屋上防水は4種類ある!施工法ごとの特徴・耐用年数・費用を解説

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屋上防水は4種類ある!施工法ごとの特徴・耐用年数・費用を解説

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

屋上防水の耐用年数は10年前後です。屋上防水が劣化すると雨漏りやコンクリートの劣化など大きな問題に発展するため、適切な時期に屋上に適した防水工事を行わなければいけません。

屋上防水は大きく4種類に分けられます。種類によって向いている屋上が異なるため、種類ごとの特徴をおさえておきましょう。

本記事では、屋上防水が必要な劣化状況や4種類の屋上防水の特徴、注意点を解説します。工事単価や費用を抑える方法についても紹介するため、屋上防水の工事を控えている方はぜひ参考にしてください。

屋上防水の必要性

屋上防水は屋上部分に防水加工を施す工事のことです。

傾斜のある屋根の場合は雨が降っても雨水は下に流れます。しかし平らな屋上(わずかな勾配はあり)の場合は雨がたまりやすいため、防水層を作って建物の内部に雨水が浸入しないようにするのです。

屋上防水が劣化して防水機能が損なわれると、その部分から雨水が浸入し雨漏りが発生します。

建物内に水滴となって現れていなくても、気がつかぬうちにコンクリート内部の鉄筋が雨水によりサビていることも。サビた鉄筋は体積が増え周囲のコンクリートを破壊(爆裂)します。

建物の内部に浸透した水は真下に落ちるとは限りません。毛細血管のように広がるため、雨漏り個所の追及が難しく大がかりな調査や補修が必要になります。

そうなる前に定期的に屋上を点検し、防水工事を実施することが大切です。

 

屋上防水工事が必要な劣化状況

屋上防水に、ひび割れ・浮き・剥がれなどの劣化がみられるときは、屋上防水工事のタイミングです。そのほか、屋上の床部分から雑草が生えているときも要注意。雑草の根が防水層を傷つけてしまうことがあります。劣化や雑草を放置していると、十分な防水機能を果たせなくなり、結果、漏水事故が起きてしまうのです。

屋上防水の劣化を進行させる要因のひとつとして、屋上の水たまりが考えられます。屋上に水が溜まる原因は、落ち葉やゴミによる排水口詰まりや適切な勾配が取られていないことによる排水不良などです。マンションの屋上は、管理会社との管理委託契約で点検項目になっているケースが多いですが、今一度、定期的に点検されているか確認しておきましょう。

屋上防水の特徴と費用相場

マンションの屋上防水工事のおもな種類は大きく分けて4つあります。種類ごとの耐用年数と費用相場について、下記表をご覧ください。

種類 耐用年数 費用相場(1㎡当たり)
FRP防水 10~12年 6,500~10,000円
ウレタン防水 10~12年 6,500~12,000円
シート防水 10~15年 8,000~15,000円
アスファルト防水 15~25年 11,000~22,000円

屋上防水は、耐用年数が長い工事ほど費用相場が高くなる傾向があります。それぞれの特徴について以下で詳しくみていきましょう。

FRP防水

FPRとは「繊維強化プラスチック」を意味し、防水性はもちろん、軽さと強度が特長です。塗布による施工(塗膜防水)のため、障害物による凹凸があるなど、複雑な形状にも用いられます。塗料の硬化が早いため、工期が短いのもメリットです。

FRP防水の懸念点は、伸縮性がないこと。建物が揺れるとひび割れが生じやすいのがデメリットです。しかし、FPR防水は、防水工事のなかでは比較的価格が安く、高い防水性・耐久性が期待できます。軽量で建物への負担が少ないことから、高層マンションにもおすすめです。

ウレタン防水

ウレタン防水は、FRP防水と同様の塗膜防水で、液体状のウレタン樹脂を塗って防水層をつくります。屋上防水工事のなかで、もっともメジャーですが、塗料の乾燥に時間がかかるため、頻繁に出入りする場所には不向きです。ウレタン防水には以下2つの施工法があります。

密着工法~下地、ウレタン防水材、補強材、ウレタン防水材の順番に重ね塗りする

絶縁工法~通気緩衝シートの上にウレタン防水材を塗布する

密着工法は、シートを使わないため、障害物がある屋上や狭いバルコニーにも施工でき、つなぎ目のない仕上がりが特長です。絶縁工法は、屋上のひび割れもシートでカバーでき、きれいに仕上がります。絶縁工法のほうが密着工法よりも費用は高額です。

