昨今、マンションへの永住志向が高まっています。これまでは賃貸アパート・マンションから分譲マンション、最終的に戸建てに住み替えるのがオーソドックスでしたが、今はマンションを終の棲家として考える方が増えているのです。
しかし、区分所有者が共同で管理していくマンションに永住するには、多くの課題があります。そこで本記事ではマンションに永住するために弊害となる、2つの老いや対策について解説します。
マンションへの永住志向がある方や戸建てに住み替えるべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
マンションに永住志向をもつ人が60%超
国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、マンションに「永住するつもりである」が60.4%という結果でした。平成30年度の同調査では過去最高の62.8%だったため、若干減少しているものの永住意識は高い水準で移行しています。
また高齢な方ほど永住意識が高い傾向があることがわかっていますが、40歳代でも約45%が「永住するつもりである」と答えていることから、数十年先もマンションに住み続けたいと考えている方も多いことがわかります。
マンションの永住志向を阻む2つの老い
マンションを終の棲家にするには、永住し続けられるマンションであることが前提です。数十年後まで快適に過ごせて、購入検討者から選ばれ続ける価値のあるマンションでなければいけません。
しかし、マンションは築年数の経過とともに2つの老いが大きな課題となり、価値を維持するのが難しくなってきます。
・マンションの劣化
・居住者の高齢化
ここでは上記2つの老いについて詳しくみていきましょう。
マンションの劣化
一つ目の老いは、マンションの劣化です。マンションの劣化は大きく以下3つに分けられます。
・建物の老朽化
・機能面での劣化
・社会的な劣化
以下で詳しく解説します。
建物の老朽化
建物の老朽化とは、マンション外壁のひび割れ、タイルの浮き・剥落、給排水管からの漏水や雨漏りなどです。
経年劣化によりマンションの躯体や設備に不具合が出てくることを指します。
そのため大規模修繕で、劣化した部分を修繕して、新築当初まで機能や性能を回復させることが大切です。
機能面での劣化
機能面での劣化とは、設備や施工自体の状態は変わっていないものの、最新設備の登場や技術の進歩により、時代遅れになることです。
たとえば、給排水管に不具合が出やすい鉄管が使われていたり、上階の配管が天井裏を通っていたりと、古い仕様になっていることで、築浅・新築マンションと比べて相対的に評価が下がっていることなどが該当します。
社会的な劣化
社会的な劣化は、時代やライフスタイルの変化により、マンションに求められるものが変わっているにもかかわらず、そのニーズについていけていないことを指します。
たとえばエントランスの段差のバリアフリー化やオートロックなどの防犯設備、宅配ボックスなどが該当します。
今の時代とは合わないことで快適性が損なわれているマンションは、社会的な劣化が進んでいるといえるでしょう。
居住者の高齢化
二つ目の老いは、マンション居住者の高齢化です。
令和5年度マンション総合調査によると、世帯主の年齢でもっとも多いのが60代で27.8%でした。さらに60歳代以上の割合は53.7%と、居住者の高齢化が進んでいるのがわかります。
高齢化が進むと、管理組合役員のなり手が不足し、マンション管理がおろそかになりがちです。同調査によると、役員を引き受けない理由の51.5%が「高齢のため」と返答しており、高齢による役員のなり手不足は深刻な問題といえるでしょう。
また、施設への入所でマンションを手放すなどして空室が増えると、計画通りに管理費・修繕積立金を確保できなくなります。相続されるケースもありますが、相続人の所在不明で請求できなくなることも多いのが現状です。
そもそもマンションは何年住める?
