排水管工事の費用相場と工法を解説!業者に工事を発注すべき状況とは

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排水管工事の費用相場と工法を解説!業者に工事を発注すべき状況とは

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

普段、キッチンや洗面所、トイレなどで何気なく水を流し使っている排水管ですが、異物が詰まったり破損したりすることで、漏水するなど工事が必要になるケースも少なくありません。工事が必要な場合、もっとも気がかりなのが工事費用ではないでしょうか。

一言で排水管工事といっても、排水管の状態により、工事の内容や範囲は変わります。工事業者によっても金額設定が異なるため、費用相場を把握していないと必要以上に高額な料金を支払うことにもなりかねません。

そこで本記事では、排水管の工事方法ごとに費用相場を解説します。工事を発注すべき状況も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

排水管工事の費用相場と工事方法

排水管工事の方法は、更生または更新の2種類に分けられます。それぞれの工事費用は状況によって大きく変わりますが、大まかな相場感は以下の表のとおりです。

工事(清掃)の方法 費用相場
ライニング(更生)工事 戸当たり20~40万円
交換工事 戸当たり40~60万円

※但し配管の位置によって変動

下記記事では、工事の費用負担や工事代金が高額になるケースについて解説していますので、参考にしてください。

マンションの排水管の交換時期は?費用負担や相場、工事中の注意点を解説

次項で工事内容ごとに詳細をみていきましょう。

排水管のライニング(更生)工事

ライニング工事は、既存の排水管に専用の塗料を流し、コーティングすることで補修します。交換工事の2分の1~3分の1程度の費用で施工できるうえ、掘削作業などが不要なため、交換工事よりも工期が短いのが特徴です。管内の汚れやサビを取り除き、劣化を遅らせる効果が期待できます。

ただし、ライニング工事の場合は、10年~15年で再ライニングか更新(交換)か検討することになります。排水管の材料と築年数によっては施工できないことも。ライニング工事を希望する場合は、専門業者によく相談し検討しましょう。

排水管の更新(交換)工事

排水管の交換工事の費用は、専有部の場合戸当たり40万~60万円が相場ですが、材料と築年数交換が必要な排水管の長さにより変動します。

また、敷地内に埋まっている排水管を交換する場合は、掘削やモルタル補修などの作業量によっても、金額は変動します。建物内の排水管に異常がある場合は、交換する際に剥がす壁や床の内装修理代も必要です。

排水管の交換工事をおこなうと、その後40年以上は改修する必要はありません。経年劣化による破損など、高圧洗浄で解決できない場合は、交換のタイミングかもしれません。

排水桝(はいすいます)の交換工事

排水管ではなく、排水桝の異常により排水に不具合が生じているケースもあります。排水桝は、排水管をメンテナンスするために設置されている排水管の合流地点です。排水桝が破損している場合は、交換工事をしなければいけません。

排水桝の交換工事の費用相場は、1か所40,000~50,000円程度。深い排水桝ほど高額になる傾向です。また、排水桝のまわりの土を掘削したり、コンクリートを剥がしたりする作業が必要な場合は、別途費用が発生します。

排水管の高圧洗浄

排水管の高圧洗浄の費用相場は、戸建て20,000〜30,000円前後、マンション(戸当たり)4,000~5,000円前後です。

マンションの場合、全戸の排水管が繋がっています。高圧洗浄するときは、管理組合が主体となり、全戸まとめておこなうのが一般的です。戸数が増えても作業量はそれほどかわらないため、戸数が多いほど一戸当たりの負担額は割安になります。

高圧洗浄で解決できるのは、軽い油や髪の毛などの汚れが排水管に蓄積されることによる排水不良です。年に1回、少なくても2~3年に1度は高圧洗浄すると、きれいな排水管を保てます。

排水管工事を業者に発注すべき状況

ここまで排水管工事の費用相場を紹介してきましたが、すべての不具合で必ずしも工事が必要なわけではありません。工事を発注すべき状況はおもに以下3つです。

・排水管の破損による漏水や詰まり

・勾配不足による排水不良

・排水管の耐用年数の超過

順に詳しくみていきましょう。

(1)排水管の破損による漏水や詰まり

排水管の破損により漏水や詰まりなどの不具合が発生している場合は、工事が必要です。

排水管が破損すると、すき間から排水が漏れたり、植物の根が浸入し排水の妨げになったりします。放置していると破損の範囲が広がり、事態がより深刻化することも。

排水管が破損する原因としては、高圧洗浄などのメンテナンス不足や地震の衝撃、凍結などが考えられます。

破損した排水管による不具合は、工事するまで改善しません。日頃のメンテナンスなどできることから対策しておきましょう。

(2)勾配不足による排水不良

排水管の勾配不足による排水不良も工事しなければ改善しません。排水をスムーズに流すために、排水管には勾配がつけられています。

適切な勾配がついていなかったり角度が不十分だと、うまく排水が流れないのです。大量の水を流すと逆流してしまうこともあるでしょう。

勾配不足の原因としては、マンション施工時の設計ミス、地震などの外的要因で勾配が変わった、などが考えられます。適切な勾配に工事すれば改善できますが、しっかり状況調査し原因追及することも大切です。

