マンションの機械式駐車場トラブル例を7つ紹介!撤去するマンションも

  • Update: 2024-06-27
マンションの機械式駐車場トラブル例を7つ紹介!撤去するマンションも

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

マンションの機械式駐車場は狭い面積でも多くの駐車区画を確保できることがメリットです。しかし機械式駐車場は利用制限や注意点が多く、さまざまなトラブルが生じることも。

また、機械式駐車場は平置きの駐車場に比べ維持費がかかるため、十分なメンテナンスができずに使用するのをやめ、全部や一部を撤去するマンションも少なくありません。

本記事では、マンションの機械式駐車場のトラブル例、機械式駐車場を撤去するマンションが増えている背景について解説します。

機械式駐車場に悩んでいる管理組合のみなさまや、機械式駐車場のマンションを検討している方はぜひ参考にしてください。

マンションの機械式駐車場の種類

マンションの機械式駐車場は大きく以下3つに分けられます。機械式駐車場の種類によっても起こり得るトラブルは異なるため、事前知識として覚えておきましょう。

・上下に移動する「地上二段式・ピット式」

・上下左右に移動する「昇降横行式」

・入庫可能台数が多い「エレベーター方式・垂直循環方式」

順に紹介します。

上下に移動する「地上二段式・ピット式」

パレットが上下に動き車両を出し入れするのが、地上二段式やピット式と呼ばれる機械式駐車場です。2段または3段で配置されているパレットが複数列並んでいるケースが多く、それぞれの列の地上階で入出庫します。

地上二段式とピット式の違いは、地下部分に格納できるパレットがあるかどうか。地上二段式は地上階とその上段、ピット式は地上のパレットに加え地下にもパレットがある駐車場です。

地上二段式やピット式は毎回同じ場所に格納するため、区画によって入出庫までの時間などに差があるのが特徴といえます。

上下左右に移動する「昇降横行式」

パレットの上下と左右に移動するのが昇降横行式駐車場です。

たとえば3段3列の昇降横行式には8台分のパレットが格納されており、1台分の空いたスペースを利用してパレットが上下左右に移動します。どの車両も毎回決まった地上階で、入出庫できるようになっているのが一般的です。

昇降横行式駐車場は、パズルのようにパレットが移動することからパズル式駐車場とも呼ばれています。

車両を格納する位置に関係なく同じ位置から出し入れできるのがメリットですが、入出庫口から遠いパレットに格納されている場合は、出庫に時間がかかるのがデメリットです。

入庫可能台数が多い「エレベーター方式・垂直循環方式」

世帯数の多い大規模マンションで採用されているのが、入庫可能台数が多いエレベーター方式や垂直循環方式の駐車場です。

垂直循環方式は、観覧車のようにパレットが循環し、決められた場所(地上以外も可能)から車両を出し入れします。連続循環しているため、入出庫時にパレットが止まっている場所によって、入出庫口に指定のパレットが到着するまでの時間が異なるのが特徴です。

エレベーター方式は、一般的に駐車場の建物の中央に昇降装置、昇降装置の左右や前後に駐車スペースがあります。出庫時はパレットが昇降装置に移動し入出庫口に降りてきて、入庫時は昇降装置から昇り左右前後の駐車スペースに格納されます。

マンションの機械式駐車場7つトラブル

マンションの機械式駐車場で起こりやすいトラブルは次の7つです。

・サイズオーバーの車両を入庫する

・入庫するパレットを間違える

・人身事故が起きる

・停電時に使えない

・入出庫に時間がかかる

・台風や豪雨で車が水没する

・センサーが作動し停止することがある

それぞれ紹介します。

(1)サイズオーバーの車両を入庫する

機械式駐車場は収容可能な車両のサイズが決まっています。

サイズオーバーの車両を入庫すると、パレットや駐車装置などが車両にぶつかり、車両や駐車場が破損するため注意しましょう。

車両と駐車場がぶつかる前に安全装置が働き、パレットが動かなくなるケースもあります。「サイズオーバーだけど入庫できたから大丈夫」と思っていても、安全装置が働き次の利用者が駐車場を使えない可能性もあるのです。

