2025年5月に改正された区分所有法などマンション関連の法律が、2026年4月に施行されました。
これらの法改正に伴い2025年10月には、マンション標準管理規約も大きく改正されましたが、皆様のマンションで、管理規約の見直しは進んでいますでしょうか。
この度の法改正は、マンションの管理運営に大きく関わる部分の変更もあります。規約を見直さずにいると、あらゆるトラブルが生じることが予想されるため、ほぼすべてのマンションで管理規約の見直しが必要です。
そこで本記事では、2026年4月の施行に伴い、マンション管理規約で変更すべき内容についてわかりやすく解説します。具体的な管理規約変更の進め方も紹介するためぜひ参考にしてください。
目次
- 1 2026年施行の区分所有法改正の目的
- 2 法改正に伴い管理規約の見直しが必要な理由
- 3 2026年の区分所有法改正による標準管理規約の変更点
- 3.1 (1)総会決議における多数決要件の見直し
- 3.2 (2)総会招集時の通知事項等の見直し
- 3.3 (3)共用部分の損害賠償請求権などの代理行使
- 3.4 (4)所在不明の区分所有者を母数から除外手続き
- 3.5 (5)海外居住オーナーへの対応(国内管理人の活用)
- 3.6 (6)専有部分の保存行為実施の請求
- 3.7 (7)共用部分の管理に伴い必要な専有部分の保存行為
- 3.8 (8)修繕積立金の使用用途の拡大
- 3.9 (9)マンションに特化した財産管理制度
- 3.10 (10)区分所有者の責務
- 3.11 (11)管理組合役員に関わる規定の見直し
- 3.12 (12)なりすまし対策(本人確認)
- 3.13 (13)防災業務の明確化
- 3.14 (14)喫煙ルールの明確化
- 4 管理規約変更は管理会社が対応してくれる?
- 5 管理規約の変更は専門家に依頼するのがおすすめ
- 6 2026年の区分所有法改正はマンション管理規約の見直しが不可欠
2026年施行の区分所有法改正の目的
今回の区分所有法の改正は、マンションの現場で実際に起きている老朽化・管理不全・合意形成の停滞といった以下のような問題を改善する目的があります。
・空き家問題
・海外居住オーナーの管理不参加
・役員のなり手不足
・建替えなどのマンション再生のハードルの高さ など
具体的には、管理に無関心な区分所有者や連絡が付かない所有者への対応を可能にしたり、総会で多数決がとれずに諦めていた修繕や建替えなどの決議をスムーズにしたりする内容に変更され、マンション標準管理規約でも明確化されました。
法改正に伴い管理規約の見直しが必要な理由
今回の法改正に伴い管理規約が必要な理由はおもに以下の2点です。
・改正前の規約で決議すると無効になるおそれがある
・住人トラブルや管理組合の機能不全に発展する
順に解説します。
決議が無効になる
まず、今回の法改正に合わせ規約を更新しないまま運用していると、法律と規約の内容が抵触し、総会決議の正当性が問われるリスクがあります。
区分所有法と現行の管理規約が抵触する(矛盾している)部分は、管理規約のほうが無効になります。詳細は後述しますが、今回の改正には、総会の開催手続きや決議要件といった重要な内容も含まれています。
とくに、総会の招集手続きや、総会の定足数、多数決要件が変更されたことから、あとから「あの総会決議は無効だ」と訴えられ、決議が白紙になる恐れがあるため、改正された法律に合わせて管理規約を見直す必要があります。
住人トラブルや管理組合の機能不全に発展する
今回の改正は今までトラブルになっていた事項を踏まえた内容になるため、規約を変えないとトラブルが起こる可能性が高いでしょう。
たとえば、プライバシーの問題です。改正された区分所有法では、専有部への立入り権限が明確に定められています。
管理規約で運用ルールを明確にしておかないと「プライバシーの侵害だ」などと住民同士のトラブルに発展するリスクがあり、管理組合の機能不全にも繋がりかねません。
2026年の区分所有法改正による標準管理規約の変更点

ここからは区分所有法の改正により、標準管理規約で変更すべき14のポイントについて詳しく解説します。
(1)総会決議における多数決要件の見直し
(2)総会招集時の通知事項等の見直し
(3)共用部分の損害賠償請求権などの代理行使
(4)所在不明の区分所有者を母数から除外手続き
(5)海外居住オーナーへの対応(国内管理人の活用)
(6)専有部分の保存行為実施の請求
(7)共用部分の管理に伴い必要な専有部分の保存行為
(8)修繕積立金の使用用途の拡大
(9)マンションに特化した財産管理制度
(10)区分所有者の責務
(11)管理組合役員に関わる規定の見直し
(12)なりすまし対策(本人確認)
