構造(耐震)スリットとは?実はよくある施工ミスに要注意!

  • Update: 2022-11-24
構造(耐震)スリットとは?実はよくある施工ミスに要注意!

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

過去に、大手分譲会社によるマンションの施工不良が発覚するというニュースがありました。検査により、タイルが構造(耐震)スリットをまたいで張られている不具合が判明。更に、再検査で構造(耐震)スリットがそもそも入っていないことが分かりました。当時は特定の分譲会社の不祥事として取り上げられましたが、このような例はマンション一棟全体の調査を行う側からすれば、枚挙にいとまがありません。

当社ではマンションへの瑕疵調査を長年行っていますが、タイルが構造スリットを跨いで張られているというような不具合は、残念ながら多くのマンションで見られるのです。

ここでは、さくら事務所マンション管理士が新築マンションで発覚する施工不良・不具合、管理組合の負担を最小限にするためのポイントを解説します。

アフターサービス徹底活用のポイント

そもそも構造スリット(耐震スリット)とは?

構造スリットとは、現在の多くの建物で設置されており「耐震スリット」と呼ばれることもあります。

そもそも「構造スリット」とは、柱と壁の間などに意図的に隙間(スリット)を設けて、緩衝材の役割を果たすことを指します。

構造スリットのイメージ写真

柱と壁を構造的に分離し、大きな地震などの揺れにより壁が壊れた場合、柱が折れてしまうことにより建物が大きく損傷することを防ぐための建物構造上重要な役割を担っている「隙間」または「隙間用部品」のことです。

本来あるべきものとして構造計算されているので、構造スリットがないと想定外の壊れ方をするなど、建物への被害が大きくなります。

図面に書かれた構造スリットがそのとおりの位置に設置されていれば、そのスリットのおかげで柱が持ちこたえるよう設計されているわけですから、構造スリットの不設置は耐震性に大きく影響する可能性がある深刻な不具合と言えます。

また、過去に問題になった「スリットをまたいで張られたタイル」ですが、これらのタイルは「隙間」の上に貼られた状態ですので、地震の揺れで割れたり、剥落する危険があります。

地震の揺れで剥落するマンションのタイル

マンション居住者のみならず近隣にも危険・被害を及ぼすかもしれません。

また、地震の揺れでその部分のタイルが浮いてしまい、そこから浮きが拡散して、広範囲なタイルの浮きの原因にもなります。

マンションの新築時の施工不良、「いつ発覚したか?」が重要

これらは、よくある新築時の施工不良の1つに過ぎません。

構造スリットを含めて、マンションの新築時に発生する施工不良の事象には以下のような不具合が見つかります。(詳しくは「1回目の大規模修繕工事で解消しておきたいマンション新築時の施工不良」)

  • 外壁タイルの浮き・剥離
  • コンクリート被り厚の不足
  • 構造スリットの設置不良(未設置)
  • ジャンカ(コンクリートの充填不良)
  • コンクリートコア抜きによる鉄筋切断
  • コンクリートのクラック(ひび割れ)

これらすべてが深刻な瑕疵というわけではありませんが、引渡し後10年間の売主のアフターサービスの保証期間を過ぎてしまえば、その補修費用は管理組合の負担で、修繕積立金から支払うことになります。

新築分譲マンションは、品質確保の促進等に関する法律(品確法)によって、引き渡しから10年間は「構造耐力上主要な部分の不具合」「雨漏り」の2つの建物の不具合が売主により保証されるからです。

ポイントは、保証されるのが【10年以内に売主に通知した不具合】ということ。

通常、大規模修繕工事前に建物の状態、工事の仕様を決める劣化診断が行われ、このタイミングで新築時の施工不良が発覚するケースが多々あります。

ですが、大体最初の12年目の大規模修繕工事でこの調査が行われるのは、10年目、11年目。

大規模修繕工事前の調査で発覚しても既に、保証期間は切れているのです。

ですので、このタイミングで新築時の施工不良が発覚した場合、大規模修繕工事と同時に補修することになりますが、その結果、当初の大規模修繕工事の予算を大幅にオーバーしてしまいます。

本来、分譲会社・施工会社に補修してもらうはずの、施工不良や不具合を管理組合の費用で直さなければならず、想定外の出費は将来の修繕積立金不足に繋がる大きな痛手です。

また、アフターサービス期間を過ぎていても、民法上の不法行為責任により分譲会社や施工会社に責任を問えるケースがあります。

ですが、そのためには、施工上の過失に起因するものであることを管理組合側で立証する必要があります。

専門家がその工事で、法令の違反や明らかな施工上の過失などがないか調査をした結果、施工上の過失などが確認された場合に、分譲会社や施工会社の不法行為責任を追及できる可能性がある、ということです。

重要なのは、中立性が確保できる第三者の調査結果

尚、建物の調査には、その中立性が確保できる第三者に調査してもらうことをおすすめします。

施工会社や関連会社はそのマンションの施工については当事者・関係者になります。

施工時の不良によるものなのか?(構造スリット以外の瑕疵の場合)経年劣化によるものなのか?の調査を当事者・関係者に依頼しても、その結果があやふやだったり、依頼した管理組合としてもやはり客観性に欠けるのでその結果が信用できない、というケースがあるからです。

築10年目以内の調査がマンションには必須

新築マンションの施工不良、その被害を最小限に抑えるため、まずは竣工引渡し後10年目以内の建物全体の調査が肝心です。

このタイミングであれば、最初の大規模修繕工事を控えていることもあり、そのための調査を(タイミングを少し早めて)兼ねるという方法も合理的です。

くわしくは、マンション管理士にお問合せください。

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藤ノ木 健二
監修者

藤ノ木 健二

大学卒業後、ゼネコンに勤務し、マンション新築工事、マンション大規模修繕工事、学校、病院などの耐震補強工事の現場管理業務に従事。

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【監修】さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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