2025年3月4日、首都圏のマンションの大規模修繕工事において、20の修繕事業者が談合による独占禁止法違反の疑いで、公正取引委員会(公取委)が立ち入り検査を実施しました。
大規模修繕工事における談合は、長年指摘されていた問題です。2017年1月には、国交省が大規模マンションの大規模修繕工事の談合や悪質コンサルについて、その相談窓口の通知とともに、異例の警鐘を鳴らしていました。
談合による損失金額は、なんと大規模修繕工事の受注金額の15~20%といわれています。
大規模修繕工事の悪質コンサルによる談合はその構造から、被害に遭っていても管理組合は気がつきにくく、長年貯めてきたマンションの修繕積立金を知らない間に何千万も無駄にしてしまっていることがあるのです。
被害に遭わないためにも、まずその構造や手口を把握しておきましょう。
ここでは、マンション大規模修繕工事の談合のカラクリや対策について解説します。
関連動画:ついに公正取引委員会が動いた!マンション大規模修繕工事の「談合」疑い…修繕積立金を守るための3つの対策を徹底解説!【さくら事務所】
目次
設計監理方式は談合が起きやすい

大規模修繕工事の発注先を決める際、管理組合が管理会社やコンサルティング会社などに設計監理業務全般を委託する「設計監理方式」が主流です。
設計監理方式では、コンサルティング会社が建物の劣化診断を行い、工事の設計や仕様を決定します。施工会社選定時には、その設計・仕様をもとに相見積もりするため、工事内容ではなく単純な金額比較になり、談合が起きやすくなるのです。
本来、設計監理方式には客観的な第三者として管理組合の大規模修繕工事をサポートすることが期待されていますが、施工会社と手を組んで、バックマージンを受け取る悪質なコンサルティング会社もあるのです。
悪質コンサルによるマンション大規模修繕工事の談合の手口

談合は基本的に以下の手口でおこなわれます。
(1)破格の安さの委託料でコンサルティングを受託する
(2)予め決まっている工事会社が選ばれるように操作する
(3)施工会社が相場以上の工事費用を管理組合に請求しコンサルティング会社にバックマージンを支払う
詳しく見ていきましょう。
(1)破格の安さの委託料でコンサルティングを受託する
悪質なコンサルティング会社はまず、ほかの競合コンサルタントに負けないよう、常識外に安い費用で設計監理業務を管理組合から受託します。
例えば他社が400~500万くらいの見積りを出しているにも関わらず、この会社だけ「劣化診断から施工監理まで180万くらいの費用でやります!」と提案してくるのです。
見積提示金額が安いので、当然、管理組合から受注できる可能性は高くなります。
通常、大規模修繕工事のコンサルティングは1年半から2年くらいかかりますので、これでは会社として生計が立たないと思われるような金額です。
(2)予め決まっている工事会社が選ばるように操作する
管理組合は、コンサルティング会社のサポートを受けながら、大規模修繕工事の施工会社を公募、各々の見積もりを比較して決定します。
この施工会社選定が悪質コンサルティング会社の罠「談合」が行われるタイミングです。
見積もりに参加する工事会社同士で「今回の大規模修繕はAだから、次のマンションのときはBの受注ですね。」という風に、始めから工事を引き受ける会社は決まっています。
その会社が確実に管理組合から選ばれるようにあらかじめコンサルティング会社により相見積もりが調整されたり、ほかの会社よりも丁寧に対応するように仕組まれていたりするのです。
管理組合としては、公正な競争と思っているため、相見積もりの中で金額の低い工事会社や丁寧な対応をしている工事会社に発注することになります。
しかし実際は、競争原理が発生していない割高な工事費用で発注しているのです。
(3)施工会社が相場以上の工事費用を管理組合に請求しコンサルティング会社にバックマージンを支払う
悪質なコンサルティング会社は、思惑どおり施工会社が決定すると、その報酬(見返り)として、施工会社からバックマージンを受け取ります。
