【大規模修繕】外壁塗装の目的は?塗装すべき劣化状況・費用・注意点を解説

  • Update: 2023-10-19
【大規模修繕】外壁塗装の目的は?塗装すべき劣化状況・費用・注意点を解説

外壁塗装だけではありませんが、マンションは築年数の経過とともに劣化が進みます。日々のメンテナンスも大切ですが、外壁の劣化や設備の機能低下などを回復させるには、足場を組んでおこなう大規模修繕工事が不可欠です。

外壁塗装は、大規模修繕工事費のなかでも多い割合を占めています。「本当に今工事が必要なのか」「工事費用は妥当なのか」など、よく理解したうえで発注できるようにしておきましょう。

本記事では、外壁塗装工事が必要な状況、費用相場を解説します。大規模修繕全般の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

大規模修繕で失敗しないための3ステップ

大規模修繕工事って何するの?

大規模修繕工事のおもな内容は、外壁補修・塗装など足場を組まなければ実施できない大がかりな工事や、設備の補修・交換などです。約12年周期で実施されますが、昨今は技術の進歩により18年程度まで延長する考え方も広まっています。

大規模修繕の資金は修繕積立金です。多額の費用が必要なため、長期修繕計画で実施時期や予算が決められ、計画的に区分所有者から修繕積立金を徴収しています。

大規模修繕は、居住者や近隣住民の安全確保、マンションの寿命を遅らせ資産価値を維持するために欠かせません。重要性を理解し大規模修繕に備えましょう。

大規模修繕における外壁塗装の目的

外壁塗装にひび割れや剥がれが生じていたとしても「暮らしていくうえで問題ない」と感じる方もいるかもしれません。劣化の程度によってはすぐに悪さをしないケースもありますが、放置していると、マンションの劣化を進めます。

大規模修繕における外壁塗装のおもな目的は「機能の回復・維持」と「美観の向上」です。以下で詳しく解説します。

機能の回復・維持

外壁塗装の一つ目の目的は、機能の回復と維持です。外壁塗装はマンションの躯体を紫外線や雨水から守る役割があります。

塗装が劣化し、紫外線や雨水にコンクリートが晒されると、中性化を引き起こし、内部の鉄筋がサビて膨張することで、コンクリートのひび割れや剥落など、躯体に悪影響を与えてしまうのです。建物全体へと劣化が進むと、耐久性や防水性などマンション本来の機能が損なわれます。

美観の向上

二つ目の目的は美観の向上です。外壁の塗装剥がれやひび割れが生じているマンションは「管理が行き届いていない」などマイナスイメージを与えます。

塗装工事は、新築当時のような美しい外観に一新できるのです。美観の向上は、居住者の満足度を上げるのはもちろん、売却しやすくなったり、賃貸している場合は入居率を改善する利点もあります。選ばれ続けるマンションであり続けるためにも、美観を向上させて資産価値を維持しましょう。

外壁塗装の劣化要因

外壁塗装が劣化する要因は、おもに「紫外線」「湿気」「酸素・二酸化炭素」の3つです。ひとつずつみていきましょう。

紫外線

外壁塗装は太陽の紫外線にあたり続けると劣化が進行し、雨水などの外的要因によるダメージを受けやすくなってしまいます。さらに、塗装面が色褪せ、美観を損なう原因のひとつになるでしょう。

湿気

太陽光があたりにくい湿気の多い場所も、劣化しやすい特徴があります。湿度が高く結露しやすい場所でもっとも注意すべきは、カビです。カビに侵食されると塗装の色褪せや塗装剥がれの原因になります。

酸素・二酸化炭素

空気中の酸素や二酸化炭素は、本来アルカリ性のコンクリートを中性または酸性にし、中性化が起こります。中性化による外壁の劣化は、当然塗装にも影響し、劣化を早めてしまうのです。

大規模修繕で外壁塗装が必要な劣化状況

大規模修繕で外壁塗装が必要なのは以下のような劣化状況がみられるときです。

・変色や色褪せ

・チョーキング現象

・躯体表面のクラック

・塗装の剥がれ

・鉄部のサビ

順に詳しくみていきましょう。

(1)変色や色褪せ

塗装の変色や色褪せがみられる段階で、外壁塗装工事をするのが理想です。外壁の面によって色の違いが生じていたり、新築当時と比べると発色が悪くなっていたりする場合は、塗装工事で美観を向上できるでしょう。

(2)チョーキング現象

チョーキング現象とは、触ったときにチョークのような白い粉が付着する現象です。チョーキング現象がみられるときは、塗膜の耐久性が低下していると判断できます。目視しただけでは分かりづらいため、手で触って確認してみましょう。

