大規模修繕工事でバルコニー(ベランダ)の防水工事も行う場合、スムーズに着工するためには居住者の協力が不可欠です。
そこで本記事では、大規模修繕前に必要な事前準備と注意点について解説していきます!
目次
- 1 大規模修繕に向けたバルコニーの準備
- 2 バルコニーの私物や網戸の撤去はいつまでにおこなう?
- 3 大規模修繕でバルコニーの使用が制限される期間
- 4 バルコニーの大規模修繕の注意点
- 5 バルコニーにある荷物の移動に困ったときの対処法
- 6 大規模修繕でバルコニーが関係するおもな工事内容
- 7 大規模修繕に伴うバルコニーの事前アンケートはここをチェック!
- 8 チェックポイント① 柱、梁、床、天井にひび割れがないか?
- 9 チェックポイント② 排水溝に傷、膨れがないか?
- 10 チェックポイント③ 排水溝、床の勾配が確保されているか?
- 11 チェックポイント④ 手摺、隔て板はしっかり固定されているか?
- 12 チェックポイント⑤ シーリング材に剥がれ、割れがないか?
- 13 チェックポイント⑥ オーバーフロー管は詰まっていないか?
- 14 チェックポイント⑦ 塗装面に塗りムラ、浮きがないか?
- 15 バルコニーを片付けて大規模修繕に備えよう!
大規模修繕に向けたバルコニーの準備
大規模修繕が近づくと、施工会社から「バルコニーを片付けてください」という依頼が来ます。
約12年に1度の工事ですから、その間にバルコニーにはいろんなものが置かれていることでしょう。
しかし、それらは着工までに全て以下のように移動・処分しなければいけません。
バルコニーの荷物や植物を撤去する
バルコニーに置かれている荷物は、基本的に全て室内へ片付けておきましょう。
植物や置物はもちろん、タイルや人工芝、自分で設置した物干しかけも同様です。BSCSアンテナも撤去しなければいけない場合があるので、バルコニーにあるなら施工会社に確認してください。
ただし、エアコンの室外機はそのままで大丈夫ですよ!
また、マンションによっては、共用部に一時保管場所を設けて荷物を置けることがあります。
室内置きができない場合や一時保管場所がないという場合は、トランクルームを借りたり、友人や知人に預かってもらうことも検討しましょう。
バルコニーの網戸を取り外し保管する
バルコニーの工事ではサッシ廻りの修繕も行います。その時、網戸が付いたままだと作業員が作業をしづらく、さらには破損の懸念も。網戸は事前に取り外しておきましょう。
基本的には、各自で取り外して室内で保管するのが一般的で保管用の袋が支給されることが多いです。
網戸の取り外し方ですが、多くのタイプは下の手順で外すことができます。
・ドライバーを使って「外れ止め」を外す
・「脱輪防止機構」を解除する
・網戸を上に持ち上げて、下部から室外側へ外す
・網戸上部をレールから外す
「外れ止め」の位置と「脱輪防止機構」の有無はメーカーによって違いがありますから、事前に確認してくださいね!
【管理組合】荷物の仮置き場やごみコンテナの設置を検討する
マンションによっては、鉢植えやプランターを共用部に一時保管できる場合も。管理組合の承認が必要なので、大規模修繕が始まる前に話し合っておくのがおすすめです!
また、バルコニー内の不要物について、施工会社によっては「ごみコンテナ」を設けて一定期間入れておけることもあります。居住者は、指定の期日までに片付けや処分を行うことができますよ。
さらに、各自での取り外しや移動が難しい大型な置物がある場合には、有償で施工会社が専門業者の紹介や手配をしてくれますから相談してみてください。
バルコニーの私物や網戸の撤去はいつまでにおこなう?
バルコニーの片付けや網戸の取り外しは、足場の組立完了時までに行うのが目安です。ただし、物件の形状によって差が出るので掲示板などの通達に従ってください。
さらに、大規模修繕の計画自体はかなり前から総会で議題に上がりますから実際には通達よりも早く工事時期が把握できるはずです。居住者間での情報共有によって、余裕を持った片付けを行ってくださいね!
