分譲マンションで快適に住み続けるためには、適切な維持管理が不可欠です。マンションの場合、維持管理にかかる費用は、管理費や修繕積立金から賄われます。
「自分のマンションではどのような維持管理費用がかかっている?」
「管理費や修繕積立金が高すぎると感じるけれど妥当なの?」
上記のような疑問がある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、分譲マンションの維持管理費の種類と相場、老後に維持管理費で困らないための対策を紹介します。
目次
分譲マンションで毎月(毎年)かかる維持管理費
分譲マンションで定期的に必要になる維持管理費は次の5つです。
(1)共用部の維持管理のための「管理費」
(2)共用部を修繕するための「修繕積立金」
(3)駐車場・駐輪場・トランクルーム利用料
(4)保険料
(5)固定資産税
順に紹介します。
(1)共用部の維持管理のための「管理費」
管理費は、分譲マンションの日常的な維持管理に使われる費用です。毎月定額の管理費を管理組合に支払います。
管理会社にマンション管理を委託している場合は、清掃費や管理人の人件費などが含まれる管理委託料が管理費の大部分を占めています。
また管理組合で加入している共用部の保険料、エレベーター・消防設備などの保守点検費、共用部の電気代や水道料なども管理費です。
管理費は快適な日常生活をおくるために欠かせません。
(2)共用部を修繕するための「修繕積立金」
修繕積立金は、マンションの大規模修繕などに備えて、毎月区分所有者から徴収して積み立てられる費用です。
マンションによって、長期的に金額が変わらない「均等積立方式」と、段階的に値上げされることが決まっている「段階増額積立方式」の2種類の徴収方法があります。
大規模修繕のほか、給排水管・エレベーター・機械式駐車場などの更新工事、災害による損傷個所の修繕工事、バリアフリー化などマンションをグレードアップさせる改良工事などにも、修繕積立金が使われます。
(3)駐車場・駐輪場・トランクルーム利用料
分譲マンションの駐車場・駐輪場・トランクルームなどを利用するときに、料金がかかるケースがあります。
支払い方法は年払いや月払いなど、マンションによってさまざまです。利用しなければ料金はかかりません。
(4)保険料
区分所有者が個人でかける専有部の保険も、維持費のひとつといえるでしょう。保険は、専有部で火災や地震の被害や、専有部で生じた水漏れによる被害などに備えるために必要です。
個人賠償責任の特約が付いていれば、水漏れにより階下の住宅に被害があった際も費用負担を軽減できます。
(5)固定資産税
固定資産税は、マンション自体を管理するための費用ではありませんが、毎年かかります。
固定資産税は、毎年1月1日時点で分譲マンションなどの固定資産を所有している方が納める税金です。マンションを所有している限り、納めなければいけないため、資金計画をたてる段階で頭に入れておきましょう。
分譲マンションの維持管理にかかる費用相場
分譲マンションの維持管理費の相場を、以下5つに分けて紹介します。
(1)管理費
(2)修繕積立金
(3)駐車場・駐輪場・トランクルーム利用料
(4)保険料
(5)固定資産税
順にみていきましょう。
(1)管理費
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、マンションの管理費(駐車場使用料等からの充当額を除く)の相場は、戸当たり月額11,503円、㎡単価は158.6円です。
より詳細な相場を把握するために、以下のマンションの規模別の管理費相場をご覧ください。
管理費は、20戸以下のマンションで高額な傾向があります。維持管理に必要な金額を区分所有者で出し合うため、総戸数が少ないと1戸当たりの負担額が割高になるためです。
また、ハイグレードな高層マンションが多い、501戸以上の大規模マンションも高額です。戸数が多くても、それ以上に維持管理にお金がかかることから、管理費が高くなります。
(2)修繕積立金
修繕積立金も国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」から紹介します。
修繕積立金(駐車場使用料等からの充当額を除く)の相場は、戸当たり月額13,054円、㎡単価は181.9円です。
管理費と同様にマンションの規模によっても金額に差があります。規模別の修繕積立金は、下記グラフを参考にしてください。
修繕積立金は管理費程、規模別の違いが大きくはありませんが、20戸以下と501戸以上はやはり高額な傾向です。
また、修繕積立金は将来の修繕に備える費用のため、実際に使うタイミングが来たときに、物価高などにより足りなくなることがあります。修繕費用が不足すると、徴収方法にかかわらず値上げされるため注意しましょう。
(3)駐車場・駐輪場・トランクルーム利用料
駐車場・駐輪場・トランクルーム利用料は、マンションや地域によって差が大きい費用です。
駐車料は都市部では月30,000~50,000円前後、地方や郊外では5,000円前後で利用できるマンションもあります。
駐輪場は月数百円です。年払いで先に支払うケースもあります。全戸にトランクルームがある場合は無料で使えることもありますが、そうでない場合は、広さやタイプ(屋内か屋外かなど)によって、利用料はさまざまです。
(4)保険料
火災保険料は、補償の内容によって保険料が決まります。おおよそ年30,000円前後です。地震保険にも加入するとさらに保険料がプラスされます。保証内容と料金に納得できる保険に加入しましょう。
(5)固定資産税
固定資産税はマンションによって異なりますが、年10~20万円前後です。新築マンションの場合は、5年または7年間(長期優良住宅の場合)軽減措置を受けられ、安くなります。
