マンションの計画的な維持修繕のために必要なのが「修繕積立金」。「多くのマンションで修繕積立金が国土交通省のガイドラインの目安を下回っている」というニュースもあり、将来の修繕積立金不足を心配するマンションも多いようです。
もともとマンションの建物・設備を健全に保つためのプラン「長期修繕計画」に基づき、維持修繕に必要な金額として居住者(組合員)から徴収されているのが修繕積立金。
「管理会社の計画に基づいたもので、この通りでいいだろう」と思われる方も多いのですが、新築時には修繕積立金の金額が低く設定され、5年程度の周期で徐々に増加させ、10年程度経過した頃には増額幅を大きくしていくケースがほとんどです。修繕積立金の不足問題などで、当社への長期修繕計画の見直しや検証のご依頼も増えています。
ここでは、修繕積立金の2つの徴収方式「均等積立方式」と「段階増額積立方式」についてマンション管理士が解説します。
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目次
マンションの修繕積立金、その目安は?
国土交通省の出した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」。このガイドラインでは、実際に作成された長期修繕計画を幅広く収集し、その事例の平均値と事例の大部分が収まる幅によって修繕積立金の「目安」を示しています。
これによれば、20階建て未満は1平方メートルあたり月252~335円、20階建て以上は月338円を目安としています。
ただし、注意すべきがこの積立(徴収)方式。
通常のマンションは新築当初は修繕積立金を低く設定し、一定期間経過後から徐々にアップさせる「段階増額積立方式」を採用していますが、ガイドラインでは、長期修繕計画の計画期間全体における修繕積立金の平均額から月々の徴収金額を示しています。
将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、「均等積立方式」が望ましく、「均等積立方式」では長く同額を徴収するため、30年以上の計画期間となる長期修繕計画の修繕積立金累計額について予想がつきやすいのです。
では、「段階増額積立方式」と「均等積立方式」、この2つはどう違うのでしょうか?
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国がすすめる修繕積立金の徴収方式、均等積立方式とは?
修繕積立金の徴収方法は主に、段階的に徴収金額を増額していく「段階増額積立方式」と早い段階で適切な金額まで増額し、その後は長期間にわたり一定金額で徴収する「均等積立方式」の2種類があります。
先程も挙げたように、新築マンション竣工時のものは、基本的に段階増額積立方式で作成されており、まだまだこちらが一般的でしょう。
長期修繕計画で計画された修繕工事が滞りなく実施できる資金が確保されていればどちらでも問題はないのですが、ここには大きな考え方の違いがあります。
その時必要な金額を集める「段階増額積立方式」
マンションは建物やその設備などの維持管理に必要な費用が時間の経過とともに、増加していきます。
古くなればなるほど、さまざまな修繕が必要になり、修繕費用が増大していきます。
段階増額積立方式は、「その時点の所有者が、その時点で必要とされる修繕資金を負担する」という考え方です。将来的に買い替えや、売却などを前提としてる方にとってみれば、違和感のない方法でしょう。
ですが永住することを前提に考えている方にとっては、老後の年金生活を迎える頃に向けてどんどん負担が大きくなるため、不安が残る方法でもあります。
そう遠くない未来、建物と居住者の2つの「老い」が重くのしかかるのは目に見えているのです。
もちろん、それに備えて段階的な増額も計画していますが、ここにも注意点があります。この増額のタイミングを先延ばししないことです。
あらかじめ決まっていた増額のタイミングで「まだ大丈夫そう」「余裕があるから」と増額を先送りにして放置してしまうと、次回の増額の際の値上げ幅が大きくなり、合意形成が難航する可能性が高くなります。
国土交通省の出す「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」でも、この増額の合意形成が、段階増額積立方式の懸念点として挙げられています。
まだまだ少数だが国土交通省も推奨する「均等積立方式」
一方、均等積立方式では、建物や設備の維持管理に生涯必要となる費用を竣工当初からできるだけ均等に按分して負担する、という考え方です。
長期にわたって金額の変更がないので、増額のための合意形成について度々取り組む必要がなく、国土交通省が推奨している徴収方式です。
比較的築年数が浅いうちは、段階増額に比べて割高になりますが、永住を意識している方にとっては将来的に修繕積立金が大幅に増額することがないので、老後の生活設計にもゆとりを持たせることができます。
将来買い替えなどの計画がある方にとっては、当面の負担額が多くなりますので歓迎されない場合もありますが、中古マンションとして売却する場合には、管理組合が保有する修繕積立金の残高に余裕があり、大幅に増額される可能性が少ないという条件は資産価値の向上につながります。
買主さんにとっては安心して購入できることになるため、段階増額積立方式のマンションと比較された場合には高く売却できる可能性があり、結果的に負担額が多くなるとは限らないことも。
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均等積立方式に切り替えるマンションが増えている
では、実際に均等積立方式と段階増額積立方式では、どのような推移になるのでしょうか?
均等積立方式、段階増額積立方式の2パターンでほぼ同額の徴収をシミュレーションしたものが上図になります。
均等積立方式では、築年数の浅いうちに一度、大きく増額しており、長期にわたってその金額が維持されます。最初のうちは段階増額積立に比べ、負担が大きいように見えますが、築年数を経るとともに逆転します。
何れの方法でも、長期修繕計画で計画された修繕工事が滞りなく実施できる資金が確保されていれば問題はありません。やはり、決め手になるのは居住者の「永住意識」になるでしょう。
近年では、長くマンションに住む上で、老後の生活への負担を考え、均等積立に切り替えるマンションも増えているようです。一度、修繕積立金の徴収方法について話し合ってみてはいかがでしょうか?
長期修繕計画の見直しについては、さくら事務所にお気軽にお問合せください。
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