2024年6月マンション標準管理規約が改正!管理規約見直しのポイントは

  • Update: 2024-10-24
2024年6月マンション標準管理規約が改正!管理規約見直しのポイントは

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

マンションの住民が気持ちよく住み続けるためには、住民間で守るべきルールが必要です。マンションではそれを「規約」と呼びます。

マンション標準管理規約は、国土交通省がマンションの維持・管理、住民の生活における基本的ルールを定めた管理規約の標準モデルです。あくまでもモデルなので、必ずこれに沿う必要はありませんが、多くの管理組合がマンション標準管理規約を参考に規約を制定しています。

本記事では、2024年6月にマンション標準管理規約が改正したことを受けて、具体的な変更点や管理規約を見直す際に注意すべきポイントをわかりやすく解説します。

標準管理規約の変更に伴い管理規約を見直すべき?

多くのマンションが国土交通省による標準管理規約をベースに管理規約を作成している中、今回の改正は既に起きている問題や今後の懸念事項に対処するのが狙いです。

管理組合は標準管理規約の改正に敏感になり自分のマンション管理規約にも反映させるか検討する必要があります。反映をしない場合、国土交通省の想定している問題が実際に起こる恐れがあります。

また本来、管理規約は以下の理由で定期的に見直すことが望ましいと言われています。

・生活スタイルの変化により規定すべき内容も変わる

・不明瞭な規定がトラブルを発生させる

・区分所有法も改正を繰り返している

生活スタイルの変化により規定すべき内容も変わる

年数が経てば、周辺環境の変化や住民の生活スタイルの変更により現行の管理規約では対処できない課題が生じます。

管理組合は時代や社会の変化にも敏感になり、住民がより快適に生活できるよう定期的に管理規約を見直す必要があるのです。

不明瞭な規定がトラブルを発生させる

分譲当時の管理規約の中にはある程度融通を利かせるため、曖昧な規定が含まれていることもあり、そのまま放置すると住民同士の問題を解決するどころか助長することにもなり兼ねません。今住んでいる方々が納得できる規約に刷新することで、トラブルの未然防止に繋がります。

区分所有法も改正を繰り返している

区分所有法とは建物の区分所有等に関する「法律」で、あくまでモデルとされている標準管理規約よりもルールが厳格で優先されます。

具体的な違いは、共同の利益に反する行為について標準管理規約では「是正などを勧告できる」となっているのに対し、区分所有法では「停止などを請求できる」とあります。

さらに、標準管理規約では「規約、使用細則等に定めのない事項については、区分所有法その他の法令の定めるところによる」という記載もあります。

区分所有法は改正が繰り返されており、その変化を鑑みてマンションの管理規約も変更する必要があるのです。

2024年6月マンション標準管理規約の改正点

2024年6月の改正は主に、高経年マンションの非居住化や住所等不明な区分所有者がいる場合の対応、マンション管理情報の見える化推進、社会情勢やライフスタイルの変化に応じた内容への改正がポイントとなっています。具体的には以下のような内容です。

・組合員名簿・居住者名簿に関する管理規約の改正

・長期修繕計画に関する管理規約の規定の改正

・その他の項目

組合員名簿・居住者名簿に関する管理規約の改正

組合員名簿や居住者名簿の作成は、これまでも管理会社によって差はあれど行われてきました。しかし、近年は区分所有者の所在がわからないケースも増えて来たため、今回の改正によって明確にルールが定まったのです。

さらに、組合員の住所変更があった際の届け出についても、今までは自己居住が大前提でしたが最近では投資目的の区分所有者が増えたことで総会議案書が住所不明で届かないという問題も発生していることから、貸借人や緊急連絡先などの情報も管理組合に提供することが明文化されています。

また、改正後は「名簿は基本的に年1回以上更新する」とあります。実際には、理事長が更新することは困難であるため、管理会社に頼ることになり、将来的には管理委託料の値上げに繋がる可能性があります。

