修繕積立金と管理費の会計を解説!会計処理でよくあるトラブルと対策も

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修繕積立金と管理費の会計を解説!会計処理でよくあるトラブルと対策も

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

マンションを所有すると、修繕積立金や管理費が毎月徴収されます。マンションの管理組合では、修繕積立金と管理費をどのような会計で処理しているのでしょうか。普段なんとなく支払っている修繕積立金と管理費の会計について、理解を深めて、起こり得るトラブルに備えましょう。

本記事では、管理組合の皆さまが理解しておきたい修繕積立金と管理費の会計について、わかりやすく解説します。会計を分ける理由やトラブル対策など幅広く紹介するので、ぜひ参考にしてください。

修繕積立金と管理費の会計は分ける

修繕積立金と管理費は、用途が異なることから会計を分ける(区分経理)必要があります。区分して収入と支出をはっきりさせることで、会計ごとの過不足がわかりやすくなり、シンプルに会計処理できるようになるのです。

マンション標準管理規約の第28条第4項でも「修繕積立金については、管理費とは区分して経理しなければならない。」と明記されています。

修繕積立金は特別会計、管理費は一般会計です。それぞれの会計区分について詳しくみていきましょう。

参照:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」

修繕積立金は特別会計

修繕積立金は特別会計にあたります。特別会計の収入は区分所有者で積み立てている修繕積立金、支出は計画的な大規模修繕費用や災害などによる不測の修繕費用です。

大規模修繕は足場をかけておこなう大がかりな工事で、おもに外壁などの塗装やタイル張り替え、屋上防水などをおこないます。

そのほか、エレベーター・機械式駐車場・給排水管などの設備の交換工事も大規模修繕と同時に実施するケースがあり、特別会計から支払われるのが一般的です。

管理費は一般会計

管理費は一般会計に区分されます。一般会計の収入は毎月区分所有者から徴収している管理費、支出は日常管理に要する費用です。

日常管理に要する費用とは、管理会社に管理を委託している場合の管理委託料、マンション全体にかけている保険料、共用部の水道光熱費などです。

電球や掃除道具といった消耗品購入費用も、管理費から支払われます。

その他の収入は管理規約で会計口を決める

マンションの収入となるのは、修繕積立金と管理費だけではありません。駐車場・駐輪場・トランクルームの使用料も大切な収入です。

これらの施設使用料は、管理規約でどこの会計に区分するか決められていますが、管理費と同じ一般会計になっているマンションが多く見受けられます。

管理費会計から修繕積立金会計への繰り入れは総会決議が必要

管理費の会計に余剰があったときは、翌年度の管理費に繰り入れられます。

マンション標準管理規約の第7章第61条には「収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年度における管理費に充当する。」と記載されていますので、もし管理費を修繕積立金に繰り入れる場合は、管理規約を変更しなければなりません。

総会決議にて管理規約を変更する場合、「管理費に余剰が生じた場合は、総会決議により修繕積立金に充当できる」といった内容に変更しておくのがよいでしょう。

一方、修繕積立金を管理費会計に繰り入れるのは避けるべきです。修繕積立金は、将来の修繕費用を積み立てているため、余剰金があるか現時点で判断できません。大規模修繕などのタイミングで、資金不足になる可能性が十分考えられるためです。

参照:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」

会計処理でよくあるトラブルと対策

修繕積立金と管理費の会計処理でトラブルになりやすい事例と対策を紹介します。

  • 複合用途型(店舗と住居など)のマンションのケース
  • 駐車場の会計があいまいなマンションのケース

詳しくみていきましょう。

複合用途型(店舗と住居など)のマンションのケース

店舗と住居がある複合用途型マンションは要注意です。複合用途型マンションは、店舗と住居で会計を分けていないとトラブルにつながります。

たとえば、前面道路に面した店舗の場合、道路から直接下水管・給水管が繋がれていますが、住居は給水ポンプを通して供給されるケースが多いです。店舗の区分所有者は、使っていない給水ポンプの保守・更新費用を負担することには前向きになれないでしょう。

ほかにも、店舗来客用として設置したエスカレーターを、住居者も利用している場合、誰が費用を負担して管理するのか問題になります。両者で費用を出し合う場合も負担割合を考えなければいけません。

管理費と修繕積立金だけでなく、店舗と住居でも会計を区分しておくこと、店舗と住宅の専有面積に応じた按分比率にするなど、ルール決めしておくことが大切です。

駐車場の会計があいまいなマンションのケース

駐車場使用料の会計区分があいまいでトラブルになることもあります。
たとえば、使用料は管理費の収入になっているにもかかわらず、機械式駐車場の修繕費用は修繕積立金から賄っているなどです。

とくに機械式駐車場はメンテナンスにお金がかかります。修繕費用を確保するためにも、駐車場に関する収入と支出の会計を一本化しておくことがおすすめです。

管理費と修繕積立金とは別に駐車場の会計を設けたり、駐車場専用の長期修繕計画を作成したりするとよいでしょう。また、駐車場使用料は適切か、駐車場の収入を別会計にしても、管理費の会計が赤字にならないかも要チェックです。

修繕積立金と管理費の会計は予算で管理する「予算準拠主義」

修繕積立金と管理費の会計は、予算で管理する「予算準拠主義」という考え方です。

修繕積立金と管理費の額は、必要な業務をおこなうためにいくらかかるのか、で決まります。事業計画や長期修繕計画に基づき支出を想定して、予算を立てて、実際にいくらかかったのかを管理していくのです。

予算準拠主義では、計画に妥当性がなければ、適切な徴収額を設定できません。実際にかかった費用と計画上の費用に差が出て、大幅に資金が足りなくなる可能性があるため、適切な計画に基づいた予算設定が重要です。

マンションの管理費と修繕積立金の相場については、下記記事で解説していますので参考にしてください。

マンション管理費と修繕積立金の相場とは?違いや節約方法も併せて解説

修繕積立金・管理費の会計は明確な区分分けと予算立てが大事

修繕積立金と管理費の会計は、収入と支出を分かりやすくしてお金の動きを見える化するために大切です。

駐車場収入は駐車場の修繕費用を捻出する修繕積立金の会計にするか、別途で会計を設けて単独の修繕計画を作成することをおすすめします。

複合用途型マンションは、店舗と住居でも会計を明確に分けておきましょう。店舗と住居で修繕費用を出し合う場合は、負担割合もしっかり決めておくとトラブルを避けられます。

修繕積立金と管理費の会計は予算準拠主義のため、予算を決めるための計画が非常に重要です。

さくら事務所では、公正な第三者として、長期修繕計画や管理費の見直しをおこなっています。長期修繕計画はもちろん、修繕積立金や管理費の設定額の妥当性についても見直せるサービスです。
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900件以上の多種多様なマンションへの対応実績から、マンションごとの仕様や立地条件なども考慮した、実効性の高い計画になるようにアドバイスさせていただきます。

  • これまで長期修繕計画を見直していない
  • 修繕積立金を増額しないと赤字会計になる
  • 管理委託料の値上げを打診された

上記のようなマンションは、お気軽にさくら事務所までご相談ください。

  • 長期修繕計画の見直し・作成
  • 管理費見直し・管理会社変更アドバイス

以下の動画でも正しい修繕積立金の設定方法について解説しています。

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山中 行雄
監修者

山中 行雄

マンション管理会社で約20年勤務。東京、千葉、広島、沖縄など、様々な地域で管理組合運営業務に携わる。

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