マンション屋上防水の劣化のサイン、建物への影響は?

  • Update: 2020-11-03
マンション屋上防水の劣化のサイン、建物への影響は?
writer01
株式会社さくら事務所

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

マンションの屋上防水は、建物への雨水の浸入を防ぐための重要なポイントです。

屋上はなかなか普段の生活の中では目にすることはありませんが、建物の健全な状態に維持するために定期的に劣化や不具合をチェックししたいものです。

今回はマンション屋上防水について劣化のサインや、屋上防水の不具合が建物に及ぼす影響について解説します。

大規模修繕で失敗しないための3ステップ

マンション屋上防水の種類

屋上防水の種類は、大きく3つに分けることができます。

・アスファルト防水
もっともポピュラーな防水で施工実績ももっとも多いでしょう。

比較的耐用年数が長いのが特徴ですが、工事中に臭いが発生することがあり、平ではない複雑な個所には使用できないケースもあります。

・シート防水
短工期、低コストで、伸縮性があります。

アスファルト防水よりは施工しやすいものもありますが、こちらも平ではない複雑な個所には使用できないケースもあります。

・塗膜防水
液体なのであらゆる形状に対応できますが、シートほどの耐久性は見込めません。

 

尚、防水を施す場所や用途、材質によって、種類はさらに細分化されます。

種類によって耐用年数に違いがあり、更にメンテナンスの仕方によっては耐用年数を縮めてしまう可能性もあります。

通常の経年劣化程度であれば多くのマンションで一般的行われる、12~15年ごとの大規模修繕工事の際に併せて補修すれば問題ありません。

ですが、専有部分と異なり、日々の暮らしの中でその不具合にも気づきにくい場所なため、さくら事務所で行う調査でも、分譲時からの不具合や施工不良が発覚することもあります。

屋上防水の劣化がもたらす建物へのリスク

では、防水層の劣化・不具合は建物にどんな影響を及ぼすのでしょうか?

①漏水

屋上防水の劣化・不具合は、放置してしまうと、剥がれた部分に雨水が浸透し、下階への漏水や、コンクリート内部の鉄筋が錆びることもあります。

内部に浸透した水は真下に落ちるとは限りません。コンクリート内部を毛細のように浸透していくため、一旦漏水してしまうと、思わぬところにまで漏水被害をもたらします。

一旦漏水被害が起きれば、原因を追及するのは非常に困難であり、補修も大掛かりなものとなります。

②コンクリートの劣化

また、防水の劣化から雨水が浸入し、コンクリートのわずかなヒビ割れから内部の鉄筋が錆びてしまうこともあります。

錆びで体積が増えた鉄筋は周囲のコンクリートを破壊し、コンクリートの劣化を引き起こします。(爆裂と言われる現象です)

屋上防水の劣化のサイン

次に、屋上の劣化・不具合のサインについて事例で解説していきます。

チェックポイント① シートにめくれやひび割れはないか?

屋上防水のシートめくれ

防水層にひび割れがあれば、そこから水が浸入し、漏水の原因になります。

アスファルト防水層がむき出しになっている工法(露出工法)では防水シートと防水シートのジョイント部分が劣化によってひび割れが生じやすくなっています。

チェックポイント② 水溜りができる箇所はないか?

屋上の水たまり

晴れた日でも水たまりの跡がくっきり残っています。

おそらく、本来水が流れるべき方向へ適切な勾配が取られていない、新築時からの施工不良と推測されます。

水が溜まった状態、または湿った状態が続くと劣化からトップコートが破断してしまい、防水層の劣化が早まる恐れがあります。屋上やバルコニーなど雨水が掛かる場所には、適切な勾配が必要です。

チェックポイント③屋上パラペット・笠木などは劣化していないか?

屋上の笠木のヒビ

経年とともに、防水層だけではなく、防水層廻りの屋上パラペットや笠木なども劣化します。

まだ防水層がしっかりしていても、写真のような笠木のひび割れやシーリングの劣化が防水層の下にまで達してしまうと、そこから漏水が起こるケースがあります。

そう簡単に起こるわけではありませんが、防水層の劣化だけを心配していると、思わぬところから水が回り、漏水が発生することがありますのであわせて注意が必要です。

チェックポイント④排水溝廻りに汚泥が溜まっていないか?

屋上の雑草

排水溝周りや伸縮目地の隙間に汚泥が堆積し、そこに飛来した種が芽吹き雑草が生えています。

雑草が伸びてしまうと、根が防水層を傷付けてしまっている恐れがあることから、引き抜くことすらできなくなります。

ドレイン(排水口)にゴミがたまり、排水が適切に行えないと、ドレインまわりに水が溜まり、防水層の劣化を早める原因ともなります。ドレイン周りにごみが溜まっていないかも確認したいところです。

管理会社の定期的な点検で状態を把握しましょう

屋上の点検屋上防水は、通常トップコートなどの保護シートでおおわれていますので、即防水層が傷ついて漏水に繋がることはありませんが、このまま放置してしまうと保護シートが劣化することで防水層の保護機能が低下することは避けられません。

ですが、保護シートの劣化によって、防水層が傷つきやすくなることが考えられます。

管理会社に定期的に点検を依頼し、状況を確認できるようにしておきましょう。

逆に、写真の事例のように汚泥やゴミが堆積し、雑草が生えてしまっているようであれば、管理会社が点検していない可能性や、そもそも屋上が点検項目となっていない可能性もあります。

委託契約書の内容を確認するとともに、しっかりと点検されているかどうかも確認しましょう。

一般的な劣化であれば大規模修繕工事のタイミングで補修することになるかと思いますが、築年数が浅ければアフターサービスのタイミングで補修できる箇所がないかしっかりチェックすることをお勧めします。

藤ノ木 健二
監修者

藤ノ木 健二

大学卒業後、ゼネコンに勤務し、マンション新築工事、マンション大規模修繕工事、学校、病院などの耐震補強工事の現場管理業務に従事。

おすすめのサービス

マンション共用部チェック(2年目、5年目) - マンション管理組合のミカタ
マンション共用部チェック(2年目、5年目)

屋上や外壁などの共用部分を第三者としてチェックします。内覧会が実施された専有部分とは異なり、共用部分は購入者目線のチェックがなされておりません。 「アフターサービスを確実に活用したい」という管理組合に、適したサービスです。

まずは無料相談から

050-1745-3309

受付時間 10:00~18:00(土日祝も営業)

writer01

株式会社さくら事務所

ホームインスペクション(住宅診断)をはじめとする個人向け不動産コンサルティングや管理組合向けコンサルティングを行っている。400を超えるマンション管理組合のコンサルティング実績をもち、大規模修繕工事や長期修繕計画の見直し、瑕疵トラブルなどの管理組合サポートサービスを提供している。

【監修】さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

メールマガジン登録

マンションの住み心地&資産価値アップのためのお役立ち情報をお届けします。

メールアドレス