1~2年おきに予定されているマンションの排水管清掃、きちんと実施できているでしょうか。排水管清掃は、清掃業者が専有部に入室して作業するため、基本的に居住者の立会いが必要です。
しかし実施日は、居住者全員の希望を考慮できるわけではないため、どうしても都合がつかずに不在にしてしまうこともあるでしょう。他人を部屋に入れることに抵抗がある方が一定数いるのも事実です。
そこで本記事では、排水管清掃実施日に不在にするときの対応方法や拒否するリスクについて解説します。マンション全体の実施率をあげる方法も紹介しますので、排水管清掃を控えている居住者はもちろん、管理組合のみなさまもぜひ参考にしてください。
目次
マンションの排水管清掃が必要な理由
マンションの排水管清掃は、排水管内の油・食べ残し・髪の毛などの蓄積汚れを掃除するために実施します。排水管の汚れは、常識的に使っているからといって、防げるものではありません。
排水管清掃を怠ると、蓄積汚れによる配水管詰まりや排水の逆流、悪臭や虫の発生にも繋がります。不衛生な排水管は劣化も早まり、破損の原因になることもあるでしょう。
排水口周りは居住者が掃除できますが、それより先の排水管はリスクが大きく、個人では掃除できません。気持ちよく生活するためにも、1~2年に1度は排水管清掃を実施して、蓄積汚れを取り除くことが大切です。
本人不在でも排水管清掃はできる
本人が不在の場合は、管理会社や身内に立ち会いを依頼して、排水管清掃を実施することになります。ただし、本人不在の場合「ものが無くなった」「部屋が汚れていた」など、実施後トラブルに発展するケースも少なくありません。
基本的に排水管清掃の日にちは変えられませんが、実施時間は変更できる可能性があるため、都合がつかない場合は清掃業者に相談してみましょう。
マンションの排水管清掃は一部屋10分程度です。トラブルを避けるためにも何とか予定を調整し、本人が立ち会うことをおすすめします。
排水管清掃は不在を理由に拒否できる?
「どうしても外せない用事で不在にする」「第三者を立会いのために入室させたくない」など、実際に排水管清掃を拒否する人が一定数いるのが現状です。
排水管清掃の拒否を許さざるを得ないおもな理由として「専有部への立入り許可」と「排水管清掃の義務」があげられます。詳しくみていきましょう。
立入り許可がないと入室できない
管理会社や清掃業者は、本人の立入り許可がないと専有部へ入室できません。つまり許可がないと排水管清掃はできないのです。
居住者は、排水管清掃の案内があった際、事前に「入室しないでほしい」と伝えておけば、勝手に入室されて排水管清掃されることはありません。
しかし「排水管清掃が必要な理由」でも説明したとおり、拒否すると自分の暮らしに悪影響を与えます。拒否するリスクの詳細は後述しますが、排水管清掃は管理上必要なメンテナンスのため、極力協力しましょう。
排水管清掃に法的な義務はない
実はマンションの排水管清掃に法的な義務はなく、実施していないからといって罰則があるわけでもありません。
しかし「建築基準法第12条」では排水設備の腐食や漏れの点検と報告について「建築物環境衛生管理基準」では排水設備の補修及び清掃について、義務付けられています。
排水管の清掃に焦点をあてた法律はありませんが、上記のような排水設備を衛生的に良好な状態を維持するための法律を守るためにも、定期的な排水管清掃が推奨されているのです。
マンションの排水管清掃を拒否するリスク
排水管清掃は拒否できますが、そのリスクは大きなものです。マンションの排水管清掃を拒否したときに考えられる以下3つのリスクについて解説します。
・排水管清掃が自己負担になる
・居住者間トラブルが生じる
・水漏れ被害をうける
排水管清掃が自己負担になる
排水管清掃しなかったことで排水がつまり、個人で排水管清掃を依頼するときは自己負担になります。
マンションの排水管清掃は実施する戸数が少ないほど割高です。料金は清掃業者によって差がありますが、おおむね30,000円ほどが相場です。マンション全体で実施するときは、管理組合の負担となるため都合を合わせて実施するのをおすすめします。
居住者間トラブルが生じる
マンションの排水管は居住者同士で共有しているため、排水管がつまったときに影響があるのは自室だけではありません。排水管清掃しなかったことが原因で、ほかの部屋で排水不良や悪臭などが生じることがあるのです。その結果、居住間トラブルになりかねません。
水漏れ被害をうける
排水管清掃の拒否が原因で、排水管の劣化が進み漏水してしまった場合、家財が水漏れ被害をうけます。自室だけならまだよいですが、階下の部屋まで被害が拡大すると損害賠償を請求されることもあるでしょう。金銭的にも大きなダメージになります。
排水管清掃で恥ずかしい思いをしないための準備
排水管清掃のために他人を部屋に入れるのが恥ずかしいと思う方もいるでしょう。しかし、清掃業者はこれまでに多くの部屋に入室し作業しています。
多少散らかっていたり汚れていたりしても気になりません。ここでは、清掃業者を受け入れる最低限の準備について紹介します。
水回り・玄関・廊下の整理整頓
清掃業者が立ち入るのはキッチン・お風呂・洗面所・洗濯機置き場などの水回り、水回りまでの廊下や玄関です。立ち入る場所の床に置いている物を片付け、スムーズに移動できるように通り道を確保しておきましょう。
水回り・玄関・廊下以外には立ち入らないため、片付いていなくても問題ありません。洗面所に洗濯物を干している場合は、リビングや寝室などにまとめておくとよいでしょう。
水回りの掃除
排水口のごみ受けに溜まった、食べ残しや髪の毛は取り除いておきましょう。しばらく掃除していない場合は、排水口のふたを外して洗剤と歯ブラシなどで掃除しておくと、当日スムーズに作業できます。
あまり神経質にならずにできる範囲で目に見える汚れを簡単に掃除しておきましょう。
【管理組合の皆様へ】排水管清掃の実施率をあげる方法
「排水管清掃を拒否する部屋が多い」「毎回拒否する部屋がある」など、排水管清掃の実施率があがらず悩んでいるマンションも多く見受けられます。
実施率をあげるためには、できるだけ早く告知することが大切です。少なくても、1ヵ月以上前に実施日時を周知することで、当日不在にする居住者を減らせるでしょう。
また、排水管清掃を告知する案内文には、今回紹介した排水管清掃の必要性や拒否するリスクを記載しておくのも有効です。
これまで実施できていない居住者には、文書だけでなく訪問して口頭で協力要請しましょう。長期間、実施していない部屋こそリスクが高まっています。清掃業者にも相談し優先的に時間を決めてもらうなど対策が必要です。
排水管清掃は、決して他人事ではありません。重要性をしっかり伝えてマンション居住者全体の意識を変えていきましょう。
排水管清掃でも改善しない不具合は専門家に調査を依頼しよう
排水管清掃は本人不在でも実施できます。ただし本人の立入り許可が必要で、在宅できない場合は、管理会社や身内に立会いを依頼するのが一般的です。
排水管清掃に限らず、他人が専有部へ入室しておこなう作業は、心理的ハードルが高く感じる居住者も少なくありません。だからこそ、重要性や拒否したときのリスクを充分に伝え、協力してもらうことが大切です。
排水管清掃の作業自体は、10分程度の短時間ではあるものの、立会い日時を調整したり、水回りを掃除したりと、少なからず負担が生じるものです。しかし、定期的に清掃を実施することで、排水管を良好な状況で維持できますし、来たるべき大規模修繕工事に向けて、マンションの設備へ意識を向けるきっかけにもなるでしょう。
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