修繕積立一時金のリスクとは?大規模修繕工事の資金不足の対処法を解説

  • Update: 2024-04-29
修繕積立一時金のリスクとは?大規模修繕工事の資金不足の対処法を解説

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

マンションの大規模修繕工事で問題視されている、資金不足。資金不足が深刻化するとマンションを修繕できなくなり、健全なマンション管理ができません。そこで、修繕積立一時金の集金を取り決めるマンションもあるでしょう。

しかし、修繕積立一時金にはリスクもあります。確実に大規模修繕工事の資金を確保できるわけではないのです。

この記事では、修繕積立一時金のリスクとその回避方法、修繕積立一時金以外の資金不足への対処法を解説します。リスクを正しく理解し、広い視野で資金不足を解決しましょう。

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修繕積立一時金とは?いついくら払う?

修繕積立一時金とは、修繕積立金だけでは修繕費用が不足しているときに「臨時で集金する修繕費」のことです。修繕に必要な金額を大規模修繕のタイミングや数年単位で定期的に集金します。

修繕積立金の金額は管理組合の財政状況によって大きく異なります。数万円で済むこともあれば、100万円以上になることも。また、負担する時期や回数もマンションによって変わります。

特に中古マンションの購入を検討している場合は、修繕積立一時金の有無をあらかじめチェックしておくことが重要です。

毎月の修繕積立金で修繕費を賄えるのであれば、修繕積立一時金は必要ありません。しかし、資材の高騰や予想外の修繕による出費などにより、修繕費用が足りていないマンションが多いのも事実です。

なかには、新築時の売却促進として、設定された低額の修繕積立金が見直されず、据え置きになっていることも。修繕積立一時金は、さまざまな理由により不足している修繕費用を確保するために必要なのです。

修繕積立金が不足する理由は下記記事で解説していますので参考にしてください。

新築分譲時のマンション長期修繕計画、なぜ現実離れしたものになってしまうのか?

修繕積立一時金と修繕積立基金の違い

修繕積立一時金と似た名称で「修繕積立基金」というものがあります。

一時金は大規模修繕のタイミングで集金されるのに対し、基金は新築マンションの購入時に請求される費用です。

新築マンション購入時にはまだ修繕工事に必要な資金が積み立てられていないケースがほとんどなので、あらかじめ修繕積立基金を徴収しておくことで直近の修繕工事に備えたり、その後の修繕積立金を節約できます。

修繕積立基金の特徴や注意点について、もっと詳しく知りたい場合は下記記事をご覧ください。

修繕積立基金とは?管理費や修繕積立金との違い・注意点を解説

大規模修繕工事における修繕積立一時金のリスク

修繕積立一時金があれば予定通りに大規模修繕工事が可能です。しかし、修繕積立一時金には「全住民から集金しきれない」「工事費用を支払えなくなる」2つのリスクがあります。これらのリスクを理解したうえで、修繕積立一時金を検討しましょう。

全住民から集金しきれないリスク

修繕積立一時金において考えるべきリスクは、全住民から集金しきれない可能性があること。国土交通省のマンション総合調査結果によると「管理費・修繕積立金を3ヵ月以上滞納している住戸があるマンションは24.8%」にも及びます。

毎月計画的に支払う管理費と修繕積立金でさえ滞納していることから、より高額で予定外の修繕積立一時金を払えない住民がいるのは容易に想像できるでしょう。

修繕積立位一時金は住民にとって思わぬ出費です。修繕積立金を従来通りに支払いながら更に出費が増えるため、すべてを集金するのは難しいでしょう。

参照:国土交通省「平成30年度マンション総合調査」

工事費用を支払えなくなるリスク

修繕積立一時金の予定額を集められなければ、工事費用を支払えなくなるリスクがあります。予算が無ければ予定通りの工事はできません。払える範囲内で工事するとなると工事内容の精査や再見積もりなど、修繕委員の方々の負担も増えるでしょう。

費用を抑えることを第一に考えた工事内容の精査はやるべき工事を先送りしたにすぎず、修繕費用不足が解決したわけではありません。マンションの安全性を保つ以上、どこかで帳尻を合わせる必要があるため、修繕費用不足の課題は残ります。

修繕積立一時金のリスクへを回避する方法

修繕積立一時金のリスクに回避する方法として、修繕積立一時金を徴収しない、または減額することが有効です。具体的には次の3つの方法が考えられます。

  • 集め方を均等積立方式に見直す
  • 管理費の一部を修繕積立金に回す
  • 長期修繕計画をこまめに見直す

以下で詳細を解説します。

集め方を均等積立方式に見直す

修繕積立金の集金方法が段階増額積立方式の場合、均等積立方式に見直しましょう。

段階増額積立方式とは、積立金額を徐々に増額する集金方法です。増額時に住民の合意形成がとれず苦労したり増額するほどに未収金が増えたりと、計画通りに修繕積立金を確保しにくい問題点があります。

一方、均等積立方式は、長期にわたり積立金額は変わりません。新築時から積立金額が、段階増額積立方式よりも高額になりますが、住民は資金計画をたてやすく、滞納防止に繋がることから国土交通省でも推奨しています。段階増額積み立て方式に比べ、増額する回数が少ないため、総会を開く負担も減らせます。
計画的に修繕積立金を集金できる均等積立方式は、修繕積立一時金のリスクに対処するための理想的な方式といえるでしょう。

