マンション共用部のアフターサービスは、管理組合がどれだけマンションに興味を持ち、自主的に動くかどうかで、無償補修してもらえる範囲が大きく変わってきます。とくに竣工後2年目を迎えるマンションにとって、共用部のアフターサービスは将来の修繕積立金を左右する大事なものです。
しかし、アフターサービスの期限が迫っても何をしたらよいかわからない、管理会社に任せているから大丈夫、と受け身の管理組合も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では2年目アフターサービスが重要な理由や最大限活用する方法を解説します。期限まであまり時間がないマンションができることも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
マンションのアフターサービスとは?
マンションのアフターサービスは、マンションの住戸を最初に引き渡した月から3(6)ヵ月後、1年後、2年後、5年後、10年後のタイミングでアフターサービス規準で定められている箇所について所定の不具合があった場合に無償で補修するサービスです。注意すべき点は、アフターサービスは分譲会社が任意で行っているサービスであるということです。
アフターサービスが使えるのか、使える場合内容はどうなのか、アフターサービス規準で一度確認してみましょう。
一般的にアフターサービスは、2年目までは分譲会社が定期点検を行うなどして、自主的に対応してくれますが、アフターサービスの大半は2年で終了するため、5年後・10年後のアフターサービスについては、自ら積極的に期限を意識してマンションの状況を調査し、分譲会社に申し入れをしなければなりません。
アフターサービスが対象となる項目は、分譲会社のアフターサービス規準で定められています。確認しておきましょう。
アフターサービスと似ているのが、契約不適合責任と品確法です。以下で契約不適合責任と品格法の違いについて解説します。
契約不適合責任との違い
契約不適合責任とは民法で定められた権利で、売買契約の内容と、種類や数などが相違しているときに請求できます。
アフターサービスとの違いは、相違の程度などの状況により、補修だけでなく損害賠償や契約解除を請求できる点です。
不適合を発見してから1年以内に通知する必要がありますが、売主が不動産会社の場合は、宅建業法により通知期間は引き渡しから2年以上(2年が一般的)です。
品確法との違い
品確法の新築住宅の瑕疵担保責任に関する特例では、基本構造部分 (構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分) について、引き渡しから10年以内に工事の不備や欠陥が見つかった場合に売主が無償補修することが義務付けられています。
10年目のマンションアフターサービスも保証内容は同じです。
マンションのアフターサービスの起算日
マンションアフターサービスの起算日は、以下の表のとおりです。
場所 | 保証期間 | 起算日 |
共用部 | 長期保証部分 | 施工会社から分譲会社への引渡し日 |
短期保証部分 | 区分所有者の1人がはじめに部屋を使用した日 | |
専有部 | 各区分所有者への引渡し日 |
対象の場所や保証期間により、起算日は異なります。しかし、共用部においては、分譲会社への引き渡し日に入居する区分所有者がいるケースがほとんどのため、実際には、長期保証部分と短期保証部分の起算日は同じになります。
専有部については、号室により起算日が異なるため、アフターサービスの期限も購入されるタイミングによりさまざまです。
マンションのアフターサービスは2年目が重要な理由
マンションアフターサービスは、3か月〜10年までの期限が設けられているのが一般的ですが、なかでも2年目のアフターサービスをどこまで活用できるかでマンションの将来が変わってきます。ここでは、2年目アフターサービスが重要な3つの理由をみていきましょう。
・初期不良は何かしらある
・2年目でほとんどの保証期間が終わる
・長い目で見れば修繕積立金の節約になる
順に詳しく解説します。
(1)初期不良は何かしらある
はじめからなんの問題もなく完璧なマンションはない、と考えてよいでしょう。基本的に多くのマンションは1点もの。信頼できる施工会社だったとしても、ヒューマンエラーによる初期不良を避けることは難しいのです。
なにか問題があると2年という短期間でも、目に見える形で現れてきます。マンションは、初期不良があることが前提のため、建設後2年をかけて不具合を修正しながら完璧を目指していく意識に切り替えましょう。
(2)2年目でほとんどの保証期間が終わる
マンションアフターサービスは2年目でほとんどの保証期間が終了します。軽微なものや、故意にキズつけられたもの以外はほぼアフターサービスの対象です。共用部で言えば、コンクリートの亀裂や鉄部のさび、塗装のはがれなどを直してもらうことができるでしょう。ビスのとめ忘れや、塗料による汚れなど、新築時の施工不良なども意外とあるものです。
2年目までは分譲会社による定期点検があります。日々マンションで過ごしているうちに気が付いた不具合はメモしておき、アンケートに記入しましょう。
2年目アフターサービスは、しっかり要望を伝えられれば、より多くの箇所を無償で修繕してもらえる最後のチャンスです。
(3)長い目で見れば修繕積立金の節約になる
2年目の時点で軽微な不具合を見逃し、アフターサービスの申し入れをしなければ、後日自己負担(管理組合の管理費または修繕積立金)で補修費用を払うことになるでしょう。また、1回目の大規模修繕は、状況によって工事内容やタイミングを見直し、修繕積立金を節約するチャンスなのですが、そのチャンスも活かしきれないかもしれません。
もし、2年目アフターサービスで軽微な不具合でも補修しておけば、大規模修繕工事の延期を検討できるかもしれません。大規模修繕の周期を12年から15年にするだけで、築60年目時点での大規模修繕の回数は5回から4回に減らせますので、長い目で見れば数千万円単位のコストを削減でき、将来的に修繕積立金を大幅に節約できるのです。下記記事では実際に2年目アフターサービスにより修繕積立金が節約できた例を紹介しています。
