マンション購入者でもよく理解していない方が多い「修繕積立基金」。決して安い金額とはいえないため、しっかり用途や相場を確認しておきたいところです。本記事では、混同されやすい「管理費」や「修繕積立金」との違いを交えて、修繕積立基金の概要を解説します。それぞれの相場金額についても紹介しますので、マンション選びや購入後の資金計画にもお役立てください。
目次
修繕積立基金とは?
修繕積立基金とは、12〜18年のスパンで計画されている大規模修繕工事に備える費用です。竣工したばかりのマンションでは、修繕積立金の積立額が少ないため、不測の事態が生じた場合に備えて、修繕積立基金を徴収しています。したがって、修繕積立基金は、中古マンションの購入時には徴収されません。
相場は20〜80万円ほど。マンションのグレードや占有面積によって金額はさまざまです。修繕積立基金があることで初期費用はかさみますが、修繕積立金の負担軽減や予定外の修繕にも対応できる安心感を得られます。
修繕積立基金は諸経費として支払っている
新築マンション購入時に支払っている修繕積立基金ですが、支払い時の項目としては、修繕積立基金ではなく「諸経費」や「諸費用」の項目に含まれているのが一般的です。
新築マンションを購入したときに、いくら修繕積立基金を払っているのかあいまいな方は、契約書類を見直してみましょう。
修繕積立基金も住宅ローンに含められる
金融機関にもよりますが、マンションの購入価格だけでなく、修繕積立基金も住宅ローンに含められます。
マンションによっては修繕積立基金が100万円近くかかることもあるため、マンション購入費用と合わせてローンを組めるのはうれしい制度です。
修繕積立基金・管理費・修繕積立金との違い
マンションの維持管理費用というと、修繕積立基金よりも毎月支払っている管理費と修繕積立金を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。修繕積立基金・管理費・修繕積立金にはそれぞれつぎの特徴や違いがあります。
項目 | 内容 | 相場金額 |
修繕積立基金 | 大規模修繕工事や災害などの万が一の修繕に備えて、物件引渡時に一度だけ支払う費用 | 20~80万円 |
管理費 | 清掃や設備点検など日常的なメンテナンスに使われる、毎月支払う費用 | 15,000円前後 |
修繕積立金 | 大規模修繕工事や災害などの万が一の修繕に備えて、毎月支払い積み立てる費用 | 12,000円前後 |
以下で、管理費と修繕積立金の詳細についてみていきましょう。
管理費とは
管理費はマンションを維持管理するために日々使われる費用です。マンション購入者は毎月決まった金額を支払います。
国土交通省の「マンション標準管理規約」では管理費の用途について以下の項目を掲げています。
- 管理員人件費
- 公租公課
- 共用設備の保守維持費及び運転費
- 備品費、通信費その他の事務費
- 共用部分等に係る火災保険料、地震保険料その他の損害保険料
- 経常的な補修費
- 清掃費、消毒費及びごみ処理費
- 委託業務費
- 専門的知識を有する者の活用に要する費用
- 管理組合の運営に要する費用
- その他第32条に定める業務に要する費用
参照:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」
共用施設にフィットネスジムがあったりコンシェルジュがいたりとグレードの高いマンションほど、維持管理にかかる費用は高額になり、管理費も高くなります。
修繕積立金とは
修繕積立金は修繕積立基金と同じく、計画された大規模修繕工事や災害などによる万が一の修繕に使われる費用です。管理費と同様に毎月一定額を支払い、将来の修繕に向けて積み立てます。負担額は大規模修繕工事のタイミングや予算が示されている長期修繕計画から算出されるのが一般的です。
- マンション標準管理規約では修繕積立金の用途についても明記されています。
- 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
- 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
- 敷地及び共用部分等の変更
- 建物の建替え及びマンション敷地売却に係る合意形成に必要となる事項の調査
- その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
参照:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」
外壁塗装・防水工事・給排水管工事・設備交換工事などの計画修繕のほか、マンションをアップグレードさせるバリアフリー化や、セキュリティの設置なども含まれます。
修繕積立基金・修繕積立金は返金されない
修繕積立基金・修繕積立金は、マンションを手放すことになったときに、使われていなかったとしても返金されません。
修繕積立金は、大規模修繕などに備えて計画的に積み立てられています。修繕積立基金が加味され毎月の修繕積立金の負担額が決定していることも。修繕積立基金や修繕積立金を返金してしまうと、その分資金不足に陥るのは明らかです。
また、日常的なメンテナンス費用として使われている管理費も、当然返金されることはありません。
修繕積立金の積立総額の確認方法
修繕積立金の積立総額を知りたいときは、管理組合が保管している「重要事項に係る調査報告書」で確認できます。マンション購入前に調べたい時は、仲介会社を通して確認できるので、把握しておきましょう。
重要事項に係る調査報告書には、修繕積立金の積立状況のほかに、管理費・修繕積立金の値上げや修繕積立金一時金の徴収の予定についても記載されています。マンションの財務状況がわかるため、見たことがない方はこの機会に確認しておきましょう。
修繕積立一時金については下記記事で紹介していますので、参考にしてください。
マンション大規模修繕工事における一時金のリスクとは?費用不足などの対処法を解説
将来的な値上がりも考慮して余裕のある計画を立てよう
管理費や修繕積立金は値上がりする可能性があります。物価や人件費の高騰、予定外の修繕などで支出が増えれば収支が合わなくなることが予想されるからです。
特に、修繕積立金は、新築マンション購入時に設定されている積立金額では安すぎて、将来的に不足するケースが多いため、竣工から数年経過してから、値上げしているマンションも見受けられます。修繕積立金は、段階的に値上げをする方法である段階増額積立方式が採用されている場合はもちろん、均等積立方式においても、増額の可能性を孕んでいますので、将来的な値上がりを十分考慮し、余裕をもった資金計画を立てましょう。
資金不足に悩むマンションは多いですが、そもそも、日々発生する維持管理費や大規模修繕工事による支出を抑えられれば、管理費や修繕積立金を軽減できる可能性があります。実は、大規模修繕工事や日常修繕において、本来は必要のない修繕を行い、無駄な費用を支払っているケースは少なくありません。相場より高額な修理や不要な工事を行っていても、見極められず進めてしまっているのです。
さくら事務所は、第三者の立場で日常修繕や大規模修繕工事の工事項目が適切かチェックし無駄な出費を抑えるお手伝いをさせていだたきます。長期修繕計画の作成・見直しも行っております。
この工事は本当に必要なのか
見積金額は妥当なのか
修繕積立金の値上げは避けられないのか
上記のようなお悩みがあればお気軽にご相談ください。