マンションのインターホンリニューアル工事の費用・方法・注意点を解説

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マンションのインターホンリニューアル工事の費用・方法・注意点を解説

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

マンションのインターホンの耐用年数は15年程度です。そのため築15年前後でリニューアルを検討するマンションが多いのではないでしょうか。

築年数が経つにつれて、インターホン設備の老朽化や故障リスクが高まります。さらに部品の供給終了から7年たつと、メーカーの部品保有期間が過ぎるため、修理できなくなるケースもあるのです。

インターホンは、防犯・防災機能も兼ねており、居住者の安心・安全な生活には欠かせません。計画的にインターホンをリニューアルするためにも、工事について理解しておきましょう。

本記事では、マンションのインターホンをリニューアル工事する際の費用や方法、注意点を解説します。インターホンのリニューアルを控えているマンションの方はぜひ参考にしてください。

マンションのインターホンのリニューアル工事の重要性

耐用年数を迎えるタイミングでインターホンをリニューアルすることで、経年劣化による故障や部品の供給終了により修理できなくなることを避けられます。

インターホンは発注から納品までに3カ月程度かかるため、頻繁に不具合や故障が発生する前に、耐用年数を迎えるタイミングでリニューアルするのが理想です。

また最近のマンションのインターホン設備は、火災発生時の警報や一斉放送できるなどの防災面で非常に役立ちます。進化したモニターによりセキュリティ強化も可能です。

操作性や視認性も向上しているため、インターホンのリニューアルにより居住者の満足度を高められ、資産価値の向上にも繋がります。

マンションのインターホンのリニューアル工事の相場と費用負担

マンションのインターホンのリニューアル工事の費用は、戸当たり10~18万円が相場です。リニューアルするインターホンのメーカーや種類(機能性)、システムなどにより金額が異なります。

マンションのインターホンは共用部扱いです。基本的に全戸一斉にリニューアルすることになり、工事費用は管理組合の修繕積立金から全額支払います。

長期修繕計画にはインターホンリニューアルの項目が設けられており、おおよその金額や工事時期が記されているため、確認してみてください。

ただし金額は想定されたものです。
実際の金額はメーカーに確認してください。

インターホンメーカーを選べないマンションもある

マンションのインターホン市場は実質的に大手メーカー二社が占めているのが現状です。しかし、お住まいのマンションによってはインターホンをリニューアルする際にメーカーを自由に選べないケースもあります。

多くのマンションのインターホンは、機械警備の機能を兼ねているため、警備のシステムによっては既存のメーカーから変更できないことがあるのです。

また、管理会社が起用している機械警備がはいっている場合も、採用できるメーカーが決まっている可能性があります。

インターホンのリニューアル工事を検討する場合には、メーカー変更を検討できる余地があるのか確認しておきましょう。

近年のインターホンに見られる主な機能

マンションのインターホンをリニューアルする際の、近年の機種に見られる主な機能を紹介します。機器選びの参考にしてください。

※下記は2025年9月時点の一般的な機能です。内容は変わる可能性があるため、あくまでも参考としてご活用ください。

デザイン性と操作性

  • スタイリッシュなデザイン: インテリアに溶け込む、凹凸の少ないフラットでスリムなデザインが増えています。
  • 大型タッチパネル: 7インチなどの大型液晶画面を備え、アイコン表示で直感的に操作できるモデルが主流です。
  • 広角カメラ: 玄関先の様子を広範囲に確認できる、視野角の広いカメラが搭載されています。

防犯・セキュリティ機能

  • プライバシー保護: 集合玄関機から部屋番号を非表示にして呼び出すなど、居住者のプライバシーを守る機能があります。
  • 来訪者の事前確認: 自動音声が来訪者に名前や用件を尋ね、住人が応答する前に誰が来たのかを確認できる機能です。
  • 映像録画機能: 来訪者の様子を映像で自動録画し、不在時の来客も確認できます。
  • 各種センサーとの連携: 防犯センサーや火災報知器が作動した際に、室内の照明を自動で点灯させたり、警報音を鳴らしたりする機能も搭載されています。

スマートフォン連携・遠隔操作

  • スマホでの来客応対: 専用アプリを使えば、外出先でもスマートフォンで来客応対やオートロックの解錠が可能です。
  • 宅配の効率化: 不在時でも遠隔でエントランスのオートロックを解錠し、玄関前への「置き配」を許可したり、荷物の伝票番号を解錠キーとして利用したりできます。
  • スマートスピーカー対応: スマートスピーカーと連携させることで、音声操作が可能になる機種もあります。