(3)躯体表面のクラック

クラックが生じているときも塗装工事が必要です。幅が約0.3mm未満の軽微なクラックであれば塗装工事のみで済みますが、それ以上のクラックは躯体も補修しなければいけません。程度の大きいクラックは雨水の浸入にもつながるため、早めに対処しましょう。

(4)塗装の剥がれ

塗装が剥がれていると躯体の防水性が低下します。雨水や紫外線の影響を直に受けてしまうため、塗装工事が必要です。はじめは少しの剥がれでも、放置していると徐々に範囲が広がり美観を損ないます。

(5)鉄部のサビ

鉄部のサビは塗装が劣化している証です。サビを放っておくと、表面のサビに留まらず、鉄部を侵食します。見た目はもちろん安全性も損なわれるため、塗装工事で最低限の劣化にとどめましょう。

大規模修繕の外壁塗装の費用相場

大規模修繕で外壁塗装する際の費用相場について「塗料ごとの塗装単価」と「外壁塗装の費用割合」の2つの側面から解説します。外壁塗装の費用相場、さまざまな要因によりマンションによって大きくことなるため、あくまでも参考としてご理解ください。

塗料ごとの塗装単価

塗料ごとの塗装単価について下記の表をご覧ください。

耐用年数の目安 塗装単価(下・中・上塗りの3回塗り)
アクリル塗料 3~6年 1,400~1,600円/㎡
ウレタン塗料 7~10年 1,600~2,400円/㎡
シリコン塗料 10~13年 2,200~3,000円/㎡
フッ素塗料 15~20年 3,600~4,600円/㎡

上記4つが外壁塗装につかわれるおもな塗料です。上記のほかにも無機塗料や光触媒塗料など特殊な性質をもつ塗料もあります。

塗料は耐用年数が長いほど高額です。単価の安い塗料で頻繁に塗りなおす、単価の高い塗料で工事回数を減らすなど、耐用年数と費用のバランスで検討しましょう。

また、外壁塗装は足場を組む必要があるため、単独で実施するのは効率的ではありません。大規模修繕の周期を踏まえて耐用年数を考えることも大切です。

以下で塗料ごとの特徴をみていきましょう。

アクリル塗料

アクリル塗料は一昔前に主流の塗料でしたが、耐久性が高くないため、現在は外装より内装に使われています。価格の安さ・色のバリエーションの豊富さ・鮮やかな発色が特徴です。

ウレタン塗料

ウレタン塗料も耐久性はそこまで高くありません。アクリル塗料に次いで低価格で、光沢感が長く持続するため、美観向上を目的に部分使いされることもあります。

シリコン塗料

シリコン塗料は、耐用年数が10~13年です。大規模修繕の周期と合わせやすいこともあり、現在もっとも多く使われています。汚れ・色落ち・熱に強く価格とのバランスがよい塗料です。

フッ素塗料

フッ素塗料は価格の高さがネックですが、耐用年数が長いのが特徴です。紫外線や湿度、低気温など厳しい自然環境にも耐えられる性質をもっています。高層ビルで使われることが多い塗料です。

大規模修繕工事のうち外壁塗装の費用割合

国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、外壁塗装の金額の割合は下記グラフのとおりです。

出典:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査≪2≫ マンション大規模修繕工事について」

大規模修繕工事<全体>の総工事金額のうち、約60%が外壁塗装を含む建築工事で、さらに建築工事のうち約25%が外壁塗装費用です。大規模修繕工事の回数によっても異なりますが、全体の結果でみると外壁塗装は、建築系工事のなかでもっとも多い割合を占めていることがわかります。

外壁塗装工事の見積もりを確認するときは、単純な工事金額だけでなく、全体に占める割合にも着目してみましょう。

【事例紹介】助成金の対象になる塗装工事もある

自治体によっては、工事の内容次第で助成金を受けとれるかもしれません。助成金の対象になる主な工事は、耐震強度を上げたり省エネ対策になったりするものです。

塗装工事に関しても、断熱や遮熱効果のある塗料を使うことを条件に助成制度を設けている自治体があります。助成金の詳細は、各自治体の公式ホームページや地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト(令和5年度版)から調べてみましょう。