(13)防災業務の明確化
(14)喫煙ルールの明確化
とくに(1)~(3)は管理規約を変更しないと区分所有法に抵触するため見直し必須の項目です。
(1)総会決議における多数決要件の見直し
総会決議における多数決要件は、規約を変更しないと総会決議が無効になる恐れがある重要な改正点であり、管理規約の変更が必須といえます。
具体的な改正点は以下の通りです。

出典:国土交通省 住宅局「令和7年マンション関係法改正とこれからのマンション管理」
ここでは以下の3つに分けて詳しく見ていきましょう。
・総会決議における多数決要件の見直し
・マンション再生(建替えやリノベーションなど)
・【補足】総会の成立要件
順に解説します。
総会決議における多数決要件の見直し
規約の制定・変更・廃止や、共用部分の重大変更、大規模復旧など、「特別決議」についても、総会の出席者による多数決が可能となりました。
耐震性の不足や火災に対する安全性の不足、外壁等の剝落により周辺に危害を生ずるおそれがあるとき、給排水管等の腐食等著しく衛生上有害となるおそれがあるときなど、共用部分の設置・保存の瑕疵により権利侵害のおそれがある場合や、バリアフリー化による共用部分の変更等に係る決議の決議要件については、出席区分所有者及びその議決権の4分の3から3分の2に緩和されることとなります。
共用部分の変更について、どこまでが普通決議でどこからが特別決議になるのか、基準が明確ではない点は、変わらず課題が残っています。
マンション再生(建替えやリノベーションなど)
マンションの再生手法として、建替えだけでなく、更新、建物・敷地の売却、取壊しといった手法も追加されました。
建替え決議、建物更新決議、取壊し決議については、組合員総数及び議決権総数の各5分の4以上で決議、建物敷地売却決議、建物取壊し敷地売却決議については、組合員総数、議決権総数及び敷地利用権の持分(価格)の各5分の4以上で決議するものとなります。
さらに耐震性不足や外壁落下の危険性などの客観的事由がある場合は、4分の3まで引き下げられます。
【補足】総会の定足数
総会の定足数も変更しています。改正前、議決権総数の半数以上の出席が求められましたが、改正後の標準管理規約では、総会の定足数は、普通決議の場合「議決権総数の過半数」、建替え決議など区分所有権の処分を伴う決議を除く特別決議の場合は「組合員総数及び議決権総数の各過半数」の出席が求められるようになりました。
(「出席」には書面又は代理人によって議決権を行使する者を含みます。)
(2)総会招集時の通知事項等の見直し
総会招集時の通知事項についても、現行の管理規約だと区分所有法に抵触する可能性があるため見直しが必要になります。具体的なポイントは以下の2点です。
・議案の要領が必須になった
・総会の招集期間が変更された
順に解説します。
議案の要領が必須になった
区分所有法の改正により、すべての議案の要領が必須になりました。これは総会前の理事会での議案書の確認がより重要になることを意味します。
議案の要領については改正前から設定されているケースが多いため、実務上は大きな問題はありませんが、管理規約にも明記しておくことで、今後解釈のずれが生じることを防げるでしょう。
総会の招集期間が変更された
緊急に総会を招集する際の通知期間について、短縮できる最短日数が変更されました。 改正前の標準管理規約では、「緊急時は理事会の承認を得て5日前まで短縮できる」とされていました。
しかし、最新の標準管理規約では、この緊急時の短縮期間が「1週間を下回らない範囲」へと見直されています。
(3)共用部分の損害賠償請求権などの代理行使
共用部分の損害賠償請求権などの代理行使についても、管理規約の変更が必須となります。
ポイントは分譲時点での瑕疵に関する請求権の明確化です。
これまで、分譲時点の瑕疵や初期の不具合(施工の不良によるタイルの落下、構造の欠陥など)は、売買されていても一番初めに購入した方に、瑕疵に関する請求権が残っていました。
そのため、転売した住戸に関しては、一番初めに購入した方々の賛成がないと、デベロッパーもしくはゼネコンへの請求対象外になってしまっていたのです。
改正後は、一部住戸が転売された場合であっても、理事長が一括して損保賠償請求が可能になりました。築10年を超えているマンションであっても分譲会社や施工会社へ初期不具合の損保賠償請求を行うケースは珍しくありません。
管理規約も法改正に合わせる形に見直しておきましょう。
(4)所在不明の区分所有者を母数から除外手続き
所有者の所在がわからない場合に、管理組合が裁判所に申請して、所在不明の区分所有者を決議の母数から除外する手続きの規定が新設されました。
