マンションの大規模修繕を進めていくなかで、まず相談窓口をどこにするのか考えなければいけません。管理会社から提案をうけて進めていくケースも多いですが、ほかの相談窓口の選択肢を知っておくだけで、満足度の高い大規模修繕にできます。
大規模修繕にかかる費用は数千万~数億円。多額の費用がかかる分、相談窓口選びから慎重に進めていきましょう。
大規模修繕では工事内容や工事期間中の居住者トラブルなど、これまで直面したことのない問題が生じることも。
決定すべき事項も多いため、トラブルなくマンションにとって最適な選択ができるようにしっかりサポートしてもらえる相談窓口を見極めることが大切です。
本記事では大規模修繕の相談窓口を4つ紹介します。それぞれメリットデメリットや相談窓口の選び方、実際に合ったトラブル事例とともに解説するので、大規模修繕を控えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
大規模修繕を進める際の相談窓口は4つある
大規模修繕を進める際の相談窓口は大きく分けて以下4つあります。
・管理会社
・設計事務所
・コンサルティング会社
・プラットフォーム
共用部分のちょっとした傷や不具合など、日々の小修繕を対応してもらっていることから、大規模修繕についても管理会社とともに進めていくケースが多く見受けられます。
管理会社以外を希望する場合は、設計事務所やコンサルティング会社に相談するのが一般的です。
設計事務所は工事の仕様から施工会社選びのサポート、工事完了後のチェックまで一貫して実施してもらえます。
コンサルティング会社は工事の進め方や施工会社選びについてマンションに合った方法を柔軟に提案してもらえるのが特徴です。
また近年では、さまざまな会社が加盟していて見積もりを取得できるプラットフォームが広まりつつあります。管理組合が自ら率先して施工会社の選択肢を増やすことが可能です。
大規模修繕4つの相談窓口のメリットとデメリット
大規模修繕の4つの相談窓口で考えられるメリットとデメリットを解説します。
・管理会社に相談するケース
・設計事務所に相談するケース
・コンサルティング会社に相談するケース
・プラットフォームで相談するケース
順に詳しくみていきましょう。
(1)管理会社に相談するケース
管理会社に相談するメリットとデメリットから解説します。
メリット
管理会社に相談するメリットは、管理会社がマンションをよく理解していることとやり取りしやすいことです。
管理会社には、これまでマンションで実施した修繕やトラブル解決法の履歴があり大規模修繕に活かせます。
日常的に管理しているため、マンションのウィークポイントや劣化状況、居住者からの不具合に関する指摘事項など、細かなところまで大規模修繕の内容に組み込めることも、管理会社の特権です。
管理会社との関係性にもよりますが、区分所有者の合意形成もとりやすいでしょう。
デメリット
管理会社に相談するデメリットはコストが上がりやすいことです。
管理会社の場合、基本的に責任施工方式が採用されます。管理会社が元受けとなり施工会社に工事を発注することで、中間マージンが発生しコストが高くなるのです。
さらに管理会社の提案に過剰な工事項目が含まれていることも。責任施工方式でなく単に工事会社を紹介してもらう形でも、裏で工事会社から管理会社への紹介料が渡りコストが増大するケースも少なくありません。
管理会社も営利企業です。悪意があるわけではなく、ビジネス上多くの工事をしてもらえるほうがよいですし、工事するなら自分たちの利益を考えなければいけません。
予防保全の見地からも、工事を削減して問題が起きることを避けるために、工事項目の削減には消極的になってしまうのです。
多少コストはかかりますが、信頼関係が築けているなどコスト以上のメリットがあると判断できるのであれば、管理会社に相談するのがよいでしょう。
(2)設計事務所に相談するケース
設計事務所に相談するメリットとデメリットを解説します。
メリット
設計事務所に相談するメリットは、手間をかけずにコスト比較できる点です。
設計事務所の設計監理方式の場合、設計事務所が工事の仕様を作成し仕様書に基づいた見積りが各施工会社からあがってきます。工事の仕様が決まっているため、施工会社から提案できるのは金額だけで、単純にコストで比較することになります。
コスト比較しやすいことで総会時にも施工会社選定の根拠を示しやすく理解を得やすくなります。
工事の経過観察や工事完了点検まで設計事務所が監理するため、管理組合の負担が少なく済むのもポイントです。
デメリット
設計事務所に相談する際のデメリットは設計事務所によって力量に差がある点です。
設計監理方式は設計事務所が工事の管理者になるため、経過観察や完了点検などしっかりチェックしてもらえれば工事の質が上がります。
