか入れないか、目安の時期よりも早くサッシ交換することにするか、どうかも考慮しておくべきなのです。
長期修繕計画がそもそも甘かったり、計画に沿わずに修繕積立金が不足しているマンションは非常に多いです。長期修繕計画の見直しやチェックのご依頼も非常に増えており、ぜひ当社にもお声がけください。
修繕周期の延長で回避可能?
サッシやドアの交換費用が、約100万円掛かることを考えた場合、修繕周期を12年から15年へ長くすることで、長い目で見た場合、コスト軽減を図れるかもしれません。さくら事務所では修繕周期の延長について、ご相談を承ってます。現在12年周期で大規模修繕工事が計画されているのであれば、18年周期に変更することを一度、検討してみてはいかがでしょうか。
仮に従来の長期修繕計画の予算枠組みのなかでサッシや玄関の交換費用が入っていない場合でも、12年から18年へ建築工事の大規模修繕工事周期を伸ばすことで、修繕コストを削減することが出来るので、いままでの予算枠にサッシ交換のコストを含めることができる場合があります。
長期修繕計画にサッシ交換が入っていないこと自体は、管理組合の考えに基づき合理的な理由があれば問題ではありません。
もし、長期修繕計画にサッシ交換を含まないのであれば、その旨をはっきりと長期修繕計画に記載しておき、誤解を招かないようにしておきましょう。またそもそも、長期修繕計画にサッシ交換が含まれているかどうかが、わからない場合は管理組合などに有無を確認することをおすすめします。
サッシ交換の標準的な費用は?
戸数が約100戸または、15階未満のマンションの場合、カバー工法の費用は、おおよそ下記の金額になります。
170~180cmの足元からサッシの場合で20万円前後
ウエストの上から窓の場合で12~15万円前後
※複層ガラスの場合。入れるガラスの種類によって大きく変わります。
ちなみに玄関ドア交換は25万円~30万円前後です。
※玄関ドアの交換も長期修繕計画に含まれている場合と含まれていない場合があるので確認が必要になってきます。
☆断熱性・気密性をしっかりと上げることを想定して交換をする場合、サッシと玄関ドアはセットで交換する必要があります。
標準管理規約では個人でのサッシ交換も可能に
2004年に改正されたマンション標準管理規約(多くのマンションで管理規約のひな型とされています)では、各区分所有者の負担・責任において実施することも細則として定めることができる、としています。
マンション標準管理規約22条(窓ガラス等の改良)の第2項
区分所有者は、管理組合が前項の工事を速やかに実施できない場合には、あらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けることにより、当該工事を各当該区分所有者の責任と負担において実施することができる。【同コメント】
第2項は、開口部の改良工事については、治安上の問題を踏まえた防犯性能の向上や、結露から発生したカビやダニによるいわゆるシックハウス問題を改善するための断熱性の向上等、一棟全戸ではなく一部の住戸において緊急かつ重大な必要性が生じる場合もあり得ることに鑑み、計画修繕によりただちに開口部の改良を行うことが困難な場合には、専有部分の修繕等における手続と同様の手続により、各区分所有者の責任と負担において工事を行うことができるよう規定したものである。
ただし、他リフォーム同様、交換にあたっては仕様など一定のルールを定めておく必要があるでしょう。当社ではリフォーム等の申請チェックも行っております。
実際に個別でサッシ交換を行う場合は、後の全戸交換の際に、かかるはずだったその住戸の交換費用を案分してお支払いするケースもあります。
【同コメント】内には注意点があります。サッシ交換をすることで断熱性とともに気密性も上がる結果、逆にシックハウス症候群の原因となる可能性があります。そのため各マンションの竣工年から経過した年数など、各々に対応した対策を総合的に判断する必要があります。
サッシ交換工事にあたり、在宅の協力が得られない住戸への対策
管理組合としてサッシ交換をする場合は、所有者・居住者に在宅していただくよう、手配する必要があります。サッシの交換工事に反対の住戸や、空室になっている住戸の対処法も検討しておきましょう。
所有者・居住者によっては、「お部屋うちを見られるのが嫌」、「うちは、そこまでする必要ない」、と理解が得られない場合があります。そのような状況の場合、その住戸の所有者に対して、将来的にサッシの交換がどうしても必要になった場合の対処方法(自費で実施することに関して)について、覚書などを交わしておくといいでしょう。
※この場合基本的に故障による交換も同じように自費で行わなければなりません。
過去の例では、賃借人が入室を許可してくれず、結局その部屋の交換ができずに、後日そのお部屋のオーナーが賃借人の退去後に取り付け費用のみ自身が負担して(保管していたサッシの)交換工事を行った、というケースもありました。
また、作業の日程確認など管理会社や管理組合が行う場合、空室の住戸については、お部屋の中から交換工事ができるよう(お部屋の鍵を開けてもらえるよう)所有者に連絡をとる必要があります。
サッシ交換はいつやる? 大規模修繕工事と一緒がいいの?
サッシ交換はどのタイミングで行うのが良いのでしょうか?
