大規模修繕では相見積もりをとって、施工会社選びをおこなうケースが大半です。相見積もりすると、マンションにとってもっとも適切なサービスを受けられる業者を見つけられたり、工費費用を抑えられたりするメリットがあります。
しかし、管理組合の知らないところで、談合や癒着などがおこなわれており、公正な判断ができないことも少なくありません。そこで、本記事では談合などの不正を防ぐための対策やコツを解説します。
大規模修繕の相見積もりでよくあるトラブルと対策
大規模修繕で相見積もりをとることは大切ですが、実はトラブルも多いです。ここでは大規模修繕の相見積もりでよくある5つのトラブルと対策について紹介します。
(1)管理会社による出来レースになっていた
(2)コンサルティング会社がバックマージンを受け取っていた
(3)住民と繋がりのある会社に決定し癒着を疑われた
(4)見積もり金額があいまいで比較できない
(5)見積もり内容に差がありすぎて妥当性を判断できない
順にみていきましょう。
(1)管理会社による出来レースになっていた
大規模修繕の相見積もりでは、管理会社による出来レースになっていることが稀にあります。
たとえば管理会社が自社の関連会社を相見積もりに参加させて、受注できるように裏で手を引き、工事費の一部を管理会社の利益とするのです。
管理会社が自身の立場を利用して、相見積もりに参加する他社の見積額を関連会社に知らせて、もっとも安い見積額を提示させることなどして、選ばれるように仕向けます。
出来レースを防ぐには、管理会社が声をかけた工事会社以外にも見積もりを依頼するなど、相見積もりに参加する会社選びから、管理組合が主体となり進めていくことが大切です。
(2)コンサルティング会社がバックマージンを受け取っていた
コンサルティング会社が施工会社からバックマージンを受け取っていた、というケースもあります。安いコンサルティング料で請け負う代わりに、相場より高い工事費を支払わせ、その分をバックマージンとして受け取る仕組みです。
コンサルティング会社が、相見積もりに参加している工事会社らと結託してあらかじめ受注する1社を決めます。ほかの会社よりも見積り額を安くしたり、丁寧に対応したりすることで、管理組合から選ばれるように働きかけるのです。
ほかと比べて明らかに安すぎる金額でコンサルタントを請け負う会社は、談合のリスクがあるため注意しましょう。
大規模修繕の談合の手口については、下記記事でも詳しく解説しています。
マンション大規模修繕工事の談合に注意!手口や疑わしい状況、対策とは
(3)住民と繋がりのある会社に決定し癒着を疑われた
住民と繋がりのある工事会社に決定した場合、癒着などの悪いうわさが流れてトラブルに発展することがあります。施工後に不具合が生じたときに、紹介したく住民が責められるなど責任問題が生じることも。
正式な工程で相見積もりをして選ばれた工事会社だったとしても、管理組合内の人間関係がもつれる原因になります。特定の居住者と繋がりのある工事会社が相見積もりに参加する場合は、他の工事会社と同等に対応する、工事内容や費用の内訳を明確にし見積もりの透明性を確保する、選定基準を明確にする等、公平性の確保に努めましょう。
(4)見積もり金額があいまいで比較できない
見積り金額があいまいで各社の比較ができないこともあります。たとえば数量や単価が「一式」となっていて不明瞭、使う材料の記載がない、諸経費が不明、といった見積書はほかとの比較が困難です。
見積書を比較しやすくするため、施工方法・施行範囲・数量などの仕様をあらかじめ決めた共通仕様書を作成し、そこに金額を記載するように依頼する方法があります。この方法は、設計監理方式で採用されることが多いですが、仕様が決め打ちであるため、工事会社は金額だけで勝負することになり、談合が発生しやすい仕組みと言えます。
談合を防ぐには、金額だけでなく品質でも競い合う仕組みが効果的です。工事会社には自由な仕様で見積もりを提出してもらい、第三者のコンサルタントに見積もり比較表を作成してもらうなど、手間はかかりますが、トラブルが起こりにくい方法で比較することをお勧めします。
(5)見積もり内容に差がありすぎて妥当性を判断できない
相見積もりは金額の妥当性を確かめるためにも有効ですが、各社の見積もりに差がありすぎると、どの金額が妥当なのか判断できません。
たとえばタイルの枚数など、足場を架けないと正確な数量がわからない箇所については、全体の数量に対して〇%と仮定して見積額を算出する方法(実数精算方式)で見積もられています。
このパーセンテージの差が大きいと見積額も大きく変わってくるのです。とくに少なく想定されている場合は、工事後の追加費用が高額になりやすいため注意しましょう。
見積金額の妥当性を確かめるには、マンションの大規模修繕に精通している第三者の専門家に相談するのがおすすめです。
大規模修繕の相見積もりをとる前の準備
大規模修繕の相見積もりをとる前には以下の準備をしておきましょう。
・劣化診断で本当に大規模修繕が必要か検討する
・大規模修繕の発注方式を決める
・工事仕様書などの必要書類を用意する
・修繕費用やコンサルタント費用の相場を把握しておく