しかし、チェックがあまいと工事の質は最低限にとどまってしまうでしょう。
また、信頼できる設計事務所を選ばないと、バックマージンや談合といったリスクが高まります。
管理組合と安い設計費用で契約しておき、施工会社から紹介料やバックマージンを受け取り相場より高額な工事費用を請求する、といった悪質な会社も存在するのです。
設計事務所選びに自信があり、手間をかけずにコスト比較したい管理組合は設計会社に相談するのがよいでしょう。
(3)コンサルティング会社に相談するケース
コンサルティング会社に相談するメリットとデメリットをみていきましょう。
メリット
コンサルティング会社に相談するメリットは、納得感の高い大規模修繕を実現できることと、合意形成に長けていることです。
コンサルティング会社は、設計監理方式や責任施工方式といった形にとらわれずより効果的な進め方を提案してもらえます。
設計事務所は建築や設備といった知識や技術がありますが、コンサルティング会社は、建築に関する知識や技術に加え区分所有者間の合意形成にも長けているのが強みです。
コンサルティング会社は普段から管理組合の運営をコンサルティングしています。区分所有者にわかりやすく伝え理解を得るスキルを持ち合わせているのです。
デメリット
コンサルティング会社に相談するデメリットは、手間がかかるケースが多いことです。
管理組合ごとに柔軟なサービスを提供するために、時間をかけてヒヤリングやディスカッションする必要があります。できるだけプロに任せて手間をかけずに大規模修繕をおこないたい管理組合には向いていません。
また相談するコンサルティング会社や担当者によっては課題を解決できなかったり問題をより複雑化してしまったりすることも。
コンサルティングは、管理組合の課題や悩みを聞きだし解決策を提示し実行していくのが仕事です。知識・経験不足などで提案力が乏しいコンサルティング会社に相談すると合意形成を逆に難しくします。
多少手間をかけてでも納得感の高い大規模修繕をおこないたい場合は、信頼できるコンサルティング会社に相談しましょう。
(4)プラットフォームで相談するケース
最後にプラットフォームで相談するメリットとデメリットを紹介します。
プラットフォームとは、インターネット上で、マンションと複数の施工会社をマッチングする相談の方式です。
メリット
プラットフォームで相談するメリットは、管理会社が主体となり管理会社や竣工時の施工会社とは関係のない新たな会社を見つけられることです。
身近な会社で納得できる提案がなかったり、いまいち信用できる会社がなかったりする場合に、管理組合主導で新規開拓でき選択肢を広げられます。
インターネット上で気軽に複数の会社と繋がれる手軽さも、プラットフォームで相談するメリットといえるでしょう。
デメリット
プラットフォームで相談するデメリットは、見積比較が難しいことです。プラットフォームで相談した場合、色々な会社が多様な見積もりを提示してきます。
工事の仕様書に基づいた見積もりでないため、表面上の見積額でコスト的に優れているものや工事内容の有効性の判断が非常に難しいのです。
比較表を作成したり、専門家を派遣してサポートするプラットフォームもありますが、対面するまでどんな専門家なのかわからない談合やバックマージンの課題も残ります。
インターネット上でのマッチングサービスだから、費用は低額に抑えられるのかもしれませんが、プラットフォームを運営する会社のキャッシュポイントはどこなのかという情報は、確認しておいた方が良いでしょう。
【重要】大規模修繕の相談窓口の選び方
大規模修繕の相談窓口に悩んでいる方は、以下3つのポイントを意識して検討しましょう。
・コスト重視のときこそ提案内容と効果で選ぶ
・合意形成の取りやすさも考える
・会社の実績や担当者の人柄もチェックする
順に解説します。
コスト重視のときこそ提案内容と効果で選ぶ
コンサルティング費用を懸念される管理組合が多いですが、コンサルティングにより工事内容を適正化して工事費用を削減できれば、コンサルティング費用は工事費用のマイナス分で吸収できます。
たとえばコンサルティング費用が500万円の場合、1億円の工事費用を1割下げられれば1,000万円の工事代金を削減できるのです。
数千万から1億円単位のコストがかかる大規模修繕において数百万のコンサルティング費用は決して高額ではありません。
相談窓口にかかる費用よりも費用を払って適切な工事をし、適切な効果を得ることを重要視して、相談窓口を決めることでトータルコストをおさえられます。
合意形成の取りやすさも考える
相談先がどんなに素晴らしい技術があっても、管理組合で合意形成がとれなければ工事はできません。大規模修繕のような専門的な知識が必要な議題の場合、修繕委員会、理事会だけの力で合意形成をとるのは難しいでしょう。
