マンションの屋根は種類や形状によって葺き替え工事になるのか防水工事になるのか変わってきます。
費用も工事方法によって異なるため、ご自身のマンションの屋根の形状に適した工事を把握しておきましょう。
本記事ではマンション屋根の形状別の工事方法と費用相場、工事の注意点を解説します。マンションの屋根の工事を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
【基礎知識】マンションの屋根の形状

マンションの屋根は平らな形状の陸屋根(ろくやね、りくやね)が一般的です。屋根を平らにすることで、高さ制限や容積率の規定内で専有面積を広く確保できます。
またマンションの屋根は、受水槽などの設備が置かれており「屋上」として有効活用されていることも、陸屋根が採用される理由のひとつです。人が出入りしやすいため、点検・メンテナンスもしやすくなっています。
陸屋根の懸念点は、雨が溜まりやすい点です。そのため陸屋根の表面には、防水層が施され雨漏り対策されています。
マンション屋根は「葺き替え」ではなく「防水工事」が一般的

マンションでも傾斜のある勾配屋根が採用されていることがあります。勾配屋根では葺き替え工事が行われますが、陸屋根では定期的な防水工事が必要です。
ここでは葺き替えと防水工事について解説します。
葺き替えとは
勾配屋根で行う葺き替え工事とは、既存の屋根材をすべて撤去して、屋根の下地から屋根材まですべて新しいものに交換する工事です。
勾配屋根は雨水が溜まらないため、陸屋根のような防水層ではなく、屋根材の下に敷かれた防水シートや屋地板、屋根材で雨漏りを防いでいます。
これらの屋根を構成する部材が劣化した場合に行うのが葺き替え工事です。
劣化が少ない場合は、葺き替えではなく、既存の屋根材の上から新しい屋根材をかぶせるカバー工法が採用されることもあります。
防水工事とは
おもに陸屋根で行う防水工事とは、既存の屋根(屋上)の表面に防水層を設けて、雨水の浸入を防ぐ工事です。
屋根を構成する部材を変えずに、防水層を回復させます。防水工事はおもに以下の4種類です。
・ウレタン防水
・FRP防水
・シート防水
・アスファルト防水
それぞれ工事方法や耐用年数などが異なるため、以下で紹介します。
ウレタン防水
ウレタン防水の耐用年数は10~12年が目安になります。
ウレタン防水は液体状のウレタン樹脂を塗って防水層を作る塗膜防水です。手作業でウレタン樹脂を塗るため、複雑な形状やこまかい部分にも施工しやすく、あらゆるタイプの屋上に採用されています。
下地に直接塗布する工法もありますが、マンションで施工する場合は、下地の上に通気緩衝シートを貼って通気層を設けてから、ウレタン樹脂を塗布する通気緩衝工法が主流です。
FRP防水
FRP防水の耐用年数は10~12年と言われています。
FRPとは、繊維強化プラスチックのことです。FRP防水も塗膜防水の一種で、ガラス繊維を含んだシートに樹脂を塗って硬化させ、防水層を作ります。
FRP防水は、均一な厚みで施工でき速乾性が高いのが特長です。軽量で建物への負担も軽減できます。高い防水性を発揮しますが、伸縮性があまりないため広い面積への施工には向きません。
施工時に臭いが発生する点も注意が必要です。
シート防水
シート防水の耐用年数は10~15年が目安です。
防水性の高いシート(塩化ビニルシートなど)を敷いて防水層を作ります。広い面積でも一度に施工できるのがメリットで、設置物がたくさんあるような複雑な形状の屋上には向きません。
シート防水は以下2つの工法に分かれます。
密着工法~専用の接着剤を用いて直接下地にシートを貼る
機械固定工法~下地の上に固定するための金具を設置して湿気を逃すすき間を設けてからシートを固定する方法
機械固定工法の場合は、下地の影響を受けないため、ひび割れが生じている場合もそのまま施工可能です。
アスファルト防水
アスファルト防水は古くから採用されていおり高い信頼を得ている方法で、耐用年数も15~25年とほかの防水よりも耐用年数が長いです。
アスファルト防水には以下3つの工法があります。
熱工法~熱で溶かしたアスファルトと防水シートを重ねる
トーチ工法~シート状のアスファルトの裏面をバーナーであぶりながら密着させる
常温工法~粘着層がコーティングされたシート状のアスファルトを張り合わせる
熱工法と常温工法は、熱を使うため工事中に臭いや煙が発生します。
マンションの屋根工事の費用相場
ここからはマンションの屋根工事の費用相場を紹介します。勾配屋根の葺き替え工事と陸屋根の防水工事に分けて見ていきましょう。
勾配屋根の葺き替え工事など
勾配屋根の工事は葺き替え以外にも多岐にわたります。工事内容ごとの費用相場は以下の表の通りです。
| 工事内容 | 費用相場 |
| シーリングの打ち増し | 600~900円/m |
| シーリングの打ち替え | 800~1,200円/m |
| 雨樋(あまどい)工事 | 20~30万円/1か所 |
| 棟板金の交換 | 4,000~6,000円/m |
| 葺き替え | 9,000~15,000円/㎡ |
| カバー工法 | 6,000~10,000円/㎡ |
上記のほかに、足場仮設費や諸経費がかかります。
シーリングとは部材同士をつなぐ接着剤のような役割をするものです。劣化すると気密性・防水性が低下します。
打ち増しは既存のシーリングの上から、シーリング材を補充する方法で、打ち替えは既存のシーリングを撤去してから新しく充填する方法です。
葺き替えやカバー工法は、新しく使う屋根材によっても費用が変わるため、正確に知りたい場合は専門業者に見積もりを依頼しましょう。
陸屋根の防水工事
おもに陸屋根で採用される防水工事の費用相場は以下の表の通りです。
| 工事内容 | 費用相場(1㎡当たり) |
| ウレタン防水 | 6,500~12,000円 |
| FRP防水 | 6,500~10,000円 |
| シート防水 | 8,000~15,000円 |
| アスファルト防水 | 11,000~22,000円 |
上記は各防水工事の単価の目安です。ほかに既存の防水層の撤去・処分費や下地処理費、諸経費などがかかります。
劣化状況によっても費用は異なるため、相場はあくまでも参考として捉えてください。
屋上防水については下記記事でも詳しく紹介しています。
屋上防水の耐用年数は10年が目安!工事の種類・費用・注意点を解説
マンションの屋根を工事する際の注意点

