大規模修繕工事におけるコンサルタントの役割と選び方

  • Update: 2020-11-16
大規模修繕工事におけるコンサルタントの役割と選び方
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さくら事務所 編集部

マンション大規模修繕工事のコンサルタントとは、建物の状況を確認し、工事箇所や実施時期のアドバイスをおこなったり、施工会社を選定する際の各種支援を行い、マンション管理組合がスムーズに大規模修繕工事に関する作業を進める上で重要な役割を担っています。

大規模修繕工事の成功はコンサルタント選びも大切な要素の一つと言えます。

ここでは、マンションで大規模修繕工事を行う際のコンサルタントの役割と選び方について解説します。

大規模修繕工事におけるコンサルタントの役割とは?

大規模修繕工事のコンサルタントの役割マンパワー的に理事会役員以外のメンバーを募ることが厳しい小規模なマンションなどを除き、通常の審議事項に加えて大規模修繕の検討まで理事会のみで審議することは困難です。

そこで、大規模修繕工事に向けた一般的な手順として、諮問機関として大規模修繕を検討するための専門の委員会「修繕委員会」を設立します。

管理会社からのサポートなどだけで大規模修繕を検討される管理組合もありますが、多くの管理組合では(特に規模が大きい管理組合ほど)、外部のコンサルタントを起用するケースが多いでしょう。

コンサルタントを選ぶ方法としては、管理会社からの紹介、管理組合で公募する、インターネットや評判を頼りに直接アプローチするなどの方法があります。

大規模修繕工事におけるコンサルタント業務は主に以下の3つになります。

建物劣化診断

まず、そもそも大規模修繕工事を行う必要があるのか?建物の劣化状況を確認して判断します。

大規模修繕工事を計画するにあたって「どこをいつ修繕すればいいのか?どこが劣化しているのか?」を把握するために建物全体の調査を行い、この調査で調べた内容をもとに大規模修繕工事の工事内容を検討します。

管理会社が無料で行ってくれるケースや、設計監理方式を勧めるコンサルタント会社がコンクリートの中性化試験など高額で詳細な調査を行うケースもあります。

施工会社選定

どの施工会社に依頼すべきか?見積やその会社の施工実績・能力から、最適な施工会社を選定します。

大規模修繕工事の施工会社選定方式には「責任施工方式」「設計監理方式」「プロポーザル方式」などさまざまな手法がありますが、建築の専門用語や工事の仕様、工事の適正価格について一般の方が判断するのは困難です。

そこで、専門家知識を持つコンサルタントが最適な施工会社を選定するための管理組合のサポートを行うのです。

設計や工事内容のチェック

大規模修繕工事のおける、「設計業務」「工事監理業務」もコンサルタントの業務の1つです。

大規模修繕工事を行うにあたって、工事内容や仕様などの改修の「設計」を行い、更に設計通りにきちんと工事が行われているかをチェックする「監理」の業務です。

工事中のチェックは、一般の方には難しいので管理組合に代わってコンサルタントが工事をチェックしてくれれば安心が得られる、というメリットもあるでしょう。

大規模修繕工事のコンサルタントを選ぶ6つのポイント

大規模修繕工事のコンサルタントの選び方では、実際にコンサルタントを選ぶ際には、どのようなポイントを見ればいいのでしょうか?

①管理組合のスタンスとあっているか?

大規模修繕工事のコンサルタントを依頼するにあたり、まず管理組合としてどのようなスタンスで付き合うのか?も重要なポイントです。

「管理組合が主導となって行うつもりだが専門知識がないので適切な金額・工事かをアドバイスしてほしい」と思う管理組合、また「時間がないので自分たちの代わりにいろいろやってほしい。できればお任せしたい」という管理組合もあります。

ですがここで気を付けたいのが「お任せしたい」と思う管理組合です。

「うちにお任せしてくれればなんでもやります」というコンサルタントもいますが、見えないところで施工会社と癒着して合い見積もりに参加する業者に談合させるようなケースもあります。

「お任せするには一定のリスクがある」ということは覚えておきましょう。

②管理組合の方針を理解してくれるか?

マンション管理組合がマンションをどう維持管理していくのかの方針も重要です。

例えば、「建物の機能が維持できればそれでいい」と考えるのか、「常にベストコンディションを保っていたい」と考えるのか等、建物の維持管理についての管理組合の方針を理解し、実践できるコンサルタントに依頼できるといいでしょう。

コンサルタントの中には「自身の得意なやり方を提案する」タイプもいますが、「組合の考えを汲んで提案する」タイプとがいます。

施工会社選定方法のメリット・デメリットもきちんと説明してくれるかどうかも重要なポイントです。

③類似のケースのコンサルティング実績があるか?

大規模修繕工事の実績がどれだけあるのか?も確認しておきたいところでしょう。

ここで注意したいのが、「これまでに全部で何件?」といった実績数の確認だけでなく、お住まいのマンションと類似したマンションや似たようなケースの実績についても確認しておきましょう。

タワーマンションの実績はどれだけあるのか?外断熱のマンションの実績はあるのか?次回、大規模修繕工事までの期間を伸長したいが、高耐久化の工事の実績はあるのか?といった風に、お住まいのマンションのタイプに照らし合わせて確認しましょう。

④管理組合運営の知識は十分か?

