管理計画認定制度ってなに?認定基準や認定までの流れ、メリットも

  • Update: 2024-12-05
管理計画認定制度ってなに?認定基準や認定までの流れ、メリットも

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

管理計画認定制度は、国の基本方針に基づき、地方公共団体が適切な管理を行っているマンションを認定する制度です。令和6年1月末時点では424件のマンションが認定を受けています。、認定されていなくてもペナルティがあるわけではありません。

しかし、認定を受けるためにマンションの管理状況を把握し改善していければ、マンションの価値や住みやすさが向上したり、購入予定者に選ばれ続けるマンションとなり、有利な条件で売却できたりと、たくさんのメリットがあるのです。

制度開始後、管理状況に自信があるマンションは、次々と認定にチャレンジし、認定を受けています。

本記事では管理計画認定制度の認定基準や認定を受けるまでの手順を紹介します。メリットについても詳しく解説するので、「マンションの管理力をあげたい」「マンション管理これで大丈夫?」とお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

管理計画認定制度は管理力を把握する指標

管理計画認定制度は「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(マンション管理適正化法)が2020年6月に改正されたことを機に、2022年4月から地方公共団体により推進されてきました。対象は、マンション管理適正化推進計画を作成している都道府県にあり管理組合が存在するマンションです。

認定の有効期間は5年。認定にかかる費用は自治体によって異なります。

管理組合が申請し、地方公共団体がマンションの管理規約・経理・長期修繕計画などを審査し、一定の基準を満たしていれば、認定を受けられます。マンション管理に問題があれば、助言や指導、勧告をされることもあるため、管理体制を改善するためのきっかけにもなるでしょう

マンション管理適正評価制度との違い

管理計画認定制度と似ている制度として、マンション管理適正評価制度があります。

管理計画認定制度は管理の適正化が目的ですが、マンション管理適正評価制度は「管理が市場でわかりやすく評価されること」を目的としています。

また管理適正評価制度は、マンション管理業協会が運営しており、全国のマンションが対象です。管理計画認定制度よりも審査項目が多く、判定結果は「認定か否か」ではなく「6段階で評価」されます。有効期間が1年間と短いのもポイントです。

下記記事ではより詳しくマンション管理適正評価制度について解説していますので、参考にしてください。

マンション管理適正評価制度とは?評価項目とその活用法を解説

管理計画認定制度の認定基準

管理計画認定制度の5項目17基準が定められています。認定基準の詳細は、下記の表をご覧ください。

項目 認定基準
管理組合の運営 ➀管理者等が定められていること
②監事が選任されていること
③集会が年1回以上開催されていること
管理規約 ④管理規約が作成されていること
⑤マンションの適切な管理のため、管理規約において災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部の立ち入り、修繕等の履歴情報の管理等について定められていること
⑥マンションの管理状況に係る情報取得の円滑化のため、管理規約において、管理組合の財務・管理に関する情報の書面の交付(又は電磁的方法による提供)について定められていること
管理組合の経理 ⑦管理費、修繕積立金等について明確に区分して経理が行われていること
⑧修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
⑨直前の事業年度の終了の日時点における修繕積立金の3ヶ月以上の滞納額が全体の1割以内であること
長期修繕計画の作成及び見直し等 ⑩長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠し作成され、長期修繕計画の内容及びこれに基づき算定された修繕積立金額について集会(総会)にて決議されていること
⑪長期修繕計画の作成又は見直しが7年以内に行われていること
⑫長期修繕計画の実効性を確保するため、計画期間が 30 年以上で、かつ、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれるように設定されていること
⑬長期修繕計画において将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していないこと
⑭長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと
⑮長期修繕計画の計画期間の最終年度において、借入金の残高のない長期修繕計画となっていること
その他 ⑯管理組合がマンションの区分所有者等への平常時における連絡に加え、災害等の緊急時に迅速な対応を行うため、組合員名簿、居住者名簿を備えているとともに、1年に1回以上は内容の確認を行っていること
⑰都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること

参照:国土交通省「マンションの管理の適正化の推進に関する法律第5条の3に基づくマンションの管理計画認定に関する事務ガイドライン」

認定を受けるために、各認定基準をクリアしていることを証明できる書類も用意しなければいけません。

認定基準ごとに異なりますが、総会の議事録写し・管理規約の写し・管理組合の貸借対照表および収支決算書・長期修繕計画の写し・組合員名簿などが必要になります。

また、上記の認定基準は国が指定しているものです。地方公共団体によって独自で追加の基準を設けているケースもあるため、確認しておきましょう。

【2024年改定】管理計画認定制度を受ける際は修繕積立金に注意

修繕積立金の大幅値上げの実態が問題視され、2024年6月に「長期修繕計画のガイドライン・同コメント」および「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」が改定されました。

