修繕積立金はどこまで上がる?深刻な実態と今後の動向、注意点を解説

  • Update: 2024-07-25
修繕積立金はどこまで上がる?深刻な実態と今後の動向、注意点を解説

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

「マンションの修繕積立金、どこまで上がるのだろう」と心配な方も多いのではないでしょうか。

昨今、修繕積立金の大幅な値上げが社会的な問題になっています。合意形成が取れずに値上げできなかったり値上げが決定しても支払いが困難になったりと、マンション全体の課題となっているのです。

国土交通省では修繕積立金の大幅な値上げを阻止するための今後の方針を発表していますが、中古マンションにおいては自分たちで問題と向き合っていくしかありません。

そこで本記事は修繕積立金の値上げの実態と値上げ要因、今後の新築マンションの動向、中古マンションで過剰な値上げを阻止するための注意点を解説します。

修繕積立金の値上げに悩んでいる方はもちろん、マンションの購入を検討している方も知っておくべき内容になっているのでぜひ参考にしてください。

修繕積立金はどこまで上がる?

中古マンションの場合、修繕積立金がどこまで上がるかは「修繕積立金がどれだけ足りていないのか」によって異なります。

ここでは以下2つの観点から修繕積立金がどこまで上がる可能性があるのか見ていきましょう。

・修繕積立金は計画当初から平均約3.6倍上がっている

・新築マンションは最大1.8倍の値上げを上限に

順に解説します。

修繕積立金は計画当初から平均約3.6倍上がっている

国土交通省の調査によると、管理計画認定制度の予備認定マンションで段階増額積立方式を採用している249例では、長期修繕計画の計画当初から最終計画年までの値上げ幅の平均は約3.58倍になったそうです。新築時8,000円だった場合、最終的に28,000円を超えるほどに値上げされることになります。

段階増額積立方式とはいえ、これほどの大幅な値上げを想定していた方は少ないでしょう。

修繕積立金が不足している理由を理解し状況を改善していかないことには、値上げは避けられないでしょう。

参照:今後のマンション政策のあり方に関する検討会とりまとめ 

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001630139.pdf

新築マンションは最大1.8倍の値上げを上限に

国土交通省では修繕積立金の急激な値上げにより支払いが困難になるなどのトラブルを防止するために、新築マンションで修繕積立金を設定する際の下限額と上限額の幅を示しています。

修繕積立金を長期修繕計画の期間内で均等割りした金額を基準額とし、以下の内容を推奨しています。

・新築時には基準額の0.6倍以上の額に設定すること

・基準額からの値上げ幅は1.1倍以内にすること

新築時の設定額が低くなりすぎることを防ぐために下限額も示されています。

値上げ幅はあくまでも基準額からの値上げです。新築時の修繕積立金徴収額を基準額の0.6倍(最低額)に設定した場合は、最大1.8倍の値上げ幅になります。

参照:長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン(コメント含む)

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747006.pdf

修繕積立金が上がる理由

そもそもどうして修繕積立金は上がるのでしょうか。ここでは修繕積立金の値上がりの理由を4つ紹介します。

・新築時の設定額の低さ

・物価の高騰

・計画外の工事

・ガイドラインの改定

順に見ていきましょう。

新築時の設定額の低さ

新築時に設定された修繕積立金の徴収額が低すぎることが値上げ幅が大きくなる原因のひとつです。

下記のグラフからもわかるとおり、平成12年(2000年)頃から段階増額積立方式が半数を超え、平成22年(2010年)以降には約7割を占めています。

出典:国土交通省「管理・修繕に関するテーマの検討」

また、国土交通省の結果から、平成22年以降は戸当たりの修繕積立金の月額がこれまでよりも大幅に安く設定されていることがわかります。

出典:国土交通省「平成 30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」

分譲時には初期費用を抑えるために、値上げ前提で低い金額を設定する傾向があり、値上げ幅が大きくなる原因になっています。

物価の高騰

修繕積立金の徴収方式に関係なく、物価が高騰していることで資金が足りなくなり大幅な値上げを余儀なくされていることも。

建設資材の物価(燃料代やサービスは除く)について下記のグラフをご覧ください。

出典:一般財団法人「建設物価調査会」

建築資材は、とくに2020年頃から急激に値上がりしているのがわかります。

物価の高騰は建築資材だけではありません。

人件費や光熱費などあらゆるモノの価格が高騰しているため、長期修繕計画どおりに修繕積立金を積み立てられていても、資金不足に陥ってしまうのです。

計画外の工事

長期修繕計画で予定していなかった工事に修繕積立金を使うことも、大幅な値上げの一因です。想定以上に劣化が進んでいたり災害被害にあったりすることで追加工事が必要になると、その分修繕費用が不足します。

そもそも計画の段階で必要な修繕項目を見落としていたり修繕周期を見誤っていたりする可能性もあります。

分譲時から一度も長期修繕計画を見直していない場合は、適切な修繕計画になっていないケースもあるため、専門家にみてもらうのがおすすめです。

ガイドラインの改定

令和3年に「マンション修繕積立金に関するガイドライン」が改定されました。国土交通省が改定後のガイドラインをもとに作成した下記のグラフをみると、実際に必要な修繕積立金の平均額は、改定前よりも5割ほど上昇しています。

