
目次
マンションの大規模修繕「工事が始まる前」のトラブル
- 修繕委員の話合いがスムーズに進まない
- 施工会社・発注方式の検討不足で工事費が割高に順に詳しく紹介します。
修繕委員の話合いがスムーズに進まない
大規模修繕工事を進めていくうえで中心となるのが、組合員で構成される修繕委員会です。工事業者やコンサルタントの選定も修繕委員会がおこないます。
修繕委員会内でよくあるトラブルは「全員が集まれる時間がとれない」「意見がまとまらない」です。修繕委員会の理想の人数は、全員が集まりやすい5人。少なくても多くても上手くいきません。
意見がまとまらない原因は、全員が集まれる時間がとれないことのほか、大規模修繕工事に関する知識がある方が少ないことが考えられます。
修繕委員会内でどんなに話し合ってもらちがあかない場合は、専門知識のある第三者機関の介在も視野に入れましょう。
施工会社・発注方式の検討不足で工事費が割高に
大規模修繕工事は施工会社や発注方式によって、億単位で工事費が変わることがあります。
たとえば「マンションをよくわかっているから安心」「施工会社選びが大変そう」と、管理会社に設計から工事まで一任することもあるでしょう。
その場合、ほかと比較しないことで価格競争が生じません。
また管理会社は修繕積立金を把握しており、支払える金額も知っています。管理会社は管理組合のサポート役ではありますが、利益を上げないと成り立たないため、どうしても高額になりやすいのです。
費用面で後悔しないためにも、手間を惜しまず施工会社や発注方式について検討することが大切です。第三者の専門家にアドバイスをもらいながら進めるのもよいでしょう。
施工会社選定での失敗事例については下記動画でも紹介しています。
マンションの大規模修繕「工事中」のトラブル
大規模修繕の工事中に生じやすいトラブルは以下の5つです。
・居住者から工事の騒音クレームが入る
・専有部の入室許可を得られない
・作業員の言動について居住者から指摘を受ける
・近隣住民から苦情が入る
・空き巣被害が発生する
ひとつずつ紹介します。
居住者から工事の騒音クレームが入る
工事中の音に関するトラブルも多いです。リモートワークしている方にとって室内に響く大きな音は致命的ですが、工事の工程上、音の出る工事をスキップすることはできません。
事前にいつ大きな音が発生する工事をおこなうのか、工程表を用いてしっかり居住者に共有しておくことが大切です。
工事期間中はバルコニーやエレベーターが使えないなど、通常の生活を送れないストレスから、非協力的な発言・行動で現場を困らせる居住者もでてきます。
工事の重要性を伝えるのはもちろんですが、工事前から居住者の声に耳を傾けるなど、良好な関係を築いていけるよう心掛けましょう。
専有部の入室許可を得られない
大規模修繕工事では、ドアやサッシの交換など専有部に立ち入って作業することがあります。事前に許可を得ますが「入室してほしくない」という方とトラブルになることも少なくありません。
入室日時を決める際は、居住者の希望時間に合わせたり、最低限の入室で作業ができないか検討したりと、可能な限り配慮してもらいましょう。
作業員の言動について居住者から指摘を受ける
大規模修繕では、日常生活を送っているなかで工事が進められるため、作業員と顔を合わせる機会も多くなります。
あいさつがなかったり無愛想だったりすると作業員に対して不信感が募ることも。
また足場を組んで窓のすぐ近くで作業している場合、カーテンが開いていたら容易に部屋の中が見える状況です。実際は見ていなくても、作業員施工業者の視線によっては「プライバシーを侵害された」と感じられてしまうことも。
ほかに「在宅中なのにインターフォンを鳴らさず解錠して入室してきた」といったトラブルもあります。マナーの問題でもありますが、作業員の立居振る舞いや入室作業するときの手順についてまで、細かく取り決めてもらいましょう。
近隣住民から苦情が入る
大規模修繕工事はマンション居住者だけでなく、近隣住民とのトラブルもあります。とくに多いのが、騒音や臭気、ホコリなどによる不快感が苦情に発展しトラブルとなるケースです。
大規模修繕工事をする以上避けられない不快感ですが、近隣住民の方の健康状態にも影響することがあるため、慎重に対応しなければなりません。
工事前に近隣住民に対して、工事期間や内容について説明会をおこなったり、個別に自宅を訪問して説明したりと誠意をもって挨拶することで、トラブルを最小限に抑えましょう。
また、住民が在宅していることが多い土日祝日は音が出る工事を控えるなどの配慮も大切です。
