【マンション管理適正評価制度】評価項目・メリット・デメリット・注意点を解説

  • Update: 2024-03-18
【マンション管理適正評価制度】評価項目・メリット・デメリット・注意点を解説

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

2022年4月に施行された「マンション管理適正評価制度」。その登録数は、2024年2月末時点で2,950件超と着実に増えています。

【マンションは管理を買え】と言われる現代、本制度の評価基準や活用法を知ってこれからのマンション管理や購入に役立ててみませんか?

本記事では、マンション管理適正評価制度の概要やメリット・デメリット、注意点を詳しく解説します。

マンション管理適正評価制度とは

マンション管理適正評価制度は、一般社団法人 マンション管理業協会による評価制度です。管理状態や管理組合の運営状態を数値化し情報公開することで、マンション管理の健全性が市場でわかりやすく評価されることを目指す仕組みになっています。

これまではマンションの管理状態について明確な評価基準がありませんでしたが、本制度はマンションの一般情報はもちろん管理・運営状態を100点満点で点数化し6段階別にランク分けすることで、管理が良好なマンションか見極めるための基準のひとつとなりました。

マンション管理計画認定制度との違い

マンション管理適正評価制度と似た名称で「マンション管理計画認定制度」という仕組みもあります。こちらはマンション管理適正化法に基づく制度で、管理組合が作成した管理計画が国の指定する16項目と地方公共団体の上乗せ基準を満たせば認定を受けることができます。2つの制度の大きな違いは、「目的」「審査項目」「有効期間」です。

マンション管理計画認定制度
運営  地方公共団体
目的 管理の適正化の推進を図るため
審査項目 (16項目+地方公共団体の上乗せ基準)

・管理組合の運営

・管理規約

・管理組合の経理

・長期修繕計画

判定結果 認定される・認定されない
有効期間 5年

マンション管理適正評価制度は、マンション管理計画認定制度よりも対象地域や審査項目が多く有効期間も短く設定されています。

マンション管理計画認定制度についてさらに詳しく知りたい場合は、ぜひ下記記事をチェックしてください!

管理計画認定制度の認定基準や手順とは?8つのメリットも解説

マンション管理適正評価制度の評価項目は5つ

マンション管理適正評価制度の評価項目は、「管理体制関係」「組合収支会計」「建築・設備」「耐震診断関係」「生活関連」といった以下の5つのカテゴリーから構成されています。

1.管理体制関係(20ポイント)

管理体制関係は以下のような事項が評価されます。

・理事長等の管理者に関する規定

・総会の開催

・議事録の保管

・規約が標準管理規約に準拠しているか?など

本項目はそれほどハードルは高くなく、20ポイントが割りあてられています。

2.組合収支会計(40ポイント)

組合収支会計のおもな評価項目は以下のとおりです。

・一般会計の余剰金の有無はあるか?

・滞納している住戸の割合と滞納期間

・修繕積立金の徴収方式など

本項目は、最も高い40点の配点となります。

一般会計については、さほど高いハードルではありませんが、修繕積立金について満点を取るには、「均等積立方式による徴収」であり、「計画期間の推定工事費を積立金累計額が上回る」こと、かつ「組合の年度収入額が長期修繕計画上の年度収入通りに徴収」されることといった条件が必要になります。これは、元々管理状況の良いマンションにとってもハードルが高い条件です。

当社ではマンション管理適正評価制度での評価ならびにマンション管理計画認定制度の認定を目指して長期修繕計画の見直しや作成を希望する管理組合からのお問い合わせが増えています。

3.建築・設備(20ポイント)

建築・設備の評価項目はおもに以下の内容です。

・長期修繕計画の有無や期間

・見直しの頻度

・竣工図書や修繕履歴の保管などに

国土交通省による長期修繕計画のガイドラインでは、5年ごとの見直しが推奨されていますが、本評価項目では7年ごとです。長期修繕計画の見直しは総会議決事項にもあたりますので、2年の猶予を設け7年ごとの見直しが評価項目となっています。

ほとんどのマンションには竣工図書や修繕履歴が保管されているものと思われますが、無い、紛失した、記録されていないなど、管理会社の協力が必要になるケースもあるでしょう。