多くの管理組合では「サッシ交換は3回目の大規模修繕工事で行いましょう」というアドバイスをうけるようです。サッシの交換はお部屋内から交換するので足場がなくても交換が可能です。したがって、必ずしも大規模修繕工事と一緒に行う必要性はないのですが、さくら事務所でも、大規模修繕工事のタイミングで、サッシの交換を行うことをお勧めします。
サッシ交換を大規模修繕工事と同時に行うメリットとしては、工事に伴う様々な調整などが一本化できること、総会での議案・決議など面倒なことが一回で済むこと、などがあります。また大規模修繕工事と一緒にサッシ交換をする場合は、サッシ交換工事と他の工事を同時に進めることができるため、工事による日常生活への影響を抑えることができます。予算的に問題が無く、皆さんも賛成しているであれば、1回で済ませることをお勧めします。
サッシ交換だけを考えても意味がない
大規模修繕工事のタイミングでサッシ交換を行うことをお勧めする専門的な理由としては、マンションにとっての修繕を、トータルで検証できることです。前述(標準管理規約コメントへの注意点)でも示した通り、マンションの修繕は、サッシ交換だけを単独で考えてもあまり意味がありません。サッシ交換と同じ時期に、たとえば、断熱性の観点で内断熱から外断熱へ改修するなど、俯瞰してマンションの在り様を検討し、合理的な修繕工事を目指すことが修繕積立金の倹約にもつながります。
サッシ交換だけ部分的な刷新を考えるのではなく、トータルで検証し有意義な修繕工事をしていきましょう。
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大規模修繕工事は施工会社の選定方法が鍵!
マンションの大規模修繕工事は、管理会社経由で、グループ会社に依頼するケースや、設計事務所に設計監理方式で依頼することが多く、中抜きや、バックマージンなど不正が起こりやすい状況です。2017年1月には、国土交通省から「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」という通知も出ています。コツコツ貯めた修繕積立金を取り崩してお支払いする修繕工事費用を、真っ当な工事に使いたい、というのが管理組合の本音ではないでしょうか。
さくら事務所では、工事を担当する施工会社が、管理会社や設計事務所を通さずに、自ら工事内容を計画し、管理組合に提案す方式(プロポーザル方式)での施工会社選定をお勧めしています。
管理組合にとっては、工事の内容や見積もりが異なるバラエティー豊かな提案の中から一社を選ぶことになりますので、時間的・労力的な負担は少なからず発生しますが、選考の過程で施工会社とやり取りすることで、施工会社の性格がよくわかり、工事内容への疑問も払しょくしたうえで選定を行うことができるようになります。
マンションの大規模修繕工事に精通したコンサルタントが、良きナビゲーターとして、また、技術的に頼れるアドバイザーとして、皆様の大規模修繕工事をサポートします。サッシ交換は、難しいものではありませんが、ある程度の知識が必要です。
施工時には、共通仮設 (仮設トイレ・資材置き場) 直接仮設(足場の使用の場合)の調整作業等も出てまいります。サッシ交換を大規模修繕工事のタイミングと合わせて検討し、さくら事務所の頼れるコンサルタントに丸ごとご相談ください。
マンション全体で共通の認識をもつことが重要
サッシ交換については、(竣工時期などにより)既存のものとの性能の違いもあり、大規模修繕工事のように「いつ頃、どんな方法でやらなければならない」という共通認識をもった管理組合が非常に少ない状況です。
しかし現在、社会的にも大きな関心を集めている、「マンションの今後」というテーマのもと、「将来的にこの建物を何年くらい使うつもりなのか?」というところを突き詰めて考えていくと、サッシについても組合員全員で将来に向けた共通の認識を持っておくことが重要です。マンションの今後を俯瞰して検討すると、サッシ交換も大規模修繕工事のタイミングで行っておくことが望ましいことに気がつくはずです。
もちろん、常日頃からメンテナンスを心がけることが最善です。たとえば定期的にサッシを清掃したり、サッシ屋さんにサッシを調整してもらうことも賢明でしょう。
マンションにもよると思いますが、どの住戸も同じサッシを使っていケースでは、サッシ周りの消耗品を一定数量買ってストックしておくと、コストを削減に繋がるでしょう。消耗品には、サッシの滑車や戸車、パッキン、クレッセント錠が挙げられますが、メーカーで欠品になる前に、管理組合で一定数量ストックしておくことで、サッシ交換ではなく部品の補修で対応出来る場合があります。あらかじめ日々のメンテナンスやストックをしておくことも非常に重要な要素となります。
ただ、いずれは、どの住戸も交換しなければならないことに、変わりはありません。もしご相談いただけましたら、サッシについても喜んでアドバイスさせていただきますので、さくら事務所のコンサルタントに是非、お気軽にお声がけください。
「修繕積立金が足りない」「大規模修繕が進まない」「管理会社に不信感」「瑕疵・欠陥が見つかった」「理事同士のコミュニケーションが大変」管理組合の様々な課題の相談はさくら事務所に