タワマンの修繕費の相場を解説!30年後の修繕積立金はどうなる?

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タワマンの修繕費の相場を解説!30年後の修繕積立金はどうなる?

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

タワマンは一般のマンションと比べ、修繕費が高い傾向があります。修繕の難易度が高いうえ特殊な設備が導入されているためです。

修繕積立金は値上げされるケースがあります。自分のマンションで修繕積立金が増額する可能性や30年後の徴収額について、気になっている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、タワマンの修繕費の相場と30年後の修繕積立金の徴収額について解説します。修繕積立金の値上げ対策も紹介するため、タワマンの修繕費に不安を感じている方はぜひ参考にしてください。

タワマンを含む大規模マンションの修繕費はいくら?

国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、大規模修繕工事の費用を戸数別に集計しています。一般的にタワマンは戸数が多い傾向があるため、ここでは「201~300戸以下」と「301戸以上」について紹介します。

まず201~300戸以下のマンションの1回目の大規模修繕の工事金額は、2億円超~2億5,000万円がもっとも多く、40%を占めていました。301戸以上のマンションは、5億円超えが37.5%と最多でした。

タワマンの大規模修繕の工事金額は、同じ戸数規模の一般的なマンションに比べると、2~3割ほど高額になる傾向があります。

実際にさくら事務所が携わったタワマンの大規模修繕の一例を挙げると、地上40階建て約800戸で約6億3千万円、地上35階建て約500戸で約6億4千万円でした。

タワマンの大規模修繕工事については、下記記事でも詳しく紹介しているため参考にしてください。

タワーマンションの大規模修繕工事とは?難しいと言われる理由や費用・実例・周期を解説

タワマンの修繕費はどうして高い?

そもそもタワマンの修繕費はどうして高いのでしょうか。タワマンの修繕費が高いのには、以下3つの理由が考えられます。

・足場を仮設できない

・設備が特殊で修理・メンテナンス費用がかさむ

・施工できる業者が限られ価格競争が生じにくい

順に詳しく解説します。

足場を仮設できない

 

タワマン(高層階)は足場を仮設できないため、ゴンドラや移動式足場であるリフトクライマーを使って工事することになります。

場合によっては、10階以下の低層階は一般的な枠組足場、中層および高層階のみゴンドラやリフトクライマーを使うことも。このゴンドラやリフトクライマーの費用が足場に比べて高額です。

一般的なマンションは大規模修繕費用の総額に対して20~25%が足場仮設費用になりますが、タワマンの場合は33~35%を占めています。

タワマンはそもそもの大規模修繕費用が高いため、通常のマンションに比べると1.1~1.2倍以上の足場(ゴンドラやリフトクライマー)のコストが高くなります。

設備が特殊で修理・メンテナンス費用がかさむ

 

タワマンは使われている設備が特殊です。高速移動するエレベーター・緊急時の救助活動をおこなう屋上のヘリポート・高層階まで水を届ける給水ポンプなど、一般のマンションでは使わないような設備がたくさんあります。

メンテナンスが必要な設備が多いうえ、ひとつひとつが高額なため、一般的なマンションよりも修繕費が高くなるのです。

なかには修繕方法が確立されていないものもあるため、メーカーと協力しながら明確にしていかないと、メンテナンス費用を想定できず計画を立てるのも難しくなります。

施工できる業者が限られ価格競争が生じにくい

 

タワマンはマンションの形状によって、足場(ゴンドラやリフトクライマーなど)の仮設方法が異なります。

工事以前に足場の仮設計画を立てることから難易度が高く、タワマンの大規模修繕をできる会社が限られているのが現状です。

一般的なマンションのように公募などにより幅広く施工会社を募集できないため、価格競争にならず金額が下がりにくくなっています。

そもそも難易度が高い工事のため、価格を下げられないというのもタワマンの修繕費が高い理由のひとつといえるでしょう。

タワマンの修繕積立金の相場

 

