大地震や強い台風のあとには、外壁タイルが剥がれ落ちたり、共用施設が水浸しになったりと共用部分に大きなダメージを負ったマンションは数多くあります。
特に外壁タイルの剥落は、近年、災害のあとにご相談が増えつつあります。
周囲からの見栄えの問題だけではなく、落ちたタイルが人に当たって命を奪ったり、周辺の住宅や車などを破損させる恐れをはらんでいますので、急いで対処しようと動く管理組合が大多数。
ところが、ここで管理組合が直面するのが「お金」の深刻な問題です。
本当に自己負担で補修しなければならないのか?他に方法はないのか?そもそもなぜタイルが剥がれるのか?
今回は、災害時にタイルが剥落したときのため知っておきたい対応策をご紹介します。
災害対策費は準備されていない
例えば外壁タイルが剥がれ落ちた場合、外周部に足場を掛けて現状を調査し、不具合箇所を張り替えるといった作業に数千万円から1億円超のお金が必要です。
ところが、分譲マンション管理組合が毎月各所有者から徴収して積み立てる「修繕積立金」は、あくまでも経年劣化に対する計画的修繕(大規模修繕工事)に必要な金額を貯めているだけで、災害による被害の修繕費用は見込んでいません。
ここで多額の費用を支出すれば修繕積立金のストックは大きく減り、各戸の徴収費用を大幅に値上げしたり一時金徴収を行う必要が発生、所有者たちには大きな金銭的負担が発生してしまうのです。
地震保険は使えないの?
火災保険加入時に地震保険も加入するマンションは増えていますが、地震保険の対象は主に「主要構造部分」の破損。柱や梁などに大きな破損が発生した場合にのみ保険金が支払われ、外壁タイルの剥落などは保険の対象にはなりません。
なお、主要構造部分の被害についても、被害がよほど甚大でない限りは補修費用の数パーセントしか保険金が支払われませんので、やはり多額の補修費用が管理組合の自己負担として発生します。
売主(不動産会社)の保証も原則対象外
通常、不動産取引においては、天災地変による被害は築年数に関わらず一切の保証対象外となっています。ですから、災害後に確認された被害を売主に補修請求しても「天災地変は対象外」として、一切取り合ってもらうことはできません。
結局、保険も保証も使えず、共用部分の補修費用をすべて管理組合が自己負担で直しているマンションがほとんどです。災害後の補修により修繕積立金が大幅に減り、財政の建て直しに苦労する管理組合は珍しくありません。
本来であれば、外壁タイルはそう簡単に剥がれない
ですが、実は外壁タイルは台風や地震で簡単に剥がれたりはしないのは普通なのです。たとえば地震の揺れによりコンクリートが大きく割れ、それに伴って「コンクリートと一緒にタイルが割れる」ことはあっても、コンクリート部分に大きな被害が出ていないのに「タイルだけが剥がれ落ちる」のは明らかにタイルの接着力が弱かったということ。
建設時の法律や施工ルールを違反して作られていたものが、災害をきっかけにたまたま露見しただけの可能性があります。
建設時の手抜き工事が原因なのであれば、管理組合としては補償を求めるべきなのです。
検証に立ち上がる管理組合
多くの管理組合は「他のマンションは全く被害がないのに、なぜうちのマンションだけ」という明らかな差に違和感を感じながらも、施工不良を立証する手立てを持たず、数千万円を超えるお金を自己負担してきました。
ですが、外壁タイルの剥落は、施工方法の「ルール違反」が原因になっていることがわかってきています。剥落したタイル片を科学的に検査したり、外壁にある構造スリットの位置との関連性を調べるなどして、本来あるべき性能を発揮できない状態のまま引き渡されていたことが検証でき、売主に補修費用を補償してもらえたマンションは多数存在するのです。
共用部分の不具合・被害は、建築的な知識や多くの調査・診断の経験がなければ原因を探ることが難しく、管理組合と管理会社だけでは真相解明できないことがほとんどで、結局は原因がわからぬまま管理組合負担で単に直して終わっているケースが多くあります。
ですが、納得して住み続けるためにも、どうしてその不具合が発生したのか、だれが本来その補修費用を支払うべきなのかを明らかにすることは大切なこと。
天災地変だからといって納得できない不具合が発生した際には、専門家への相談をお勧めします。