大規模修繕の相談窓口は、難しい内容を知識がない区分所有所に分かりやすく伝えて理解を得るスキルに長けていることも重要です。
建築や設備などの知識が豊富だからといって、管理組合運営についての知識がない区分所有者にうまく説明できるとは限りません。
マンションの大規模修繕の知識や技術に加え、区分所有者とのやりとりや合意形成に長けている相談窓口を選びましょう。
会社の実績や担当者の人柄もチェックする
見積り依頼などのやりとりのなかで、きめ細やかにフォローしてくれる、迅速に対応してもらえるなど、担当者の人柄をチェックしましょう。
自分たちのマンションと同規模の大規模修繕の実績が多い会社だと、起こり得るトラブルを予測して対策してもらえたり、手際よく工事を進めてもらえたりします。ホームページに実績が掲載されている会社もあるので確認してみてください。
たとえ担当者に専門分野外の知識が求められることがあっても、会社内に対応できる他の人がいればアドバイスをもらうなどして問題なく進められるため、会社全体の実績は大切です。
コンサルティング会社の場合は、提供しているサービスに理念があるか、課題を伝えてどのような解決策を提供しようと考えているか、初期段階でヒヤリングして見極めましょう。
質の悪い大規模修繕によるトラブル事例
設計事務所や管理会社に勧められた発注先などに問題があり、工事の質が落ちたことでトラブルになった事例を紹介します。
大規模修繕後10年も経過しないうちに漏水が生じました。10年ほど経つと大規模修繕における施工会社の保証期間は終了します。
防水など保証があるところは補修してもらえる可能性もありますが、シーリングの場合10年の保証期間が設けられていることはあまりありません。
外壁のひび割れから生じる漏水はマンションのアフター期間が終わっていると保証対象外です。結局、つぎの大規模修繕工事のタイミングを早めないといけない事態になってしまうでしょう。
大規模修繕の相談窓口をどこにするかによって工事の質に差がでます。貴重な修繕積立金を無駄にしないためにも、相談窓口は慎重に見極めましょう。
コンサルティング会社は第三者機関として管理全般の相談もできる
コンサルティング会社にも、大規模修繕以外に、日常的な管理・管理会社とのトラブル・長期修繕計画や修繕積立金に関するお悩みなど、マンション管理全般を相談でき解決に導く事ができる会社があります。
また、一般社団法人マンション管理業協会や公益財団法人マンション管理センターなどでも、マンション管理やトラブルに関する相談が可能です。
数十分程度と時間制限はありますが無料で相談できるため、一般的なアドバイスが欲しいときに活用してみるのもよいでしょう。
しかし、しっかり問題と向き合い解決までサポートしてほしい場合は、コンサルティング会社への相談がおすすめです。
下記記事ではマンショントラブルの事例を紹介していますので参考にしてください。
分譲マンションのトラブル・SOSはこちらに!マンション管理なんでも相談所
大規模修繕の相談窓口に悩んだらまずは行動を!
大規模修繕の相談窓口は、おもに管理会社・設計事務所・コンサルティング会社・プラットフォームの4つです。
大規模修繕は多額の費用がかかるからこそ、コストで相談窓口を選ぶことが多いですが、結果的に工事内容を適正化し工事費用を削減できれば、トータルコストをおさえられます。
大規模修繕で目指すのは、適切な時期に適切な工事を行うことです。
「無償だから」「安いから」と単純に目先の相談窓口にかかるコストを比較するのではなく、安さの理由はどこにあるのか?キャッシュポイントを確認することはもちろん、合意形成はとれるのか、工事の質は問題ないか、バックマージンや談合といったトラブルに巻き込まれないかなど、先を見据えて相談窓口を決定しましょう。
さくら事務所では、コンサルティング費用をいただいて、プロポーザル方式で施工会社を選びます。
プロポーザル方式では、複数の施工会社がそれぞれで管理組合の要望を組み込んだ工事内容を検討し管理組合に提案する方法です。
大規模修繕に精通したプロのコンサルタントが管理組合をサポートしながら、各会社の提案内容と工事費用を比較検討し一社に決定します。
各会社が施策を練って競い合うため、施工会社の強みを活かした豊かな提案を受けられ、適正価格で満足度の高い工事を発注しやすいのがメリットです。
さくら事務所では、「大規模修繕工事をどこに相談すべきか?」そもそも相談窓口に悩んでいるといったご相談も受け付けています。管理組合の状況を踏まえてどこに相談すべきかアドバイスさせていただきますので、お気軽にご相談ください。
また以下の動画でも詳しく解説をしているので、気になる方は是非ご覧ください。