長期修繕計画や修繕積立金は、管理計画認定制度の審査項目にも含まれているため、変更内容を理解するとともに、修繕積立金に関する以下2つの注意点を抑えておきましょう。

・修繕積立金の適切な値上げの考え方が追記された

・長期修繕計画の総修繕コストの妥当性から見極める

詳しく解説します。

修繕積立金の適切な値上げの考え方が追記された

ガイドラインの改定により、段階増額積立方式(段階的に徴収金額が増額)における、新築時点の設定額と値上げ上限幅が追記されました。

均等積立方式(毎月同額を徴収)とした場合のひと月当たりの徴収額を基準額として、新築時は基準額の0.6倍以上、計画の最終段階では基準値の1.1倍以内と記されたのです。

たとえば、基準額を20,000円とすると、新築時は12,000円以上で設定され、最終的に22,000円までの値上げとなります。

上記の考え方は新築マンションが対象です。

しかし、管理計画認定制度を受けるためには、この点を踏まえて修繕積立金を設定しないと、長期修繕計画の項目の評価が下がることが考えられます。

管理計画認定制度に適合できるような長期修繕計画および資金計画に見直していきましょう。

長期修繕計画の総修繕コストの妥当性から見極める

管理計画認定制度で認定されるためには「長期修繕計画に則り修繕積立金を見直す」以前に「長期修繕計画自体の妥当性」から見極める必要があります。

しかしながら、今回のガイドライン改定により、修繕積立金の設定額について新たな考え方が追記されたものの、設定額の根拠となる修繕コストの妥当性については、盛り込まれていません。

修繕コストの妥当性が不透明ななかで、修繕積立金の額を設定しても、実際にかかる修繕費用とズレが生じるため、計画通りには進まないでしょう。

建築資材の高騰により計画当初よりも修繕コストが高くなっていたり、修繕項目に抜け漏れがあったりすることは、めずらしくありません。

認定の為長期修繕計画を見直すのであれば、修繕積立金の額を設定する際の根拠となる修繕コストも適切に算出しましょう。

管理計画認定制度の認定までの流れ

管理計画認定制度を受けるための手順は以下のとおりです。

【手順】

(1)総会にて管理計画認定制度に申請の旨を決議をする

(2)マンション管理士等や管理委託先等に事前確認を申請する、または、地方公共団体へ直接申請する

(3)地方公共団体に審査を申請する

地方公共団体に審査してもらうためには、まずはマンションで管理計画認定制度の申請について決議します。次に、事前確認講習を修了したマンション管理士や管理委託先の管理会社等へ事前確認を依頼します。管理組合から地方公共団体へ直接申請するパターンもあります。地方公共団体の審査には、申請書類が必要です。審査を通過すれば、認定を受けられます。

マンション管理センターでは、管理認定制度の手続きの円滑化を目的とした「管理計画認定手続き支援サービス」を実施しています。インターネット上で手軽に申請書類を作成できるため、活用しましょう。

管理計画認定制度で認定されたマンションは、同意するとマンション管理センターの認定マンション閲覧サイトで管理状況が公開されます。

管理計画認定制度のメリットは7つ

管理計画認定制度にはたくさんのメリットがあります。

・マンションの管理状態を客観的に把握できる

・管理における問題点を可視化し改善できる

・資産価値および居住価値を向上できる

・管理力をアピールでき選ばれるマンションになる

・共用部リフォーム融資の金利が年0.2%下がる

・マンションすまい・る債の利率が上乗せされる

・管理計画認定制度で固定資産税を減額できる

順に詳しくみていきましょう。

(1)マンションの管理状態を客観的に把握できる

管理計画認定制度を活用することで、マンションの管理状態を客観的に把握できます。

ほかのマンションの管理状態を知る機会はあまりないこともあり、自分のマンションの管理が優れているのか劣っているのか、客観的に判断するのは難しいでしょう。

管理計画認定制度には明確な認定基準があり、基準を満たしているのか否かは明らかです。認定の有無が管理状態を確認する指標となるでしょう。

(2)管理における問題点を可視化し改善できる

管理認定制度は、マンション管理における問題点を可視化し、改善しやすいのもメリットです。

認定基準をひとつひとつチェックし改善点を洗い出すことで、今やるべきことを明確に理解できます。

問題点がわかりやすいため、区分所有者間で共通認識ができ、スピード感のある対応がしやすくなるでしょう。

(3)居住価値を向上できる

認定を受けるために管理組合が一丸となって、管理面に意識を向けていくことで、住みやすいマンションとなり、居住価値をあげられます。

管理計画認定制度が、区分所有者の管理に対する姿勢を変えるよいきっかけとなるのです。

管理組合運営に対する関心が深まり管理組合が機能していれば、問題が生じたときにも解決に向けてしっかり議論し前に進めます。終のすみかとして安心できるマンションになるでしょう。