大規模修繕工事のコンサルティングには工事の知識だけではなく、マンション管理組合運営の知識も不可欠です。

どれだけ建築の知識があったとしても、管理組合の運営のルールや経験がしっかりと身についていないと、組合の運営に照らした際に、支障をきたしてしまうのです。

建築と組合運営とそれぞれのスペシャリストが連携しながら得意分野を担当する、というかたちが理想的です。

⑤大規模修繕工事の実施ありきになっていないか?

劣化診断をお願いした場合なら、それが「大規模修繕工事の実施ありきの劣化診断になっていないか?」ということも今後のコンサルティング業務を依頼するかどうかのポイントです。

「工事実施時期を適切に判断する」より、「長期修繕計画に沿って工事実施を後押しする」場合が多いため注意が必要です。

建物の劣化診断の結果、工事を先延ばしするという選択肢もあるかもしれません。

とはいえ、施工会社選定や工事品質チェックなどの後から受注できるであろう業務を考えると、コンサルタントから「工事の先送りも可能」と教えてくれないケースもあります。

築10年を超えたマンションは劣化しているのは物理的に当然ですので、「早々に工事を行う必要があるのか?」「部分的な補修でも問題ないのか?」を第三者として客観的に報告をしてくれるコンサルタントに依頼しましょう。

⑥公平・中立性は保たれるのか?

大規模修繕工事のコンサルタンティング業務を行うのは、主に、設計事務所、マンション管理士事務所、建物調査会社などです。

そのマンションや大規模修繕工事そのものに利害関係がある場合、公平性・中立性を保つのは難しいと考えた方がいいでしょう。

例えば設計監理方式で、設計者と監理者を兼ねる場合。

設計者は工事を受注させる施工会社からリベートを受け取るようなケースがあります。このような関係で、その後の施工状況を客観的に厳しく指摘できるでしょうか?

また、劣化診断の結果まだ大規模修繕工事を実施しなくてもいいとわかっても、設計業務を受注したいがために工事の実施を進めてくるコンサルタントもあります。

実際にさくら事務所のセカンドオピニオンで大規模修繕工事を先延ばししても問題ないことが分かったというケースは多々あります。

本来、管理組合の立場にたって大規模修繕工事をサポートすべきコンサルタントですが、利害関係から管理組合にとってベストな提案ができなくなる可能性があります。

設計監理方式が生み出す「不適切コンサル」とは?

2017年1月、国土交通省が「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」という通知を出しました。

「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」

「不適切コンサルタント」などともいわれていますが、国土交通省の通知において、次の3つの事例が紹介されています。不適切コンサル

① コンサルタントに業務を依頼したが、実際に調査診断・設計等を行っていたのは同コンサルタントではなく、施工会社の社員であった。コンサルタント(実際には施工会社の社員)の施工会社選定支援により同施工会社が内定していたが、発覚が契約前だったため、契約は見送り。

② 設計会社が、施工会社の候補5社のうち特定の1社の見積金額が低くなるよう操作し、当該1社が施工会社として内定したが、契約前に当該事実が発覚。管理組合が同設計会社に説明を求めると、当該設計会社は業務を辞退。

③ コンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導。

これらが横行する「設計監理方式」は従来、「高額で不透明なマンション管理会社元請方式」に対抗することを目的の一つとして設計事務所が発展させてきたものですが、いつのまにか悪事に手を染める設計事務所が蔓延していたのです。

残念ながら、巧妙な手口なため「実際に談合をされた」という事実を裏付けるような確証がとれないのが、この問題の難しいところです。

せめて被害に遭わないようにするためにはどうしたらいいのでしょうか?

かつてはその透明性から選ばれてきた設計監理方式ですが、その透明性がかえって談合がしやすい仕組みを生んでしまったのは先ほどの通りです。

一定の設計仕様書に基づいて金額だけで比較するという設計監理方式の仕組みそのものが、談合を可能としているため、工事仕様書に基づかずに、施工会社に自由に提案させるコンペ方式(さくら事務所では「プロポーザル方式」と呼んでいます)で見積をとることで、業者同士の談合やリベートといった不適切コンサルの被害を避けることができます。

プロポーザル方式は、そのマンションに適した修繕方法や施工会社を選択するための手法ですが、副次的な効果として、施工会社間でのシンプルな価格比較をできなくすることにより、一定程度、談合を防ぐ効果が期待できるのです。

関連コラム・・・設計監理方式ではマンションの大規模修繕工事の談合は防げない

コンサルタント選びは、建物維持管理の知見を深めるチャンス

ですが、そもそも「大規模修繕工事に関する情報がないので、マンションの維持管理の方針も自分たちにあったコンサルタントも決められない」というマンションもあるでしょう。

そのような場合は、さまざまなやり方のコンサルタントに声を掛け、話を聞いてみることをお勧めします。

いろいろなコンサルタントの考え方ややり方を聞くことで、選択に繋がります。少ない選択肢の中で選ぶより、納得できる結果になるでしょう。

(これは大規模修繕工事に限らず、マンション管理組合でコンサルタントを選ぶすべてのケースにおいて言えることです)

複数のコンサルタントに声を掛け、話を聞くのも理事・修繕委員の皆さまにはそれなりの負担が生まれます。

ですが、そのプロセスは建物の維持管理や大規模修繕工事の知見を深める機会でもあります。

そこで得られた知識は、今後のマンションの維持管理をしていく上でのベースになるかもしれません。

 

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