記憶にも新しい、先日の西日本豪雨の被害。
床上浸水や床下浸水など、一戸建ての被害が多く報道されていましたが、同様に水害はマンションにも被害をもたらします。
特に、都心部では、雨水の浸透性・保水性を持たないアスファルトやコンクリートで地表面が覆われているところため、都市型災害と言われるものも年々増加傾向にあります。
実際、水害時、マンションではどのような被害が予想されるのでしょうか?それに対してマンションの管理組合はどのように対応し、今後の対策を考えればいいのでしょうか?
今回は、過去に実際に起きたマンションの水害被害とさくら事務所の瑕疵調査のコンサルティング事例をご紹介します。
機械式駐車場、操作盤が動かない?
そのマンションでは、集中豪雨により近くの多摩川の支流の水が土手を越えて、街が冠水、甚大な浸水被害が発生しました。
一番の大きな被害は、機械式駐車場で地下のピットに駐車していた車が水没してしまったことです。地下に駐車していた車は全滅でした。
なぜこのような被害になってしまったのか?排水ポンプは機能しなかったのでしょうか?
そもそも、機械式駐車場の排水ポンプは、集中豪雨を想定した容量を備えていません。いくらポンプの清掃をしても、短時間でまとまって降るような雨は本来の許容量を超えてしまい、水が流れ込めばあっという間に浸水してしまいます。
強い雨が降り出し、豪雨の被害を心配した居住者の中には、地下に駐車していた車を急ぎ、地上に出そうとした方もいらっしゃいました。
ところ、機械式駐車場の操作盤が動かなかったのです。
機械式駐車場には入口に車の幅や長さを確認するセンサーがついており、そこに何か障害物が触れると事故を防ぐため操作ができないしくみになっています。
このとき、激しく降る雨を障害物と感知してしまい、操作盤が制御され、車を出すことができなくなってしまったのです。
今回の被害を受け、対策として機械式駐車場を含む駐車場全体を、ブロック塀でまわりを囲み入口に防潮板を設けるという提案を分譲会社から受けました。これで、雨水の地下への浸入を防潮堤として食い止めることができるという考え方です。
新築時の必要な配慮ができていなかったこともあり、分譲会社・施工会社の全額負担で取り付けることができました。
また、今後、大雨洪水警報が出た段階で、あらかじめ地下の車は駐車場外に出しておくことを掲示板でアナウンスしておくこととし、ハード面、ソフト面、両面での対策を速やかに決めることができました。
半地下住戸の浸水被害、原因は排水設備に
マンションの半地下の住戸では、キッチンやトイレから水があふれ出て部屋が水浸しになってしまうという被害が発生しました。
室内の浸水は1メートルを超える勢いでした。室内の家具も水に浮いてしまったと言います。
原因となったのは、前面道路の排水管の逆流です。
通常、トイレなどの排水は自然流下で接道する道路の下水道管へ排水されていきます。
ところが、集中豪雨等、短時間で大量の雨水が下水道管に流れ込むと、下水道管内の水位が上昇して、下水がマンション内の排水管を通って逆流してしまうのです。
半地下部のトイレやお風呂場などの衛生器具から下水が噴出するおそれがあります。
今回の被害を受け、管理組合の皆さんはさくら事務所に調査を依頼しました。調査の結果、半地下階に排水ポンプが設置されていないことが判明しました。
逆止弁付きの排水ポンプが設置されていれば、下水道管からの逆流も防げたでしょう。
また調査により、この排水処理方法について、分譲会社は新築時に下水道局から指導を受け、事故が発生した場合でも自己責任である旨の念書を差し入れていたことも発覚しました。
設計時、指導に従いしかるべき対応を取っていれば生まれなかった被害です。
今後の対策のため、分譲会社・施工会社の負担で、排水のためのポンプを取り付け、あわせて雨水貯留槽も設置することになりました。
このように、新築時の設計で十分な配慮がされていなかったケースなど、分譲会社・施工会社を交えての交渉となることもあります。
災害で被害を受けた際は、その場しのぎの対応に終わらせず、原因を究明し、適切な対策をとりましょう。
今後同じようなことが事が起こらないのはもちろん、よりマンションが住みやすくなるよう管理を向上させる機会にもなり得るかもしれません。
マンション管理組合の皆さまだけでは専門的な知識がないから難しい、交渉までは負担が大きすぎる、と思われると思います。ぜひ当社のような外部専門家を活用してください。
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