災害時、タワマンだけが本当に危ないのか?実は危険な無防備マンションも

  • Update: 2019-10-21
災害時、タワマンだけが本当に危ないのか?実は危険な無防備マンションも

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

台風19号の影響で浸水、停電したタワーマンションが大々的に報じられました。

河川からの排水の逆流で地域一帯が浸水し、そのマンションでは地下に設置された電気室への浸水により、電気や水道が使えない状態に陥り、居住者の生活に大きな影響をもたらしています。

今回、一部地域のタワーマンションの被害だけが大きく取り沙汰されました。

タワーマンションは何かと注目を集めることから、メディアで取り上げられることも多いため集中的に報道されたのかもしれません。

確かに、高層階に居住している方々にとって、エレベーターが停まってしまった場合、日常生活に大きな支障になることもあります。

実際、「タワマンの盲点」のように言われていますが、本当にタワーマンションだけのリスクなのでしょうか?

エレベーターが停まった場合の影響に差はありますが、電気や水道などのライフラインが停止してしまえば、生活に不自由を強いられることはタワーマンションに限ったことではないのです。

そもそも分譲マンションであれば、その規模に関わらず、電気室や給水設備などは地階に配置されることは一般的であり、一帯が浸水してしまえば、同様の被害はタワーマンションに限ったことではありません。

タワーマンションより無防備な中小規模マンションも

タワーマンションでは、防災センターに24時間管理スタッフが常駐していることが一般的で、東京都の場合には一定規模以上の場合、防火や防災に関する講習を修了した防災センター要員の資格者も配備されているため、中小規模のマンションに比べ災害時に被害を抑えるための初期対応を専門スタッフにゆだねることができます。

しかし、管理スタッフが24時間常駐しているマンションは国内マンションのほんの一部。

今、本当に気を付けるべきは国内の多くを占める、中小規模マンションの自助共助の備えです。

土日や深夜など管理スタッフ不在の際に、災害にあった場合、居住者たちだけの対応を余儀なくされます。

また、本来勤務する時間帯であっても、管理会社・スタッフ自身が被災して、マンションに向かうことができない状態も想定されます。

ここでは、全てのマンションを対象に、改めて確認すべき防災対策についてさくら事務所のマンション管理コンサルタントが解説します。

過去の浸水履歴だけでなく、ハザードマップも確認しよう

今回の台風で「ハザードマップ」の重要性が再認識されました。

お住まいのマンションのエリアのハザードマップを改めて確認された方も多いでしょう。

一般的に過去に浸水した履歴のあるエリアであれば、既に新築時に止水板などが備えられていることも珍しくありませんが、ハザードマップで浸水の可能性が示されているエリアでも、過去に浸水の履歴がないところでは新築時には備えられていないマンションもあります。

都市化された市街地ではゲリラ豪雨のような局所的豪雨に伴い下水道の排水処理能力を超えることにより、排水が逆流し浸水する地域が増えています。

これまでは土から浸透していた雨水が都市化が進むことにより、アスファルト・コンクリートなど水が浸透し難くなっていることも影響しています。

過去の経験則に基づく備えでは、十分な対策とは言えない予測不能な災害が続く近年、これまでに被害に遭わなかったエリアであっても、今後被害に遭う可能性はあります。

一度、災害対策としてどのようなものが備えられているか、確認しましょう。

ライフラインを死守!電気室の浸水を防ぐ

マンションの場合、停電の際に生活への影響の大きいのがエレベーターの停止です。

電気室や給水設備だけでも万全の備えにをしたいものです。

電気室や給水設備が地下ではなく、1階に設置されている場合にも浸水の可能性は十分にあります。

また、エレベーターシャフトへの浸水対策についても検討されることをおすすめします。

具体的な対策については建物の立地や形状などによりさまざまですが、外部から建物内部への浸水を防ぐために防潮板(止水板)などを設置する方法や局所的に浸水を防止するために電気室などの扉を水密扉にする方法などが一般的です。

