バリューアップ工事とは?検討のタイミングや工事内容、注意点を紹介

  • Update: 2025-01-23
バリューアップ工事とは?検討のタイミングや工事内容、注意点を紹介

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

大規模修繕などのタイミングでバリューアップ工事を検討するマンションも多いのではないでしょうか。

バリューアップ工事の内容はさまざまです。修繕積立金を無駄にしないためにも、居住者のニーズや時代背景からマンションに求められていることを明確にし、工事内容を決定しましょう。

また、バリューアップ工事は実施するタイミングも重要です。マンションによってベストな時期は異なるため、資金計画をしっかり立てたうえで検討しましょう。

本記事では、バリューアップ工事の内容や時期の目安、注意点を解説します。バリューアップ工事を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

バリューアップ工事と大規模修繕の違いとは

バリューアップ工事は、ライフスタイルや時代に見合うように、竣工当時よりもマンションの機能や性能を向上させることを目的とした工事です。

対して大規模修繕は、劣化や損傷個所を修理したり交換したりして、マンション性能・機能を実用上支障のない状態まで、回復させる目的があります。しかし、大規模修繕の工事内容は多岐にわたるため、バリューアップ工事も含めて大規模修繕とするケースも多いです。

とくに居住者の高齢化が進んでいるマンションだと、バリューアップ工事することで、より安全で快適な住まいに改善できます。

バリューアップ工事は居住者の満足度アップだけでなく、購入検討者へのアピールにもなるため、マンションの資産価値の向上にも効果的です。

マンションのバリューアップ工事の内容

マンションで実施されることの多いバリューアップ工事を紹介します。以下7つの工事内容を詳しくみていきましょう。

(1)バリアフリー化

(2)セキュリティ対策

(3)災害対策

(4)省エネ対策

(5)高耐久化・メンテナンス費用削減

(6)新しい設備導入による快適化

(7)美観の向上

順に解説します。

(1)バリアフリー化

バリアフリーを目的とした工事です。マンション全体で実施するバリューアップ工事においては、共用部分が対象になります。

バリアフリー化はおもに以下の工事です。

・エントランスにスロープを設置する

・エントランスの段差を解消する

・階段に手すりを取り付ける

・共用廊下を滑りにくくする

バリアフリー化は、現状居住者の高齢化が進んでいなかったとしても、将来的に役立つ工事です。高齢化社会が問題視されている現在、高齢者に優しいマンションは需要があります。

(2)セキュリティ対策

セキュリティ対策を強化するための工事です。具体的には以下の工事が該当します。

・オートロックを設置する

・テレビモニター付インターホンに入れ替える

・玄関ドアを防犯性の高い関鍵に変更する

・強化ガラス(合わせガラス)に取り替える

オートロックやテレビモニター付インターホンは、最近のマンションではほぼ採用されています。購入検討者の希望条件に含まれるケースも多いです。

玄関ドアや窓ガラスは専用使用部分と呼ばれる共用部に該当します。計画上の修繕項目から抜けているケースもあるため、長期修繕計画に含まれているか確認するとともに、セキュリティ強化を視野に入れたバリューアップ工事を検討しましょう。

(3)災害対策

おもな災害対策は以下のとおりです。

・耐震補強工事をおこなう

・機械室を上階に移設する

・機械を浸水しない箱に入れる

・備蓄倉庫各階に整備する

旧耐震基準で建設されたマンションは、耐震補強工事など地震の揺れへの備えが必要です。耐震診断を実施し、具体的な工事内容を決定しましょう。

地震以外にも水害対策も大切です。台風や豪雨などで、マンションが浸水しないように、浸水したとしても被害を最小限にできるように備えましょう。

とくに注意したいのは機械室です。機械室が浸水してしまうとマンションのライフラインが止まります。地下や1階に機械室がある場合は、上階に移設したり浸水しない箱に入れたりと対策しましょう。

(4)省エネ対策

昨今は省エネ対策も注目されています。具体的には以下のとおりです。

・断熱性に優れた窓サッシやガラスに変更する

・遮熱塗料で塗装する

・LED照明に交換する

アルミサッシが採用されている場合、樹脂サッシに変更することで断熱性能を向上させられます。防音性も高いため外の騒音対策にも効果的です。ガラスが1枚の単板ガラスよりも2枚以上のガラスで空気が封入されている複層ガラスのほうが、断熱性能が高くなります。

