マンションの耐用年数と寿命は違う!何年住める?寿命を過ぎたらどうなる?

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マンションの耐用年数と寿命は違う!何年住める?寿命を過ぎたらどうなる?

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

マンションの耐用年数と寿命。マンション購入者であればどちらも理解しておきたいところです。「いつまでこのマンションに住める?」「耐用年数がきたらどうなるの?」と気になる疑問も多いでしょう。

この記事では、マンションの「耐用年数」と「寿命」の違いや、実際何年住めるのか、耐用年数が過ぎたらどうなるのかを解説します。

寿命を左右する要因にも触れているので、ぜひ参考にしてください。

「マンションに何年住めるか」は法定耐用年数でなく寿命(物理的耐用年数)

法定耐用年数と寿命は別物です。法定耐用年数が過ぎたからといって、マンションに住めなくなるわけはありません。しかし、寿命がくるとマンションとして十分な機能を果たせず、安全な暮らしができなくなります。

マンションの平均寿命は約70年です。国土交通省が発表した資料に掲載されている調査では、マンションの平均寿命を68年と推測した研究結果があります。

現在は新耐震基準によりマンションが倒壊する可能性は低いです。さらに技術の進歩によりマンション性能は日々向上していることから、建物の寿命が延びていることが予想されます。

理論上コンクリートは100年持つと言われているため、管理の仕方次第では大幅に平均寿命を超えられるでしょう。

参照:国土交通省「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」

マンションの寿命(物理的耐用年数)を左右する要因

マンションの耐用年数は変えられませんが、建物としての寿命は計画的にメンテナンスをしたり工事したりすることで延ばせます。ここでは、マンションの寿命を左右する要因と延命する方法を紹介します。

(1)長期修繕計画

計画的にメンテナンスや工事をおこなっていくためには、適切な長期修繕計画が不可欠です。
「適切な」というのは、マンションの現状や立地条件を考慮した修繕内容や修繕時期が設定され実行されていること、正しくお金が可視化され不足しないように修繕積立金が設定されていることを意味します。
そして5年ごとに計画を見直して、修繕期間をのばしたり修繕方法を変えたりできる項目があれば、臨機応変に状況に合った形で運用していきましょう。
これまで一度も長期修繕計画を見直していない場合や管理会社による見直ししかされていない場合は、一度外部の専門家に第三者の視点でチェックしてもらうことをおすすめします。

(2)耐震性

マンションの平均寿命は約70年ですが、大地震により築70年よりも前に寿命を迎えることもあります。
新耐震基準を満たしたマンションであれば、震度6強~7程度までの地震が起きても倒壊の心配はありません。
しかし、旧耐震基準で倒壊しないとされているのは震度5程度です。近年多発している震度6以上の地震で、倒壊する危険性が充分あることを意味します。
旧耐震基準のマンションで耐震改修工事をしても、新耐震基準と同等の効果を得られるわけではありませんが、わずかでも耐震性を向上できれば、マンションの延命につながります。

(3)修繕資金

「修繕資金が足りているか」もマンションの耐用年数を左右する重要な要因です。耐震性を向上するのも、長期修繕計画を実行するのも、資金がなければ叶いません。

修繕資金を確保するには、支出と収入の見直しが重要です。

支出を減らすには、管理人の滞在時間や清掃頻度を見直して管理委託費を削減できないか、機械式駐車場の一部を平面化してメンテナンスコストを下げられないか、などを検討しましょう。

支出を減らしても修繕資金が足りない場合は、修繕積立金を値上げする、駐車場や会議室などを外部貸しするなど、収入を増やすための対策が必要になります。

マンションの法定耐用年数は税務上の資産価値がなくなる年数

法定耐用年数とは、税務上の資産価値がある年数のことです。減価償却費を計算する際に用いられます。マンションの築年数の経過とともに資産価値は下がり、耐用年数に到達すると価値はゼロになりますが、住めなくなるわけではありません。

マンションの法定耐用年数は47年

鉄筋コンクリート造のマンションの法定耐用年数は47年です。法定耐用年数は、国税庁が税金を計算するために設定しており、住宅用建物の場合は構造によって以下の表のとおり定められています。

構造 法定耐用年数
木造・合成樹脂造 22年
木造モルタル造 20年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 47年
れんが造・石造・ブロック造 38年

なお「給排水」「衛生設備」「ガス設備」「電気設備」など設備部分の耐用年数は、47年ではなく15年です。マンション本体と設備部分は、耐用年数に差があるため注意しましょう。

マンションの耐用年数に近づいても、早急な対策が必要なわけではありません

しかしマンションの将来に向けて管理の方向性を管理組合で話し合い、見通しを立てておくことが大切です。

参照:国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)」

減価償却の計算方法

減価償却の計算式は「建物の購入費用×償却率」です。マンションでは建物本体と設備部分は耐用年数が異なりますので、それぞれ分けて計算します。また、土地代は減価償却の対象外であるため「建物の購入費用」に含めません。

「償却率」は国税庁が定める耐用年数に応じて設定されています。耐用年数47年(鉄筋コンクリート造のマンション本体)だと償却率は0.022、15年(例:給排水・電気設備等の設備部分)だとおおよそ0.067です。したがって、新築マンションの減価償却費は「(建物本体の費用×0.022)+(設備部分の費用×0.067)」で計算できます。

中古マンションの場合は、残りの耐用年数をもとに償却率を算出します。残耐用年数の計算式は「耐用年数-(築年数×0.8)」です。残耐用年数に応じた償却率から、新築マンションと同様に減価償却費を計算しましょう。

参照:国税庁「減価償却資産の償却率表」

法定耐用年数を過ぎると住宅ローンを組みにくい

法定耐用年数が過ぎたマンションは、住宅ローンを組みにくくなります。基本的に住宅ローンの融資期間は、法定耐用年数までです。

法定耐用年数を過ぎると資産価値がないものとみなされ、マンションを売却しても損失の方が大きくなるため、ローン審査が厳しくなります。

マンション所有者には関係ないと思うかもしれません。しかし選ばれないマンションになることは資産価値の低下につながるため、適切な管理で寿命を伸ばすなど価値を維持する対策が不可欠です。

マンションの耐用年数が過ぎたらどうする?