大規模修繕工事が終わった後も近隣住民とのお付き合いは続きます。良好な関係を続けるためにも十分気を付けましょう。
空き巣被害が発生する
大規模修繕工事中は足場がかけられ、その気になれば誰でも窓から侵入できる状況です。また、オートロックが開けられたままになっていたり、人の出入りが多くなったりと空き巣にとって好条件が揃います。
空き巣被害の原因は、防犯意識の低さです。空き巣に入られることを前提として、工事業者と協力し、以下4つの対策を検討しましょう。
- 防犯カメラ設置
- サーチライト設置
- 窓サッシ用補助鍵の設置
- 作業員共通の服や目印
死角になる場所には防犯カメラやサーチライトの設置が効果的。窓サッシ用の補助鍵は、居住者に無料で貸し出すケースがほとんどです。不審者を見分けるためにも作業員には共通のベストを着用してもらうなど、空き巣防止に繋げましょう。
マンションの大規模修繕「工事後」のトラブル
工事後に起こり得るトラブルは以下の3つです。
・着工後に多額の追加費用を請求される
・施工品質がよくない
・耐用年数・保証期間が短かった
順に詳しく紹介します。
着工後に多額の追加費用を請求される
大規模修繕工事の費用を見積もる場合、足場をかけないと正確な見積もりができない箇所(外壁タイルなど)については、仮の金額で見積もっておき、着工後、実際に工事した数量と単価に基づき、費用を清算する(実数精算方式)のが一般的です。
仮の金額は多く見積もられるものですが、工後に予期せぬ不具合が見つかり、想像以上に工事個所が増えた場合、修繕費用が高くなり、トラブルになるケースがあります。
外壁タイルの補修などの追加費用が発生することは珍しくないため、事前に予備費を設けておきましょう。
予備費は大規模修繕工事の総額の5~10%程度が一般的です。
施工品質がよくない
実力不足の施工業者だと塗装ムラや足場固定時の穴の埋め忘れなど、品質不良があることも。問題がないように見えても、施工後すぐに不具合が生じてやり直しが必要になるケースもあります。
最悪の場合、工事のやり直しを依頼しようとしたら、施工会社が倒産していて対応してもらえないこともあるのです。
工事後の施工品質や倒産に備えるためには、瑕疵保険に加入している業者を選びましょう。
瑕疵保険に加入している場合、検査で不具合があれば工事業者に保険金が支払われ、補修工事の費用に充てられます。施工業者が倒産した場合は、発注者に保険金が支払われるため、保険金を利用して別の業者に工事を発注することが可能です。
耐用年数・保証期間が短かった
施工に問題がなかったとしても、そもそも部材や工法の耐用年数が短いことが原因で長持ちしないケースがあります。保証期間が短く、短期間のうちに自費で工事が必要になることも。
施工会社選定や工事内容を決定するタイミングで、安さを重視すると将来かかる費用が高くなってしまうことがあります。
目先の費用だけで選ばずに、工事の仕様・部材の耐用年数や保証期間まで確認して、長期的な視線で比較検討し決定することが大切です。
気づかぬうちにトラブルに巻き込まれていることも
大規模修繕工事では、気がつかないうちに大切な修繕積立金を無駄にしている可能性があります。
以下のトラブルに注意しましょう。
・竣工時の初期不良が見落とされ修理代を払ってしまう
・談合などの不正がおこなわれ高額な工事費を請求されていた
具体的に解説します。
竣工時の初期不良が見落とされ修理代を払ってしまう
外壁のタイルは追加費用になりやすい項目ですが、1回目の大規模修繕で全体の5%以上のタイルの浮きや剥がれが発覚したときは、竣工時の不具合も疑いましょう。
通常よりも浮き率が高かった場合、管理組合に報告してくれる業者であればよいですが、竣工時の不具合の可能性について言及されることなく追加費用を請求されることがあります。
一度タイル補修すると、竣工時の不具合を立証できなくなるため1回目の大規模修繕工事で原因を明らかにしておくことが重要です。
実際にさくら事務所が大規模修繕工事コンサルティングを実施したマンションでは、1回目の大規模修繕工事で竣工時の施工不良が疑われるタイルの浮きや剥がれが見受けられ、竣工時の施工会社に相談し管理組合による補修費用の負担をせずに解決したケースがあります。
談合などの不正がおこなわれ高額な工事費を請求されていた
「設計・監理」と「施工」をそれぞれ別の会社で行う場合、コンサルティング会社(設計・監理を担当)による不正が行われる危険性があります。