長期修繕計画に関する管理規約の規定の改正

長期修繕計画に関しては、まず総会で修繕積立金の積立状況などを詳細に報告することが改めて明文化されました。

次に、マンションの売買時には長期修繕計画や修繕積立金の積み立て方式に関する情報を記載すること、長期修繕計画がある場合は添付することが標準管理規約のコメント欄に追加されています。

これまでは長期修繕計画の有無を記載するだけでよく、計画自体は見せてもらえないケースが大半でした。

今回の改正により長期修繕計画を事前に確認できれば、購入者がマンションの管理状況をより正確に理解でき、管理面で強いマンションが市場でしっかり評価されます。今後は管理規約が資産価値にも大きな影響を与えるでしょう。

その他の項目

その他の改正点としては、以下のような項目が標準管理規約に盛り込まれています。

・総会と理事会の議案書を保管すること

・管理規約を変更した際には、改正内容について冊子を作成すること

・EV自動車の専用充電設備を設置した場合はルールを定めること、設置工事の決議要件の考え方

・宅配ボックスの設置に係る決議要件

時代のニーズに合わせて、国土交通省が必要と見なしたポイントが改正されています。

マンションの管理規約で見直したいポイント

標準管理規約の改正内容以外にも、以下を見直すとトラブル回避など健全なマンション運営に効果的です。

(1)役員の任期の変更

(2)役員の代理権限の緩和

(3)修繕の決裁基準の設定

(4)利益相反取引に関する規定

(5)バルコニーでの禁煙規定

(1)役員の任期の変更

さくら事務所では「役員の任期は2年とし半数を1年で交代させる」ことをおすすめしています。1年で全交代すると懸案事項を次年度に上手く引継げるかが問題になりがちです。2年任期の半数改選にすることで管理組合運営に継続性を持たせることができ、1年役員を経験した人の中から理事長を選ぶこともできます。

(2)役員の代理権限の緩和

区分所有者が転勤などで居住していないケースも増えていることから「一親等以内の親族に限って代理で出席できる」「一親等以内の親族が代理で理事・役員になれる」「現に居住していない組合員も役員になれる(リモートでの打合せもできる)」という見直し案もおすすめです。

多くのマンションで役員のなりて不足が叫ばれている中、区分所有者以外でも役員になれる管理規約に変更すれば管理力の維持に繋がります。

(3)修繕の決裁基準の設定

例えば「100万円の予算があるマンションは5万までは理事長、5万円を超えると理事会、30万円超えは2社見積もり比較」などの修繕の決裁基準を設定しておくことも有効です。

基準があると、急ぎのケースや問題が発生した際に、理事長が迅速に判断・行動しやすくなり対応が遅れることにより居住性を損なうトラブルが起きづらくなります。

また、理事長にとっても「どうして勝手に決裁したのだ」という苦情を避けられるメリットがあるのです。

決裁基準は、管理費の一般会計の修繕費予算によって金額設定が変わりますが、過去に修繕した金額の実績をもとに決めるとよいでしょう。

(4)利益相反取引に関する規定

大規模修繕時などで懸念される利益相反取引に関する規定の見直しも非常に重要です。

見直し案としては「施工会社・紹介・管理組合の3社であらかじめ利益相反取引ではない旨の成約を交わす、利益相反取引が後から発覚した場合には工事を中止し損害賠償の請求をする」などが挙げられます。

大きなお金が動く工事では、組合員や理事から施工会社を紹介されるケースも少なくありません。しかし、管理組合のお金から紹介料が発生すると利益相反に該当します。事前に予防規約を定めておけば、最終的に紹介先の会社に決まっても利益相反を指摘されない後ろ盾になるのです。

(5)バルコニーでの禁煙規定

多くのマンションで禁煙に関する規定が大枠で作られています。しかし、共用部では喫煙禁止となっていてもバルコニーが含まれるのかが曖昧なために是正勧告しづらいケースも少なくありません。

そこで、さくら事務所では「バルコニーを含む共用部分(または専用使用権付の共用部分)は禁煙とする」などと明確に規定することでトラブルを未然に防ぐことをおすすめしています。