管理費の一部を修繕積立金に回す

リスク対処法として、管理費の一部を修繕積立金に回す方法もあります。場合によっては百万単位で修繕積立金を確保できるかもしれません。

管理費の一部を修繕積立金に回すためには、管理費のコスト削減が不可欠です。マンション管理費の大部分は、管理会社へ支払う委託費用。新築当時から管理会社や業務内容を変更していないマンションも多く、管理委託契約について再考されることなく契約が継続されています。

現在委託している管理業務の内容を見直したり、場合によっては複数社に見積もりを依頼して管理会社を変更することで、委託費用を削減でき修繕積立一時金の集金を避けられるかもしれません。

長期修繕計画をこまめに見直す

長期修繕計画をこまめに見直すことも修繕積立一時金のリスク回避につながります。少なくとも5年ごとには、長期修繕計画を見直しましょう。

一般的に長期修繕計画は30年を目安に作成されますが、建材や人件費の高騰、劣化の進行状況などにより、予想以上に修繕費用がかかっていることも少なくありません。

長期修繕計画の見直しを怠っていると、工事内容や費用に徐々に計画とのズレが生じ、気が付いたときには、多額の修繕積立一時金が必要になっています。

修繕積立金の増額幅や修繕積立一時金の金額を最小限に抑えるためにも、長期修繕計画はこまめに見直し、軌道修正していきましょう。

大規模修繕工事の資金不足の対処法(修繕積立一時金以外)

すでに大規模修繕工事が差し迫っていて資金不足の問題に直面している場合、修繕積立一時金以外に以下の対処法があります。

・金融機関から借り入れる

・大規模修繕工事の内容を見直す

・大規模修繕工事を延期する

順に詳しくみていきましょう。

金融機関から借り入れる

借入はあまりイメージがよくないかもしれませんが、費用が足りず劣化状況に応じた適切な工事ができないよりは借入するほうが賢明です。

また、居住者にとって、工事までの短期間で予期せぬ高額な修繕積立一時金を用意するのは、簡単なことではありません。金融機関から借り入れると利子はつきますが、借入後に余裕を持った期間で返済していけるため、居住者の金銭的負担を緩和しながらも確実に工事費用を用意できます。

国土交通省のマンション総合調査(平成30年度)によると、大規模な計画修繕工事実施時の工事費調達方法については83.3%が修繕積立金、10.1%が借入金、2%が一時徴収金となっています。

統計的にも、大規模修繕時に修繕積立金が不足している場合、一時金よりも借入を選んでいる管理組合が多いようです。

参照:国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」

大規模修繕工事の内容を見直す

工事資金が足りないときは、大規模修繕工事の内容を見直して工事費用を削減するのもひとつの手です。

最低限の工事項目や範囲にとどめたり、工事内容や方法をより簡易的なものに変更したりすることで、コストを削減できます。

工事内容を見直すときに大切なのが、マンションの現状を正しく調査し将来を見据えたうえで工事の優先順位を決めること。

建物診断は管理会社や分譲会社に依頼することもできますが、管理組合と利害関係のないマンション管理士などの外部専門家に依頼するのがおすすめです。

大規模修繕工事を延期する

資金不足が深刻な場合は、大規模修繕工事自体を延期する方法もあります。

ただし、延期している間に劣化状況が悪化しより高額な工事費用がかかるケースもあるため、むやみに工事を延期するのは危険です。建物診断の結果を踏まえて慎重に検討しましょう。

工事の延期は問題の先送りにすぎず、資金不足の根本的な解決にはなりません。しかし、延期期間に修繕積立金の徴収額を増やしたり長期修繕計画を見直したりと対策できます。

工事を延期したときは、時間を有効に使い大規模修繕工事に備えましょう。

修繕積立一時金のリスクを理解して大規模修繕工事の資金不足に備えよう

修繕費用不足の救世主にも感じられる修繕積立一時金ですが、全住民から集金しきれず、工事費用が支払えなくなるリスクがあります。

修繕積立一時金の前に、修繕積立金の集金方法や長期修繕計画の見直し、管理費の一部を修繕費用に回せないか検討しましょう。計画性をもって早めに対処することが大切です。

さくら事務所では、公正な第三者として長期修繕計画の作成・見直しサービスをご提供しています。

現在、多くのマンションで課題となっているされている修繕積立金の不足は、長期修繕計画を作成・見直すことで解決できるでしょう。一級建築士、マンション管理士など経験豊富な専門家が、第三者の客観的な立場から適切な工事項目や周期、費用を設定し、妥当な修繕積立金と実現するための資金計画をアドバイスさせていただきます。

分譲時から一度も計画を見直していない、修繕積立金の値上げの妥当性を知りたい、という方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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[建物劣化診断]マンション大規模修繕工事に向けた第三者調査

佐藤 健斗
監修者

佐藤 健斗

新卒で電鉄系の資産管理会社にて、鉄道会社の保有資産(駅舎・高架下など)の活用や店舗開発を経験。
その後、不動産のコンサルティング会社にて、主に地主様・家主様向けに売買・賃貸管理・有効活用など多角的なコンサルティングを行う。

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株式会社さくら事務所

ホームインスペクション(住宅診断)をはじめとする個人向け不動産コンサルティングや管理組合向けコンサルティングを行っている。400を超えるマンション管理組合のコンサルティング実績をもち、大規模修繕工事や長期修繕計画の見直し、瑕疵トラブルなどの管理組合サポートサービスを提供している。

【監修】さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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