マンション外壁塗装の時期・費用・工程を解説!期間中の過ごし方も

  • Update:
マンション外壁塗装の時期・費用・工程を解説!期間中の過ごし方も

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

マンションの外壁塗装は、外観の見た目をよくするだけでなく、雨や紫外線など外部の刺激から建物を守り、耐久性を保つ役割もあります。適切な時期に外壁塗装することで、築年数が経過しても最低限の劣化に留められるのです。

この記事では、費用相場や色選び、工事実施のタイミングなど、マンション外壁塗装の際に押さえておきたいポイントを解説します。

外壁塗装の実施を検討すべき時期

外壁塗装のタイミングは「外壁塗装の平均周期」と「劣化状況」を参考に判断しましょう。以下で詳細を解説します。

外壁塗装の平均周期

基本的にマンションの外壁塗装は、大規模修繕工事でおこないます。国土交通省のガイドラインによると、建物に関する工事は12年が目安です。
しかし、実態調査によると、大規模修繕工事の平均周期で最も多い最頻値は13年。そして全体の約7割は12~15年周期という結果でした。
また、大規模修繕工事の3回目までは、回数が増えるほど平均値が短くなるという調査結果もあります。詳細は以下の表の通りです。

大規模修繕工事回数 周期の中央値(年) 周期の平均値(年) 周期の最頻値(年)
1回目 14.0 15.6 13
2回目 13.0 14.0 13
3回目 13.0 12.9 13
4回目以上 14.0 13.1 14

塗料の耐用年数によっても塗り替えサイクルは異なるため、マンションの劣化状況も合わせて確認しながら、不安があれば専門家に調査を依頼しましょう。

参照:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」

塗装工事が必要な劣化状況

外壁の劣化状態は、塗装工事をするタイミングの判断材料のひとつです。

以下の症状があれば、劣化が進行していることを意味します。

  • 外壁や柱、バルコニー手摺壁などにひび割れが生じている

  • 外壁や柱などのコンクリートが欠けている部分がある

  • 外壁タイルの浮きやヒビ、剝落がある

  • 雨漏りや漏水の跡が目立つ
  • 外壁を触ると手に白い粉がつく

上記の症状にひとつでも当てはまれば、塗装工事のタイミングかもしれません。

建物診断できる専門家に調査を依頼し、塗装工事の必要性を確認しましょう。

 

外壁塗装の目的や劣化の要因については下記記事を参考にしてください。

【大規模修繕】外壁塗装の目的は?塗装すべき劣化状況・費用・注意点を解説

マンション外壁塗装の費用相場

マンション外壁塗装にかかる、大体の相場感をつかめるよう、マンションの高さ(階数)ごとに以下の表でまとめました。

マンションの高さ(階数) 費用相場
3階建て 約130~410万円
4階建て 約340~550万円
5階建て 約450~670万円
6階建て 約540~820万円
7階建て 約630~950万円

上記の表のとおり、階数別にみても費用相場には200万円以上の差があります。

また、費用の差は塗料の種類、おもに耐用年数によっても違いが出ます。

塗料は耐用年数が長いほど高額な傾向です。

塗料の種類ごとの単価と耐用年数

塗料の種類ごとの単価と耐用年数、特徴は以下の表を目安にしてください。

種類 単価(3回塗り) 耐用年数 特徴
シリコン 2,200~3,000円/㎡ 10~13年 汚れ・色落ち・熱に強く価格とのバランスがよい。最もメジャーな塗料。
フッ素 3,600~4,600円/㎡ 15~20年 耐用年数が長いが、価格も高い。紫外線や湿度、低気温など厳しい自然環境にも耐えられる。高層ビルで多く使われる。
ラジカル 2,200〜4,000円/㎡ 8〜16年 2012年に発売された新しい塗料。価格の割に耐用年数が8〜16年と長め。
セラミック 2,300〜4,500円/㎡ 10〜25年 断熱・遮熱機能のあるものや、汚れに強いタイプがある。使用する合成樹脂の種類によって耐用年数が変動する。
光触媒

(ひかりしょくばい)

3,800〜5,500円/㎡ 10〜20年 光の化学反応を利用した塗料。防汚性に優れ、耐用年数も長い。ただし、日光や雨が当たらない部分では効果を発揮しづらい。
無機 3,500〜5,500円/㎡ 10〜25年 鉱物などの無機物を含み、防汚性・不燃性が高い塗料。セラミック塗料と並んで耐用年数が長い。
アクリル 1,400~1,600円/㎡ 3~6年 一昔前に主流だった塗料。耐久性が低いため、現在は主に内装で使われることが多い。
ウレタン 1,600~2,400円/㎡ 7~10年 アクリル塗料に次いで低価格。耐久性は低いが光沢感が長く持続するため、美観向上を目的に部分使いされることが多い。

