マンション住まいなら知っておきたい、エレベーターにまつわる防災トリビア

  • Update: 2019-11-05
マンション住まいなら知っておきたい、エレベーターにまつわる防災トリビア
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株式会社さくら事務所

この記事はプロのホームインスペクターが監修しています

今年は相次ぐ台風により、各地で大きな被害がありました。

停電で長期間にわたり不便を強いられたタワーマンションも大きく報道されました。

災害時、マンションでの生活に大きく影響するのが、「エレベーターの停止」です。

ここでは、災害とマンションのエレベーターについて、さくら事務所のマンション管理士が解説します。

災害時にエレベーターが使えず、生活に大きな影響するのは、何もタワーマンションや高層階に限ったことではありません。

災害の記憶が新しい今だからこそ、多くの方に知っていただきたい備えです。

エレベーターに備えておくべき、防災備品

タワーマンションなどの大規模マンションでは導入し始めたところもありますが、まだまだ普及していないのが「エレベーター内の防災備品」

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(画像は、ナカバヤシ株式会社より「非常用備品ボックス」)

東日本大震災の際には、首都圏でも多くのエレベーターで閉じ込めがありました。

都内では最長9時間閉じ込められたというケースもありましたが、懸念される南海トラフ沖地震など、もし交通インフラに影響があれば、より長時間の閉じ込めも可能性があると言われています。

参考:お役立ちコラム「災害時、マンションのエレベーターに閉じ込められてしまったら?」

長時間エレベーターから出られなくなってしまったら・・・、そのときのためにエレベーター内に備えておこいたいのが、防災備品です。

エレベーター内の壁や隅に災害用備品のボックスが取り付けられているのを見たことがあるかもしれません。

キットとしてセットで販売されているものも多く、救助が来るまでエレベーター内で長時間過ごさなければならないことを想定した、飲料水やライト、簡易トイレやブランケット、救急用品やポケットティッシュなどが含まれています。

中でも欠かせないのが、簡易トイレです。長時間の滞在を余儀なくされたときに必ず必要になります。

災害時のマンションのエレベーターということ、タワーマンションがどうしても思い起こされがちですが、エレベーター内の防災備品は実は一般的な規模のマンション程、必要性が高いかもしれません。

原則として閉じ込めが発生している建物が優先とされていますが、保守点検会社の人が限りある人員の中から、病院等、弱者が利用する建物や公共性の高い建物から優先して駆け付けるということになっているため、一般の建物は優先順位が低く、閉じ込めが多数発生した場合には復旧までにかなり時間がかかる可能性があるのです。

(病院や警察署、不特定多数の人の出入りする建物、大規模マンション、中小規模マンション、個人住宅、という風です。)

つまり、同じ閉じ込めがあった際にも、影響を与える人数が多いと思われるタワーマンションや大規模マンションに比べ、一般的な規模のマンションは復旧が遅れてしまう可能性があるのです。

お住いのマンションのエレベーターの収容人数に合わせて、適切な防災備品をエレベーター内にも備えておくことをお勧めします。

非常用エレベーターを活用した避難誘導も

「非常用エレベーターは、救助のためのもので災害時にも使用できない」というのは、既に広く知られるところとなりましたが、一定の条件を満たすことで、災害時に階段での避難が難しい歩行困難者の避難のために使用できるケースもあります。

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この標識のついたエレベーターでは、各階でエレベーターの前が「一時避難エリア」になっており、階段での避難が難しい歩行困難者はそこで消防隊の待機を待つことができます。(安全のため、階段での避難が可能な方は迅速に避難しなければいけません)

駆けつけた自衛消防隊により、そのエレベーターで避難できるのです。

ただ、このシステムを導入するには、消防署長に届け出し、検査を受け、事前の訓練をし、なおかつ、避難誘導時にエレベーターを操作する要員として、防災センター要員講習終了者、自衛消防技術認定証保有者などの専従員が必要になります。

非常用エレベーターを避難誘導に活用できる建物にのみ、上の標識が設置されます。

若干ハードルは高くなりますが、来たる居住者の高齢化を前に、非常用エレベーターの付いているマンションでは検討されていみてはいかがでしょうか?

災害時、お住まいのマンションのエレベーターはどうなる?

災害時、お住まいのマンションのエレベーターがどうなるか?も知っておくといいでしょう。

通常、エレベーター利用時に火災が発生した場合であれば避難階(通常、1階)まで直通して停止、地震の場合には最寄り階で停止します。

停電になった際(火災が起きていなければ)自家発電機で一般用エレベーターへも電気が供給されるものや、自動火災報知機が発報すると連動して避難階に停止した後は動かなくなるもの、自動診断技術を応用して、異常がなければ通常運転に自動的に復旧するシステムが搭載されているエレベーターもあります。

また、防災設備が異常を感知した場合にエレベーターが連動して、どういった状態になるのか?を知っておくことも災害時のパニックを防ぐためには重要です。

火災発生時など、マンションのオートドアも強制的に開くタイプ(パニックオープン)と閉じるタイプ(パニッククローズ)がありますので、確かめておくといいでしょう。

例えば、このようなケースがあります。

【ケース1】
あるマンションでは、火災発生により、自動火災報知機警報が発報。
それを受けてエレベーターは避難階(最寄り階ではありません。通常1階)に直行して停止、さらに共用部分の空調機が止まり、メインエントランスのオートロックドアが電子錠で閉鎖されました。
避難ルートは確保しつつ、外からオートロックドアを通じて危険なエリアに人が入らないように閉鎖されたのです。
(自動火災報知機と連動して、オートロックが開かなくなるというケースは珍しくありません。)

【ケース2】
微振動(P波)を感知したエレベーターが最寄り階で停止、地震によりスプリンクラーが誤作動を起こしました。
火災が起きたものとして自動火災報知器の警報ベルが鳴り、さらにサイレンとともに、非常放送設備の音声警報(「火災が発生しました、火災が発生しました」というアナウンス)も鳴り響きました。

警報ベルがなり、サイレンとともに火事のアナウンスが全館に響いてしまうと、状況がわからずパニックになってしまう可能性も高いでしょう。

防災設備は整っていればいるほど、その機能が周知されていないと、災害時にパニックになる可能性があります。

お住いのマンションにどういう消防・防災設備がついていて、それが各設備にどのように連動しているのか?

今一度しっかり確認し、今後の防災訓練にも活かしてみてはいかがでしょうか?

専門家のアドバイスをご希望の方は、お気軽にさくら事務所のマンション管理士までお問合せください。

 

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佐藤 健斗
監修者

佐藤 健斗

新卒で電鉄系の資産管理会社にて、鉄道会社の保有資産(駅舎・高架下など)の活用や店舗開発を経験。
その後、不動産のコンサルティング会社にて、主に地主様・家主様向けに売買・賃貸管理・有効活用など多角的なコンサルティングを行う。

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ホームインスペクション(住宅診断)をはじめとする個人向け不動産コンサルティングや管理組合向けコンサルティングを行っている。400を超えるマンション管理組合のコンサルティング実績をもち、大規模修繕工事や長期修繕計画の見直し、瑕疵トラブルなどの管理組合サポートサービスを提供している。

【監修】さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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