ちなみに、大規模修繕工事にあたり、修繕委員会にお伺いすると「竣工図書は管理会社のもの」と認識されているケースが見受けられますが、竣工図書は管理組合のものです。閲覧する場合は、規約など管理組合のルールに沿って閲覧しましょう。

4.耐震診断関係(10ポイント)

耐震診断関係では、耐震診断の実施有無、またはその結果による改修計画の有無等が評価項目になります。

新耐震基準を満たしていれば(建築確認済証の交付年月日が昭和56年6月1日以降)、特段何の取り組みも必要なく10ポイント点が得点できるでしょう。

旧耐震基準のマンションであっても、耐震診断および耐震改修が実施され、耐震性に問題なし(耐震性に問題があっても改修済み)であれば10ポイントを得点できる項目になっています。

5.生活関連(10ポイント点)

生活関連でチェックされるのは以下の項目です。

・緊急時の対応

・消防訓練の実施有無

・区分所有者及び居住者名簿を備えているか

・防災マニュアルの整備状況など

意外と盲点なのが「区分所有者及び居住者名簿」。

一般的に、名簿は、個人情報保護の観点から、管理会社が作成、所持していて、管理組合では共有していないケースが多いため、居住者にその必要性を理解していただき、改めて作成することが必要になるからです。

しかし、評価を得るためだけでなく、実際に災害が発生した際にも、名簿があれば安否確認などがスムーズに進むことが期待されます。安心して快適に暮らすためにも重要な項目になるため、10ポイント獲得を目指しましょう。

マンション管理適正評価制度の評価結果

上記の評価項目について、以下5段階いずれかの評価をうけます。

出典:一般社団法人マンション管理業協会「マンション管理適正評価制度」

評価項目を見る限り、業務品質が一定程度保たれているマンション管理会社に管理を委託していれば、4つ星(70~89点)までは問題なく取れる可能性が高いかと思います。

マンション管理適正評価制度のメリットは4つ

管理計画認定制度で認定を受けていてもなお、マンション管理適正評価制度で評価を受けることには大きなメリットがあります。

(1) 管理組合を運営しやすくなる

(2)マンション管理をよい状態でキープしやすくなる

(3)居住価値・市場価値を向上できる

(4)業界全体の管理品質を底上げが期待できる

(1)管理組合を運営しやすくなる

マンション管理適正評価制度には30もの審査項目があるため、それに照らし合わせることで管理組合の目指す運営目標や今後の改善点が明確になり対策ができます。また、外部からの客観的な評価を受けることで管理組合の健全な運営にも繋がります。

その際、改善に向けて管理会社から有益なアドバイスが望めないと感じたなら外部専門家の起用を検討することもおすすめです。

(2)マンション管理をよい状態でキープしやすくなる

理事会の引継ぎ時に本評価制度の更なる向上を目指して明確な課題を提示することで、長期的にマンション管理の行き届いた状態をキープすることができます。

ポイントは、絶えず課題を探して改善していくこと、さらに理事会のメンバーが変わってもその管理力を継続していくことです。一度途切れてしまった管理力を取り戻すことは容易ではないため、管理組合全体の共通理解と継続的な努力が必要になります。

(3)居住価値・市場価値を向上できる

マンション管理適正評価制度は外部に向けて結果が公開されるため、高い評価を得るほど選ばれやすいマンションとなり資産価値の向上に貢献します。

有効期間が1年と毎年更新される仕組みなので、購入希望者が最新のマンション管理状態を知ることができ評価結果が信頼されやすいこともメリットです。

マンションの管理状態がよくなることは住みやすさにも直結します。マンション購入希望者だけでなく、居住者にとってもメリットが大きいのです。

(4)業界全体の管理品質の底上げが期待できる

外部の市場から運営状態を評価されることで、管理組合の運営や管理会社の業務品質の向上が期待できます。マンション管理や管理組合運営に熱心なマンションが増えれば、業界全体の底上げの一助になるでしょう。引いては、中古マンションの売買における価値の維持・向上も見込めるのです。

デメリットは手間と費用がかかること

メリットが大きいマンション適正評価制度ですが、評価を受けるために手間と費用がかかることがデメリットと言えます。

登録料は税込5,500円と一律で決められていますが、評価・申請にも手数料がかかり管理会社や評価者が自由に設定可能です。(無償の会社もあります)