また外壁や屋上に遮熱塗料で塗装すると、塗装部分の温度の上昇が緩やかになりマンション内に伝わる温度もおさえられるため、省エネ効果が高いです。

共用廊下をLED照明に変更しているマンションも多くみられます。電力の消費が少なく長持ちするため、電気料金を下げられ、電球の交換頻度を減らせるのもメリットです。

(5)高耐久化・メンテナンス費用削減

使用する部材や仕様の変更などにより、高耐久化やメンテナンス費用の削減を図る工事もあります。

・塗料や防水材のグレードアップする

・機械式駐車場(の一部)を平面化する

塗料や防水材をより耐用年数の長いものに変更することで、メンテナンス期間を延ばせます。その分単価や施工費は上がりますが、費用対効果が高いケースが多いです。

機械式駐車場はメンテナンスや更新工事に多額の費用がかかります。駐車場の需要が減って空き区画が多い場合は、これまでと同様の仕様のものに入れ替えるのではなく、一部を平面化して更新工事費やメンテナンス費用をおさえるのも一つの手です。

(6)新しい設備導入による快適化

新しい設備を導入してより快適な暮らしを実現する工事です。

・集合ポスト

・宅配ボックス

・光回線導入

建設時にはあまり知られていなかったり需要がなかったりする設備も、今はないと不便なものも多くあります。時代の移り変わりとともに「あって当然の設備」と「あればうれしい設備」も変わってくるため、ニーズの変化に敏感なり、マンションに求められる新しい設備を取り入れていきましょう。

(7)美観の向上

美観の向上を目的とするバリューアップ工事もあります。

・エントランスを一新する

・駐輪場を整備する

美観の向上を図る場合は、とくに外部からも見える部分を工事するのが効果的です。顔ともいえるエントランスを一新すれば、マンションの雰囲気ががらりと変わり印象アップにつながります。

また自転車が煩雑に置かれている駐輪場が外から見えるマンションは、管理がずさんな印象を与えてしまうことも。駐輪可能台数を増やすなどの施策を考えましょう。

バリューアップ工事の検討時期の目安は2回目以降の大規模修繕

バリューアップ工事を検討する時期は、2回目以降の大規模修繕頃が目安になります。

国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、2回目の大規模修繕を実施するマンションの平均築年数は29.4年です。そのころには居住者の高齢化が進み、家族構成や時代の変化により、需要やトレンドも大きく変わってきています。

バリューアップ工事は足場が不要なケースも多いため、必ずしも大規模修繕のタイミングで工事を実施する必要はありません。2回目の大規模修繕の目途がたった頃に、予算との兼ね合いをみてバリューアップ工事の内容と時期を決定しましょう。

参考:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」

バリューアップ工事で失敗しないための注意点

バリューアップは修繕と違い、必ずしも必要な工事ではありません。費用面などを理由に反対意見がでて、スムーズに工事を進められないことも多々あります。最低限必要な大規模修繕工事の内容・費用をしっかりおさえたうえで、余った予算でバリューアップ工事を実施することが大切です。

また、区分所有者がどのようなバリューアップを望むのか丁寧にヒアリングして、工事内容を決定してください。災害対策やセキュリティ対策など、マンションにとって優先度が高いと思われるものから、進めていくのもよいでしょう。

バリューアップ工事でマンションの居住性・資産性を向上させよう

バリューアップ工事は、マンションの居住の快適性だけでなく、資産性も向上させられます。バリアフリー化・セキュリティ対策・災害対策など昨今の時代背景では、必要不可欠ともいえる工事もあるため、資金計画をしっかり立てて、安心安全に暮らせるマンションにグレードアップさせていきましょう。

さくら事務所では、長期修繕計画の見直し・作成サービスを実施しています。バリューアップをしたくても、マンションの実態に合った適切な資金計画がなければバリューアップ工事を行うことはできません。バリューアップ工事するにあたり、資金確保は重要な課題です。資金がなくてバリューアップ工事を諦めているマンションはもちろん、修繕積立金の値上げを余儀なくされているマンションなどもぜひご活用ください。

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以下の動画でも、マンション設備の価格高騰について詳しく解説しています。ぜひこちらも併せてご覧ください。

三木 幸一郎
監修者

三木 幸一郎

明治大学政治経済学部卒業後、ゼネコン→不動産仲介業・建築業経営を経て→鉄鋼系エンジニアリング会社→マンション管理会社フロント(管理部次長)→さくら事務所