マンション大規模修繕工事でよくあるトラブル!原因・対策と問題発生時の対処法を解説

  • Update: 2022-11-17
マンション大規模修繕工事でよくあるトラブル!原因・対策と問題発生時の対処法を解説

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

マンションの大規模修繕工事は、修繕委員会の発足から、施工会社の選定、着工、竣工検査まで、多大な時間と費用を要するため、多くのトラブルが予想されます。居住者や業者とのトラブル、金銭的なトラブルなどその内容はさまざま。なかには自分たちだけでは解決できないトラブルもあるでしょう。トラブルを回避するために最も重要なことは、事前にどんなトラブルが起こり得るのか把握し対策することです。そこでこの記事では、マンション大規模修繕工事でよくあるトラブルを紹介し、その原因と対策、対処法を解説します。大規模修繕工事を控えている管理組合の方は、ぜひ参考にしてください。
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マンション大規模修繕工事によくあるトラブルと原因

マンションの大規模修繕工事によくある以下6つのトラブルとその原因について解説します。

  • マンション居住者とのトラブル
  • 近隣住民とのトラブル
  • 修繕費用に関するトラブル
  • 各業者とのトラブル
  • 修繕委員会内でのトラブル
  • 空き巣被害

順に詳細をみてみましょう。

マンション居住者とのトラブル

居住者が生活しているなかで実施する大規模修繕工事は、居住者とのトラブルが非常に多く見受けられます。マンション居住者との代表的なトラブルは次の3つです。

  • 工事に協力的じゃない
  • 部屋の中を見られてしまう問題
  • 入室が必要な作業でのトラブル

以下で順に解説します。

工事に協力的じゃない

トラブルなく工事完了するには、居住者の協力が不可欠です。工事中はバルコニーやエレベーターが使えないなど、通常の生活を送れないストレスから、非協力的な発言・行動で現場を困らせる居住者もでてきます。

居住者とのトラブルのおもな原因は、コミュニケーション不足。工事の重要性が伝わっていなかったり、居住者の声に耳を傾けられていなかったりと、工事前から良好な関係が築けていないケースが多くあります。

部屋の中を見られてしまう問題

足場を組んで窓のすぐ近くで作業している場合、カーテンが開いていたら容易に部屋の中が見える状況です。実際は見ていなくても、施工業者の立ち振る舞いや視線によっては「プライバシーを侵害された」と感じられてしまうことも。

これは「足場での作業日時」や「カーテンを閉める必要があること」が周知できていないことがおもな原因です。作業員においても、誤解を招く行動をしないよう徹底してもらう必要があります。

入室が必要な作業でのトラブル

マンションの大規模修繕工事では、ドアやサッシの交換、給排水管の補修などなで工事業者が専有部に立ち入ることがあります。

事前にお知らせして許可を得ますが「入室してほしくない」という方とトラブルになることも。

工事業者が一方的に入室日時を決めるのではなく、居住者の希望時間に合わせたり、最低限の入室で作業ができないか検討したりと、可能な限り居住者に配慮してもらいましょう。

ほかに「作業員の服が汚れていて部屋が汚れた」「在宅中なのにインターフォンを鳴らさず解錠して入室してきた」といったトラブルもあります。マナーの問題でもありますが、入室作業するときの服装や入室時の手順についてまで、細かく取り決めてもらいましょう。

近隣住民とのトラブル

大規模修繕工事はマンション居住者だけでなく、近隣住民とのトラブルもあります。とくに多いのが、騒音や臭気、ホコリなどによる不快感が苦情に発展しトラブルとなるケースです。

大規模修繕工事をする以上避けられない不快感ですが、近隣住民の方の健康状態にも影響することがあるため、慎重に対応しなければなりません。

工事前に近隣住民に対して、工事期間や内容について説明会をおこなったり、個別に自宅を訪問して説明したりすることで、トラブルを最小限に抑えましょう。

また、住民が在宅していることが多い土日祝日は音が出る工事を控えるなどの配慮も大切です。

大規模修繕工事が終わった後も近隣住民とのお付き合いは続きます。良好な関係を続けるためにも十分気を付けましょう。

修繕費用に関するトラブル

大規模修繕工事の費用を見積もる場合、足場をかけないと正確な見積もりができない箇所(外壁タイルなど)については、仮の金額で見積もっておき、着工後、実際に工事した数量と単価に基づき、費用を清算するのが一般的です。

