マンションの外壁塗装は、外観の見た目をよくするだけでなく、雨や紫外線など外部の刺激から建物を守り、耐久性を保つ役割もあります。適切な時期に外壁塗装することで、築年数が経過しても最低限の劣化に留められるのです。
この記事では、費用相場や色選び、工事実施のタイミングなど、マンション外壁塗装の際に押さえておきたいポイントを解説します。
目次
マンション外壁塗装の費用相場
マンション外壁塗装の費用の、大体の相場感をつかめるよう、マンションの高さ(階数)ごとの費用相場を以下の表でまとめました。
マンションの高さ(階数) | 費用相場 |
3階建て | 約130~410万円 |
4階建て | 約340~550万円 |
5階建て | 約450~670万円 |
6階建て | 約540~820万円 |
7階建て | 約630~950万円 |
上記の表のとおり、階数別にみても費用相場には200万円以上の差があります。また、費用の差は塗料の種類、おもに耐用年数によっても違いが出ます。当然ですが、耐用年数の長い塗料ほど高額になります。
塗料の種類ごとの単価と耐用年数
具体的な種類と単価・耐用年数の違いは、以下を目安にしてください。
種類 | 特徴 | 耐用年数の目安 | 単価 (下・中・上塗りの3回塗り) |
シリコン | 汚れ・色落ち・熱に強く価格とのバランスがよい。最もメジャーな塗料。 | 10~13年 | 2,200~3,000円/㎡ |
フッ素 | 耐用年数が長いが、価格も高い。紫外線や湿度、低気温など厳しい自然環境にも耐えられる。高層ビルで多く使われる。 | 15~20年 | 3,600~4,600円/㎡ |
ラジカル | 2012年に発売された新しい塗料。価格の割に耐用年数が8〜16年と長め。 | 8〜16年 | 2,200〜4,000円/㎡ |
セラミック | 断熱・遮熱機能のあるものや、汚れに強いタイプがある。使用する合成樹脂の種類によって耐用年数が変動する。 | 10〜25年 | 2,300〜4,500円/㎡ |
光触媒 (ひかりしょくばい) |
光の化学反応を利用した塗料。防汚性に優れ、耐用年数も長い。ただし、日光や雨が当たらない部分では効果を発揮しずらい。 | 10〜20年 | 3,800〜5,500円/㎡ |
無機 | 鉱物などの無機物を含み、防汚性・不燃性が高い塗料。セラミック塗料と並んで耐用年数が長い。 | 10〜25年 | 3,500〜5,500円/㎡ |
アクリル | 一昔前に主流だった塗料。耐久性が低いため、現在は主に内装で使われることが多い。 | 3~6年 | 1,400~1,600円/㎡ |
ウレタン | アクリル塗料に次いで低価格。耐久性は低いが光沢感が長く持続するため、美観向上を目的に部分使いされることが多い。 | 7~10年 | 1,600~2,400円/㎡ |
多少高価でも耐用年数が長い塗料を使うと、工事回数を減らせ足場設営費も節約できるため、長期的に見るとコストダウンできるかもしれません。
塗料を検討する際は、目先の費用にとらわれずに長期的な目線で考え、場合によっては長期修繕計画を見直すことも大切です。
省エネ対策のための外壁塗装は助成金対象
地方自治体によっては、省エネ対策のための外壁塗装の場合、助成金の対象になることがあります。
「省エネ対策のための外壁塗装」とは、おもに以下の2つです。
- 断熱塗料を使った塗装
- 遮熱塗料を使った塗装
熱伝導率の低い断熱塗料は、外気の温度に関係なくマンション内を適温に保ち、太陽熱の吸収を抑えます。遮熱塗料は、強い日差しを遮りマンション内の気温上昇を抑制します。どちらも節電効果が期待できる塗料です。
助成金の対象になる条件は、各自治体によって異なります。なかには、塗装範囲(壁一面など)に一定の条件がついているケースも少なくありません。
基本的に助成金は工事着工前に申請しなければならないため、予め各自治体に詳細を確認しておきましょう。
マンション外壁塗装の色の選び方
マンションは戸建て住宅と違い、外壁の面積が大きいため、色選びを間違うと悪目立ちしてしまうので、外壁塗装の色は慎重に選びましょう。
マンションのイメージに合う色を選ぶ
マンション外壁の色は、入居者の年齢層が好む色や周りの建物との調和のとれる色を選択するとよいでしょう。
若い入居者が多い場合は明るい色、年配の入居者が多い場合は落ち着いた色が人気です。また、ファミリー層が多ければ温かみのある暖色系、単身者が多ければシックな寒色系もよいかもしれません。
マンション外壁でオーソドックスな色は「ホワイト系」「グレー系」「ブラウン系」。どれも主張しすぎず、万人受けするカラーで、周囲の建物との調和もとれるでしょう。
汚れにくい色を選ぶ
白や黒などのモダンな色合いはおしゃれですが、実は汚れが目立ちやすいというデメリットがあります。一方、グレー系は比較的汚れが目立ちにくいので外壁にはおすすめです。
また、原色から離れた彩度の低い色を選ぶというのもポイント。
もしも赤や青などの原色系で外壁塗装してしまうと紫外線によって色褪せやすくなってしまいます。グレー系以外にも淡い色であれば外壁の経年劣化が目立たず、周囲の景観とも調和するでしょう。
面積や光による効果を理解する
外壁の色は、見本で見た時と実際の印象が大きく変わることがあります。なぜなら、明るい色は面積が大きいほどより明るく、暗い色は面積が大きいほどより暗く見えるからです。また、室内で見た場合と太陽光の下で見た場合にも違いが出てきます。
できれば見本だけで色を決めるのではなく、塗装が終わったマンションを実際に見せてもらうなど状況別の見え方をチェックしてから決定するのが望ましいですね。