マンションの屋根を工事する際には、以下4つの注意点があります。
・足場仮設が必要なケースがある
・工法によって工事周期が異なる
・アフター保証について確認しておく
・悪臭や騒音が発生する可能性がある
ひとつずつ詳しく紹介します。
足場仮設が必要なケースがある
陸屋根の防水工事では基本的に足場は不要ですが、勾配屋根の葺き替えなどは、足場仮設が必要で別途費用がかかります。
そのため大規模修繕のタイミングで、ほかの工事と合わせて屋根の工事を行うのが一般的です。
敷地が狭いなど、足場仮設の難易度が高い場合は、追加料金が発生することも。
また、足場を仮設できない高層のマンションの場合は、ゴンドラを使うことになり、さらに費用は高額になることを覚えておきましょう。
工法によって工事周期が異なる
既存の防水層の種類で適切な工事周期は異なります。既存の防水の種類から耐用年数を把握したうえで、工事のタイミングを決定しましょう。
防水工事は長期修繕計画で実施時期が計画されています。しかし本来の防水層の耐用年数を考慮することなく、ほかの工事の周期に合わせて計画されていることも少なくありません。
足場が不要な防水工事の場合は、大規模修繕に合わせる必要はないため、耐用年数や劣化状況を確認し、時期尚早な工事にならないようにすることで、修繕積立金を節約できます。
アフター保証について確認しておく
マンションの屋根の工事を検討する際は、費用や耐用年数だけでなく保証についても確認しておきましょう。
メーカー保証のほか、施工会社独自の保証制度を設けていることもあります。保証期間だけでなく、どのようなときに保証してもらえるのかまでしっかり把握し、施工会社や施工法を検討しましょう。
ただし屋根の形状や劣化状況に合わせた工事を選択することが前提です。あらゆる選択肢のなかからベストな提案をしてもらえる施工会社に依頼しましょう。
悪臭や騒音が発生する可能性がある
マンションの屋根の工事は、工事中に悪臭や騒音が発生する可能性があります。工事車両により、車の出入りが増えたり通路が狭くなったりすることもあるでしょう。
居住者には、工事期間中、生活に影響を及ぼす可能性のある事柄について、事前に説明し理解してもらう必要があります。
また、悪臭や騒音、工事車両に関することなどは、マンション居住者だけでなく近隣の住人にも影響を与えるため、施工会社と協力しながら工事説明をする機会を設けるなどして配慮しましょう。
マンションの屋根の形状に合った工事方法を選択しよう

屋根の形状は、平らな陸屋根と傾斜のある勾配屋根に分けられます。勾配屋根が採用されているマンションもありますが、大半は陸屋根です。
陸屋根は雨水が溜まりやすいため、定期的な防水工事が必要になります。一方、勾配屋根の場合は、葺き替えやカバー工法が一般的です。
工事方法や費用は屋根形状・劣化状況などで変わります。工事の特徴や相場を把握し、適切な工事と時期を選びましょう。
さくら事務所では、マンションの大規模修繕に向けた建物劣化診断や長期修繕計画の見直しを行っています。
・本当に今屋根(屋上)の工事が必要な劣化状況?
・屋根工事(屋上防水工事)を実施する適切なタイミングはいつ?
上記のような疑問やお悩みがある場合は、ぜひさくら事務所までご相談ください。
さくら事務所では工事業者の斡旋や工事の受注はしていません。工事の受注を狙った提案ではなく、利害関係のない第三者だからこそできる客観的なアドバイスをさせていただきます。
下記動画では、マンションの屋上防水で起こりがちな不具合を紹介しています。保証についても解説しているためぜひチェックしてください。







