マンションの耐用年数と寿命。マンション購入者であればどちらも理解しておきたいところです。「いつまでこのマンションに住めるい?」「耐用年数がきたらどうなるの?」と気になる疑問も多いでしょう。
この記事では、マンションの「耐用年数」と「寿命」の違いや、実際何年住めるのか、耐用年数が過ぎたらどうなるのかを解説します。寿命を延ばす方法にも触れているので、ぜひ参考にしてください。
目次
「マンションに何年住めるか」は耐用年数でなく寿命
耐用年数と寿命は別物です。耐用年数が過ぎたからといって、マンションに住めなくなるわけはありません。しかし、寿命がくるとマンションとして十分な機能を果たせず、安全な暮らしができなくなるのです。
まずここではマンションの寿命について詳細を解説します。
マンションの平均寿命は約70年
マンションの平均寿命は約70年です。国土交通省が発表した資料によると、2011年に実施された固定資産台帳の滅失データをもとにした調査では、マンションの平均寿命は68年と推測した研究結果もあります。
1981年に耐震基準が見直され、震度6~7程度の大規模地震でも倒壊しない「新耐震基準」が設けられました。しかし、それ以前は震度6以上についての規定がなかったため、寿命でなくても新耐震基準に適合させる建て替え目的で、取り壊されたマンションもあるでしょう。
現在は新耐震基準により倒壊の可能性が低くなっていることもあり、今後は平均寿命の長期化が予想されます。
参照:国土交通省「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」
寿命は最長100年以上もつ可能性もある
新耐震基準以外の面でもマンションの性能は日々向上しています。定期的なメンテナンスを怠らず適切な補修をおこなっていれば、マンションの寿命は100年以上持つ可能性も十分あるでしょう。
とくに、内外装のリフォームや設備の交換は、新築時同等の回復を見込めます。さらに、躯体や基礎も部分的に補修していれば、大幅に平均寿命を超えられるでしょう。
国土交通省の資料によると、既往の研究例では、鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄筋コンクリート造の構造体の耐用年数をコンクリートの中性化が終わった時を持って効用持続年数が尽きるものと考え、マンションの構造部分における耐用年数は120年、外装仕上げ次第で150年程寿命を延ばせるといった知見もあると報告されています。
参照:国土交通省「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」
法定耐用年数はマンションの資産価値がなくなる年数
法定耐用年数とは、税務上の資産価値がある年数のことです。減価償却費を計算する際に用いられます。マンションの築年数の経過とともに資産価値は下がり、耐用年数に到達すると価値はゼロになりますが、住めなくなるわけではありません。
鉄筋コンクリートマンションの法定耐用年数は47年
マンションの法定耐用年数は47年です。法定耐用年数は、国税庁が税金を計算するために設定しており、住宅用建物の場合は構造によって以下の表のとおり定められています。
構造 | 法定耐用年数 |
木造・合成樹脂造 | 22年 |
木造モルタル造 | 20年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 47年 |
れんが造・石造・ブロック造 | 38年 |
なお、給排水・衛生設備、ガス設備、電気設備など設備部分の耐用年数は47年ではなく、15年です。マンション本体と設備部分は、耐用年数に差があるため注意しましょう。
耐用年数に近づいても、早急な対策が必要なわけではありませんが、マンションの将来に向けて管理組合で話合い、見通しを立てておくことが大切です。
減価償却の計算方法
減価償却の計算方法は「購入費用×償却率」です。耐用年数の異なるマンション本体と設備部分は費用を分けて計算します。また、土地代は減価償却できないため「購入費用」に含めません。
「償却率」は耐用年数に応じて設定されています。耐用年数47年(マンション本体)だと償却率は0.022、15年(設備部分)だと0.067です。したがって、新築マンションの減価償却費は「(建物本体の購入費用×0.022)+(設備部分の購入費用×0.067)」で計算できます。
中古マンションの場合は、残耐用年数の償却率が必要です。残耐用年数の計算式は「耐用年数-(築年数×0.8)」。残耐用年数の償却率から、新築マンションと同様に減価償却費を計算しましょう。
マンションの耐用年数が過ぎたらどうする?