車両サイズは、車検証で確認するのが大前提ですが車検証に記載のないアンテナやスペアタイヤなどが搭載されている場合、実寸で計測して駐車可能か確認しましょう。

(2)入庫するパレットを間違える

入庫するパレットを間違えたことで車両がサイズオーバーになることもあります。機械式駐車場によっては、パレットごとに車両の収納可能サイズが異なることがあるためです。

また入庫するパレットを間違えると、本来の利用者が自分の区画に駐車できなくなります。車両と駐車場の接触事故だけでなく、駐車場の利用者間でのトラブルにもなりかねません。

(3)人身事故が起きる

機械式駐車場は、機械で動くからこそ人身事故の危険性があります。駐車場内に人が閉じ込められたり、機械式駐車場のすき間から落下したり、最悪の場合は死亡事故に発展してしまうことも。

国土交通省の調べによると平成19年以降、機械式駐車場の死亡・重傷事故は32件、そのうち死亡事故は12件発生しています。これらの事故の発生場所は55%がマンションの駐車場です。

国土交通省はこれらの事故をふまえて平成26年3月(10月に改定)に「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」を公表しています。

(4)停電時に使えない

機械式駐車場は電気を使って動いているため、停電時には使えません。

短時間で復旧すればよいですが、長期にわたると車での移動が不可能となったり、ほかの駐車場を確保しなければならなかったりする問題が生じます。

長期的に駐車場が使えなくなったときを想定して、ほかの駐車場の目星をつけておくなど備えておきましょう。

また、機械式駐車場の操作中に停電すれば、パレットが途中で停止します。パレットが正常の位置で停まっていないことで、駐車場内に本来は存在しない段差やすき間が生じることも。

思わぬ事故に繋がるケースもあるため、危険な状態で停止しているときは管理会社や駐車場の保守会社などに連絡しましょう。

(5)入出庫に時間がかかる

機械式駐車場の駐車区画によっては、平置きの駐車場に比べて入出庫に時間がかかります。とくに入庫可能台数が多い駐車場や入出庫口から遠いパレットに駐車している場合は、待ち時間が長くなりがちです。

朝の出勤時間は利用者が増えるため、駐車場が混みあうことも。空いている時間帯でも毎回パレットの場所が異なる昇降横行式や垂直循環方式は、都度待ち時間が異なります。

早めに駐車場に向かうなど時間に余裕をもって行動しましょう。

また、これからマンションを購入される方は、購入予定のマンションに機械式駐車場があるのであれば、どの方式の駐車場か、確認しておきましょう。

(6)台風や豪雨で車が水没する

機械式駐車場の地下部分に格納している車両は、台風や豪雨などの水害で水没する危険性が高まります。地下部分にも排水設備があるため、通常の雨量では問題ありませんが、排水が追いつかないほどの雨が降ると地下に水が溜まると車両が水没してしまうのです。

車両が水没するほど浸水すると、車両の修理代や買い替え費用のほか、機械式駐車場の修理もしなくてはいけません。

激しい雨を障害物だと認識して操作盤が制御されることもあるため、大雨警報などの予報がある場合は早めに車を移動させましょう。

機械式駐車場の水没については、下記記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

機械式駐車場の水没に半地下住戸の浸水、そのとき管理組合は?

(7)センサーが作動し停止することがある

機械式駐車場には危険を感知するセンサーが備えられています。

「ドアミラーをたたんでいない」「閉まりきれていないドアが衝撃で開いた」などの異常を感知すると、センサーが作動し駐車場が停止することがあるのです。

上記のような異常は駐車した本人は気がついていないことが多く、原因追及に時間がかかります。問題が解決するまで車両の入出庫はできないため、その間の時間貸しの駐車場利用料や公共交通機関の交通費など損害賠償を請求されるケースもゼロではありません。

機械式駐車場の利用者間トラブルの原因になるため、駐車する際に問題点がないかよく確認しましょう。

マンションの機械式駐車場のトラブル(事故)は保険が適用される

サイズオーバーの車両を入庫したなどの過失により、駐車場設備やほかの車両に損害を与えた場合は、個人賠償保険が対象です。マンション総合保険の特約で個人賠償責任保険を契約しているケースもあるため調べておきましょう。