(4)管理力をアピールでき資産価値を上げられる

これまでは、立地・設備・価格など、分かりやすく目に見える部分がマンション選びの際の判断基準となっていました。しかし管理計画認定制度ができたことで、マンションの管理力が判断基準に加わります。

この先長く安心して住めるマンションを探している方にとって、管理計画認定制度で認定されていることが、購入決定の背中を押します。

また、認定を受けているマンションの購入者は、フラット35(維持保全型)が適用され、借入金利が通常よりも年0.25%下がるメリットもあります。

認定されていることをアピールできれば、選ばれるマンションとなり資産価値の向上に繋がるのです。

(5)共用部リフォーム融資の金利が年0.2%下がる

管理計画認定制度の認定を受けているマンションは、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」の金利が年0.2%引き下がります。

マンション共用部分リフォーム融資とは、マンションの共用部分をリフォームしたり、耐震改修する場合に工事費用を融資する制度のことで、屋上防水や外壁塗装などの外部工事のほか、廊下の補修やオートロック設置などの内部工事も対象となる融資です。

上記の工事に際して徴収する区分所有者負担の一時金も対象になります。工事金額が大きい大規模修繕工事などを控えており、融資を検討しているマンションは要チェックです。

参照:住宅支援機構「マンション共用部分リフォーム融資」

(6)マンションすまい・る債の利率が上乗せされる

管理計画認定制度の認定を受けているマンションは、住宅金融支援機構の「マンションすまい・る債」の利率が上乗せされます。

マンションすまい・る債とは、修繕積立金の積み立てをサポートするための利付10年債権です。1口50万円から、最大10回まで連続で購入できます。

国の認可を受けて発行されているため信頼でき、途中換金や残高証明書発行などの手数料もかかりません。

2023年度は、通常の税引き前の10年満期時平均利率は0.475%、上乗せ後は0.525%の利率でした。次回募集は2025年春頃の予定です。気になる方は、チェックしておきましょう。

参照:住宅金融支援機構「マンションすまい・る債」

(7)管理計画認定制度で固定資産税を減額できる

管理計画認定制度は固定資産税を減額できる可能性があることもメリットです。

2023年度の税制改正により「長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに対する特例措置」(マンション長寿命化促進税制)が創設されました。

マンション長寿命化促進税制では、管理計画認定制度で認定を受けたマンションなどを対象に、長寿命化工事がおこなわれた場合、工事が実施された翌年の建物部分の固定資産税が6分の1~2分の1減額されます。対象の工事完了期間は令和5年4月1日から令和7年3月31日です。

そのほか以下3つの条件があります。

・築後20年以上が経過している10戸以上のマンションであること

・長寿命化工事を過去に1回以上適切に実施していること

・長寿命化工事の実施に必要な積立金を確保していること

参照:国土交通省「マンション長寿命化促進税制が創設されます!~マンションの長寿命化工事の実施に向けた管理組合の合意形成を支援します~」

管理計画認定制度で管理力向上に努めよう

管理計画認定制度によりマンションの管理力を上げることで、資産価値・居住価値の向上だけでなく、減税などの金銭的な恩恵も受けられます。

認定を受けたマンションは、マンション購入を検討している方からも「管理面での意識が高い」「安心して長く住めそう」などと評価されることでしょう。

マンションにとってよいこと尽くしのため、まだ認定を受けていないマンションは、認定に向けて動き出すことをおすすめします。

管理計画認定制度で認定を受けるためには、まず認定基準に則り、自分のマンションの管理状況を把握し、改善していくことが重要です。認定基準は、一般的な管理組合であれば、すでにクリアしている基準が多いですが、長期修繕計画については、作成または見直しから7年を超えていたり、一時金の徴収が予定されてたり、修繕積立金の平均額が著しく低額であったりと、クリアが難しい状況にある管理組合が多いようです。

長期修繕計画の作成または見直しや、修繕積立金の増額改定サポート業務はさくら事務所の得意な業務の一つです。管理組合向けのサービスについては、これまで900以上の対応実績があります。実力のあるマンションコンサルタントが第三者的な立場でマンションの長期修繕計画もチェックさせていただきます。あなたのマンションの現状から未来を予見し、適切な計画をご提案させていただきますので、まずはお気軽にご相談ください。

長期修繕計画の見直し・作成

以下の動画でも詳しく解説していますので、是非ご覧ください。

マンションの管理計画認定制度をこれから受けるなら気を付けるべき内容

山本 直彌
監修者

山本 直彌

大手マンション管理会社での業務経験6年、大手不動産仲介会社での業務経験9年、その他PM・BMマネジメント経験3年

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【監修】さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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