マンションの耐用年数が過ぎたら、寿命をむかえる前に今後の方針について考えておきましょう。おもに次の3つのケースが考えられます。

  • 建て替える
  • そのまま住み続ける
  • ディベロッパーへ売却

以下で順に解説します。

ケース①建て替える

マンションの建て替えには「全額区分所有者(居住者)負担」と「一部区分所有者(居住者)負担または居住者負担なし」2つのケースがあります。

基本的に、建て替えにかかる工事費用や工事中の仮住まい費用は、区分所有者(居住者)の負担です。建て替えるには、区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成が必要ですが、費用負担が大きいため賛成を得るのは難しいでしょう。

そこで、所有者負担を抑え建て替えができるケースもあります。多くの場合はディベロッパーが事業協力者としてコンサルティングに入り、建て替え事業をサポートしており、容積率や高さ制限等をクリアしたうえで戸数を増やし、その販売費用を建て替え資金にあてることで負担を軽減しています。

戸数を増やせるだけの土地の広さや集客できる立地の良さなど、クリアすべき条件は多くありますが、検討する価値はあるでしょう。

ケース②そのまま住み続ける

適切に補修をし、居住に不便を感じていなければ、そのまま住み続けてもよいでしょう。とくに住民の高齢化が進むマンションの場合、建て替え費用の負担や新居探しはそう簡単ではありません。

マンションの建て替えは、経済的にも、日常生活を送る上でも、準備や時間がかかるなど、所有者にとって負担が大きいものです。しかし、マンションの老朽化が進むとあちこちから漏水したり、コンクリートが爆裂するなど、さまざまな不具合が生じるのも事実です。

マンションの老朽化は区分所有者だけでなく、地域の住環境にも悪影響を及ぼし、さらなるトラブルの可能性も否定できません。寿命がくる前に対策を急ぎましょう。

ケース③ディベロッパーへ売却

マンション1棟をディベロッパーに売却して得た利益を区分所有者に分配し、引越し費用に充てるケースもあります。

ディベロッパーの目的は、不動産を介して都市開発を進めること。マンションを取り壊したあとその土地に新たな建物を建設します。ディベロッパーへ売却する際は、売却利益からマンション解体費用が差し引かれるため、そこまで利益は多くなりません。

新居を探し引越しするための費用が不十分なケースもあり、区分所有者の賛成を得るのが困難です。

 

マンションの法定耐用年数は47年で平均寿命(物理的耐用年数)は約70年

耐用年数は国税庁が定めた資産価値のある期間のことで、寿命を表しているわけではありません。耐用年数である47年が経過しても問題なくマンションに住み続けられます。

マンションが寿命をむかえたとき考えられるのは、建て替えや売却。しかし、入居者負担が大きくなるケースが多いため、可能な限りマンションの寿命を延ばすことが重要です。マンションは、日々のメンテナンス次第で寿命を100年以上に延ばせます。

さくら事務所がおこなう「マンション劣化診断ツアー」では、マンション工事に精通したコンサルタントと区分所有者の皆様でマンションの屋上からエントランスまで見てまわり、マンションの劣化状況を確認。どこをいつ、どのように直すべきか、コンサルタントがアドバイスいたしますので、適切な時期に適切な大規模修繕工事を行うことが出来ます。

管理会社が提案する大規模修繕工事ありきの劣化診断ではないため、そもそも工事をするべきか否か、といったところから、ご相談いただくことができます。

また、劣化状況の調査にとどまらず、長期修繕計画の作成や見直しも可能です。無料の簡易チェックサービスもおこなっています。貴重な修繕積立金を有効に使いたいマンションにもお勧めのサービスになっていますので、お気軽にご相談ください。

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下記動画では、マンションの寿命を延ばすための具体的な施策を解説しています。困ったときの相談先についても紹介しているため参考にしてください。

この動画で話していること

 

Q1. 分譲マンションの寿命は何で決まるのですか?

A. コンクリートの耐用年数は理論上100年ですが、実際のマンションの寿命は管理状態や修繕の有無に大きく左右されます。

Q2. マンションを長寿命化させるために最も重要なことは?

A. 長期修繕計画を整備し、定期的に見直すことが最も重要です。計画的な積立金の設定と、現実に即した柔軟な修繕対応が必要です。

Q3. マンションの資産価値を維持するために必要なことは何ですか?

A. 適切な長期修繕計画、安定した積立金、信頼できる管理体制、第三者の活用により、建物の機能と価値を保ち続けることです。

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    日経電子版

    2025年6月30日

    日本経済新聞電子版(6/30公開)にて、さくら事務所・マンション管理コンサルタントの土屋輝之が取材協力した記事が掲載されています。 ※会員限定記事 ●高齢マンション、修繕積立金を狙われる管理組合

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鬼塚 竜司
監修者

鬼塚 竜司

新築工事にてマンションや複合施設の給排水および空調設備の工事管理を経験後、マンション管理会社の修繕工事部門にて、工事企画及び工事管理を14年間経験(管理職含む)。大規模修繕80棟以上、給排水管更生更新30棟以上、窓サッシ改修工事等補助金対応工事10棟以上、機械式駐車場入替、インターホン改修工事など、マンション全般の工事を経験。長期修繕計画の作成500回以上。2021年6月株式会社さくら事務所へ参画。

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