大規模修繕でバルコニーの使用が制限される期間
工事期間中、タイミングによってはバルコニーに入れず洗濯物干しや換気ができない日もあります。
一般的には、バルコニーに入れない期間は約1~2週間、荷物を戻せるのは工事終了から約3ヵ月後というケースが多いようです。
工事終了後も数日間入れない場合もあるので、工事のスケジュールやバルコニーの使用制限はあらかじめしっかり確認してください。管理組合側も、時期の周知徹底を心掛けましょう。
バルコニーの大規模修繕の注意点
事前準備や制限期間について理解いただいた上で、さらに大規模修繕時に知っておくべきバルコニー工事の注意点を2つご説明します!
バルコニーの大規模修繕は拒否できない
マンションのバルコニーは専用使用権(特定の区分所有者のみが使用できる権利)のある共有部です。そのため「自分のバルコニーだけは工事しないでください」という要求はできません。
大規模修繕の工事対象にバルコニーが決まった場合は、基本的には全戸で工事が行われます。
荷物の撤去や処分は自費でおこなう
各家庭のバルコニーを片付けるにあたって、荷物の撤去や処分は全て自費で行わなければいけません。
本来バルコニーは、避難経路としての役割も担っているため管理規約などによって置けるものが決まっています。移動できないほど大きなものや処分に困るようなものは置かないように普段から気をつけて生活しましょう。
バルコニーにある荷物の移動に困ったときの対処法
どうしても荷物の片付けが自力で行えない場合には、以下の2つの方法を実践してみてください!
荷物の保管場所がないとき
替えのタイヤなど室内で保管することが難しいものがバルコニーにある場合には、トランクルームを契約するというのも1つの手です。
また、定期的な水やりが必要な植物は、親族や友人の家で一時的に預かってもらえると安心ですね。
その他、一時保管場所が見つからないものについては早めに施工会社へ相談しましょう。ものによっては足場に固定してくれたり、適切に預かってくれる専門業者を紹介してくれることがあります。
自力で荷物を移動できないとき
自力で荷物を移動することができない場合も、施工会社にすぐ連絡を!
専門業者を紹介してくれたりオプション料金で移動を請け負ってくれるなど、何かしらの対処を行ってくれるはずです。
特に、独自で床敷きタイルなどを敷いた場合には「タイルが上手く剥がせない」「重くて持ち運べない」という困りごとが多いです。そんな時でも、慌てずに施工会社へ相談してみてください。
大規模修繕でバルコニーが関係するおもな工事内容
「大規模修繕の際、バルコニーではどんな工事が行われるの?」と疑問に思ったことはありませんか?
事前に知っておくと適切なアフターケアやその後のメンテナンスに生かすことができますよ。
そこで、以下4つの工事内容について具体的に何を行うのか説明していきます。
外壁の下地やタイルの補修
外壁のコンクリートやタイルのひび割れ・浮きなどを補修するもので、次に行う塗装工事や防水工事の仕上がりに影響する大事な工事です。
ただし、コンクリートを削るためホコリやチリ、騒音がどうしても発生します。また、工事期間中はバルコニーに洗濯物を干すことができないので注意しましょう。
シーリング工事
シーリングとはゴム状の防水材のこと。
バルコニーでは、サッシ廻りや建具廻り(窓の開口部)で使われています。それを打ち替えてサッシの気密性・水密性を保ち漏水を防止してくれるのがシーリング工事です。
この工事は、網戸を付けたままではスムーズに行えません。だから事前に網戸を取り外す必要があるのです。
高圧洗浄
外壁の下地やタイル修繕・シーリング工事が終わったら、バルコニーの床や天井を高圧洗浄します。
しっかり汚れを落とすことで、塗装剤や防水剤の密着を高めることができるのです。
ただし、高圧洗浄中はバルコニーに洗濯物を干すことはできませんから気をつけましょう!