マンションの管理規約を見直すときの流れ

マンションの管理規約を見直す時の具体的な流れは、以下の通りです。

・委員会の立ち上げ

・現規約の確認と変更案の作成

・説明会の開催

・理事会での審議

・総会での決議

・変更内容を区分所有者に通知

委員会の立ち上げ

管理規約変更の専門委員会を立ち上げます。

理事会中心でつくった変更案を総会で決議に持ち込む方法もあるが、大幅な変更を検討する場合には、事前に住民の理解を得た方が合意を得やすいでしょう。

マンションの規模にもよりますが、3~5人程度の委員を選出するケースが多いようです。

専門委員会立ち上げのポイント

必要に応じて、外部専門家のアドバイスを受けることも大切です。

原始規約から大幅な変更がなされていない管理組合では、管理組合としての将来のビジョンをマンション内で共有できていないケースがほとんどです。

大きな規約変更に向け合意形成をスムーズに進めていくためには「なぜ」「なんのために」検討・変更するのかという、その軸がポイントになります。

アンケートも闇雲に実施するのではなく、意見収集する趣旨や目的を明確にする必要があるでしょう。

そのため、規約変更委員会と理事会だけでなく、当事者だけで検討が難しい事項については、マンション管理士や弁護士、司法書士など第三者の専門家に相談することにより変更案づくりを進めやすくなるケースがあります。

現規約の確認と変更案の作成

現規約の変更箇所をリストアップしましょう。

変更案の作成に際しては、国土交通省の標準管理規約なども参考にしましょう。

管理規約変更案作成のポイント

過去、冊子を改めるような大幅な変更をせず、軽微な規約変更を繰り返している場合には、変更履歴がしっかりと把握されておらず、現行の管理規約の状態が不明瞭になっている管理組合が見受けられます。

変更履歴は必ず残しておきましょう。

残念ながら、どれだけ周知を徹底しても、一定数「聞いてない」という方がでる可能性は否めません。

他方で、建設的にしっかりと意見表明してくださる方々とのコミュニケーションは大切です。

検討スケジュールや検討のプロセスを随時発信し、どのタイミングで素案が完成し、どの時点まで住民意見が反映可能なのかなどを明確にして、後戻りしないで済むようなスケジューリングをしましょう。

説明会の開催

変更案がまとまったら、住民への説明会を開催しましょう。

開催しない場合でも、変更案の内容を書類にして事前に配布したり、掲示板に貼りだしたりする等、総会に向けて十分に広めていくことが重要です。

説明会開催のポイント

管理規約という性格上、どうしても文字のもボリュームがも多い説明資料になりがちです。

変更趣旨の説明などを中心に、できるだけ簡潔な記載を心掛け、最新の標準管理規約に準拠する場合には、できれば国土交通省から出されている報道発表資料なども活用しながら、図解なども差し入れられるとより分かりやすく伝えられるでしょう。

理事会での審議

住民への説明を行った場合は、住民の意見を参考に理事会と規約変更委員会で最終的な審議を行い、その後、規約変更案を作成します。

理事会での審議のポイント

理事会や諮問機関である専門委員会がある以上、住民意見はあくまで参考意見であって、住民意見のすべてを取り入れることは現実的ではありません。

そのため、合意形成をスムーズに進めていくためには、やはり「なぜ」「なんのために」検討・変更するのかという、その軸がポイントになります。

理事会や専門委員会として、目指すところや管理組合の将来像(ビジョン)を共有した上で、意見収集する趣旨や目的を明確にして、個々の住民意見に対応することが大切です。

総会での決議

総会に上程し審議します。

尚、総会決議には、出席者の議決権の過半数が必要な「普通決議」や組合員総数及び議決権総数の4分の3以上(原則)が必要な「特別決議」などがあります。

総会での決議のポイント

特に説明会などを経ていない場合には、趣旨説明が重要です。

新型コロナウイルス感染症など、管理規約に今後起こりうるすべての事態を想定して記載することは現実的ではありません。

そのため、将来、明記されていない事態が起こった際、管理規約をどのように解釈するのかに関しては、総会決議時の変更趣旨に頼らざるを得ない部分がでてくることが想定されます。