連絡が一切取れない人が増えると、総会で決議するときに、その分だけ「反対票」を投じているのと同じ状態(分母には含まれるが賛成は得られない)になり、大規模修繕や、建て替えなど、建物の安全性を守る為の決議に支障が出るためです。
管理規約の変更は必須ではありませんが、「相続が放置される」「所有者が高齢者施設に入居し連絡が途絶える」といったケースによる深刻化に備えて、定めておいた方が良いでしょう。
(5)海外居住オーナーへの対応(国内管理人の活用)
海外に住んでいる方がマンションを購入したり、購入後に海外転勤になったりして、所有者が日本に居住していない場合に、総会議案書が届かない、管理費や修繕積立金の滞納があっても督促できない、といった問題があり新設された項目です。
改正後は、海外居住の所有者は、総会の議案書を届ける先や議決を行使できる立場の人「国内管理人」を置くことができるように規定されました。
国土交通省のコメントには、「国内管理人を置くことを義務化することも検討の余地がある」と記載されています。
海外居住オーナーへの対応はマンションによって重要度が変わってくる事項です。現状、マンションに海外居住オーナーがいない場合も将来的に問題が生じる可能性もあるため、標準管理規約に合わせて規約変更しておくのが望ましいです。
(6)専有部分の保存行為実施の請求
法改正により専有部分の保存行為実施の請求が可能になります。これまでは、専有部で何かしらの緊急事態が発生した場合、管理組合は立ち入る権限はありましたが、「直してください」といった要求に関しては、規定がなくトラブルが生じていました。
改正後は、共用部に影響するような不具合が専有部分にあった場合は、マンションの躯体にも影響する可能性があることから、専有部の修理請求について明確化されています。
(7)共用部分の管理に伴い必要な専有部分の保存行為
共用部分の管理に伴い必要な専有部分の保存行為(共用部分と専有部分で一体化している給排水管等の修繕)についても、明確化されました。
これまでも標準管理規約では、管理組合による共用部分と専有部分の配管等の一体的な保存行為を可能としていましたが、区分所有法の改正を受け、第21条第2項の規定が、区分所有法が示す「規約の特別の定め」に該当することをコメントにて明確化しました。
すでに自費で専有部分の保存行為を行っている住戸への保証など、別途考えなければいけませんし、該当する専有部分の保存行為にかかる費用をすべて長期修繕計画に反映すると、修繕費用が爆増する問題もありますが、トラブルを防ぐためにも、管理組合としての方向性を検討し、合意の上規約に定めておくことが望まれるテーマになります。
(8)修繕積立金の使用用途の拡大
標準管理規約の改正改正により、修繕積立金の使用用途が拡大しました。具体的には、一棟コンバージョン・一棟リノベーションなど、更新・売却・取り壊しの検討段階から修繕積立金を支出できるように改正されています。
またこれまでは、修繕積立金会計の口座残高証明書の発行費用(わずか数百円)でも、修繕積立金から支出していいのか(修繕積立金の支出は総会決議事項)といった議論がありました。こちらも標準管理規約の改正により修繕積立金を利用できる旨が明示されています。
後々のトラブルを避けるためにも管理規約変更が望ましい事項です。
(9)マンションに特化した財産管理制度
法改正により、所有者不明・管理不全の専有部分に対して、裁判所の許可を得て管理人を専任できる規定が盛り込まれました。
たとえばゴミ屋敷の状態で悪臭が発生している専有部分について、これまではほかの住民が困っている場合でも、管理組合としての対処が困難でした。
改正後は、裁判所が専有部分の管理を行う管理人を選任できるようになる規定が新設され、所在者不明・管理不全により生じる問題に対して法的な介入が可能になります。
(10)区分所有者の責務
再確認の意味合いで「円滑な共同生活を送っていくために協力し合って区分所有者としての義務を果たしていきましょう」といったことが、標準管理規約の中に盛り込まれました。
区分所有者の責務には、総会への出席、管理費修繕積立金の支払い、連絡先の更新などが該当するでしょう。
改正前も区分所有者の責務は当然にありましたが、規約として明確化されました。
(11)管理組合役員に関わる規定の見直し
管理組合役員のなり手不足への対策として、管理組合役員に関わる規定も見直されています。
今までは理事になる方の規定として「現に居住している区分所有者」が大半でした。なかには、すでにその規定を緩和し、理事の範囲を広げているマンションもあるでしょう。
今回の改正では、配偶者や一親等以内の親族であれば、理事会に代理出席して理事としての職務を全うできる、といった規定が追加され、より実態に即した形になりました。
