管理会社に大規模修繕工事を発注する際のメリット、デメリット

  • Update: 2021-03-27
管理会社に大規模修繕工事を発注する際のメリット、デメリット
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株式会社さくら事務所

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

マンションで大規模修繕工事の施工をどこに依頼するか?と考える際、多くのマンションでは管理会社も選択肢の1つにされるでしょう。

実際、国土交通省が行った「平成30年度マンション総合調査」によれば、大規模修繕工事の依頼先として「(管理委託契約をしている)管理会社」が28.3%と最も高い数字となりました。

参考:平成30年度マンション総合調査結果の概要

管理会社に大規模修繕工事を依頼する場合、メリットもありますが同時に注意点もあります。

ここでは、さくら事務所で大規模修繕工事のコンサルティングを行うコンストラクション・マネージャーが管理会社に大規模修繕工事を発注するメリット、デメリットとその対策について解説します。

大規模修繕で失敗しないための3ステップ

管理会社に大規模修繕工事を依頼するメリット

①馴染みのある担当者のサポートが受けられるため安心感がある

多くの方が初めての経験となるマンションの大規模修繕工事ですから、長年に渡る信頼関係ができていれば、馴染みのある管理会社に依頼することで安心できるという方もいらっしゃるでしょう。

普段出入りしていない工事会社がマンションに出入りするのに抵抗がある、と感じられる方もいるかもしれません。

②管理組合や理事会の負担が少ない

大規模修繕工事の発注方式にもよりますが、管理会社に大規模修繕工事に関して一任することで、組合の負担は大きく減らすことができるでしょう。

管理会社以外の選択肢を考えていないような場合、合い見積もりを取る必要もなく、契約までスピーディーに進めることができるのもメリットでしょう。

理事会や修繕委員が多忙でなかなか話を進められない、準備に時間が取れない、というマンションの場合、大規模修繕工事に向けの準備がしっかりできなかったり、先延ばしにせざるを得ないようなケースもありますが、日ごろから付き合いのある管理会社にお願いすることで、計画にあたり理事や修繕委員の負担を抑えつつ進めることもできるでしょう。

③工事完了後の不具合も、管理会社が窓口なので負担が少ない

大規模修繕工事の完了後に不具合が発覚することも珍しいケースではありません。

そのような場合も、管理会社に依頼した工事であれば、日ごろのマンション管理業務と一体でフォローしてもらえますので、安心感につながります。

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管理会社に大規模修繕工事を依頼する場合の注意点と対策

①工事価格が不透明になりやすい

日頃付き合いのある管理会社ですから、マンションの修繕積立金の残高も当然把握されています。これは「大規模修繕工事を前に、現在支払える金額を知っている」とも言えるでしょう。

実際、管理会社に大規模修繕工事の見積もりを依頼する際、「修繕積立金の9割くらい」「修繕積立金にちょっと足りないくらい」といった金額を提示されるマンション管理組合が少なくありません。

信頼関係ができているとはいえ、管理会社も利益を確保しなければいけません。管理会社が下請けに依頼する際、管理会社がいくらの工事に対し、いくら上乗せして発注しているのかはわかりません。

「支払える金額を踏まえた上で金額が提示されているのではないか?」と疑問に感じる方のお問合せはさくら事務所にも多数寄せられます。

管理会社を通すことである程度の安心を得たいということであれば、管理組合が施工会社を選定した上で、その施工会社の工事費に元請監理費を上乗せ(11~15%程度)して、 管理会社と請負契約を結ぶ「コストオン方式」という手法もあります。費用のブラックボックス化も防ぐことができるでしょう。

管理組合は管理会社と請負契約を、管理会社は施工業者と下請け工事契約をそれぞれ結ぶことになります。

管理組合と施工会社との間で工事費を決めるため、工事費の透明性が高く、談合やリベートを排除できる可能性高くなりますが、業者選定のノウハウが乏しい管理組合では、コンサルタント会社等に依頼する必要があります。

関連サービス…大規模修繕工事 コンサルタント業務(プロポーザル方式)

②競争原理が働かなければ費用が割高になることも

他社を検討することなく「普段お付き合いのある管理会社だから…」と特命随意契約のかたちで管理会社に工事を発注するケースだと、管理会社からすれば見積もりを比較される心配もないため、競争原理が働かなくなります。

結果として、費用が割高になる可能性は高いでしょう。

管理会社に依頼することも視野に入れながら、適正な金額で大規模修繕工事を発注したいとお考えであれば、見積合わせ方式に管理会社に参加してもらうという方式もあります。

とはいえ、見積合わせ方式の場合、参加する施工会社による談合が行われていないことが前提です。

「工事会社は住民からの公募も含め3社以上を募り、管理会社だけの推薦はさせない」また「見積書は必ず理事長宛てに提出させ、業者選定の会議の場で一斉に開封する」などして、談合の芽を一定程度つむことができます。

管理会社への依頼ありきで検討されている場合、外部のコンサルタントを起用し、見積もり金額や工事内容について精査してもらうという方法で割高な工事を発注してしまうリスクを減らすこともできます。

③施工品質のチェックが難しい

管理会社が元請けとして契約しつつ、実際の工事は下請けの工事業者が行われるというケースはよくありますが、管理会社と下請け会社が馴れ合いの関係にある場合、施工状況のチェックを元請けである管理会社が適切に行うのは難しい可能性が高いでしょう。

マンション管理組合の中に修繕工事に明るい方がいれば、施工品質のチェックが可能になるかもしれませんが、基本的にこのような場合は、外部の第三者に施工品質のチェックを依頼されることをお勧めします。

コンサルタント会社やマンション管理士、設計事務所に依頼してもいいでしょう。

関連サービス…大規模修繕工事品質チェック

「管理会社に大規模修繕工事を依頼するのはダメ」ということではない

「大規模修繕工事を管理会社に依頼すること自体ダメ」といった意見もインターネット上には見られますが、それ自体が悪いことでは決してありません。

ですが、「日ごろからお世話になっているから安心」「大手分譲のマンションなので他の工事業者を入れるより安心」といった理由だけで盲目的に管理会社に依頼するのは要注意です。

管理会社に依頼する場合に限ったことではありませんが、それぞれの注意点・対策を踏まえ、最適な手法を選定できればいいでしょう。

マンション管理組合の性格やマンションの規模などによっても、最適な大規模修繕工事の進め方はそれぞれ異なります。

大事な修繕積立金を無駄にせず、大規模修繕工事を成功させるために、入念な情報収集の上、最適な進め方を検討しましょう。

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鬼塚 竜司
監修者

鬼塚 竜司

新築工事にてマンションや複合施設の給排水および空調設備の工事管理を経験後、マンション管理会社の修繕工事部門にて、工事企画及び工事管理を14年間経験(管理職含む)。大規模修繕80棟以上、給排水管更生更新30棟以上、窓サッシ改修工事等補助金対応工事10棟以上、機械式駐車場入替、インターホン改修工事など、マンション全般の工事を経験。長期修繕計画の作成500回以上。2021年6月株式会社さくら事務所へ参画。

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株式会社さくら事務所

ホームインスペクション(住宅診断)をはじめとする個人向け不動産コンサルティングや管理組合向けコンサルティングを行っている。400を超えるマンション管理組合のコンサルティング実績をもち、大規模修繕工事や長期修繕計画の見直し、瑕疵トラブルなどの管理組合サポートサービスを提供している。

【監修】さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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