コンサルティング会社はここで大きな利益が見込めるため、コンサルティング業務を破格で受注できるのです。
バックマージンというと他人事のようですが、マンションの居住者が何年にもわたって貯めてきた「修繕積立金」です。
一見、複数社から相見積もりを取り、競争により適切な施工会社を選べたように見えるかもしれません。
しかし初めから相場とかけ離れた見積もりで比較しているのですから、「安い」と思った一社を選んでもバックマージンが上乗せされた、相場よりも高額費用になるのです。
見積もり調整だけでない施工会社選定の不正

談合の手口はコンサルティング会社による見積もり調整だけではありません。
・受注予定会社が劣化診断も改修設計もおこなっている
・受注予定の会社が、他社の分の見積もりまで作成している
・談合を知らずに相見積もりに参加した工事業者を辞退させる
以下で詳しく紹介します。
受注予定の工事会社が劣化診断も改修設計もおこなっている
国土交通省は、受注が決まっている施工会社が、コンサルティング会社に代わり、劣化診断や改修設計も行っていたという例も通達と合わせて紹介しています。
コンサルティング会社が劣化診断や改修設計を行わないことで、人件費などを削減でき、管理組合に安いコンサルティング費用を提示できるのです。また施工会社からバックマージンを受け取っているため、施工に関しての指摘もしにくい心理が働きます。
つまり、コンサルティング会社は本来の役割である設計および監理(正しく施工できているかのチェック)を適切に行わずに、管理組合の大切な修繕積立金を受け取っていることになるのです。
受注予定の工事会社が、他社の分の見積もりまで作成している
受注があらかじめ決まっている会社が、「かたちだけ見積りに参加する他社」の見積もりもあわせて作成していた、というケースもあるようです。
今回受注できない施工会社も持ち回りでいずれどこかで受注できることがわかっているので、お任せして「後からはんこを押すだけ」ということになります。
談合を知らずに相見積もりに参加した工事会社を辞退させる
コンサルタント会社や結託している複数の工事会社が、管理組合が独自で動き相見積もりに参加してもらった工事会社を排除するために辞退させるケースもあります。
ほかのマンションなどの工事を引き合いに出し圧力をかけて、今回の大規模修繕の相見積もりから辞退させるのです。当然、管理組合はコンサルタント会社らによる悪事を知る由はありません。
こんなときは注意!大規模修繕で談合が疑わしい状況

管理組合がコンサルティング会社らによる談合を暴くのは難しいですが、以下の状況のときは少し慎重になった方がよいかもしれません。
・コンサルティング費用が低額で工事費用が相場より高い
・コンサルティング会社が声がけした工事会社以外の応募が無い
・見積り額と修繕積立金残額のバランスが絶妙である
・1社以外工事を受注したいという熱量を感じない
順に詳しく解説します。
コンサルティング費用が低額で工事費用が相場より高い
ほかのコンサルティング会社と比べてあきらかに低額なコンサル料を提示する会社は、ほかに収入源があるなど低額にできる理由があるはずです。施工会社から請求される工事費用に、コンサルティング会社へ渡るバックマージンが上乗せされることになっているかもしれません。
コンサルティング費用が割安で、相場よりも高い工事費用を請求されている場合は、談合を疑いましょう。
コンサルティング会社が声がけした工事会社以外の応募がない
施工会社を公募する際、コンサルティング会社が声をかけた工事会社以外の応募がない、管理組合が声をかけても断られる、といった際も注意が必要です。
結託しているコンサルティング会社らが圧力をかけていたり、業界内でそのコンサルティング会社の談合の実態が知られており参入を避けていたりする可能性があります。
見積り額と修繕積立金残額のバランスが絶妙である