(3)排水管の耐用年数の超過

排水不具合が生じていないときでも、排水管の耐用年数を超えるタイミングで工事しておきましょう。

耐用年数を超えると排水管の腐食が進み、排水詰まりや漏水に繋がります。不具合が多発する前に、計画的に工事するするのが理想です。

しかし、注意点があります。

ここでいう耐用年数とは長期修繕計画などに計画されている排水管の耐用年数ではなく、適切な劣化診断を経て見積もった適切な耐用年数のことです。

竣工時から一度も見直していない、または、見直したけれども排水管に詳しい専門家が入って見直したわけではない状況における長期修繕計画は、まだまだ交換の必要がないのに、交換する計画になっていることが少なくありません。

排水管の材質も無視した一斉交換の計画も、されていることがあります。

一般的な耐用年数も参考にはなりますが、排水管は使われている材質や設置されている場所によって、寿命が大きく変わります。マンション個別の状況に応じて耐用年数は見直されるべきであり、交換も、適切な耐用年数を超えた場合に検討するべきなのです。

排水管の種類 耐用年数
銅管 20~25年
硬質塩化ビニル 20~25年
鋳鉄管 30年

          ▲一般的な耐用年数

 

工事が必要なケースは、排水管の破損や勾配不良です。排水管が破損し、配管にすき間が生じると、すき間に挟まった汚物などが排水管をふさぎ、水の流れを悪くします。

また、排水管は水を流すために勾配がつけられていますが、勾配が不十分だったとき、うまく水が流れません。大量の水を流すと排水が逆流してしまうこともあるでしょう。

正常に排水するためには、原因を確認し、新しい配管に交換する工事が必要です。塩ビ管の寿命は約40年、鉄鋼管やメッキ管は約20~25年といわれています。寿命が近づいている場合は、交換工事のタイミングと捉えましょう。

排水管の蓄積汚れが原因の不具合は高圧洗浄が有効

 

管蓄積汚れによる排水管の不具合であれば、高圧洗浄で解決できるかもしれません。とくに2~3年以上高圧洗浄していない場合、排水管内に蓄積した油や髪の毛などの汚れが原因で、排水不良や悪臭といった不具合が生じている可能性があります。

マンションの場合、全戸の排水管が繋がっているため、高圧洗浄するときは理組合が主体となり、全戸まとめておこなうのが一般的です。1戸だけでもできますが、費用が割高になるうえ、十分な効果を発揮できない恐れがあります。

排水管の高圧洗浄の費用相場は、戸建て20,000〜30,000円前後、マンション(戸当たり)4,000~5,000円前後です。

専門家の調査で排水管工事の必要性を確かめよう

マンションで排水管が破損し漏水すると、何世帯もの住戸に生活上の支障をもたらし、大きな損害が発生するでしょう。

したがって多くの管理組合では、長期修繕計画に計画されている通りに交換工事を進めるものです。しかしながら、現状はまだまだ使える排水管が、材質や設置状況を考慮されることなく、時期尚早に交換されていることがあるのも事実です。

その結果、貴重な修繕積立金が浪費ともいえる使い方をされていることもあり、現代の深刻な積立金不足の一因となっているともいえましょう。

修繕積立金を適切に使うためには、排水管の適切な寿命を見極めたうえで、工事計画を立てることが必要です。

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鬼塚 竜司
監修者

鬼塚 竜司

新築工事にてマンションや複合施設の給排水および空調設備の工事管理を経験後、マンション管理会社の修繕工事部門にて、工事企画及び工事管理を14年間経験(管理職含む)。大規模修繕80棟以上、給排水管更生更新30棟以上、窓サッシ改修工事等補助金対応工事10棟以上、機械式駐車場入替、インターホン改修工事など、マンション全般の工事を経験。長期修繕計画の作成500回以上。2021年6月株式会社さくら事務所へ参画。

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