順に解説します。
劣化診断で本当に大規模修繕が必要か検討する
大規模修繕の相見積もりをとる前に「どこを修繕するか」でなく「現段階で大規模修繕が必要か」という観点で劣化診断しましょう。
必ずしも長期修繕計画で決められている時期に大規模修繕をおこなう必要はありません。時期尚早な工事で修繕積立金をむだに使ってしまったり、相見積もりに時間をかけたりする前に、大規模修繕の必要性から改めて検討してください。
大規模修繕の発注方式を決める
大規模修繕の発注方式には責任施工方式・設計監理方式・プロポーザル方式などがあり、それぞれ施工会社を決定するプロセスが異なります。
責任施工方式は、相見積もりをとらずに1社を決めて見積もり内容で依頼するか判断する方法です。
設計監理方式は、コンサルティング会社に大規模修繕の設計・監理を依頼して、工事は別の会社に発注します。相見積もりでは、決められた仕様に基づき金額のみ提案してもらい、施工会社を決定するのが一般的です。
プロポーザル方式は、金額のほか工事内容も提案してもらい、各社比較します。工事の発注先も同じ会社です。設計監理方式よりも見積もり比較が複雑化するため、談合を防げます。熱意のある提案を受けられるのもメリットです。
発注方式の違いやメリットとデメリットは下記記事で詳細に解説しているため参考にしてください。
責任施工のメリットデメリットとは?検討するケースや他の発注方式も紹介
工事仕様書などの必要書類を用意する
大規模修繕の相見積もりをとる前に、必要書類を用意しておきましょう。
必要書類は劣化診断報告書・長期修繕計画書・修繕履歴などです。
設計監理方式の場合は、同じ条件下の見積もりをもらうために、工事仕様書も必要になります。
相見積もりに参加する工事会社には、公平性を保つために全社に同じ情報を提供します。
修繕費用やコンサルタント費用の相場を把握しておく
修繕費用やコンサルタント費用の相場を把握しておくことも大切です。大規模修繕工事の戸当たり施工費は100~120万円です。80~100万円前後で済んでいたこともありますが、昨今は人件費や原材料の高騰により値上げ傾向にあります。
コンサルタント費用はコンサルティングの内容によりますが、総工事費用の5%前後が目安です。コンサルティングにどのくらいの費用をかけてどれほどの効果を得られるのか、よくリサーチする必要があります。
相見積もりで大規模修繕の施工会社を選ぶコツ
相見積もりで大規模修繕の施工会社を選ぶコツを3つ紹介します。
・公募で幅広く募集する
・現場代理人の人柄や対応を比較する
・疑問に感じることがあれば第三者に相談する
順にみていきましょう。
公募で幅広く募集する
相見積もりに参加してもらう会社を選ぶときは、管理会社や特定の居住者の紹介ではなく、公募で幅広く募集しましょう。
公募ではさまざまな分野の会社からの応募を期待できます。大手ゼネコンや管理会社、防水・塗装の専門業者など、分野の異なる会社をピックアップするのがおすすめです。違う視点での提案をもらいやすくなります。
相見積もりは、これまでとは違う新しい会社と繋がりをもてるよい機会のため、公募で施工会社の選択肢を広げましょう。
現場代理人の人柄や対応を比較する
相見積もりをとるときは見積書の内容だけでなく、現場代理人の人柄や対応、経験値なども参考にしてください。
大規模修繕の現場を取り仕切る現場代理人は、工事の良し悪しに大きく影響します。見積もりの内容の説明や質問に対する返答などから、現場代理人の力量を判断しましょう。
相見積もりでは、施工会社を最終決定する前にヒアリング会を実施するケースもあります。ヒアリング会には現場代理人も出席するため、応募動機や会社の強み、同規模マンションでの経験談などを直接聞きましょう。
疑問に感じることがあれば第三者に相談する
大規模修繕を進めていくなかで、疑問に感じることがあればすぐに第三者に相談しましょう。相見積もりにおける管理会社やコンサルティング会社の談合・癒着は、管理組合だけで暴くのは難しいのが現状です。
管理組合のなかに工事会社やコンサルティング会社の仲間がいて、修繕委員として活動しているなど、巧妙な手口を使っていることもあります。
違和感を見逃し大規模修繕を進めていくと、割高な工事費を支払うことになるなど大きな問題になります。違和感に対して声を上げるのは勇気がいることですが、その一声でマンションを救えるかもしれません。当事者意識をもって大規模修繕に向き合っていきましょう。
大規模修繕の相見積もりは管理組合が主体となり進めよう
大規模修繕で相見積もりすることは重要ですが、管理組合が知らないうちに談合などの不正に巻き込まれている可能性があります。
とくに管理組合が大規模修繕に関わることに消極的な場合は要注意です。談合などの隙を与えないためにも、相見積もりに参加する会社を選定するところから、管理組合が主体となり取り組みましょう。
相見積もりの際に少しでも違和感があれば、第三者に相談することも大切です。
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以下の動画でも詳しく解説しています。是非ご覧ください。