コンサルティング会社が管理組合の修繕積立金の残高を工事会社に教え、その残高にあった「ちょうどいい感じの金額」を提案して受注する、なんてこともあるのです。お財布の中身を知られ、建物の状態から工事が必要と言われれば、マンション管理組合としても支払わざるを得ないでしょう。
1社以外工事を受注したいという熱量を感じない
見積もりの内容や現地視察、プレゼンテーションなどの際に、1社以外工事受注に対する熱量を感じない場合は、出来レースになっている可能性があります。
管理組合が決定している工事会社を選ぶように、あえてほかの会社は悪い印象をもたれるような対応をしているのです。「圧倒的に好印象な1社」がある場合も慎重に検討しましょう。
大規模修繕における談合などのトラブル防止策
大規模修繕を進めるなかで談合などのトラブルを防ぐためには、以下6つが重要になります。
・成果報酬型や無料サービスに注意する
・金額だけでコンサルティング会社を選ばない
・管理組合内に協力者を増やす
・管理組合主導の施工会社選びをする
・第三者の専門家にセカンドオピニオンを依頼する
・スケジュールに拘りすぎない
詳しくみていきましょう。
成果報酬型や無料サービスに注意する
コンサル料が安すぎる会社も危険ですが、成果報酬型や無料のサービスが充実している会社も要注意です。
成果報酬型は一見良心的に思えるかもしれませんが、営利企業には変わりません。ある程度成果報酬を出すために「この金額でなんとかやってくれ」といったように、談合が生じ安かろう悪かろうの工事になる危険性があります。
また、コンサルティングを依頼すると、劣化診断や長期修繕計画の見直しを無料で実施している会社も少なくありません。しかし、人件費などのコストは確実にかかっているため、大規模修繕のトータルコストにその分を上乗せされていることが考えられます。
金額だけでコンサルティング会社を選ばない
コンサルティング会社を金額だけで選ぶと談合に巻き込まれる危険性が高まります。コンサルティングの費用は相場は、大規模修繕工事にかかる総額のわずか5%程度です。
とはいえ「金額が安い」ことは、総会で決議する際に説得しやすいといったメリットもあります。金額以外での判断材料が不足しがちなのも事実です。そのため、金額以外で説得できる工夫が必要になります。
たとえば、選考に残っているコンサルティング会社3社に、それぞれ区分所有者向けに勉強会を実施してもらい、コストや提案内容を含めてどこがいいか事前に区分所有者にアンケートをとっておくと、その結果が立派な判断材料になるでしょう。
管理組合主導の施工会社選びをする
管理組合主導で施工会社選びをすれば、談合を避けられます。コンサルティング会社は、施工会社選定において、あくまでもサポートする立場です。相見積もりを取る際の候補となる工事会社選びや会社への声かけは、管理組合が自らおこないましょう。
管理組合が積極的に施工会社選びに関わっていれば、コンサルティング会社が怪しい動きをしていると、どこかで違和感を感じるはずです。
管理組合の無関心は談合しやすい環境を作ります。私生活では出費にシビアになっている方も、一度自分の手を離れた修繕積立金には無関心になっていることも多いです。
「自分たちのマンション(修繕積立金)は自分たちで守る」という意識を持ち、談合する隙を与えないために、施工会社選びについてはコンサルティング会社の委託業務から外すのもよいでしょう。
管理組合内に協力者を増やす
大規模修繕工事について真剣に向き合う協力者(修繕委員)を増やすことができると、談合に巻き込まれにくくなります。
管理組合内に協力者がいないと、コンサルティング会社が悪質だったとしてもその人に頼るしかなく、偏った意見になってしまうでしょう。
修繕委員を増やすことができれば反対意見も出てくるはずです。反対意見も含めてさまざまな意見がでるからこそ組合内で協議して考える機会が増え、談合の抑止力に繋がります。
修繕委員を増やして、老若男女、さまざまな立場の方の意見をもらうためには、緩やかな関わり方を認めていくことが大切です。
たとえば、話し合いの場に毎回参加しなくても、できるときだけ顔を出して意見してもらえるような環境を作りましょう。