 

多少高価でも耐用年数が長い塗料を使うと、工事回数を減らせ足場設営費も節約できるため、長期的に見るとコストダウンできる可能性があります。

塗料を検討する際は、目先の費用にとらわれずに長期的な目線で考え、場合によっては長期修繕計画を見直すことも大切です。

省エネ対策のための外壁塗装は助成金対象

地方自治体によっては、省エネ対策のための外壁塗装の場合、助成金の対象になることがあります。
「省エネ対策のための外壁塗装」とは、おもに以下の2つです。

  • 断熱塗料を使った塗装
  • 遮熱塗料を使った塗装

熱伝導率の低い断熱塗料は、外気の温度に関係なくマンション内を適温に保ち、太陽熱の吸収を抑えます。遮熱塗料は、強い日差しを遮りマンション内の気温上昇を抑制します。どちらも節電効果が期待できる塗料です。

助成金の対象になる条件は、各自治体によって異なります。なかには、塗装範囲(壁一面など)に一定の条件がついているケースも少なくありません。

基本的に助成金は工事着工前に申請しなければならないため、予め各自治体に詳細を確認しておきましょう。

マンション外壁塗装の色の選び方

マンションは戸建て住宅よりも、外壁の面積が大きいです。色選びを間違うと悪目立ちしてしまうため、外壁塗装の色は慎重に選びましょう。

 

色選びのポイントは以下の3つあります。

・マンションのイメージに合う色を選ぶ

・汚れにくい色を選ぶ

・面積や光による効果を理解する

順に詳しく解説します。

マンションのイメージに合う色を選ぶ

マンション外壁の色は、入居者の年齢層が好む色や周りの建物との調和のとれる色を選択するとよいでしょう。

若い入居者が多い場合は明るい色、年配の入居者が多い場合は落ち着いた色が人気です。また、ファミリー層が多ければ温かみのある暖色系、単身者が多ければシックな寒色系もよいかもしれません。

マンション外壁でオーソドックスな色は「ホワイト系」「グレー系」「ブラウン系」。どれも主張しすぎず、万人受けするカラーで、周囲の建物との調和もとれます。

汚れにくい色を選ぶ

白や黒などのモダンな色合いはおしゃれですが、実は汚れが目立ちやすいというデメリットがあります。一方、グレー系は比較的汚れが目立ちにくいので外壁にはおすすめです。

また、原色から離れた彩度の低い色を選ぶというのもポイント。

もしも赤や青などの原色系で外壁塗装してしまうと紫外線によって色褪せやすくなってしまいます。グレー系以外にも淡い色であれば外壁の経年劣化が目立たず、周囲の景観とも調和するでしょう。

面積や光による効果を理解する

外壁の色は、見本で見た時と実際の印象が大きく変わることがあります。なぜなら、明るい色は面積が大きいほどより明るく、暗い色は面積が大きいほどより暗く見えるからです。また、室内で見た場合と太陽光の下で見た場合にも違いが出てきます。

できれば見本だけで色を決めるのではなく、塗装が終わったマンションを実際に見せてもらうなど状況別の見え方をチェックしてから決定するのが望ましいです。

【工程解説】マンションの外壁塗装の期間とスケジュール

マンションの外壁塗装の期間とスケジュールを紹介します。

外壁塗装の期間

マンションの外壁塗装の工事期間は、規模によって異なります。
50戸未満は1~2ヵ月、50戸以上は2~3か月程度が目安です。ただし、下地やシーリングの劣化状況にも左右されます。
正確な塗装期間を把握するためには、専門家による建物調査で劣化状況を把握することが不可欠です。

外壁塗装のスケジュール

マンションの外壁塗装のスケジュールは以下の通りです。
1.足場設営
2.下地補修
3.シーリング打ち替え
4.高圧水洗浄
5.養生
6.塗装(下塗り・中塗り・上塗り)
7.足場解体

マンション外壁塗装は、非常に工程が多く、塗装だけでも3回行うのが一般的です。下塗りは、外壁と塗料の接着剤の役目を果たし、中塗りと上塗りで外壁に色をつけていきます。