さらに別途、地方公共団体の手数料が発生することもありますから申請前に確認してください。

マンション管理適正評価制度の申請方法

マンション管理適正評価制度申請の方法は、以下のような流れで行われます。

1、管理組合から本制度の評価者へ、マンション管理適正評価制度による事前評価を依頼

2、事前評価の結果を基に、総会決議で承認を経て、管理組合が本制度の登録・情報公開を依頼

3、マンション管理業協会に登録料を支払う

4、入金確認を経て登録完了。マンション情報を適正評価サイトに公開

5、管理組合は、適正評価サイト上の公開内容と登録証によって完了を確認

評価者になれるのは、マンション管理の専門家である「管理業務主任者」または「マンション管理士」の資格保有者でマンション管理業協会による評価者講習を修了した者だけです。評価と申請は、管理組合の都合でいつでもできます。

評価者への依頼については管理会社と相談し依頼するのがおすすめですが、自主管理のマンションの場合はマンション管理業協会へ直接相談してください。

マンション管理適正評価制度の過信は要注意

メリットの多い管理適正評価制度ですが、評価結果を鵜呑みにするのはリスクもあります。

5つ星評価だったからといって、手放しで安心できるとは言い切れないのです。

具体的な事例を挙げて見てみましょう。

【事例】将来に不安が残る5つ星評価マンションのケース

修繕積立金を段階増額方式と一時金による徴収方式を採用しており、期間中の収入が予定の修繕費用を上回るマンションのケースです。

管理体制関係 20点
管理組合収支関係 31点
建築・設備 20点
耐震診断関係 10点
生活関連 9点
→ 合計90点(S評価)

結果として5つ星評価にはなりますが、マンションの経年とともに居住者も高齢化していきます。先々、段階増額で必要とされる金額の見直しが決議されるという保証はありません。

また、ある程度まとまった金額を一時金として徴収することになっていますが、さまざまなライフステージにある多くの世帯から、必要な時期にまとまった金額を集めることができるのか、という点は懸念が残るでしょう。

管理会社任せの4つ星評価マンションのケース

先ほど挙げたように、一定程度のレベルの管理会社にお任せしていればある程度の結果は期待できますが、問題は「管理組合が自主的に取り組んだものかどうか?」も大きなポイントになります。

今後、多くのマンションが他マンションとの差別化、エリアで選ばれるマンションとしてアピールすべく、マンション管理適正評価制度を活用することが予想できます。

ただ、「高評価を得るよう管理会社に依頼して高評価を得たマンション」と「管理組合が自主的に取り組み高評価を得たマンション」では、その後の管理力の維持継続ができるかどうかが、おのずと大きく異なることが考えられます。

もちろん評価を受けるためには管理会社の一定の協力も必要ですが、その背景に管理組合や理事会の自主的な取り組みがなければ、長期的に見た管理力の維持継続は難しいかもしれません。

管理評価適正制度をうまく利用しマンション価値を高めよう

マンション管理適正評価制度に活用方法

管理適正評価制度は、マンションの管理レベルを客観的に把握できる画期的な制度です。

管理組合にとっては、管理の改善に向けた道筋を示すものとなり明確な目標にもなります。

管理組合が主体となり、管理適正評価制度で高評価を得られれば、マンション管理のハードルは下がり管理組合の健全な運営が可能になります。区分所有者の管理意識の向上にも繋がるでしょう。

資産価値や居住価値を維持できるため、結果自分たちにとってよいことばかりなのです。

さくら事務所では、管理適正評価制度での高評価ならびにマンション管理計画認定制度の認定を目指せる、長期修繕計画の見直しや作成を実施しています。

新しい長期修繕計画を採用するには総会での決議が必要です。さくら事務所では、総会や説明会にも同席し区分所有者の合意形成までお手伝いさせていただきます。

ぜひこの機会にご活用ください。

長期修繕計画の見直し・作成

山本 直彌
監修者

山本 直彌

大手マンション管理会社での業務経験6年、大手不動産仲介会社での業務経験9年、その他PM・BMマネジメント経験3年

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株式会社さくら事務所

ホームインスペクション(住宅診断)をはじめとする個人向け不動産コンサルティングや管理組合向けコンサルティングを行っている。400を超えるマンション管理組合のコンサルティング実績をもち、大規模修繕工事や長期修繕計画の見直し、瑕疵トラブルなどの管理組合サポートサービスを提供している。

【監修】さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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