タワマンの修繕費は区分所有者から徴収する修繕積立金で賄われています。そのため修繕積立金も一般的なマンションに比べて高い傾向です。

マンションの階数別に修繕積立金の徴収額を比較した以下のグラフをご覧ください。

国土交通省「令和5年度マンション総合調査」をもとに作成

20階以上のタワマンの修繕積立金(駐車場使用料等からの充当額を除く)の相場は、1戸当たり月額14,025円でした。

タワマンの修繕積立金は確かに高めですが、20階未満とくに3階建て以下と比べると意外にも差が少ないと感じる方もいるのではないでしょうか。

タワマンは設備などの修繕費にお金がかかるのは事実ですが、修繕積立金を支払う区分所有者も多いため、1戸当たりの負担額は抑えられているのです。

ただし修繕積立金は築年数が経過すると値上がりする傾向があるため注意しなければいけません。

タワマンの修繕積立金が30年後さらに値上がりする理由

 

国土交通省の調査によると、段階増額積立方式のマンション249事例において、長期修繕計画の計画当初から最終年までで、修繕積立金は平均約3.58倍、うち42事例は約5.3倍値上げしていたことがわかっています。

参照:国土交通省「今後のマンション政策のあり方に関する検討会とりまとめ」

以下の理由から、タワマンの場合も修繕積立金は30年後さらに値上がりすることが予想されます。

・大型設備の交換・更新がある

・物価の高騰が続いている

順に見ていきましょう。

大型設備の交換・更新がある

 

タワマンに限ったことではありませんが、2回目または3回目の大規模修繕工事のタイミングでもある築30~40年頃には給排水管の交換やエレベーターの交換、機械式駐車場のリニューアルが必要になります。

たとえば20階まで対応しているエレベーターの費用は1台当たり2,500万円程度ですが、40~50階になると交換費用は1台1億5000万円程度になることもあり、修繕積立金が足りなくなる可能性が高いです。

また国土交通省の長期修繕計画ガイドラインには、ヘリポートや免震装置などタワマン特有の修繕工事の記載がありません。マンションの長期修繕計画にこれらが入っていない状態で修繕積立金が設定されている場合、大幅に値上げされることになるでしょう。

物価の高騰が続いている

出典:建設物価調査会「建設資材物価指数グラフ」

上記のグラフからもわかる通り、建設物価および建設資材物価は、2025年4月時点でも上がり続けています。

また、農林水産省および国土交通省が、毎年公共工事に従事する労働者の賃金から決定している「公共工事設計労務単価」の推移を見ると、平成25年から13年連続で上昇していました。

タワマンの大規模修繕は工期も長いことから、人件費の高騰も大きく影響してきます。今後も人件費の高騰が続けば、修繕積立金を値上げしないと修繕資金不足に陥ります。

参考:国土交通省「令和7年3月から適用する公共工事設計労務単価について」

タワマンは修繕費だけでなく管理費も高い

 

タワマンは修繕費だけでなく管理費も一般的なマンションよりも高いです。マンションの階数別に管理費を比較した以下のグラフをご覧ください。

国土交通省「令和5年度マンション総合調査」をもとに作成

20階以上のタワマンの管理費(駐車場使用料等からの充当額を除く)の平均額は14,415円です。修繕積立金よりもタワマン以外との金額の差が顕著に見られます。

タワマンの管理費が高い理由は、一般的なマンションよりも日常管理にお金がかかるためです。

たとえば、24時間体制のコンシェルジュや管理人の人件費、内廊下の照明・エアコン・エレベーターの電気代などは、管理費から賄われます。またジムやサウナなどのタワマンならではの施設を管理する費用も必要です。

修繕積立金と同様にスケールメリットが働くことで、一戸あたりの負担額は抑えられているとはいえ、豪華な施設やサービスに見合った管理費が必要になります。

タワマンの修繕費・管理費の値上げ対策

現在の金額設定にもよりますが、タワマンの修繕費と管理費は値上げされる可能性が高いです。

むしろ計画的に増額していかないと、修繕費や管理費が足りなくなり、マンションにとって必要な修繕ができなくなったり管理がないがしろになったりしてしまいます。

そこで大切なのが、一度に急激な増額にならないように対策することです。具体的には以下4つの対策が有効になります。

・60年で長期修繕計画を作成する

・修繕の長周期化を図る

・使われていない施設の運用を見直す

・管理委託契約の内容を精査する

順に見ていきましょう。

60年で長期修繕計画を作成する

 

