昨今、物価の高騰などにより、修繕積立金の大幅な値上げが問題視されています。本来必要な修繕資金が足りずに修繕積立金を値上げせざるを得ないマンションが増えているのです。
マンションの将来を考えると修繕積立金の値上げは悪いことではありません。「自分のマンションの修繕積立金がいつ値上げされるのか」事前に把握して備えておくことが大切です。
本記事では修繕積立金が値上げされやすいタイミングや値上げ予定の調べ方を解説します。値上げが必要になる背景についても触れているため、納得して修繕積立金を支払うためにも、ぜひ参考にしてください。
目次
修繕積立金が値上げするタイミング
修繕積立金は大きな支出があるときに値上げされやすいです。とくに以下5つのタイミングで値上げされる傾向があります。
・大規模修繕の前後
・長期修繕計画を見直すとき
・想定外の工事が発生したとき
・大型設備の更新が必要な築30~40年前後
・段階増額積立方式で計画されているタイミング
順に詳しくみていきましょう。
修繕積立金の値上げ幅については下記記事をご覧ください。
修繕積立金はどこまで上がる?深刻な実態と今後の動向、注意点を解説
大規模修繕の前後
十数年に一度実施される大規模修繕の前後は、修繕積立金が値上げされやすいです。
修繕積立金は大規模修繕のために計画的に積み立てられていますが、工事は必ずしも予定通りに進むわけではありません。予定よりも劣化が進んでいたり、劣化の範囲が想定していたよりも広かったりすると、追加工事が発生します。
多額の修繕費用が追加されるため、修繕積立金の値上げが必要になるのです。
長期修繕計画の見直すとき
長期修繕計画を見直すときも修繕積立金が値上げするタイミングです。計画の修繕項目や内容が変更になると、必要な修繕費用も変わります。
修繕計画に変更がなかったとしても、資材や人件費の高騰により工事単価が上がっていれば、修繕積立金も値上げしなければいけません。
想定外の工事が発生したとき
事故や災害などが原因で想定していなかった工事が発生し、多額の修繕費用が必要になることも。想定外の修繕費用を補うために修繕積立金が上がる可能性があります。
また長期修繕計画で漏れていた工事があった場合も、修繕積立金に余裕がなければ、値上げして資金を確保しなければいけません。
玄関ドアや窓サッシの交換など、共用部と専用部の線引きがあいまいになりやすい項目は、長期修繕計画から漏れている可能性があるため要注意です。
大型設備の更新が必要な築30~40年前後
築30~40年前後は大型設備の更新で、資金不足に陥りやすい時期といえます。たとえば、エレベーター・機械式駐車場・給排水管の更新などです。
エレベーターと機械式駐車場は、メーカーの保全計画で更新時期が決められていますが、給排水管は使われている管の種類や劣化状況によっては、更新時期を遅らせられるかもしれません。更新時期を見極めるために、劣化診断を活用しましょう。
段階増額積立方式で計画されているタイミング
修繕積立金の積み立て方式が「段階増額積立方式」の場合は、計画されているタイミングで値上げされます。
段階増額積立方式は、段階的に値上げされることを前提として、徴収額が決定している積み立て方式です。値上げの時期とタイミングがあらかじめ決まっています。
もう一方の均等積立方式は、基本的に徴収額はかわりません。ただし、想定外の工事や単価の上昇などにより修繕資金が足りなくなる場合は、値上げすることもあります。
修繕積立金の値上げは総会決議で決定される
修繕積立金の値上げは総会決議を経て決定されます。
修繕積立金の金額変更は普通決議事項です。ただし修繕積立金の具体的な金額が管理規約に記載されている場合は、管理規約の変更にあたるため、特別決議事項になります。
修繕積立金の値上げが可決されるためには、普通決議の場合議決数の過半数、特別決議の場合4分の3以上の賛成が必要です。特別決議のほうが、修繕積立金を値上げするハードルが少し高くなります。
修繕積立金が値上げするタイミングの調べ方
マンションの修繕積立金が値上げするタイミングを調べたいときは「重要事項に係る調査報告書」を確認しましょう。
重要事項に係る調査報告書では、すでに総会で決定されている修繕積立金の値上げのタイミングや金額、修繕積立一時金の徴収予定まで調べられます。
総会では決定されていない値上げの予定を調べたいときは、長期修繕計画をみてみましょう。
国土交通省の長期修繕計画標準様式にある「修繕積立金の額の設定」では、値上げのタイミングと値上げ後の金額がどのように計画されているのか記すことになっています。ただし、あくまでも計画段階のため確定事項ではありません。
総会で値上げが承認されなかったらどうなる?
修繕積立金の値上げが必要であるにもかかわらず、総会で可決されなかった場合、必要な修繕ができなくなります。修繕資金を確保するためには、金融機関から借り入れたり区分所有者から一時金を徴収したりしなければいけません。
借り入れる場合は、長期にわたり返済が続き会計を圧迫します。一時金の徴収は区分所有者の負担が大きくハードルが高いです。どちらも一時は資金不足をしのげたとしても、いずれまた修繕積立金は足りなくなります。
深刻な資金不足に陥る前に、修繕積立金を適正に値上げして財務状況を立て直すことが得策です。
下記動画では修繕積立金不足したマンションがどうなるのか詳しく紹介しています。
修繕積立金の値上げのタイミングを先延ばしにせず計画的に積み立てよう
修繕積立金が値上げされる可能性が高いのは、大規模修繕の前後や想定外の工事が発生したとき、設備の更新で多額の費用がかかる時期などです。
自分のマンションの修繕積立金が値上げされるタイミングを知りたいときは「重要事項に係る調査報告書」や「長期修繕計画」で確認しましょう。
できれば避けたい修繕積立金の値上げですが、必要な値上げを先延ばしにするほど資金不足は深刻になり、かえって区分所有者を苦しめます。
修繕積立金を値上げするタイミングを逃さず適正額に設定することは、長く安心して住み続けられるマンションであるため、および資産価値を維持するために非常に重要です。
さくら事務所では、第三者の中立な立場で長期修繕計画を見直し、修繕積立金の徴収額が妥当かチェックするサービスを実施しています。
修繕積立金の値上げが必要な場合は、合意形成のサポートも可能です。
850件を超えるサポート実績からマンションの将来像を的確に予見したアドバイスができるため、修繕積立金の値上げに関して疑問や不安がある方はお気軽にご相談ください。