機械式駐車場に停めていた車両が浸水した場合、個人で加入している車両保険のほか、契約していれば管理組合で加入するマンション総合保険の機械式駐車場水災補償が適用されます。水害の危険性があるかハザードマップなどで確認し、想定区域の場合は保険で備えることも検討しましょう。

契約の詳細は保険会社や商品によって異なります。万が一のときにすぐに対応できるように、保険の内容を把握し見直しておくことが大切です。

機械式駐車場を廃止するマンションが増えている

マンションみらい価値研究所の調査によると、機械式駐車場の平面化工事を実施した管理組合が増加傾向にあります。

引用:マンションみらい価値研究所「消えゆく機械式駐車場」

機械式駐車場を廃止するマンションが増えている理由として以下2つが考えられます。

・維持費がかかる

・駐車場の利用者が減少している

それぞれ詳しくみていきましょう。

機械式駐車場の課題(1)維持費がかかる

機械式駐車場は膨大な維持費用がかかることがネックです。

国土交通省の修繕積立金に関するガイドラインでは、機械式駐車場の1台当たりの修繕工事費を下記の表の通りとし、機械式駐車場がある場合は修繕積立金に加算するとことと記されています。

引用:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」

長期修繕計画ガイドラインでは、機械式駐車場は5年ごとに補修、18~22年で取替えが推奨されています。マンションの築年数の経過に伴い修繕費用が増額していくなかで、機械式駐車場の維持費が大きな負担になるのです。

機械式駐車場の維持費用は下記記事で事例を紹介しています。

【事例紹介】マンション機械式駐車場の入れ替えや修繕費用の節約方法

機械式駐車場の課題(2)駐車場の利用者が減少している

そもそも駐車場自体の需要が減少していることも、機械式駐車場を廃止する原因になっています。以下の株式会社不動産経済研究所の首都圏の新築分譲マンションの駐車場設置率のグラフをご覧ください。

引用:株式会社不動産経済研究所「首都圏の新築分譲マンション 駐車場設置率の数」

折れ線グラフからわかるとおり、首都圏の駐車場の設置率は2007年をピークに年々減少しています。

利用者が多ければ駐車料収入を得られますが、維持費がかかるうえ当初の計画どおりの駐車場収入が見込めないとなると、年々赤字になる一方です。

機械式駐車場の維持費を捻出するために、修繕積立金や管理費の値上げを余儀なくされる管理組合も少なくありません。

機械式駐車場はトラブルだけでなく管理費・修繕積立金不足にも要注意!

マンション機械式駐車場は、サイズオーバー車両の入庫による事故や人身事故などのトラブルが考えられます。水害や地震が原因の停電などの自然災害による影響も受けやすく、予期せぬトラブルに巻き込まれることも。

事前に機械式駐車場で起こり得るトラブルについて理解して可能な限り備えておきましょう。

また、近年駐車場利用者の減少により、機械式駐車場の維持費の負担が大きくなっている点も多くの管理組合で課題になっています。機械式駐車場があるマンションは収支が悪化しているケースも少なくありません。この機会に自分のマンションの収支状況について改めて確認してみてください。

さくら事務所では機械式駐車場も含む長期修繕計画の見直し・作成サービスを実施しています。これまで850件を超える多様なマンションをみてきた経験を活かし、建物の状況からマンションの将来を予見して、客観的な視点でアドバイスいたします。

長期修繕計画を見直すことで修繕積立金の値上げや一時金の徴収を免れるケースも少なくありません。

・機械式駐車場の維持費が負担になっていて修繕積立金の値上げを余儀なくされている

・修繕費用が足りなくて一時金の徴収を検討している

・修繕積立金の徴収額の妥当性を確かめたい

上記のようなお悩みを抱えている方は、ぜひご相談ください。

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また以下の動画でも、機械式駐車場について解説をしております。気になる方は是非ご覧ください!

山本 直彌
監修者

山本 直彌

大手マンション管理会社での業務経験6年、大手不動産仲介会社での業務経験9年、その他PM・BMマネジメント経験3年

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ホームインスペクション(住宅診断)をはじめとする個人向け不動産コンサルティングや管理組合向けコンサルティングを行っている。400を超えるマンション管理組合のコンサルティング実績をもち、大規模修繕工事や長期修繕計画の見直し、瑕疵トラブルなどの管理組合サポートサービスを提供している。

【監修】さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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