仮の金額は多く見積もられるものですが、もし、着工後に予期せぬ不具合が見つかり、工事個所が増えた場合、修繕費用が高くなり、トラブルになるケースがあります。

修繕費用が高くなり、修繕積立金が不足した場合、考えられる対策は以下の3つです。

  • 修繕積立金の追加徴収
  • 修繕積立金の値上げ
  • 金融機関からの借入

修繕積立金の追加徴収および値上げは効果的な対策ですが、組合員を説得するのに苦労します。金融機関からの借入は組合員とのトラブルは避けられますが、毎月の返済や利子を考えると、得策ではありません。

修繕費用に関するトラブルの多くは、長期修繕計画の甘さが原因です。金銭的に余裕を持った計画への見直しを検討しましょう。

各業者とのトラブル

施工業者やコンサルタントの選定ミスはトラブルのもとです。実力不足の施工業者だと、施工ミスや大幅な遅延が発生してしまうことも。最悪の場合、施工業者の倒産も考えられます。

これは調査不足が原因で起きるトラブルです。依頼する前に会社規模や経営状況についてよく調べておきましょう。

また、悪質なコンサルタントによるトラブルで被害を受けている管理組合も多くあります。悪質なコンサルタントの手法は、安い費用で契約できる代わりに、施工業者と癒着して高い工事代金を請求すること。

「不要な工事が含まれている」「工事代金が高い」など不審点がある場合は、ほかの業者に見積もりを依頼し比較してみましょう。

修繕委員会内でのトラブル

大規模修繕工事を進めていくうえで中心となるのが、組合員で構成される修繕委員会です。工事業者やコンサルタントの選定も修繕委員会がおこないます。

修繕委員会内でよくあるトラブルは「全員が集まれる時間がとれない」「意見がまとまらない」です。修繕委員会の理想の人数は、全員が集まりやすい5人。少なくても多くても上手くいきません。

意見がまとまらない原因は、全員が集まれる時間がとれないことのほか、大規模修繕工事に関する知識がある方が少ないことが考えられます。

修繕委員会内でどんなに話し合ってもらちがあかない場合は、専門知識のある第三者機関の介在も視野に入れましょう。

空き巣被害

大規模修繕工事中は足場がかけられ、その気になれば誰でも窓から侵入できる状況です。また、オートロックが開けられたままになっていたり、人の出入りが多くなったりと空き巣にとって好条件が揃います。

空き巣被害の原因は、防犯意識の低さです。空き巣に入られることを前提として、工事業者と協力し、以下4つの対策を検討しましょう。

  • 防犯カメラ設置
  • サーチライト設置
  • 窓サッシ用補助鍵の設置
  • 作業員共通の服や目印

死角になる場所には防犯カメラやサーチライトの設置が効果的。窓サッシ用の補助鍵は、居住者に無料で貸し出すケースがほとんどです。不審者を見分けるためにも作業員は共通のベストを着用するなど、空き巣防止に繋げましょう。

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マンション大規模工事のトラブルを未然に防ぐ対策

ここからはトラブルを未然に防ぐ対策について解説します。おもな対策は以下の5つです。

  • 居住者への事前告知を徹底する
  • 近隣住民へは事前の挨拶・お知らせを徹底する
  • 長期修繕計画の定期的な見直し
  • 瑕疵(かし)保険に加入している業者を選定する
  • 信頼できる業者を選ぶ

順に詳細をみてみましょう。

居住者への事前告知を徹底する

居住者への事前告知の方法は色々とありますが、有効な手段は次の2つです。

  • エントランスに設置したホワイトボードで工事状況をリアルタイムに告知する
  • 各住居のメールボックスに、工事のスケジュール表を投函する

エントランスに設置した掲示板は、大規模工事に興味関心がない居住者でも自然に目に入るため、情報が伝わりやすくトラブル防止につながります。容易に書き直せるため、変更点をリアルタイムで告知するのにも便利です。

また、スケジュール表を各住戸に投函することも忘れてはいけません。文書としてしっかり残すことで情報の相違を防ぎます。

居住者への事前告知は施工会社が対応してくれますが、任せっきりにするのでなく協力して周知していきましょう。

近隣住民へは事前の挨拶・お知らせを徹底する

近隣住民に対しても、工事開始前に挨拶・お知らせを徹底しましょう。工事のスケジュールや内容はもちろん、騒音や臭気が発生するなど都合の悪いことほど時間を割いて丁寧に伝えます。

工事に関する意見や質問を受け付ける連絡先を伝えておくことも、トラブル防止に効果的です。誠意をもって挨拶することで、印象の良い状況から工事をスタートさせましょう。

また、工事車両の無断駐車でトラブルになることも。ただでさえ大きな工事車両の出入りにより、歩行者や車の通行を妨げているため、少しの時間だとしても近隣道路への無断駐車は厳禁です。マンション内に工事車両を駐車できるスペースを確保しておきましょう。

