目次
大規模修繕工事の修繕周期18年の事例
事例1:大規模超高層タワーマンション
総戸数:約500世帯
鉄筋コンクリート:40階建以上
駐車場:タワーパーキング・機械式
修繕費総額:100億円(60年)
平均専有面積:約70m2
平均負担額(戸):2,000万円
積立金年額:約33.3万円(年)
積立金月額:約2.78万円(月)
積立金は60年間を均等積立方式で積み立てた場合で算出されています。現在積立金の徴収方式が段階増額方式で採用されているマンションの場合、<事例1>よりも積立金額は増額されるものと考えてご覧ください。
事例2:大規模(団地型)マンション
総戸数:約700世帯
鉄筋コンクリート:15階建以上
駐車場:自走式700台
修繕費総額:95億円(60年)
平均専有面積:約90m2
平均負担額(戸):1,357万円
積立金年額:約22.6万円(年)
積立金月額:約1.88万円(月)
事例3:中規模マンション
総戸数:約70世帯
鉄筋コンクリート:7階建以上
機械式駐車場:40台
修繕費総額:10.8億円(60年)
平均専有面積:約78m2
平均負担額(戸):1,542万円
積立金年額:約25.7万円(年)
積立金月額:約2.14万円(月)
これらの事例からも、積立金の方式が均等積立方式であっても、タワーマンションが群を抜いて積立金が高いことが分かると思います。
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大規模修繕工事の18年周期の現状と効果
<大手管理会社の取組について>
- 10年保証→最大15年保証
- 修繕周期12年→16~18年
ほとんどのマンション管理組合で大規模修繕の計画は当初30年だったところを竣工後60年の計画に伸ばすことで、計画期間内のコストをどれだけ削減できるかを可視化することが出来ます。
大手管理会社で保証の延長や修繕周期を12年→18年に変える取組については、野村不動産パートナーズ・東急コミュニティーで現在実施されています。次に12年周期だった場合と18年周期だった場合のシミュレーションについて見ていきます。
総戸数50戸のマンションの大規模修繕周期が12年周期と18年周期だった場合

◯12年周期の場合
- 工事費用(1回):6,000万円
- 補修費用(6年ごと):300万円
◯18年周期の場合
- 工事費用(1回):7,000万円
- 補修費用(9年ごと):700万円
※建築工事だけでの比較となります。
上記結果で比較した場合、竣工後60年目がちょうど5回目の大規模修繕工事にあたる12年周期の場合、通算で3.12億円の費用が生じます。18年周期の場合は、竣工後50年の少し前に3回目の大規模修繕工事が行われ、2.31億円程度の費用が通算で掛かります。
<修繕周期を変えると何が変わるのか>
◯足場を架ける回数を減らすことで、維持管理コストを大きく削減出来る
- 一般的なマンションの大規模修繕工事では、仮設工事費用が総工事費用の約15%~20%程度となります。小規模マンションの場合や階数が15Fを越えると、この仮設工事費用は割高になってきます。
- 工事に利用する仮設足場は、悲しいかな大規模修繕工事でしか用途がありません。そのため仮設足場を架ける回数を出来るだけ減らすだけでも維持管理コストを削減することが出来ます。
- 超高層タワーマンションで仮設足場を架けた場合、その費用が25%〜30%程度になることもあります。
マンションの大規模修繕工事の周期を伸長させるために必要なこと
◯新築施工時の施工不備を解消する
新築施工時に不備があった場合、改善しないと長周期化が現実的ではありません。
◯屋上防水・シーリング防水・塗装工事など、足場が必要な箇所の工事仕様を高耐久性にする
コストがいたずらに上がりすぎてしまうようなこともあるので、意識して切り分けることが必要になります。
◯建物のウィークポイントを見極め、汚れ対策などを含めた工事仕様にする
◯大規模修繕工事の中間時点でメンテナンス工事を行う
18年周期になると12年であれば乗り切れていた中間メンテナンスを行うことが必要になります。
高耐久性の素材や工法
高耐久性屋上防水の参考事例

ドイツ大手ゴムメーカーの合成ゴム(EPDM)防水シートによる長期保証防水は、メンテナンスなしで30年の保証がついてきます。
シーリング防水の参考事例

現在流通している高耐久のシーリング材は、12〜15年程度の耐久性は期待できるものがあります。それは特殊ポリウレタン樹脂系(可塑剤無配合型)で、このシーリングの表面は塗装付着性が良好で、紫外線防止を目的とした塗装をすることで、さらに耐久性を長くすることが出来ます。
進化を続ける高耐久性塗料
過去:アクリルやウレタン塗料が長年使用されてきた。
現在:シリコンやフッ素系の塗料が使用されている(値段が手頃になってきた)
※さらに劣化を防ぐ酸化チタンを混ぜたラジカル塗料が流通しています。
まとめ
- 竣工後50〜60年の維持管理コストを把握する
- 12年周期は贅沢な修繕周期であり18年周期で検討する
- 考え方の違う複数の専門家の意見を聞くことが大切
- 建物の立地や環境(塩害等)に対応させる
- 建物の汚れ対策などを検討する
- 足場が必要な工事と不要な工事を分けて考える
また、大規模修繕周期を考える前提として、「そもそも現状、大規模工事が必要なのか?」を正しく判断することが重要です。このような調査を「劣化診断」と言いますが、施工会社や管理会社に依頼すると、どうしても大規模修繕工事の実施ありきの結果になりがちです。当社は「本当に大規模修繕が必要か?」から判断する劣化診断を行っているので、気になる方はお気軽にご相談ください。
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