そのような時に備え、趣旨説明も資料に併記し、総会で説明を行った上で決議を得ておくことは、規約に明記されていない解釈が必要になった際、その時の理事会にとって大きな手がかりとなります。

変更内容を区分所有者に通知

変更が決議されたら、規約の原本は保管し、大幅な変更の場合には写しを冊子にして住民に配布しましょう。

区分所有者への通知のポイント

通知する段階で問題点が発見されることもあります。

規約変更だけに限らず総会決議全般にいえることですが、本文や変更内容はしっかりとチェックしていても「効力の発生日」などの論点や附則関係が見落とされるケースがあります。

いつの時点から変更した規約個所が有効になるのか、必要であれば経過措置、場合によっては遡及適用するのかなどは特に見落としがちであることから、専門委員だけではなく、理事会役員や管理会社の担当者とのダブル・トリプルチェックがある方が望ましいでしょう。

2024年は区分所有法の改正にも注目

先述の通り、区分所有者法の改正についても見落としのないよう注目してください。現在、2024年内の改正に向けて以下のような改正要綱案が出ています。

とくに注目したいのが、建替・一括売却・1棟リノベーションなどの決議要件の緩和です。

火災や地震に対する安全性など一定の要件を満たせば、これまでの区分所有者及び議決権の賛成が5分の4以上から「4分の3以上」に緩和されます。

ただし、建替時のネックは決議要件だけではなく建ぺい率や容積率などの問題が残っているため、建替決議要件の緩和だけで建替えがスムーズになる訳ではありません。

建物・敷地の一括売却の決議や建物1棟をリノベーションする決議については「区分所有者数・議決権・敷地利用権の持ち分価格に対する一定の多数決」となり、所有者の全員合意が必要から変更される予定です。

売却時の決議やリノベーション決議の改正については、築年数が古いマンションの選択肢が増えたことでマンションの終活を描けることが大きなメリットとなります。

トラブル回避や資産価値向上のために時代に則した管理規約に見直そう

国土交通省が作成したマンション標準管理規約と必ず同じ規約にしなければいけないという義務はありませんが、将来的なトラブル回避と資産価値向上のため時代に則したルールとして管理規約に反映させることは重要です。

2024年6月の改正を受けて、自分のマンションでも古い管理規約が残っていないか、時代の変化に対応する内容になっているかを見直してみてください。

さくら事務所では、第三者のプロ目線でマンション管理規約をチェックし、実態と合っているか、災害時や緊急時の対応も視野に入っているか、管理会社から提案された管理規約案が適切かどうかなどを判断・アドバイスいたします。オンラインでのご相談が可能な点でもお客様から大変ご好評いただいております。

さらに、管理組合の財務に直結する長期修繕計画の見直しや作成についても、マンション管理に詳しい専門家の視点から大規模修繕の時期や工事内容・必要な金額までを診断して妥当性を調査し、必要があれば新たな長期修繕計画の作成までサポートいたします。

管理組合だけでは難しい部分でも、さくら事務所が全面的にバックアップしますので安心してご相談ください!

マンション管理規約チェック【オンラインで全国対応】

長期修繕計画の見直し・作成

また以下の動画でも、マンション標準管理規約について詳しく解説しています。是非ご覧ください。

  • no title

    CBCテレビ「ゴゴスマ(13:55~)」に土屋輝之がコメント提供しています。

    2025年1月22日

    1月22日(水)【管理会社元幹部のマンション修繕費の横領疑いについて】 マンション管理のミカタ:https://www.s-mankan.com/

  • 朝日新聞社のマンション管理セミナーに山本直彌が登壇しました。

    2024年11月27日

    11月27日(水)~12月1日(日)公開の朝日新聞社のマンション管理セミナーにさくら事務所・マンション管理コンサルタントの山本直彌が登壇しています。 ※視聴にはお申込みが必要となります。 ●2024〈秋〉朝日マンション管 ...

山中 行雄
監修者

山中 行雄

マンション管理会社で約20年勤務。東京、千葉、広島、沖縄など、様々な地域で管理組合運営業務に携わる。