マンションの耐用年数が過ぎたら、寿命をむかえる前に今後の方針について考えておきましょう。おもに次の3つのケースが考えられます。
- 建て替える
- そのまま住み続ける
- ディベロッパーへ売却
以下で順に解説します。
ケース①建て替える
マンションの建て替えには「全額区分所有者(居住者)負担」と「一部区分所有者(居住者)負担または居住者負担なし」2つのケースがあります。
基本的に、建て替えにかかる工事費用や工事中の仮住まい費用は、区分所有者(居住者)の負担です。建て替えるには、区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成が必要ですが、費用負担が大きいため賛成を得るのは難しいでしょう。
そこで、所有者負担を抑え建て替えができるケースもあります。多くの場合はディベロッパーが事業協力者としてコンサルティングに入り、建て替え事業をサポートしており、容積率や高さ制限等をクリアしたうえで戸数を増やし、その販売費用を建て替え資金にあてることで負担を軽減しています。
戸数を増やせるだけの土地の広さや集客できる立地の良さなど、クリアすべき条件は多くありますが、検討する価値はあるでしょう。
ケース②そのまま住み続ける
適切に補修をし、居住に不便を感じていなければ、そのまま住み続けてもよいでしょう。とくに住民の高齢化が進むマンションの場合、建て替え費用の負担や新居探しはそう簡単ではありません。
マンションの建て替えは、経済的にも、日常生活を送る上でも、準備や時間がかかるなど、所有者にとって負担が大きいものです。しかし、マンションの老朽化が進むとあちこちから漏水したり、コンクリートが爆裂するなど、さまざまな不具合が生じるのも事実です。
マンションの老朽化は区分所有者だけでなく、地域の住環境にも悪影響を及ぼし、さらなるトラブルの可能性も否定できません。寿命がくる前に対策を急ぎましょう。
ケース③ディベロッパーへ売却
マンション1棟をディベロッパーに売却して得た利益を区分所有者に分配し、引越し費用に充てるケースもあります。
ディベロッパーの目的は、不動産を介して都市開発を進めること。マンションを取り壊したあとその土地に新たな建物を建設します。ディベロッパーへ売却する際は、売却利益からマンション解体費用が差し引かれるため、そこまで利益は多くなりません。
新居を探し引越しするための費用が不十分なケースもあり、区分所有者の賛成を得るのが困難です。
マンションは計画的なメンテナンスや工事で延命できる
マンションの耐用年数は変えられませんが、寿命は計画的にメンテンナンスをしたり工事したりすることで延ばせます。ここでは、マンションを延命するために重要な、長期修繕計画と耐震性に注目していきましょう。
(1)長期修繕計画の作成・見直をおこなう
計画的なメンテナンスや工事をおこなっていくためには、適切な長期修繕計画が不可欠です。
「適切な」というのは、マンションの現状や立地条件を考慮した修繕内容や修繕時期が設定されていること、及び、最新の内容に更新されていることを意味します。形だけの長期修繕計画では使い物にならないのです。
国土交通省でも、長期修繕計画作成のガイドラインが発表されていますが、ガイドラインの内容がすべてのマンションに当てはまるわけではありません。
これまで一度も長期修繕計画を見直していない場合は、一度外部の専門家にしっかり調査してもらい、計画を見直してもらうのがおすすめです。第3者の視点でマンションに見合った修繕計画を提案してもらえるでしょう。
(2)耐震性を向上させる
マンションの平均寿命は約70年ですが、大地震により築70年よりも前に寿命を迎えることもあります。十分な耐震性が無ければ寿命を全うできないのです。
1981年に旧耐震基準から新耐震基準に変わりました。新耐震基準を満たしたマンションであれば、震度6強~7程度までの地震が起きても倒壊の心配はありません。
しかし、旧耐震基準で倒壊しないとされているのは震度5程度。近年多発している震度6以上の地震で、倒壊する危険性が充分あるということです。
旧耐震基準のマンションで耐震改修工事をしても、新耐震基準と同等の効果を得られるわけではありませんが、わずかでも耐震性を向上できれば、マンションの延命につながります。
マンションの耐用年数は47年で平均寿命は約70年
耐用年数は国税庁が定めた資産価値のある期間のことで、寿命を表しているわけではありません。耐用年数である47年が経過しても問題なくマンションに住み続けられます。
マンションが寿命をむかえたとき考えられるのは、建て替えや売却。しかし、入居者負担が大きくなるケースが多いため、可能な限りマンションの寿命を延ばすことが重要です。マンションは、日々のメンテナンス次第で寿命を100年以上に延ばせます。
さくら事務所がおこなう「マンション劣化診断ツアー」では、マンション工事に精通したコンサルタントと区分所有者の皆様でマンションの屋上からエントランスまで見てまわり、マンションの劣化状況を確認。どこをいつ、どのように直すべきか、コンサルタントがアドバイスいたしますので、適切な時期に適切な大規模修繕工事を行うことが出来ます。
管理会社が提案する大規模修繕工事ありきの劣化診断ではないため、そもそも工事をするべきか否か、といったところから、ご相談いただくことができます。
また、劣化状況調査にとどまらず、長期修繕計画の作成や見直しも可能です。無料の簡易チェックサービスもおこなっています。貴重な修繕積立金を有効に使いたいマンションにもお勧めのサービスになっていますので、お気軽にご相談ください。