出典:国土交通省「管理・修繕に関するテーマの検討」

また、2022年にはマンション管理計画認定制度が始まり、マンション管理が可視化され重要視されるようになりました。

修繕積立金の設定額は、マンション管理認定制度の審査項目にも含まれているため、認定を受けるために値上げに踏み切っているマンションも増えてきています。

3割以上のマンションで修繕積立金が足りていない

修繕積立金の値上げ要因はさまざまで、実際に34.8%のマンションで長期修繕計画に対して、修繕積立金が足りていないのが現状です。

出典:国土交通省「平成 30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」

今のところ修繕積立金の値上げがされていなくても、今後値上げになる可能性は否定できません。

ただ33.8%のマンションでは「余剰がある」と答えています。値上げを回避できるのか、値上げ幅をおさえつつ健全なマンション管理ができるのか、大幅な値上げに苦しむのかは、管理組合の力量が試されるところです。

修繕積立金が上がるタイミング

修繕積立金が上がりやすいタイミングは「長期修繕計画見直し時」と「大規模修繕の前後」です。

長期修繕計画を見直したときは、計画内容に合わせて修繕積立金の徴収額も見直さなければいけません。

大規模修繕の前には劣化診断がおこなわれます。診断結果が計画に組み込まれれば質の高い計画に見直すことが可能です。

大規模修繕のあとは工事内容や実際の数量を計画に反映させられます。

いずれもどれだけ修繕積立金が足りないのか明確になるため、値上げのタイミングとして適切です。

修繕積立金の値上げは遅ければよいというものではありません。値上げが必要なのに先延ばしにしていると、急激な値上げになりやすく区分所有者の負担が大きくなります。必要に応じて値上げを決定していくことが大切です。

過剰な値上げに注意!無関心が修繕積立金をどこまでも上げる

長期修繕計画を信じ込み、管理会社に言われるがまま工事を進めてしまうとコストは膨れ上がる一方です。管理会社はマンションの安全性を守る立場がゆえ、よほどでない限り計画された工事を削る提案はしないでしょう。

しかし「本当にこの工事が必要なのか」「今工事するのがベストなのか」など管理組合がマンション管理に関心をもって支出を抑えていこうという意識があれば過剰な値上げは防げます。

そこでおすすめなのが、管理会社や施工会社とは別の第三者の専門家を活用し、客観的な立場でアドバイスしてもらうことです。

計画されている修繕費用に合わせて値上げをするのではなく、まずは長期修繕計画自体の妥当性を確かめることから始めましょう。

修繕積立金は適正に値上げしてマンションの価値を維持しよう

修繕積立金の値上げは悪いことではありません。しかし、値上げ幅が大きいと区分所有者の負担となりさまざまなトラブルが生じます。

中古マンションでどこまで修繕積立金が上がるかははっきりと伝えられませんが、国土交通省の調査によると平均約3.6倍値上がりしているケースもあるのが実態です。

新築時の修繕積立金の設定額や物価の上昇はどうすることもできません。

しかし、今後の修繕積立金の使い方や値上げの計画は今からでも見直せます。

一人一人がマンション管理に向き合えるように意識改革することが、修繕積立金の値上げ幅をおさえるための近道です。第三者の専門家を活用しながら今後の計画を見直していきましょう。

さくら事務所は、第三者の中立の立場で長期修繕計画の見直し・作成業務をおこなっています。修繕積立金の根拠となる納得度の高い計画を作成可能です。

これまで850件以上のマンションのご相談に対応してきましたが、修繕項目の抜けや漏れ、過剰な項目、修繕周期の誤りなどが見つかるケースが多く見受けられます。

長期修繕計画を見直した結果、修繕周期を延ばせて修繕積立金の値上げ幅をおさえられたり、金融機関からの借入を回避できたなどの事例も少なくありません。

必要に応じて説明会や総会へ同席し、区分所有者の合意形成までサポートさせていただきます。修繕積立金の値上げに悩んでいる方はぜひさくら事務所にご相談ください。

長期修繕計画の見直し・作成

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また以下の動画では、修繕積立金値上げの背景について詳しく解説しています。気になる方はぜひご覧ください。

2024年7月22日(月)朝日新聞DIGITAL
【マンションの37%で修繕積立金が「不足」 5年前より増加】
土屋輝之が取材協力しています。

2024年7月19日(金)SUUMO
【マンションの修繕積立金とは?相場や管理費との違い、値上げの可能性などを解説】
土屋輝之が取材協力しています。

2024年7月11日(木)朝日新聞DIGITAL
【マンションの修繕、インフレ考慮を 500の管理組合を見た専門家】
土屋輝之が取材協力しています。

2024年7月5日(金)SUUMO
【修繕積立基金とは?金額の相場や修繕積立金との違いなどを解説】
土屋輝之が取材協力しています。

2024年7月2日(火)日本経済新聞
【マンション修繕、広がる借金依存 機構融資は10年で3倍】
土屋輝之が取材協力しています。

佐藤 健斗
監修者

佐藤 健斗

新卒で電鉄系の資産管理会社にて、鉄道会社の保有資産(駅舎・高架下など)の活用や店舗開発を経験。
その後、不動産のコンサルティング会社にて、主に地主様・家主様向けに売買・賃貸管理・有効活用など多角的なコンサルティングを行う。

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【監修】さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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