長期修繕計画の定期的な見直し

追加工事の発生により修繕費用が足りなくなることは「仕方のないこと」ではありません。工事中に予期せぬ不具合が見つかることはよくあるため、事前に備えておくことで、トラブルを防止しましょう。

具体的な対策は、長期修繕計画の定期的な見直しです。マンション建設当初に決められた長期修繕計画から一度も見直さず、計画通りに大規模工事をおこなっているマンションも多くあります。

しかし、マンションの劣化具合は必ずしも予想通りではありません。工事費用も当時の見積もりとは大きく異なっているはずです。無駄に費用をかけている工事はないのか、節約できる部分はないのか、定期的に見直し、追加費用を確保できるように備えましょう。

瑕疵(かし)保険に加入している業者を選定する

瑕疵保険に加入している業者を選定することで、施工不良や倒産時のトラブルを防止できます。業者が瑕疵保険に加入していると、工事の前後で第三者によるマンションの検査がおこなわれるため、手抜き工事の防止に有効です。

また、検査で不具合が見つかれば、工事業者に保険金が支払われ補修工事の費用に充てられます。万が一、施工業者が倒産した場合は発注者に保険金が払われるため、保険金を利用し別の業者に工事を発注できるのです。

基本的に保証期間は5年間。鉄部の保証のみ2年間です。保険会社により、保証内容は異なるため、加入有無だけでなく、保証内容まで確認しておきましょう。

信頼できる業者を選ぶ

信頼できる業者か判断するポイントは以下の3つです。

  • 大規模修繕工事の実績が豊富
  • 現場監督の対応や人柄が良い
  • レスポンスが迅速かつ的確

大規模修繕工事の実績が少ない業者は、大規模修繕工事独自の注意点を理解していなかったり、居住者対応に慣れていなかったりと、常にトラブルと隣り合わせです。その点、実績豊富な業者は、起こり得るトラブルを熟知しているため、安心して任せられます。

また、現場監督の対応や人柄が良いと、コミュニケーションが取りやすく居住者からの工事に関する困りごとにも親身に相談にのってくれるでしょう。

迅速かつ的確なレスポンスはトラブル防止だけでなく迅速な問題解決に繋がり、トラブルを最小限に抑えられます。

大規模工事のトラブルが起きてしまった場合の対処法

大規模修繕工事により、自分たちでは解決できないトラブルが起きてしまった場合は「公益財団法人マンション管理センター」に相談しましょう。

日本で唯一、国土交通大臣から「マンション管理適正化推進センター」として指定された機関で、マンション管理に関するさまざまなサービスを提供しています。

大規模修繕工事や管理組合運営に関する無料相談のほか、長期修繕計画作成や修繕積立金算出も良心的な価格で実施するなど、管理組合に有益な情報が満載です。

相談窓口では、マンション標準管理規約やマンションに関する法令を参考に、中立的な立場でトラブル解決にむけてアドバイスしてもらえます。

困ったときに頼れる貴重な機関です。積極的に活用しましょう。

大規模修繕工事でトラブルが起きないように対策しよう

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大規模修繕工事は「実績豊富で信頼できる業者を選ぶこと」「居住者・近隣住民の理解を得ること」ができれば、多くのトラブルを回避できます。

とくに居住者は生活の制限が多くなるため、理解を得るのが難しいことも。日頃から居住者とのコミュニケーションを大切にし、トラブルなく大規模工事をするための土台作りをしておきましょう。

また、一度も長期修繕計画を見直していない場合は、要注意です。一度計画を見直し、手遅れになる前に対策しておきましょう。

鬼塚 竜司
監修者

鬼塚 竜司

新築工事にてマンションや複合施設の給排水および空調設備の工事管理を経験後、マンション管理会社の修繕工事部門にて、工事企画及び工事管理を14年間経験(管理職含む)。大規模修繕80棟以上、給排水管更生更新30棟以上、窓サッシ改修工事等補助金対応工事10棟以上、機械式駐車場入替、インターホン改修工事など、マンション全般の工事を経験。長期修繕計画の作成500回以上。2021年6月株式会社さくら事務所へ参画。

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ホームインスペクション(住宅診断)をはじめとする個人向け不動産コンサルティングや管理組合向けコンサルティングを行っている。400を超えるマンション管理組合のコンサルティング実績をもち、大規模修繕工事や長期修繕計画の見直し、瑕疵トラブルなどの管理組合サポートサービスを提供している。

【監修】さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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