シート防水

シート防水は、塩化ビニールやゴム製のシートを張り付けて防水層をつくります。広範囲でも均一の厚みになり、施工する人によって仕上がりに差が出ません。

シート防水のメリットは、既存の防水層を残したまま施工できるため短時間で仕上がること、臭いが発生しないことです。ただし、障害物が多いなど、複雑な形状をしている屋上には向いていません。シート防水にも以下2つの施工法があります。

接着工法~下地にプライマーと接着剤を塗布し、その上から防水シートを押し広げて圧着させる工法

機械的固定工法~下地の上に防水シートを敷き詰め、ディスク+ビスで機械的に固定し、シート相互を熱風溶着などで接合する工法

機械式工法は下地と防水シートの間にすき間ができますので、下地の影響を受けにくいです。

アスファルト防水

アスファルト防水は、古くから採用されている屋上防水です。アスファルトを含浸したルーフィングシートとアスファルトを重ねて防水層をつくります。ほかの屋上防水と比べ耐久性が高いため、1度の施工費は高額ですが、工事回数を減らせるのがメリットです。

アスファルト防水には以下3つの施工法があります。

熱工法~アスファルトを熱して液状化し、ルーフィングシートと交互に重ねる

トーチ工法~専用シートとアスファルトを重ねて、専用シートをバーナーで炙り接着させる

常温工法~熱は使わず、粘着性のあるルーフィングシートを重ねる

熱工法とトーチ工法は、工事中に煙や臭いが発生するため、居住者からクレームがくることも。とくに熱工法は、直接アスファルトを熱するため、特段の配慮が必要です。

屋上防水の選び方


屋上防水を選ぶときは以下2つのポイントがあります。

・防水工事の特徴から選ぶ
・保証期間で選ぶ

順に解説します。

防水工事の特徴から選ぶ

前述した防水工事の種類ごとの特徴を参考に、屋上の形状や防水の耐久性などから選びましょう。

具体的には以下のとおりです。

・ウレタン防水~障害物や凹凸が多い屋上
・シート防水~面積が広く障害物が少ない屋上
・FPR防水~工期が短く高耐久な防水工事がしたい
・アスファルト防水~工事の周期を延ばしたい

屋上の形状は変えられるものではなく、向いていない工事を選んでしまうと本来の耐久性を発揮できません。まずは屋上の形状から向いていない防水工事を排除するとよいでしょう。

どの屋上防水にするかは業者の考え方もあるため、よく相談しながら決定してください。

保証期間で選ぶ

屋上防水は保証期間もチェックして選びましょう。

これまでは屋上防水は10年保証が一般的でしたが、最近は15~20年の保証が付いていることも珍しくありません。なかにはノーメンテナンスで30年保証してくれるものも出てきています。

保証期間が長いと単価は上がりますが、次の防水工事までの期間を長くあけられるため、検討する価値はあるでしょう。

たとえば10年保証で1㎡1万円の防水と30年保証で1㎡2万円の防水があった場合、2倍の単価で3倍長く保証してもらえるのです。一度の工事費は高いですが、長期的に見るとお得になります。

多少単価が高くても保証期間が長い防水工事がないか、ぜひ聞いてみてください。

 

屋上防水の工事費用を安くする方法

屋上防水の劣化状況や、施工場所に適した工事をするのは大前提として、少しの工夫で工事費用をおさえられる可能性があります。ここでは屋上防水の工事費用を安くする以下5つの方法を紹介します。

・施工業者を見直す

・ほかの工事と同時におこなう

・最低限の工事にする

・閑散期に工事を依頼する

・状態が悪化する前に防水工事する

ひとつずつみていきましょう。

(1)施工業者を見直す

複数の業者に見積もりを依頼し、比較検討することで、同じ工事内容でも工事費用をおさえられる可能性があります。とくに管理会社に施工会社選定を任せている場合は、相場より高額になっているケースも少なくありません。管理組合が主体となった施工会社選定をおこなうことが大切です。

(2)ほかの工事と同時におこなう

屋上防水工事を依頼するときは、ベランダ防水などのほかの工事と同時に発注すると、値引きしてもらえることも。別で工事を発注する手間も省けます。ただし、本当に必要な工事なのか見極め、過剰な工事にコストをかけないように注意しましょう。

(3)最低限の工事にする

「可能な限り安くしたい」「応急処置として補修したい」という場合は、最低限の工事にしておくのもひとつの手です。トップコートの塗装のみにしたり部分的な工事にしたりすることで、コスト削減ができるでしょう。ただし、劣化状況によって限度があります。施工業者によく相談して工事内容を決定し、次回の工事時期についても確認しておきましょう。

(4)閑散期に工事を依頼する

閑散期に工事を依頼することで工事費用を交渉しやすくなります。防水工事の閑散期は2~4月。この時期に工事するためにも、定期的に屋上防水を点検し、工事の計画を立てましょう。

(5)状態が悪化する前に防水工事する

屋上防水の劣化が進むほど、工事の工程が増え、費用が高額になります。屋上防水の劣化により漏水事故が起きると、余計に工事費がかさむことに。費用をおさえるためには、状態が悪化する前に工事するのがポイントです。

屋上防水工事は自分でできる?