利便性・防災機能

  • 居住者間の通話: 同じマンション内の別の住戸とインターホンを通じて内線通話ができます。
  • 緊急時の一斉放送: 停電時でも、管理室からマンション全体に一斉に情報を伝達できる機能を備えています。
  • 安否確認システム: 災害発生時に、インターホンを通じて居住者の安否情報を管理室へ知らせることができます。

マンションのインターホンリニューアル工事の方法


マンションのインターホンをリニューアルする際は、集合玄関機・各住戸および管理室の親機・制御装置などを一式交換しなければいけません。
工事の方法は「停止工事」と「平行稼働工事」の2通りあります。

停止工事

停止工事は、インターホンのリニューアル工事を行っている間、既存のインターホンの機能を停止する方法です。

一般的に各住戸の玄関前と室内での通話はできますが、エントランスとの通話やオートロック解錠、オートロック設備と連動している警報などは使えません。

停止工事は不便ではありますが、工期が短くコストも抑えられます。

平行稼働工事

平行稼働工事は、既存のインターホンを稼働させたまま新しいインターホンを設置する工事です。リニューアル工事中も今まで通りにインターホンを使えます。

便利な方法ですが、2つのシステムを稼働させる配線工事や、集合玄関機を2つ分置くための工事が必要になり、コストがかかるのが懸念点です。

工事が増える分、工期も長くなります。

マンションのインターホンのリニューアル工事の注意点

マンションのインターホンのリニューアル工事をする際は以下の注意点をおさえておきましょう。

・工事が決まったら居住者に早めに告知する
・停止工事期間中は防犯対策を講じる
・長期修繕計画どおりに進まないケースがある

順に解説します。

工事が決まったら居住者に早めに告知する

インターホンのリニューアル工事が決まったら、早めに居住者に告知しましょう。

インターホンのリニューアル工事は各住戸の親機が設置されているリビングと玄関周りに作業員が入室するためです。インターホンメーカーを変更する際は、リビングと玄関のほかに、火災探知機内部の部品も交換するため、各居室やキッチンにも入室します。

作業は1戸あたり30分~1時間前後です。原則、居住者立会いが必要なためスケジュールを調整してもらいましょう。

工事期間中は防犯対策を講じる

リニューアル工事期間中は防犯対策を講じましょう。工事中は作業員の出入りが増えたりオートロックが解錠されたままになっていたりすることから、マンションのセキュリティがあまくなります。

とくに停止工事期間中はインターホンが使えなくなり、管理費室や警備会社への通報もできません。普段以上に玄関の施錠を忘れないように呼び掛けたり、警備員や管理人がエントランスに常駐して来客対応をしたりするなどして対策しましょう。

長期修繕計画どおりに進まないケースがある

インターホンのリニューアル工事は、必ずしも長期修繕計画どおりに進みません。

インターホンは共用部に当たるため長期修繕計画でいくらでリニューアルするか計画されていますが、昨今の物価の高騰により、計画当初よりも高額になるケースが大半です。

リニューアル工事前の早い段階で一度長期修繕計画を全体的に見直して、備えることをおすすめします。またリニューアル工事後にも実際にかかった費用を見積もりベースで計画に反映させておくことも大切です。

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マンションのインターホンのリニューアル工事で住まいに安心を

マンションのインターホンは築15年前後でリニューアルが必要です。リニューアルが大幅に遅れると部品の供給が終了して修理不能となる恐れがあります。

最新機種は防犯・防災機能や操作性が向上しており、リニューアルにより資産価値の向上にも繋がるでしょう。リニューアル工事費用は、戸当たり10~18万円でメーカーや機器によって異なります。

マンションの警備システムや管理会社が起用している警備会社などの関係で、メーカー変更できないケースもあるため、事前に確認しておきましょう。

マンションのインターホンなどの設備のリニューアルは、意外に複雑で様々な要因が絡んでいるケースが多々あります。マンションによって懸念点や課題が異なるため、メーカーなどと有意義な話し合いをして納得のいく工事をするためにも、疑問や不安を解消しておくことが大切です。

マンション設備でお困りの際は、これまで1000件を超える管理組合の支援実績を持つさくら事務所まで、お気軽にご相談ください。

以下の動画でも詳しく解説していますので、是非ご覧ください。

 

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三木 幸一郎
監修者

三木 幸一郎

明治大学政治経済学部卒業後、ゼネコン→不動産仲介業・建築業経営を経て→鉄鋼系エンジニアリング会社→マンション管理会社フロント(管理部次長)→さくら事務所

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