近年の建設工事費用の高騰に大規模修繕工事を延期する、延期を検討している分譲マンションがあります。
その裏には「今の建設工事費用高騰の原因でもある、2020年の東京オリンピック以降なら、工事費は安くなるのでは?」という読みがあるようです。
はたしてオリンピック以降、本当に建設工事費用は安くなるのでしょうか?
ここでは、オリンピック後の大規模修繕費用が安くならない、その3つの理由を解説します。
オリンピック後、大規模修繕工事費が安くならない3つの理由
①オリンピック終了後に需要が集中してコストアップ
オリンピック以降、工事費高騰を受けオリンピック以降に大規模修繕工事を延期したマンションと、新築時の計画通りにその頃に大規模修繕工事を行うマンションと、同時期に大規模修繕工事の需要が発生します。
本来、大規模修繕工事は受注の予測が立てやすいものでしたが、このように一部のマンションで工事を延期してしまうと、その後の需要が集中してしまい、工事費の高騰に繋がります。
②ますます深刻化する建設業界の人手不足
慢性的な人手不足に悩まされる建設業界。
これまで、職人の高齢化も問題視されていましたが、今後はその高齢者層も引退を迎え、ますます人手不足は深刻化していくでしょう。
経験不足な未熟な職人が現場に出ることにより、施工精度が落ちる、工期が延びるなどの工事への影響も考えられます。
大規模修繕工事においては、施工精度が落ちれば、修繕周期がおのずと短くなり、修繕積立金を圧迫する可能性も考えられます。
オリンピック需要は建設工事費の高騰の要因の1つに過ぎないのです。
③供給戸数の多かった時代のマンションが最初の大規模修繕工事を迎えている
今、第1回目の大規模修繕工事を見送っている・見送りを検討しているのは、2003 ~2007年頃に竣工したマンションが多いと思われますが、分譲マンションの供給戸数の推移を見ると1994年から急激に増加し始め、2008 年のリーマンショックまで高水準で推移しています。
①に挙げたように、同様に一定の分譲数のあった2008~2010年のマンションも、2020 年以降に予定通りに最初の大規模修繕工事を行います。
供給戸数の多かった時代のマンションの最初の大規模修繕工事の時期が重なるため、更なる需要逼迫・工事費高騰が予測されます。
価格だけで施工時期を判断しない
大規模修繕工事は予定通り行うことがすべてではありませんが、いずれにしろ適切な時期に適切な工事を行う必要があります。
単に価格のみで施工時期を判断するのではなく、建物の状態を確認したうえで判断することが大切です。
価格が高い時期には緊急性を伴う箇所だけ補修を行い、その他については時期を検討する(分割して補修)という考え方もあります。
緊急性を伴う補修が必要な箇所の有無などをあらかじめ専門家に確認してもらうという手もあるでしょう。
更に、施工の時期も重要ですが、施工会社の選定方法も重要です。
透明性・公正性の高い選び方で施工会社を選ぶことで、無駄な工事や割高な工事費用を避けられれば、これほど合理的なコストダウン方法はありません。
修繕時期、工事内容、施工会社選定とトータルして考えたいところですが、組合だけでは難しいと思うようであれば、第三者によるコンサルティングも検討してみてはいかがでしょうか?