塗装前に実施する、下地補修やシーリングの打ち替えも塗料の性能を最大限発揮するために必要な工程です。

マンションの外壁塗装工事中の過ごし方に関する注意点

マンション外壁塗装工事による注意点は、マンション居住者や近隣住民への配慮を忘れないことです。以下で詳細を解説します。

窓の開閉やベランダの使用が制限される

外壁塗装中はマンションに足場が架けられるため、ベランダを使用できず洗濯物が干せません。窓を開閉できないなど不便なことも多いです。

また足場に塗料の飛散防止シートがかけられ、日当たりも悪くなります。普段とは違う生活に精神的な負担が大きくなるでしょう。

騒音や臭いが生じる

足場の設営・撤去時には騒音が発生することがあります。自宅で仕事をしている方など音に配慮が必要な方は、場所を変えるなどの対策が必要です。

また塗装の中塗りと上塗りの工程では臭気が生じます。臭いに敏感な方は体調をこわさないように、あらかじめ避難場所を考えておきましょう。

工事車両や作業員の出入りが増える

工事期間中は、工事車両が増え通行の妨げになることがあります。また作業員の出入りが増えること、足場が設置されることで、部外者がマンションに侵入しやすくなることにも注意が必要です。

いつも以上にドアや窓の施錠を徹底するなど、防犯意識を高めましょう。

居住者・近隣住民からのクレームが発生する

外壁塗装工事は、マンション居住者だけでなく近隣住民への配慮もかかせません。足場設営時の大きな金属音や塗料の臭気は、近隣住民にも不快感を与えます。

クレームに発展させないためにも、工事期間や騒音、臭気について事前に説明して理解を得ておくことが大切です。

近隣住民には工事業者が挨拶回りして工事内容を説明しますが、業者に任せっきりにするのではなく、いつ、どこまで説明しているのかなど情報を共有しておきましょう。

外壁塗装は着手前に専門家に相談するのがベスト

マンション外壁塗装の費用は、規模や塗料の耐用年数により大きな幅があるため、一概にいくらとは言えません。マンション外壁塗装のサイクルは、全体の7割が12~15年。大規模修繕で実施するのが一般的ですが、マンションの劣化状況を確認し、総合的に施工時期を判断しましょう

さくら事務所では「マンション劣化診断ツアー」を実施しています。マンション劣化診断ツアーは、「大規模修繕工事をするべきタイミング」を判断するために行いますので、外壁塗装だけでなく、防水や外壁タイルなどマンションを一通り点検し

「今工事をするべきか」「まだしなくてもいいのか」「いつ頃工事をするのが適切か」アドバイスをいたします。

2~3時間かけて、管理組合の理事や修繕委員の方々と一緒に、マンション内を上から下まで見て回り劣化状況を確認しますので、その場で外壁塗装の工事時期も判断し、アドバイスすることが可能です。

ツアー形式ではなく、大規模修繕工事の専門家だけで診断を行う「プロにお任せ劣化診断」もございますので、管理組合のご都合に応じて、ご利用ください。

https://www.s-mankan.com/service/recommend_tour.html

動画の内容解説【Q&A】

Q1:12年ごとに大規模修繕は本当に必要ですか?

A:近年では、12年周期から18年周期へと見直す動きが進んでいます。
修繕回数が減ることで足場設置などの仮設工事費を大きく削減でき、長期的に見て数千万円単位のコストダウンにつながるケースも。

Q2:18年周期にしたら、建物が傷んでしまいませんか?

A:18年周期を実現するには、中間メンテナンスの実施と、高耐久な工法・材料の選定が前提となります。
現在では30年保証の防水シートや、12年以上耐久するシーリング材、劣化に強い塗料などの技術が普及しており、従来以上に安定した維持管理が可能です。

Q3:18年周期にすると、どれくらいコストが下がるのですか?

A:一例として、50世帯規模のマンションでは、12年周期の場合と比べて60年間で約8,000万円の削減効果が試算されています。
回数が減ることで、仮設費用や建築工事費が圧縮されるためです。

動画では、12年周期と18年周期の総額比較も取り上げており、数字で効果を実感していただけます。

  • no title

    SUUMO

    2025年7月7日

    SUUMO(7/7公開)にて、さくら事務所・ホームインスペクターの田村啓と鈴木賢が取材協力した記事が掲載されました。 ●マンションの台風対策!被害を最小限にするためのポイントは?

  • no title

    毎日新聞

    2025年6月21日

    毎日新聞(6/21発行)にて、さくら事務所・マンション管理コンサルタントの土屋輝之が取材協力した記事が掲載されています。 ※web版は会員限定記事 ●深刻被害懸念タワマン140棟 南海トラフ地震 識者「全壊判定も」 ●「 ...

  • no title

    SUUMO

    2025年1月30日

    SUUMO(1/30公開)にて、さくら事務所・ホームインスペクターの坂瑞貴とグループ会社らくだ不動産・副社長の山本直彌が取材協力した記事が掲載されました。 ●ペット可の中古マンションを賢く探す!リノベーションで快適なペッ ...

三木 幸一郎
監修者

三木 幸一郎

明治大学政治経済学部卒業後、ゼネコン→不動産仲介業・建築業経営を経て→鉄鋼系エンジニアリング会社→マンション管理会社フロント(管理部次長)→さくら事務所

この人が監修したその他の記事