都市計画税は自治体によって大きく差があるため、マンションのある自治体に確認しましょう。
分譲マンションで備えておきたい維持管理費
分譲マンションでは、定期的に生じる維持管理費のほかに、思いがけず必要になる以下の費用もあります。
・修繕積立一時金
・管理費・修繕積立金の増額
・専有部の修繕費用
以下で詳しく解説します。
修繕積立一時金
修繕積立一時金は、修繕積立金が足りないときに臨時で徴収される修繕費用のことです。工事単価が上がっていたり修繕が必要な箇所が増えたりすると、想定よりも多くの修繕費用がかかります。
一時金としてまとまった金額を区分所有者から徴収することで、修繕積立金を補填するのです。修繕積立金とは別に修繕積立一時金を徴収される可能性があることを覚えておきましょう。
管理費・修繕積立金の増額
管理費や修繕積立金は増額される可能性が高いです。これから先もずっと維持管理にかかる費用が変わらないという保証はありません。
物価上昇が問題視されている現在、修繕に必要な資材、管理人や作業員の人件費も高騰しています。管理会社から管理委託費の値上げを要請されることも。
修繕費用は、修繕積立一時金でしのぐケースも考えられますが、区分所有者の負担が大きいため、計画的な修繕積立金の増額が必要になるのです。
分譲マンションを適切に維持管理していくために修繕積立金の増額は悪いことではありません。
専有部の修繕費用
マンションの維持管理費というと、管理費や修繕積立金に目がいきがちですが、専有部の修繕費用も確保しておかなければいけません。たとえば、キッチンや給湯器などの設備は築年数の経過とともに劣化し、不具合が生じてきます。
分譲マンションの場合、基本的に玄関ドアや窓サッシは専用使用部分と呼ばれる共用部です。共用部は修繕積立金で修理しますが、マンションによっては専有部扱いになっているケースもあります。
どこまで自費で修繕するのか把握しておくためにも、共用部と専有部の区別を管理規約などで確認しておきましょう。
分譲マンションと戸建て30年でかかる維持管理費は大きく変わらない
分譲マンションと戸建て、トータルで考えたときにどちらの維持管理費のほうが高いのか、気になっている方もいるのではないでしょうか。
実は分譲マンションと戸建てでは、30年の長期で考えたときにかかる費用は大きくは変わりません。
前述した通り、分譲マンションの修繕積立金の平均㎡単価が181.9円です。さらに専有部の修繕費用がかかるため、合わせると㎡単価は200円程度になります。一方戸建ての修繕費用は㎡単価220円前後が目安です。
日常的な管理にかかる費用は、分譲マンションの場合、平均㎡単価が158.6円。戸建ては管理費がありませんが、その分庭の手入れや整備、外構のメンテナンスなどにお金がかかります。
また電気代も、住居に囲まれているマンションよりも戸建ての方が高額になりやすいのが特徴です。
総合的に見ると、若干戸建ての方が高い印象がありますが大きな違いはないといえるでしょう。
分譲マンションの維持管理費で老後困らないための対策
「分譲マンションの維持管理費が高くて払えない」と老後困らないための対策を2つ紹介します。
・維持費の高騰を想定して個人の支出を見直す
・マンション全体で支出を減らす
以下で具体的に解説します。
維持費の高騰を想定して個人の支出を見直す
一つ目は維持管理費の高騰を想定して、個人の支出を見直すことです。
まずは、マンションの修繕積立金の積立状況(長期修繕計画に対して足りているのか)や借入金の有無、などから資金不足になる可能性があるか確認しておきましょう。
たとえ余裕のある資金計画を立てていたとしても、修繕積立一時金や管理費・修繕積立金の値上げなど、想定外の出費が増え、生活を圧迫することも考えられます。
急な値上げや出費にも対応できるように、住宅ローンを借り換えて金利を安くしたり、保険会社や保険の内容を見直して保険料をおさえたりして、固定費の削減を検討しましょう。
マンション全体で支出を減らす
二つ目は、マンション全体で支出を減らす努力をすることです。
管理費や修繕積立金の値上げを防いだり、最小限の値上げ幅におさえたりと、管理組合全体でコストカットを目指しましょう。
管理費は管理委託業務を減らすことで委託料を安くできる可能性があります。たとえばガラスの清掃頻度やポリッシャーによる床清掃の回数を減らすなどです。
修繕積立金は過剰な工事や時期尚早な工事などを避けることで、修繕費用を節約でき、無駄な支出を減らせます。そのためにも、大規模修繕の時期や内容、見積り額が適正なのか、第三者の専門家のアドバイスも交えて慎重に進めていくことが非常に重要です。
分譲マンションは維持管理費の増額も視野に入れ老後に備えよう
分譲マンションの維持管理にかかる費用は以下の5つです。
・管理費
・修繕積立金
・駐車場などの使用料
・保険料
・固定資産税
修繕費用が足りなければ、管理費・修繕積立金の値上げや修繕積立一時金としてまとまった金額を徴収されることもあります。
修繕積立一時金は区分所有者の負担が大きいため、将来維持管理費で困らないためにも、個人の支出だけでなく管理組合全体でマンションのコストに目を向け、見直していきましょう。
さくら事務所では、管理費の見直しアドバイスをおこなっています。現在のマンションの管理状況について、過不足な項目はないか、コストダウンできる可能性がないか、チェックします。管理費が高いと感じている方はぜひご活用ください。
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以下の動画でも管理費が上がりやすいマンションの特徴について詳しく解説しています。