コンサルティング会社が相場よりも安い料金でコンサルを請け負い、見積もりに参加する工事会社らと結託。コンサルティングの立場で、予め決められてた工事会社が選ばれるように仕向けます。工事会社は、コンサルティング会社にバックマージンを渡すために、管理組合へ高額な工事費用を請求する手口です。
管理会社による出来レースもあります。自社の関連会社を相見積もりに参加させ、受注できるように裏で見積額を操作し、自分たちの利益にするのです。
談合や出来レースなどの不正を防ぐために、相見積もりに参加する会社を選ぶ段階から、管理組合が積極的に関わっていきましょう。
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マンション大規模工事のトラブルを未然に防ぐ対策
ここまで個々のトラブル別に事例と対策を紹介してきましたが、以下2つを実践できると、大半のトラブルは避けられます。
・信頼できる業者を選ぶ
・第三者の専門家の意見を取り入れる
以下で詳しく解説します。
信頼できる業者を選ぶ
信頼できる業者か判断するポイントは以下の3つです。
- 大規模修繕工事の実績が豊富
- 現場監督の対応や人柄が良い
- レスポンスが迅速かつ的確
大規模修繕工事の実績が少ない業者は、大規模修繕工事独自の注意点を理解していなかったり、居住者対応に慣れていなかったりと、常にトラブルと隣り合わせです。その点、実績豊富な業者は、起こり得るトラブルを熟知しているため、安心して任せられます。
また、現場監督の対応や人柄が良いと、コミュニケーションが取りやすく居住者からの工事に関する困りごとにも親身に相談にのってくれるでしょう。
請負契約を結ぶ前に、必ず現場監督と直接会うことをおすすめします。
迅速かつ的確なレスポンスはトラブル防止だけでなく迅速な問題解決に繋がり、トラブルを最小限に抑えられます。
下記動画では大規模修繕が失敗しやすい業者の特徴を紹介しているので参考にしてください。
第三者の専門家の意見を取り入れる
大規模修繕工事は多額のお金が動くからこそ、第三者視点の公平公正な意見が非常に大切になります。たとえば以下のポイントは、ある程度知識がないと判断できません。
・補修する外壁タイルの想定割合は妥当なのか
→低すぎる場合は追加費用が発生する
・浮き率は正常の範囲内なのか
→異常値なら施工不良として無償で対応してもらえる可能性がある
・修繕方法が適切か
→劣化状況によっては金額をおさえた工法ができるかも
上記は工事費用に直結する重要なことにもかかわらず、注視されないことが多々あります。また談合などの不正も管理組合だけで暴くのは難しいです。
第三者の専門家によるコンサルティング費用は、総工事費の3~5%程度が目安です。第三者を入れなかったことで多額の工事費を払ってしまうことを考えると、費用対効果が高く、有意義な修繕積立金の使い方といえるでしょう。
大規模工事のトラブルが起きてしまった場合の対処法
大規模修繕工事により、自分たちでは解決できないトラブルが起きてしまった場合もさくら事務所にご相談ください。
これまで1,000組合以上のご相談にご対応してきた経験をふまえながら中立的な立場でトラブル解決にむけてアドバイスいたします。
初回無料でお話をお伺いしていますので、ぜひ一度ご相談ください。
マンションの大規模修繕工事でトラブルが起きないように対策しよう
マンションの大規模修繕工事は「実績豊富で信頼できる業者を選ぶこと」「第三者の専門家の意見を取り入れること」ができれば、多くのトラブルを回避できます。
大規模修繕工事中は、居住者の生活の制限が多くなるため、理解を得るのが難しいことも。管理組合は、日頃から居住者とのコミュニケーションを大切にし、トラブルなく大規模工事をするための土台作りをしておくことも大切です。
さくら事務所では、管理組合様の施工会社選定・工事チェックに寄り添う「大規模修繕工事コンサルティング」(修繕★参謀)をはじめ、すでに、管理会社や他社に相談してい場合でもご相談いただくことができる「大規模修繕セカンドオピニオンサービス」を実施しています。
・大規模修繕工事の費用を抑えたい
・見積額の妥当性を検証したい
・見積もりの比較が難しい
・管理組合に大規模修繕工事の知見を蓄えたい
・不正の無い工事をしたい
上記のようなお悩みに、業界経験20年以上の経験豊富なコンサルタント達が第三者の中立な視点で管理組合様ににアドバイスをし不要なトラブルを回避します。
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