屋上防水工事は、自分でできるケースもあります。しかし、コンクリートの洗浄や養生、塗料の重ね塗りなど工程も多く、面積も広いため、慣れていないと難しいでしょう。

屋上は雨水の影響を直に受けることから、確かな防水性が求められます。屋上にひび割れなどの破損個所があれば、補修工事も必要です。自分で工事するにはリスクが大きいため、専門業者に依頼することをおすすめします。

屋上防水工事を実施する際の注意点

防水工事を実施する際は、思わぬトラブルに発展しないために、下記のような注意点に気を付けて進めていきましょう。

・工事期間中の悪臭と騒音

・追加工事の発生

・工期の遅延

・保証内容の認識違い

順番に解説します。

工事期間中の悪臭と騒音

屋上防水工事は、悪臭や騒音が発生しやすく、居住者や近隣住民からクレームがはいることも。とくに、ウレタン防水はシンナー臭さ、アスファルト防水はアスファルトが焼ける臭いが発生するため注意しましょう。

また、塗料を塗布する際には、あまり騒音は発生しませんが、劣化した防水シートを剥がしたり防水層を撤去したりする際には、大きな音が発生することもあります。工事内容を決定するときは、悪臭と騒音の程度についても施工業者に確認し、居住者ならびに近隣住民へ配慮しましょう。

追加工事の発生

着工後に追加工事を勧められることがあります。これは工事前に十分な現地調査がおこなわれなかったことが原因です。想定よりも劣化が進んでおり、予定通りの工事では不十分と判断されると、工事内容が追加され、当初の見積額よりも高額になります。

また、施工業者の好意で「ここもやっておきましょう!」と提案されることも。即答せずに、追加費用の有無や同時にやるメリットなどを確認し、納得したうえで依頼しましょう。

工期の遅延

屋上防水工事は、天候に左右される工事です。雨が降っていると、下地補修ができない、塗料が硬化不良になる、湿気により塗膜の浮きや剥がれが生じる、などの理由から、防水工事はできません。

基本的には天気予報を見て工事スケジュールを調整しますが、思わぬ雨天が続くことも考えられます。無理に工事してしまうと、十分な防水性を得られなかったり、耐久性が低くなったりすることも。100%計画通りの日程で工事を終えられるわけではない、ことを覚えておきましょう。

保証内容の認識違い

屋上防水工事を発注する前に、保証内容について理解しておきましょう。メーカー保証は、指定された工法でのみ適用されます。低予算で工事するために工程を省くなどイレギュラーな工事は、防水性能上問題が無くても、メーカー保証が付けられない可能性があるのです。

メーカー保証の有無はもちろん、保証の対象となる不具合まで、よく理解しておきましょう。また、メーカー保証以外に、独自の保証制度を設けている会社もあります。施工会社を選ぶ際には、工事内容や工事費用だけでなく、保証内容についても比較すると、満足度の高い会社選びができるでしょう。

定期的な点検で屋上防水の劣化を早期発見しよう

屋上防水は、施工後10年頃~が工事の目安ですが、ひび割れや浮きなどの劣化が見られる場合は、年数に限らず工事が必要です。

屋上防水工事にはいくつか種類があり、耐用年数、適した施工場所、音や臭いの発生なども異なります。複数の施工業者にしっかりと現地調査してもらい、最適な工事を提案してもらいましょう。

屋上防水の劣化は早期発見することで、漏水事故を防ぎ工事費用をおさえられます。一般的には管理会社が屋上を点検しているケースが多いですが、管理組合も当事者意識をもち、点検結果を気にかけておきましょう。

さくら事務所では、マンションのアフターサービスを最大限活用するための共用部チェックを実施中です。管理会社や施工会社とは利害関係のない第三者として公正にチェックします。

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三木 幸一郎
監修者

三木 幸一郎

明治大学政治経済学部卒業後、ゼネコン→不動産仲介業・建築業経営を経て→鉄鋼系エンジニアリング会社→マンション管理会社フロント(管理部次長)→さくら事務所

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