外壁塗装
室内側の外壁にひび割れがあった場合には、樹脂で固めた塗料を塗り直す工事が必要になることも。
塗料の臭いが心配かもしれませんが、近年では弱溶剤系塗料や水性塗料など比較的低刺激な臭いの塗料が使われることも多いです。
それでも、臭いがきつく気分が悪くなってしまった場合には、すぐに病院を受診すると共に管理組合や施工業者に連絡し対策してもらいましょう。
防水工事
床面の防水工事を行うことで、バルコニー内における雨の浸透を防ぐことができます。
工事の方法は以下の3種類があり、それぞれに耐用年数や費用が違います。
・ウレタン防水…液体状のウレタン樹脂を用いる工法。どんな下地でも対応でき費用も比較的安価だが、均一に仕上げるのが難しくムラが出ることも。耐用年数は10~14年。費用は3,000~7,500円/㎡
・FRP防水…液状の不飽和ポリエステル樹脂に硬化剤を加え、さらにガラス繊維などの補強材と組み合わせる工法。硬化速度が早く、時短工事が可能。一方で費用は高めの傾向に。耐用年数は10~12年。費用は5,000~7,500円/㎡
・シート防水…床に直接シートを敷く工法。素材はゴムと塩化ビニールがあるが、近年は紫外線に強く耐摩擦性に優れた塩化ビニールが主流。耐用年数は10~15年。費用は3,500~7,500円/㎡
ただしトップコートは5年ごとに塗り直す必要があるなど、定期的なメンテナンスは不可欠です。
大規模修繕に伴うバルコニーの事前アンケートはここをチェック!
大規模修繕の前には、居住者に向けてアンケートが実施されることがあります。
そんな時に「バルコニーのどこをチェックすればいいの?」と疑問に思ったら、以下を参考にしてみてください!
チェックポイント① 柱、梁、床、天井にひび割れがないか?
ひび割れには、コンクリートやモルタルの中に含まれる水分が蒸発して体積が収縮しひび割れとして現れるものと、地震や地盤沈下などの外力によるものとに大別されます。
専門家に依頼すれば、ひび割れの幅、位置、向き、形状などから原因を推測し、直ちに補修が必要な場合、補修を必要とせず経過を観察する場合のどちらかを判断し、適切な処置をとることができます。
チェックポイント② 排水溝に傷、膨れがないか?
排水溝には、しばしばウレタン塗膜防水という防水材が塗られています。ところが防水材がまくれていたり膨れていたりすると、漏水の原因になります。
チェックポイント③ 排水溝、床の勾配が確保されているか?
排水溝や床に水が溜まった、または湿った状態が続くと防水の劣化が早くなる恐れがあります。
床は排水溝に向かって勾配が取れているか、排水溝は排水口に向かって勾配が取れているかを確認します。排水溝の勾配は緩やかになっているので、定期的な掃除を推奨します。
チェックポイント④ 手摺、隔て板はしっかり固定されているか?
手摺や隔て板を固定しているナットやボルトが緩んでないか、ガタツキ、異音はしないかを確認します。
チェックポイント⑤ シーリング材に剥がれ、割れがないか?
シーリング材とは、防水性や気密性を保持するためにサッシ廻りやコンクリートの継ぎ目に充填するものです。
シーリング材に剥がれ、割れがあると損傷した部分から漏水する恐れがあります。
チェックポイント⑥ オーバーフロー管は詰まっていないか?
オーバーフロー管とは、台風や集中豪雨などによって排水口が詰まり雨水を排水できなくなってしまった場合に、室内への浸入を防ぐため一時的に排水するφ50mmくらいの排水管です。万一、排水口から水があふれ、オーバーフロー管が詰まっていた場合には、室内が浸水してしまう恐れがありますので、注意が必要となります。
チェックポイント⑦ 塗装面に塗りムラ、浮きがないか?
塗装面の塗りムラの原因としては、塗装前の下地調整、あるいは、下塗り、中塗り、上塗りの施工段階の乾燥状態、塗り厚の不均一などが考えられます。
塗装の不具合は美観を損ねるだけでなく、建物を紫外線や風雨から保護する役割が果たせず、建物の老朽化を早める事につながります。
バルコニーを片付けて大規模修繕に備えよう!
バルコニーの維持管理は「専有使用権を有する者(各部屋の居住者)がその責任と負担において行わなければならない」とされていますから、普段からしっかり清掃を行うことが大切です。また、大規模修繕時に余計な費用を掛けないためにも、日常的に大きなものを置くことは極力避けましょう。
さくら事務所では、大規模修繕に関わる管理組合をサポートするために施工業者選定のお手伝いを行っています!
大規模修繕について「費用の妥当性は?」「どの施工会社なら大丈夫?」などの疑問や、そもそも大規模修繕を「いつ行うべきか?」といったタイミングについてもアドバイスや提案をいたします。
工事を受注する立場の管理会社や施工会社と違い、利害関係のない客観的なアドバイスを受けたいマンションの管理組合の皆様、ぜひお気軽に無料相談してください。
外部修繕委員(中大規模マンション向け大規模修繕コンサルティング)
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