もちろん、電気室などのインフラ設備を地上に移設することも可能ですが、一朝一夕に実現できるとは考えにくいものです。

タワーマンションなど大規模な建物では万が一の停電の備えとして、自家発電設備が設置されていますが、これも地下に設置されているケースが多く浸水対策が必要です。

ただし、これらの自家発電設備には火災発生を伴わない停電時には共用部分の照明やエレベーターなどを稼動させることができるようになっているものもありますが、各住戸へ供給されるものではありませんので誤解のないようにして下さい。

また、近年小型の発電機を備える管理組合も多くなっていますが、購入後長期間に亘り防災倉庫などに放置されたままで開梱されていないことを見受けることも少なくありません。

小型の発電機などは製造メーカーの取扱説明書を確認して適切な時期に試運転などを行う必要があります。

万が一に備え購入した備品が機能しないのでは元も子もありません。

防災用品、本当に自分たちで使えますか?

先にもあげたように、24時間有人管理でないマンションの場合、災害時には居住者だけで対応しなければならなくなる可能性も高くなります。

防災用品の使い方をあらかじめ、確認する機会を設けておきましょう。

例えば、止水板の使い方、土嚢・水嚢の効果的な積み上げ方は皆さんご存知でしょうか?

土嚢はどちら側からの浸水を防ぎたいか?によっても、積み方が異なります。

せっかくの防災の備えも、効果的な使い方を知らなければ、宝の持ち腐れになってしまうのです。

マンションの規模によって、備わっている防災設備も異なりますので、お住まいのマンションで、災害時に防災設備がどのように機能するか?も確認しておく必要があるでしょう。

マンションの防災設備チェックポイントはくわしくはこちらもご覧ください。

お役立ちコラム「いざという時に慌てない!マンションの防災設備を知ろう」

災害時、まずは何をしたらいい?災害マニュアルの整備

24時間有人管理でないマンションは基本的に自分たちだけで、マンションの被害を抑えることを考えなければいけません。

もし浸水したら、大きな地震があったら?まず何をするのか?居住者の安否確認はどう行うのか?

防災マニュアルを確認し、それに沿ってスムーズに動けるようにしておきましょう。

そもそも防災マニュアルが、マンションに適したものかどうかもチェックし、お住まいのマンションに適したものでない場合、新たに作成しなおしましょう。

特に新築でお引き渡しを受けてまだ日の浅いマンションの場合、防災訓練も経験していないところもあるでしょう。

自然災害にはそんなタイミングも都合も関係ありません。

防災対策は早急に確認・周知しておくことをお勧めします。

また、地域の自治会などと連携した防災対策も講じておくとより充実した体制を敷くことができるかもしれません。

24時間有人管理のないマンションに求められるより一層の助け合い

24時間有人管理にないマンションの場合、災害時、居住者間の助け合いはより一層必要になるでしょう。

ですが、そういった規模の大きすぎないマンションならではの防災の仕方もあるかもしれません。

例えば中小規模マンションの場合、頻繁なイベント活動などを行わなくても、そのマンション規模からある程度、どんな方がお住まいなのか?お住まいの方を認識しやすい(災害時には安否確認もしやすい)という特徴もあるでしょう。

普通に暮らしているだけでも相手の顔が分かるようなコミュニケーションの取りやすいマンションであれば、防災意識を高めるためのイベントなどを企画し、防災への危機意識もスムーズに共有でき、しっかりとした対策も練ることが出来るかもしれません。

いずれにしろ、マンションの規模やタイプ、立地により、備えるべきリスク、効果的な防災対策、防災意識の高め方、いずれも異なります。

お住まいのマンションに合わせた、防災の備え、今一度考えてみてはいかがでしょうか?

専門家のアドバイスをご希望の方はさくら事務所のマンション管理士にお気軽にお問合せください。

土屋 輝之
監修者

土屋 輝之

2003年さくら事務所に参画、不動産仲介から新築マンション販売センター長を経る間に、不動産売買及び 運用コンサルティング、マンション管理組合の運営コンサルティングなどを幅広く長年にわたって経験。不動産、建築関連資格も数多く保持し、深い知識と経験を織り込んだコンサルティングで支持される不動産売買とマンション管理のスペシャリスト

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【監修】さくら事務所マンション管理コンサルタント(マンション管理士)

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