【2年目アフターサービス】は上がり続けるマンション管理コストを抑えるために効果的なサービス
マンションのアフターサービスは第三者の点検が効果的
マンションのアフターサービスに向けた点検は、第三者機関に依頼することをおすすめします。
2年目までは分譲会社が定期点検してくれますが、その点検項目はアフターサービス規準を意識したものではないため、アフターサービス期限が切れる箇所に不具合が発生していないかというところまで見てくれるものではありません。アフターサービスを最大限活用するためには、アフターサービス規準に沿った調査ができるコンサルティング会社に調査を依頼することが重要です。
また、不具合を洗い出すためには、分譲会社や施工会社、分譲会社の系列会社が管理委託を受けていることが多い管理会社、の関係者が調査するのではなく、何の利害関係もない第三者機関に点検してもらうことが効果的です。
マンションのアフターサービスの点検を第三者に依頼する方法
マンションのアフターサービスの点検を第三者機関に依頼するときの、総会決議のタイミングや内容、スケジュールについて解説します。
決議するタイミング
第三者機関に点検を依頼するための予算を確保するためには前年度の総会で事前に決議しなければいません。前年度の総会が間に合わなかった場合は、臨時総会を開く方法もあります。
ケース1:前年度の定期総会(アフターサービス期限が切れる年度の期首)で決議する
1年目が終わった頃の第2期目の定期総会で決議するパターンです。理想的ですが、まだ組合も理事会も発足して1年しかたっていないことから、組合員の建物や管理への意識がそれほど高まっていないケースが多く、実際にはハードルは高くなるでしょう
ケース2:臨時総会を開催して決議する
定期総会で決議を行わなかった場合、アフターサービス期限の3~6カ月程度前までに臨時総会を開催し、決議します。
決議の内容
総会でとるべき決議は以下3つのケースがあります。
・外部業者への点検費用の予算執行と発注先業者の両方を決める
・外部業者への点検費用の予算執行のみ決議し、業者選定は理事会にゆだねる
・外部業者への点検費用の予算執行のみ決議し、理事会で業者選定後に改めて総会を開く
マンションに合った内容を検討しましょう。
スケジュール
総会で決議するためには、総会前月の理事会で議案の内容を決定する必要があります。
発注先の決議までとるためには、理事会は総会の3カ月程度前には業者への問い合わせ、複数社の見積もり取得ならびにプレゼンを受け、発注先業者を絞り込む必要があるでしょう。
例1)3月の通常総会で発注先まで決めるパターン
11月 | 理事会が、業者への問い合わせ・複数社の見積取得ならびにプレゼンを受ける |
12~1月 | 理事会で点検業者の比較検討および絞り込みを行う |
2月 | 理事会で総会議案を決定 |
3月 | 通常総会で予算執行・発注を決議(発注契約の締結) |
アフターサービス期限の2か月前までに点検業務に着手 |
例2)3月のアフターサービス期限を前に、臨時総会で発注先まで決めるパターン
8月 | 理事会で業者への問い合わせ・複数社の見積取得ならびにプレゼンを受ける |
9~10月 | 理事会で点検業者の比較検討および絞り込みを行う |
11月 | 理事会で総会議案を決定 |
12月 | 臨時総会で予算執行・発注を決議(発注契約の締結) |
1月 | 点検業務に着手 |
※建物の規模によっても異なりますが、最低でも3カ月前(12月)に総会で決議をとっておく必要があるでしょう。
第三者への点検依頼が間に合わないときは?
総会での承認などが、アフターサービスの期限に間に合わないこともあるでしょう。点検依頼が間に合わない場合は、以下の方法で第三者を介入できないか、検討してください。
・分譲・施工会社の点検に同行してもらう
・アフターサービス対象部分だけ点検してもらう
詳しく解説します。
分譲・施工会社の点検に同行してもらう
第三者機関への点検依頼が間に合わない場合、分譲会社らが定期点検する際、第三者機関に同行してもらうだけでも効果があります。
経験豊富な第三者が点検の場に同行することで、なるべく不具合をみつけたくないという気持ちに抑止力が働くためです。「ここはどう直すか」など、その場で分譲会社に確認することで、補修すべき不具合箇所を増やせたり、点検の手抜きや見落としを防げたりする効果が期待できます。
同行してもらう場合は、点検する分譲会社などの許可が必要です。断られるケースはあまり見ませんが、事前に確認しておきましょう。
アフターサービス対象部分だけ点検してもらう
万が一、分譲会社などによる定期点検への同行を断られた場合は、マンション全体ではなく、期限が切れるアフターサービスの保証箇所のみ、第三者機関に点検してもらう方法もあります。
構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分は、10年目まで保証が続くため、それ以前のタイミングで必ず点検しないといけないわけではありません。
点検箇所を限定することで、管理費会計や一般会計の予備費の範囲内で点検依頼できれば、第三者機関が介入するハードルを下げられるでしょう。
マンションのアフターサービスは第三者の介入で最大限活用できる
マンションのアフターサービスをつかって、無償で修繕する箇所が増えるほど、自分達の修繕積立金で直さなければならない箇所を減らすことができ、修繕積立金の節約につながります。2年目までは分譲会社などが定期点検してくれるとはいえ、立場上、見つかる不具合は少ない方がよいですし、修繕箇所は少ないのが理想です。
そこで、マンションアフターサービスを最大限活用するために、第三者の介入が重要となります。
さくら事務所では、アフターサービス規準に沿った共用部チェックを実施中です。マンションの建設工事に精通した専門家が分譲会社や管理会社と利害関係のない第三者の立場で公平にチェックします。
アフターサービスの期限が迫っていたり、金銭的な問題で悩んでいたりする場合も、なにかしらサポートできることがあるかもしれません。まだ間に合うかもしれませんので、諦めずにさくら事務所までお気軽にご相談ください。