そもそもマンションは、何年住めるつくりになっているのでしょうか。マンションの平均寿命は約70年といわれていますが、大規模修繕などで適切にメンテナンスしていけば、100年以上もつ可能性もあります。
設備交換や内装・外装に加え、躯体や基礎の補修まで怠らずに実施していれば、平均寿命は大幅に延ばせられるのです。
さらに1981年に耐震基準が新しくなり、より厳しい基準が設けられました。地震による倒壊の危険性もぐんと低くなったため、マンションの平均寿命は長くなっています。
マンションの寿命については下記記事で詳しく紹介しているので参考にしてください。
マンションの耐用年数と寿命は違う!何年住める?寿命を過ぎたらどうなる?
マンションの永住志向を叶えるカギは「管理力」
マンションの迫りくる2つの老いに対抗し、永住志向を叶えるには「管理力」が重要になります。他人任せにせず、管理組合の一員として積極的にマンション管理にかかわっていきましょう。
ここでは具体的な施策として以下3つを紹介します。
・役員のなり手不足は要件緩和で解消する
・長期修繕計画を整備してマンションの老いに備える
・困ったときは第三者の専門家のアドバイスを受ける
順に解説します。
役員のなり手不足は要件緩和で解消する
居住者の高齢化による、役員のなり手不足に備えるためには、区分所有者のみならず、その子世帯まで、役員に就任できるよう管理規約に定めるなど、役員就任の要件を緩和することをおすすめします。さらに理事会にオンライン参加できる仕組みや規定を設けておくと、マンションに居住していない子世帯や単身赴任している世帯主でも理事になりやすいです。
高齢の居住者だけでなく、ほかのマンションの状況を知っている子世帯の意見を取り入れることで、若い世代にも受け入れられ選ばれやすいマンションになるなど、資産価値の向上に繋がります。
長期修繕計画を整備してマンションの老いに備える
大規模修繕をしっかり実施していくとマンションの寿命は延ばせます。そのために大切なのが長期修繕計画です。
お住まいのマンションの特性や、管理組合の方針によって長期修繕計画の正解は変わりますが、意思を統一したうえで、必要な資金を可視化して、修繕積立金が不足しないように適正額を設定し積み立てましょう。
ただし、必ずしも計画通りの周期で修繕する必要はありません。5年ごとに長期修繕計画を見直し、技術の進歩により高耐久化しているものなどがあれば、修繕を延期したり修繕する方法を変えたりして、臨機応変に対応していきましょう。
困ったときは第三者の専門家のアドバイスを受ける
マンション管理について困ったときは、専門家にアドバイスをもらうのが得策です。
管理会社は管理組合と同じく、よりよいマンションにして資産価値を高めていくことを目的としています。関係性にもよりますが、管理会社はマンションにとって身近な存在でよき理解者です。
しかし管理会社も受託しているマンションで漏水など自己を発生させたくはない為、どうしても保全的な立場から修繕を提案していまい、適切とは言えない過剰な工事をしてしまうこともあります。
その場合は、工事や工事会社の斡旋をおこなわない第三者の専門家に意見を求めて、中立な立場からアドバイスをもらうのがおすすめです。
永住志向はマンション管理に向き合う姿勢が不可欠
マンションの永住志向が高まっていますが、マンションを終の棲家とするには2つの老いに対策し、長く済み続けられる状態でなければいけません。
2つの老いとは、マンションの劣化と居住者の高齢化です。これらの老いを防ぐのは難しいですが、適切に大規模修繕したり規約を改訂したりすることで対策できます。マンションの寿命を延ばして快適に住み続けられれば、その価値が評価され、購入検討者からも選ばれるマンションになるでしょう。
マンションに永住したい方こそ、管理を人任せにせず、今一度自分のマンション管理の在り方を見直してください。当事者意識をもつことが大切です。
さくら事務所では、長期修繕計画の見直しや作成を実施しています。マンションの仕様や立地条件に適合したものになっているのか、修繕積立金の額は妥当なのか、第三者の公正な視点でチェックできるため、これまで一度も長期修繕計画を見直していない場合におすすめです。一部、無料診断も行っていますので、お気軽にお問い合わせください。
以下の動画でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。