マンションは永遠ではありません
時間を経れば大がかりな修繕が必要になりますし、さらに住まいとして利用することが難しくなるときがいつか訪れます。管理組合はそのときに備えて、
- 将来的に建替えるのか
- 敷地の一部を売却するのか
- 大規模な修繕工事により建物寿命をできる限り伸ばすのか(延命化)
といった方針をあらかじめ決定していなければなりません。
以前は長期修繕計画を作成している管理組合は少なかったですが、最近はずいぶんと変わってきました。
国土交通省が平成25年に実施したマンション総合調査の結果でも、調査対象となったマンションの89%が「長期修繕計画がある」と回答しています。
ただ一口に長期修繕計画と言っても、建替え、敷地の一部売却(※現時点では、耐震性が脆弱な一部のマンション以外では、区分所有者全員の合意が必要となります)、延命化工事などの最終的な方向性をまで決めている管理組合は、まだまだごく少数でしょう。
定期借地権のマンションでは、土地の借地権契約が終了したら建物を解体して区分所有権を解消、管理組合が解散するという明確なシナリオが新築の時点で決められており、解体費用の積立金まで設定されています。土地が所有権である一般の分譲マンションでも、このような方針が明確にされているべきなのですが、なぜかボンヤリとしていています。
我が国の区分所有法は、建物が老朽化し利用することが困難となった場合には、建替えを前提として構成されています。
しかし、実際のマンションを建て替えるとなると大変な困難を伴います。
最近では宮益坂のマンションの建て替え決定がニュースになりましたが、まだまだ数少ない事例といえるでしょう。
建替え、敷地売却、建物の延命化といった最終的な方針を決定することなく、12~15年程度の周期で大規模修繕工事を繰り返す長期修繕計画を作成し、その計画通りに修繕工事をしていけば、80~90年間くらい建物を健全な状態で利用することができると思われている方も少なくありません。
ですが、現実はそう簡単ではありません。
35年目を迎えるマンション管理組合は明確な方針が必要
新築時から30年間くらいの間は、こうしたことを強く意識することは難しいかもしれませんが、竣工後35~45年頃には、建替え、敷地売却、建物の延命化などについて、管理組合で話し合い基本的な方針を決定しなければ、長期修繕計画を立案することもできません。
なぜなら、60~65年程度で建替えを目指す場合と、できる限りの建物の延命化を目指す場合では40年から45年頃以降の維持管理の方法が大きく異なってきくるからです
つまり、60年目くらいを目途に解体して建替える計画であれば、45年目から50年目以降に、過分に費用をかけて大規模な修繕工事をする必要はないということです。
また、ある程度の見当をつけなければ建替えや建物の延命化に必要な資金について準備するための計画を立てることもできません。
こうしたことは、急に思いついて即座に実践できるものではなく、日頃の管理組合のコミュニケーション、そしてゴールを設定しそこへ導いていくリーダーの存在が不可欠です
問題に気づいた人が、その問題意識を管理組合で共有し、みんなを引っ張っていくリーダーとして立ち上がる必要があるのです。