みなさまのマンションに長期修繕計画はありますか?
長期修繕計画がある場合、最後にいつ見直されたのか把握していますか?
長期修繕計画がなかったり見直されていなかったりするマンションは、将来的に修繕資金が足りずに必要な修繕ができなくなる危険性があります。マンションの価値を長く維持するために、早急に適切な長期修繕計画を作成しましょう。
本記事では長期修繕計画の作成方法や作成・見直しにかかる費用について解説します。長期修繕計画を作成する具体的な手順も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
適切な長期修繕計画を作成すべき理由
長期修繕計画を作成すべき理由は、適正額の修繕積立金を徴収し正しく使っていくためです。
長期修繕計画は「いつどのような修繕が必要か、その修繕費用はいくらか」などを30年程度先まで計画したものです。大規模修繕工事の資金となる修繕積立金の根拠になるため、長期修繕計画がないと修繕積立金の妥当性を判断できません。
また、長期修繕計画があっても見直していなければ、計画を立てた当初と現在とで修繕費用や工事項目が変わっている可能性があります。建設当初から一度も見直していない場合は、そもそも数量が間違っていたり項目の過不足があったりすることも。
国土交通省のガイドラインでは5年程度ごとの見直しが推奨されています。大切な修繕積立金をうまくやりくりするためにも、長期修繕計画の見直し・作成は欠かせません。
下記記事でも長期修繕計画について解説しているため参考にしてください。
長期修繕計画とは?工事項目と周期、見直しのタイミングや作成方法などを解説
長期修繕計画の作成方法
長期修繕計画はガイドラインに沿って作成されるのが一般的ですが、マンション独自の内容にしなければいけません。長期修繕計画の作成方法は大きく分けて次の4つです。
・システムに工事項目や単価を入力し作成
・設計図や仕様書から数量を拾い作成する
・現地調査をおこない数量を算出し作成する
・過去の工事実績を反映して作成する
より簡易的なものから順に解説します。
(1)システムに工事項目や単価を入力し作成
一つ目は、システムに工事項目や単価を入力し工事費を算出して作成する方法です。マンションの形状などで係数補正はされますが、建物の個別性をあまり考慮せずに作成するため、概算で簡易的なものになります。
築浅や新築マンションの長期修繕計画を作成する際に用いられることが多い方法です。このことからも建設当初の長期修繕計画の精度が高くないことがわかります。
(2)設計図や仕様書から数量を拾い作成する
二つ目は、設計図や仕様書など書類を見て工事の仕様を決めたり数量を拾ったりすることで、工事費用を算出し作成する方法です。一つ目の方法よりは精度が高くなりますが、あくまでも書類で確認した範囲の数量になるため、実際の仕様や数量との相違があることも。
長期修繕計画がなく、なるべく予算をおさえて作成したいマンションに向いています。
(3)現地調査をおこない数量を算出し作成する
三つ目は現地調査をおこない数量を算出し作成する方法です。精度の高い長期修繕計画を作成できます。現地調査でしっかりマンションと向き合うため、正しい仕様や数量、劣化状況から、工事の優先順位や工事すべきタイミング、修繕費用を判断可能です。
注意点は、業者によって現地調査の内容や精度が異なること。実績豊富なマンション管理士など専門家に依頼するのがおすすめです。
(4)過去の工事実績を反映して作成する
四つ目は、過去の大規模修繕の工事履歴を反映させて作成する方法です。実際に工事をおこなったときの仕様や数量のため、二つ目に紹介した「設計図や仕様書から数量を拾い作成する」方法よりも実効性が高くなります。ただし、現地の最新の状況を考慮するわけではないため、前回の大規模修繕から時間が経過している場合など、マンションの劣化状況については正確に判断できないものもあるでしょう。
長期修繕計画の作成・見直し費用
長期修繕計画の作成・見直し費用について、以下3つのケースに分けて紹介します。
・管理会社に依頼する
・マンション管理士などに依頼する
・ガイドラインを参考に管理組合が作成する
順にみていきましょう。
管理会社に依頼する
管理会社に依頼する場合、無償で対応してもらえるケースと、有償になるケースがあります。有償になる場合、長期修繕計画の新規作成費用は50~100万円、見直しは約10~50万円が相場です。毎月管理会社に支払っている管理委託費用に、長期修繕計画の見直し費用が含まれているケースもあります。また、管理会社をリプレイスしたタイミングで、無償で作成してくれるケースもあるようです。
管理会社は、比較的低価格で依頼できるのが利点ですが、システムで一括管理しているため修繕箇所の抜けや漏れがあることも少なくありません。マンションごとのカスタマイズが難しく、独自性に欠ける点も懸念点です。
マンション管理士などに依頼する
マンション管理士など外部の専門家に依頼する際の相場は、新規作成が50万円~、見直しが30万円程度です。
管理会社に依頼するよりも高額になりますが、管理会社より知識や経験が豊富で、第三者視点で公平に建物診断をしてもらえる点がメリットです。マンションに合わせて長期修繕計画の個別カスタマイズもできるため、現状に合ったベストな長期修繕計画を作成できます。