下記記事でも外壁工事に関する助成金についてまとめていますので参考にしてください。

外壁工事の助成金(補助金)はいくら?適用条件や受け取る方法・注意点を解説

ここでは東京都文京区の助成金について紹介します。

【事例】東京都文京区「新エネルギー・省エネルギー設備設置費助成」

「新エネルギー・省エネルギー設備設置費助成」は、太陽光発電システムや断熱窓など、温室効果ガス排出削減に効果的な工事が対象です。

塗装工事に関しては、高日射反射率塗料の施工に助成をうけられます。助成金額は、管理組合の場合、上限100万円(実支出額以内)。適用要件は以下のとおりです。

・JIS K5675(屋根用高日射反射率塗料)適合品又は日射反射率(近赤外線領域)50%以上を有するものを使用すること

・住宅、事業所又は集合住宅共用部分の屋根・屋上部分(屋根・屋上立ち上がり部分を含む。)について施工すること

・既存建築物への施工であること

引用:文京区「新エネルギー・省エネルギー」

ほかにも申込期日などさまざまな条件があります。

大規模修繕の注意点

大規模修繕には以下4つの注意点があります。事前に注意点を理解し、スムーズに工事を進められるように備えておきましょう。

・事前に長期修繕計画・修繕積立金を見直しておく

・施工業者は慎重に選ぶ

・居住者・近隣住民の理解を得る

・施工後の完了チェックを怠らない

大規模修繕工事のトラブルについての詳細は下記記事でご確認ください。

マンション大規模修繕工事でよくあるトラブル!原因・対策と問題発生時の対処法を解説

(1)事前に長期修繕計画・修繕積立金を見直しておく

大規模修繕直前で資金不足が発覚し、必要な工事ができなかったり一時金を徴収したりすることのないように、順調に資金確保できているのか、見直しておきましょう。

改善が必要な場合は、必要に応じて修繕周期の延長や修繕積立金の増額が必要になります。対策が早いほど、状況を改善しやすく区分所有者の金銭的負担も軽減できるでしょう。

(2)施工業者は慎重に選ぶ

施工会社は管理組合主体で選びましょう。管理会社に任せきりにすると、必要以上に高額な費用で工事を請け負う業者に依頼することになりかねません。業者選定は、複数の施工会社に見積もりを依頼し、以下3つのポイントを意識して選びましょう。

・瑕疵保険登録事業者かどうか

・アフターフォローが充実しているか

・同様のマンションの施工実績があるか

瑕疵保険登録事業であれば、工事完了後に不具合がみつかった場合、無償で補修してもらえます。不具合がなかったとしても、保証期間内の無料点検サービスなどのアフターフォローがあれば安心です。ホームページで施工実績を掲載している会社もあります。同様の実績があるかも確認しておきましょう。

(3)居住者・近隣住民の理解を得る

塗装工事は臭いや音が生じるため、工事に非協力的な居住者とトラブルになることも少なくありません。

理解を得るためには、居住者や近隣住民の協力が必要なこと、生活が制限されるなどよくないことほど、十分な時間をとって説明することが大切です。

「工事をしないとどうなるのか」「何のための工事なのか」も周知し、協力を要請しましょう。

(4)施工後の完了チェックを怠らない

完了チェックがしっかりできないと施工不良や仕上がりの悪さに気がつきません。後々、管理組合の費用負担で修理するはめになってしまうことも。

自分たちだけで完了チェックをおこなうのが難しい場合は、外部の専門家に最終チェックしてもらうのがおすすめです。

専門家の力を借りて大規模修繕を成功させよう

大規模修繕は、施工業者の選定や見積もり精査、居住者への協力依頼など、やるべきことが山ほどあります。とくに業者とのやり取りでは専門用語も多く、理解が難しかったり居住者が納得するように説明できなかったりすることもあるでしょう。

業者選定や見積もり精査で誤った判断をすると、大事な修繕積立金を無駄遣いしてしまうことにもなりかねません。失敗しないためにも、マンションの大規模修繕の進行やマンション工事に知見がある、専門家の力を借りるのがおすすめです。

さくら事務所では、外部修繕委員として大規模修繕コンサルティングを実施しています。大規模修繕工事の実施時期から、施工会社選定、見積もりチェック、居住者への説明など、希望に応じてサポート可能です。そのほか、修繕工事に精通したプロが、管理組合の立場でおこなう第三者完了検査もおこなっています。

マンション管理に関する幅広いサービスを展開しているので「何から始めたらよいかわからない」という漠然とした不安もお気軽にご相談ください。

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株式会社さくら事務所

ホームインスペクション(住宅診断)をはじめとする個人向け不動産コンサルティングや管理組合向けコンサルティングを行っている。400を超えるマンション管理組合のコンサルティング実績をもち、大規模修繕工事や長期修繕計画の見直し、瑕疵トラブルなどの管理組合サポートサービスを提供している。

【監修】さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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