若い入居者が多い場合は明るい色、年配の入居者が多い場合は落ち着いた色が人気です。また、ファミリー層が多ければ温かみのある暖色系、単身者が多ければシックな寒色系もよいかもしれません。
マンション外壁でオーソドックスな色は「ホワイト系」「グレー系」「ブラウン系」。どれも主張しすぎず、万人受けするカラーで、周囲の建物との調和もとれるでしょう。
マンションは戸建て住宅と違い、外壁の面積が大きいため、色選びを間違うと悪目立ちしてしまうので、外壁塗装の色は慎重に選びましょう。
外壁塗装を実施するタイミングはマンションの状態次第
外壁塗装のタイミングは「マンションの劣化状態」と「塗り替えサイクル」から判断可能です。以下で詳細を解説します。
外壁塗装の目的や劣化の要因については下記記事を参考にしてください。
【大規模修繕】外壁塗装の目的は?塗装すべき劣化状況・費用・注意点を解説
塗装工事が必要な劣化状態
マンションの劣化状態は、塗装工事をするタイミングの判断材料のひとつです。マンションに以下の症状があれば、劣化が進行していることを意味します。
- 外壁や柱、バルコニー手摺壁などにひび割れが生じている
- 外壁や柱などのコンクリートが欠けている部分がある
- 外壁タイルの浮きやヒビ、剝落がある
- 雨漏りや漏水の跡が目立つ
- 外壁を触ると手に白い粉がつく
上記の症状にひとつでも当てはまれば、塗装工事のタイミングかもしれません。建物診断できる専門家に調査を依頼し、塗装工事の必要性を確認しましょう。
外壁の塗り替えサイクル
基本的にマンションの外壁塗装は、大規模修繕工事でおこないます。国土交通省のガイドラインによると、建物に関する工事は12年が目安です。
しかし、実態調査によると、大規模修繕工事の平均周期で最も多い最頻値は13年。そして全体の約7割は12~15年周期という結果でした。
また、大規模修繕工事の3回目までは、回数が増えるほど平均値が短くなるという調査結果もあります。詳細は以下の表の通りです。
大規模修繕工事回数 | 周期の中央値(年) | 周期の平均値(年) | 周期の最頻値(年) |
1回目 | 14.0 | 15.6 | 13 |
2回目 | 13.0 | 14.0 | 13 |
3回目 | 13.0 | 12.9 | 13 |
4回目以上 | 14.0 | 13.1 | 14 |
塗料の耐用年数によっても塗り替えサイクルは異なるため、マンションの劣化状況も合わせて確認しながら、不安があれば専門家に調査を依頼しましょう。
参照:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」
【工程解説】マンションの外壁塗装のスケジュール
外壁塗装のスケジュールは以下の通りです。
1.足場設営
2.下地補修
3.シーリング打ち替え
4.高圧水洗浄
5.養生
6.塗装(下塗り・中塗り・上塗り)
7.足場解体
マンション外壁塗装は、非常に工程が多く、塗装だけも3回あります。下塗りは、外壁と塗料の接着剤の役目を果たし、中塗りと上塗りで外壁に色をつけていくのです。
工事期間は、50戸未満は1~2ヵ月、50戸以上は2~3か月程度といわれていますが、下地やシーリングの劣化状況にも左右されます。
劣化状況を確認し、正確なスケジュールを把握するためにも、専門家による建物調査は不可欠です。
マンションの外壁塗装工事による注意点
マンション外壁塗装工事による注意点は、マンション居住者や近隣住民への配慮を忘れないことです。以下で詳細を解説します。
臭気がするので事前説明が必要
外壁塗装工事中は、バルコニーを使えなかったり窓を開けられなかったりと、マンション居住者の生活は制限されます。さらに臭いに敏感な方だと、塗料独特のシンナー臭により、体調が悪くなってしまうことも。
とくに臭気は、対策が難しくトラブルに発展しやすいため、充分注意が必要です。塗装工事では、臭気の発生は防げません。居住者の理解を得られるよう、しっかり時間を確保し事前説明しておきましょう。
近隣住民からのクレームが発生することもある
外壁塗装工事は、マンション居住者だけでなく近隣住民への配慮もかかせません。足場設営時の大きな金属音や塗料の臭気は、近隣住民にも不快感を与えます。工事車両が通行の妨げになることもあるでしょう。
クレームに発展させないためにも、工事期間や騒音、臭気について事前に説明する挨拶回りが必要です。挨拶回りは基本的に工事業者がおこないますが、任せっきりにするのではなく、いつ、どこまで説明しているのかなど情報を共有しておきましょう。
外壁塗装は着手前に専門家に相談するのがベスト
マンション外壁塗装の費用は、規模や塗料の耐用年数により大きな幅があるため、一概にいくらとは言えません。マンション外壁塗装のサイクルは、全体の7割が12~15年。大規模修繕で実施するのが一般的ですが、マンションの劣化状況を確認し、総合的に施工時期を判断しましょう。
さくら事務所では「マンション劣化診断ツアー」を実施しています。マンション劣化診断ツアーは、「大規模修繕工事をするべきタイミング」を判断するために行いますので、外壁塗装だけでなく、防水や外壁タイルなどマンションを一通り点検します。2~3時間かけて、管理組合の理事や修繕委員の方々と一緒に、マンション内を上から下まで見て回り劣化状況を確認しますので、その場で外壁塗装の工事時期も判断し、アドバイスすることが可能です。
ツアー形式ではなく、大規模修繕工事の専門家だけで診断を行う「プロにお任せ劣化診断」もございますので、管理組合のご都合に応じて、ご利用ください。