一般的に長期修繕計画は30年で組まれていることが多いですが、金額の大きいエレベーターや機械式駐車場、給排水管工事などタワマンで必要な工事をすべて組み込んだ60年程度の計画に変更しましょう。

30年程度の計画で修繕積立金が足りる計算になっていても、金額の大きな工事が含まれる60年で考えると実は不足している可能性があるのです。

超長期でタワマンにかかるすべての工事費用を洗い出したうえで、修繕積立金の徴収額を設定できれば30年前後で一気に値上がりするのを防げます。

修繕の長周期化を図る

 

大規模修繕は12年周期でおこなうのが一般的です。しかし15年まで延ばせられれば60年で考えたときに、大規模修繕を5回から4回に減らせ、1回分の修繕費を削減できます。

修繕項目ごとに長周期化を図るのもよいでしょう。たとえば、マンションの内廊下のカーペット張り替えなど、足場が不要な工事は大規模修繕のタイミングで実施する必要がありません。

とくにマンション内の修繕項目は、雨風や紫外線にさらされている外部よりも劣化が進んでいないケースが多いため、修繕時期を伸ばせる可能性が高いです。

工事の段階で目先の安さだけでなく、高耐久な部材を使って修繕周期を伸ばしトータルの修繕費を削減する意識を持つことも大切になります。

使われていない施設の運用を見直す

豪華な共用施設があっても、使われていなければ管理費の無駄遣いになっていることがあります。

居住者アンケートなどで需要がない施設の運用を取りやめて、有意義な使い方に変更することで、管理費の削減だけでなく利益を生み出すことも可能です。

たとえば、昔は子育て世帯が多く活用できていたキッズルーム。マンションに住む子どもが減り、使われていないケースがあります。そのようなキッズルームを集会所に変えて外部に貸し出せば、利用料として収入を得られるかもしれません。

管理委託契約の内容を精査する

 

管理委託契約の内容を精査すれば、管理費の値上げを抑えられる可能性があります。管理会社から人件費の高騰などの理由で管理費の値上げを要請された場合、これまでと同じ管理内容だと値上げせざるをえません。

まずは委託している内容に過剰な項目がないか確かめてください。コンシェルジュや管理人の滞在時間を短縮したり清掃頻度を減らしたりするなど、管理費を値上げせずに済む方法がないか、管理会社とよく話し合いましょう。

ただし闇雲に委託内容を削減すると、居住快適性が損なわれます。どこまでを求めるのか、区分所有者の意向を確認することも忘れてはいけません。

タワマンの修繕費が足りなくなる前に対策しよう

タワマンはその構造や特殊設備により、修繕費や管理費が一般的なマンションより高額です。修繕積立金は築年数とともに上昇し、30年後には3〜5倍になるケースもあります。

タワマンは修繕方法が確立されていないものもあるため、修繕費の見通しを立てるのが難しいですが、大型設備の更新や物価高騰は避けられないため、今後さらに区分所有者の負担が増えていくことは確かです。

長期修繕計画の見直しや修繕の長周期化、管理委託契約の精査などで、修繕費・管理費の高騰に備えましょう。

さくら事務所では長期修繕計画の見直し・作成サービスを実施しています。修繕積立金の徴収額を適正に設定し、急激な値上げを避けるためには長期修繕計画が非常に重要です。長期修繕計画を5年以上見直していない場合は、ぜひ本サービスをご利用ください。

大規模修繕工事のご相談も受け付け中です。さくら事務所の経験豊富なマンション管理コンサルタントが「本当に今大規模修繕工事をやる必要があるのか」からアドバイスいたします。

タワマンの修繕費でお悩みの方、修繕積立金の値上げを不安に感じている方は、事態が深刻化する前にお気軽にご相談ください。

長期修繕計画の見直し・作成

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以下の動画では、タワマンでよくあるトラブルについて紹介しています。タワマンの修繕で役立つ情報が満載なのでぜひ参考にしてください。

 

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佐藤 健斗
監修者

佐藤 健斗

新卒で電鉄系の資産管理会社にて、鉄道会社の保有資産(駅舎・高架下など)の活用や店舗開発を経験。
その後、不動産のコンサルティング会社にて、主に地主様・家主様向けに売買・賃貸管理・有効活用など多角的なコンサルティングを行う。

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