マンションの屋上防水は、建物への雨水の浸入を防ぐための重要なポイントです。
屋上はなかなか普段の生活の中では目にすることはありませんが、建物の健全な状態に維持するために定期的に劣化や不具合をチェックししたいものです。
今回はマンション屋上防水について劣化のサインや、屋上防水の不具合が建物に及ぼす影響について解説します。
目次
マンション屋上防水の種類
屋上防水の種類は、大きく3つに分けることができます。
・アスファルト防水
もっともポピュラーな防水で施工実績ももっとも多いでしょう。
比較的耐用年数が長いのが特徴ですが、工事中に臭いが発生することがあり、平ではない複雑な個所には使用できないケースもあります。
・シート防水
短工期、低コストで、伸縮性があります。
アスファルト防水よりは施工しやすいものもありますが、こちらも平ではない複雑な個所には使用できないケースもあります。
・塗膜防水
液体なのであらゆる形状に対応できますが、シートほどの耐久性は見込めません。
尚、防水を施す場所や用途、材質によって、種類はさらに細分化されます。
種類によって耐用年数に違いがあり、更にメンテナンスの仕方によっては耐用年数を縮めてしまう可能性もあります。
通常の経年劣化程度であれば多くのマンションで一般的行われる、12~15年ごとの大規模修繕工事の際に併せて補修すれば問題ありません。
ですが、専有部分と異なり、日々の暮らしの中でその不具合にも気づきにくい場所なため、さくら事務所で行う調査でも、分譲時からの不具合や施工不良が発覚することもあります。
屋上防水の劣化がもたらす建物へのリスク
では、防水層の劣化・不具合は建物にどんな影響を及ぼすのでしょうか?
①漏水
屋上防水の劣化・不具合は、放置してしまうと、剥がれた部分に雨水が浸透し、下階への漏水や、コンクリート内部の鉄筋が錆びることもあります。
内部に浸透した水は真下に落ちるとは限りません。コンクリート内部を毛細のように浸透していくため、一旦漏水してしまうと、思わぬところにまで漏水被害をもたらします。
一旦漏水被害が起きれば、原因を追及するのは非常に困難であり、補修も大掛かりなものとなります。
②コンクリートの劣化
また、防水の劣化から雨水が浸入し、コンクリートのわずかなヒビ割れから内部の鉄筋が錆びてしまうこともあります。
錆びで体積が増えた鉄筋は周囲のコンクリートを破壊し、コンクリートの劣化を引き起こします。(爆裂と言われる現象です)
屋上防水の劣化のサイン
次に、屋上の劣化・不具合のサインについて事例で解説していきます。
チェックポイント① シートにめくれやひび割れはないか?
防水層にひび割れがあれば、そこから水が浸入し、漏水の原因になります。
アスファルト防水層がむき出しになっている工法(露出工法)では防水シートと防水シートのジョイント部分が劣化によってひび割れが生じやすくなっています。
チェックポイント② 水溜りができる箇所はないか?
晴れた日でも水たまりの跡がくっきり残っています。
おそらく、本来水が流れるべき方向へ適切な勾配が取られていない、新築時からの施工不良と推測されます。
水が溜まった状態、または湿った状態が続くと劣化からトップコートが破断してしまい、防水層の劣化が早まる恐れがあります。屋上やバルコニーなど雨水が掛かる場所には、適切な勾配が必要です。
チェックポイント③屋上パラペット・笠木などは劣化していないか?
経年とともに、防水層だけではなく、防水層廻りの屋上パラペットや笠木なども劣化します。
まだ防水層がしっかりしていても、写真のような笠木のひび割れやシーリングの劣化が防水層の下にまで達してしまうと、そこから漏水が起こるケースがあります。
そう簡単に起こるわけではありませんが、防水層の劣化だけを心配していると、思わぬところから水が回り、漏水が発生することがありますのであわせて注意が必要です。
チェックポイント④排水溝廻りに汚泥が溜まっていないか?
排水溝周りや伸縮目地の隙間に汚泥が堆積し、そこに飛来した種が芽吹き雑草が生えています。
雑草が伸びてしまうと、根が防水層を傷付けてしまっている恐れがあることから、引き抜くことすらできなくなります。
ドレイン(排水口)にゴミがたまり、排水が適切に行えないと、ドレインまわりに水が溜まり、防水層の劣化を早める原因ともなります。ドレイン周りにごみが溜まっていないかも確認したいところです。
管理会社の定期的な点検で状態を把握しましょう
屋上防水は、通常トップコートなどの保護シートでおおわれていますので、即防水層が傷ついて漏水に繋がることはありませんが、このまま放置してしまうと保護シートが劣化することで防水層の保護機能が低下することは避けられません。
ですが、保護シートの劣化によって、防水層が傷つきやすくなることが考えられます。
管理会社に定期的に点検を依頼し、状況を確認できるようにしておきましょう。
逆に、写真の事例のように汚泥やゴミが堆積し、雑草が生えてしまっているようであれば、管理会社が点検していない可能性や、そもそも屋上が点検項目となっていない可能性もあります。
委託契約書の内容を確認するとともに、しっかりと点検されているかどうかも確認しましょう。
一般的な劣化であれば大規模修繕工事のタイミングで補修することになるかと思いますが、築年数が浅ければアフターサービスのタイミングで補修できる箇所がないかしっかりチェックすることをお勧めします。