自分たちのマンションの理事会運営・理事のなり手不足について、議論を深めたうえで規約の変更を検討しましょう。
(12)なりすまし対策(本人確認)
昨今、マンションでは外部の工事関係者が組合員または外部専門家のふりをして、修繕委員などに立候補し、自分たちの会社で工事を受注できるように仕向けることが問題となっています。
改正後はなりすまし対策として、管理組合役員、専門委員就任時の本人確認についてコメントが追加されました。
具体的には、マイナンバーカード、運転免許証、パスポート等の顔写真付きの身分証明書の提示を求める等の方法により本人確認を行うことが記されています。
ただし身分証明書偽造などの課題もあるため、より強固な対策にするためには、電話での意思確認や住所の現地確認など複合的な対策やルール作りも必要になるでしょう。
(13)防災業務の明確化
防災業務について、管理組合において取り組むべき防災関係業務がコメントに追加されました。
おもに防災マニュアルの作成・防災訓練・防災名簿の作成・防災備蓄費の整備などが挙げられています。
また一般の居住用マンションの場合、50人以上になると防火管理者の選任が必要になりますが、そこについても明文化されています。
(14)喫煙ルールの明確化
喫煙のルールを定めるときの考え方がコメントで明確に示されました。ただ禁煙を求めるものではなく、喫煙するのであれば、「どこで、どのように喫煙できるのか」を明確にしましょう、といった考え方です。
喫煙に関するトラブルで見られるのが、バルコニーでの喫煙です。バルコニーは専用使用権付の共用部にあたり、窓を開けているとタバコの煙が入ってくる可能性があります。
管理組合として明確なルールを決めて対策しておくとよいでしょう。
管理規約変更は管理会社が対応してくれる?

マンション標準管理規約が改正されていることから、管理会社が管理規約を変更してくれるのでは?と考える方もいるでしょう。
しかし管理会社との管理委託契約には、基本的に「管理規約の変更業務」は含まれていません。管理会社に対応してもらうには別途依頼する必要があり、どこまで対応してもらえるのかは会社によって異なります。
いずれにしても、管理規約の変更については「管理会社が率先してやってくれるもの」ではないため、管理組合側から行動を起こすことが必要です。
管理規約の変更は専門家に依頼するのがおすすめ

マンションの管理規約の変更は、マンションの管理運営や建築まで幅広い知識を持つ専門家に依頼するのがおすすめです。
改正された区分所有法やマンション標準管理規約の趣旨を正しく理解していなければ、適切に管理規約に落とし込めません。
また管理規約の変更する目的は、将来生じるトラブルを未然に防ぐことです。単純に法律やマンション標準管理規約に合わせるだけでなく、自分たちのマンションに適合させる形で独自性を残す必要があります。
意外に複雑な作業になるため、信頼できる専門家にサポートしてもらいましょう。
なお、2026年4月1日以降に招集する総会であれば、管理規約の変更について総会の出席者ベースでの決議が可能となり、合意形成のハードルが下がります。
2026年の区分所有法改正はマンション管理規約の見直しが不可欠

老朽化や管理不全、合意形成の停滞といった課題への対応を目的として、改正区分所有法は2026年4月に施行されました。
区分所有法の改正により、標準管理規約も総会決議要件の緩和や所在不明所有者への対応、財産管理人制度、役員規定や本人確認、喫煙・防災ルールの考え方など幅広く変更されています。
とくに総会の決議要件など現行の管理規約のままでは、総会決議が無効になる恐れがあります。そのためほぼ全マンションで管理規約の見直しが不可欠です。管理規約の見直しや変更は、基本的に管理会社の業務(管理委託契約の内容)には含まれていません。専門家の力を借りながら管理組合が率先して行いましょう。
さくら事務所の「マンション管理規約見直しサポート」は全国に対応しているサービスです。管理組合の運営に精通したマンション管理士や建築士などが、それぞれの専門性を活かして、皆様の管理規約の見直しをサポートいたします。
管理規約を見直すだけではなく、規約改正のため総会議案書を作成するなど、規約変更に向けた総合的なサポートも可能です。
・区分所有法の改正に合わせて管理規約を変更したい
・現行の管理規約に不備がないか調べたい
・専門性の高いプロにチェックしてほしい
上記のような方はぜひさくら事務所までご相談ください。
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マンション管理規約の見直しについては下記動画でも詳しく解説していますので、参考にしてください。