ただし、マンション管理士などの外部専門家だからといって必ず建物診断をするわけではありません。建物診断しなかったり調査範囲が少なかったりする場合は、相場金額よりも安くなります。
ガイドラインを参考に管理組合が作成する
組合員にマンション管理や建築に詳しい方がいるのであれば、国土交通省の長期修繕計画ガイドラインを活用して作成することもできるでしょう。長期修繕計画ガイドラインは管理組合が適切な大規模修繕工事を実施できるよう推定修繕工事項目や修繕周期、工事費の算定方法などを示したもので、管理組合はガイドラインを参考にマンションの修繕計画を立てることができます。
ほかの作成方法よりも費用がかかりませんが、長期修繕計画を作成するには幅広い専門知識が必要なため、ガイドラインを参考に見直そうと思っても、挫けてしまうマンションが多いようです。予算や求める精度を決めて、管理会社やマンション管理士などに依頼することをおすすめします。
長期修繕計画を作成(依頼)する手順
ここからは長期修繕計画を作成(依頼)する手順を解説します。
手順(1)長期修繕計画を作成するための体制を整える
手順(2)誰に依頼するのか検討する
手順(3)現地調査を実施する
手順(4)管理の方向性を踏まえた計画を作成する
手順(5)臨時総会または通常総会で決議する
手順(1)長期修繕計画を作成するための体制を整える
長期修繕計画を作成するために、まずは管理組合の体制を整えます。理事長などの役員が中心となって進めてもよいですが、長期修繕計画を作成するための委員会を設置してもよいでしょう。
手順(2)誰に依頼するのか検討する
管理組合内の体制が整ったら、誰に作成を依頼するのか検討します。長期修繕計画にどこまでの精度を求めるのか、予算はいくらなのかなども合わせて確認し、管理会社やマンション管理士など依頼先の目星をつけ依頼します。
手順(3)現地調査を実施する
正確な長期修繕計画を作成するには現地調査をすることをお勧めします。先にも述べましたが、現地調査は実施する業者によって内容や精度が異なることがあります。依頼する現地調査の内容と見積もりをよく確認した上で、依頼をしてください。現地調査の費用だけでなく、診断項目までチェックするのがポイントです。
(4)管理の方向性を踏まえた計画を作成依頼する
依頼先が決定したら、自分たちのマンションをどう管理していきたいのか、方向性を踏まえた長期修繕計画を作成してもらいます。必要最低限の修繕でよいのか、耐震強化やバリアフリー化など性能を向上するための改修工事も含めるのか、などによって計画の内容もさまざまです。管理組合員で管理の方向性をしっかり話し合っておきましょう。
手順(5)臨時総会または通常総会で決議する
新しい長期修繕計画を採用するためには、総会の決議が必要です。臨時総会を開催すれば、年に一度おこなわれる定期総会を待たずに決定できます。
長期修繕計画は普通決議です。標準管理規約では出席組合員の議決権総数の過半数で可決となります。
特別決議に比べると決議要件のハードルは低いですが、長期修繕計画は区分所有者が内容を理解し納得してもらうことが大切です。総会の前に説明会などを実施し区分所有者の理解を深めておきましょう。
長期修繕計画はエクセルで作成できる?
長期修繕計画はエクセルで作成・管理しておくと、工事の延期や工事代金の変更などがあったときに自分たちで見直し反映させやすくなります。
管理組合がエクセルで長期修繕計画を作成するときは、ガイドラインの標準様式のPDFをエクセル化し、工事項目・周期・工事単価・数量などを入力しましょう。ただし、マンション管理に関する専門知識をもつ組合員がいない場合は、管理組合が一から長期修繕計画を作成するのは困難です。
長期修繕計画をエクセルで管理していきたい場合は、管理会社やマンション管理士などに長期修繕計画を作成してもらい、エクセルで納品してもらうのがおすすめです。ただし、納品してもらった長期修繕計画に手を加えるときは、必ず変更履歴がわかるように前回のデータを残しておきましょう。
マンションの実態に合った長期修繕計画を作成しよう
長期修繕計画は作成方法や見直し方法によって精度や料金が異なります。管理会社やマンション管理士などに依頼するのが一般的ですが、どのような目的で作成・見直しをおこなうのかを明確にして、依頼方法や依頼先を検討しましょう。
長期修繕計画の作成・見直しを依頼する際、予算に見合った方法を選ぶケースが多いと思います。しかし、長期修繕計画がマンションの実態に合っていないと、費用をかけて見直したのに使い物になりません。
物価や工事費用などの変動や新しい技術の登場などを考慮すると、長期修繕計画は5年程度毎に1回の見直しが推奨されますが、一度でも現地調査を伴う大規模な見直しをおこなっていれば、致命的な工事項目の抜けや漏れは防げます。
さくら事務所では、これまで多種多様なマンションに対応してきた実績から、マンションの将来像を予見した長期修繕計画の作成・見直しサービスを実施しています。
コンサルタントが現地に出向きマンションの劣化状態を確認し、管理組合の意向を踏まえたうえで客観的なアドバイスが可能です。ご希望があれば総会や説明会に同席し管理組合の合意形成までサポートさせていただきます。
マンションの将来に不安がある方や修繕積立金の増額を余儀なくされている方など、マンション管理にお悩みの方はお気軽にご相談ください。