修繕委員の募集チラシに理想を詰め込むほど「そこまで時間を割けない」「知見がないからできない」など、参加へのハードルが上がってしまうため、募集方法を見直してみてください。
第三者の専門家にセカンドオピニオンを依頼する
大規模修繕を進めていくなかでコンサルティング会社や管理会社、施工会社などに不信感を持つことがあれば、早い段階で第三者の専門家にセカンドオピニオンを依頼するのがおすすめです。
一般的に管理組合は、マンション大規模修繕の知識があるわけではないため、不信感があっても声を上げにくかったり、説明されても完全には意味を理解できなかったりすることもあるでしょう。最悪の場合、言いなりになってしまうことも。
コンサルティング会社など各専門家と対等に話すためには、利害関係のない第三者の存在が不可欠なのです。大切な修繕積立金を使う大規模修繕だからこそ「こういうものなのか」で終わらせるのではなく、しっかり納得できる方法で進めていきましょう。
スケジュールに拘りすぎない
大規模修繕工事を進めるにあたり、「もしかしたら談合されているかもしれない!」と思った場合、まず第三者に相談するのがベストです。その際に気を付けたいのが「計画中のスケジュールに拘りすぎない」こと。
もし今回、談合されていたら、本来の大規模修繕工事費用の15~20%分、割高な出費をしていることになります。
今回は切り抜けられても、次回の大規模修繕工事で資金不足に陥る可能性だってあるのです。
どうしても慌てて大規模修繕工事をしないと・・という状況でないのであれば、始めからやり直す覚悟を決めましょう。
大規模修繕で談合を防ぐなら「プロポーザル方式」がおすすめ
談合は巧みに行われているので、出てきた見積書を見るだけでは見抜けません。そのため談合を避けるためには、発注方式を変える必要があります。
おすすめしているのが、プロポーザル方式。コンサルティング会社が仕様を決めるのではなく、管理組合の要望を施工会社に伝えて、その要望を実現するために各社に仕様と工事金額を提案してもらうやり方です。この方式は、施工会社にとって決まった仕様に金額を入力するだけの設計監理方式と異なり、施工会社がそのマンションの下調べをして本当に必要な工事や資産価値を高めるために行なうと良い工事を提案するため、熱意ある施工会社しか対応できませんし、各社の仕様も異なるので談合が難しくなります。
各社の仕様、工事金額を見て、最も管理組合にふさわしい提案をしてきた会社に発注するプロポーザル方式は、談合を避けるだけでなく管理組合の要望が実現しやすい方法としておすすめです。
プロポーザル方式について下記記事で詳しく紹介していますので参考にしてください。
プロポーザル方式の大規模修繕工事、進め方とメリット&デメリット
大規模修繕の談合は管理組合だけでは見抜けない!第三者の専門家に相談しよう

大規模修繕の談合は巧妙な手口で仕組まれており、管理組合が見抜くのは難しいでしょう。
さくら事務所では、談合を避けるために有効な施工会社選び「プロポーザル方式」を採用し、管理組合の皆さまの主体的な施工会社選定をサポートしています。
見積もりが高いなど不信感があるときに相談できる大規模修繕セカンドオピニオンサービスも実施中です。ベテランコンサルタントが豊富なデータベースから見積もりの妥当性チェックしたり、予算を最小限に抑えられる方法がないかアドバイスしたりと、管理組合の皆さまの意向に沿った大規模修繕にするためにサポートいたします。
提案されるがままに工事して修繕積立金を浪費してしまうと、金融機関からの借入や一時金の徴収が余儀なくされることも。今後の資金計画が大きく狂うだけでなく、区分所有者とのトラブルにもなりかねません。
大規模修繕に関するお悩みは早い段階で解決しないと、問題が深刻化します。大切な修繕積立金を無駄にしないためにも、不安や疑問があれば、まずはお気軽にさくら事務所にご相談ください。
専門家がサポートする大規模修繕工事の施工会社選び「修繕★参謀」
以下の動画でも詳しく解説をしていますので、ぜひご覧ください。








