ヒアリング会は大規模修繕工事の施工会社を決定する過程で行われます。ヒアリング会は施工会社の現場代理人から直接話を聞ける貴重な場です。
有意義な時間にするためにも、受け身ではなくしっかり備えて望むことが大切です。
本記事ではヒアリング会で後悔しないために、事前に準備しておくことや施工会社を選定するうえで効果的な質問事項を紹介します。
大規模修繕工事のヒアリング会を控えている方はぜひお役立てください。
目次
ヒアリング会とは
ヒアリング会では、書類選考を通過した2、3社の施工会社に会社概要や工事に関すること(見積金額や仕様など)、意気込みなどをプレゼンテーションしてもらい、工事を依頼する1社を決定します。
ヒアリング会に出席するのは、基本的に会社の営業担当者や現場代理人です。ヒアリング会の大まかな流れは、まず施工会社側から資料を用いて会社の概要や工事に関する説明を受け、その後質疑応答へと進みます。
1社につき1時間程度が目安です。この1時間で信頼できる会社か見極めなければいけないため、しっかり準備しておきましょう。
大規模修繕工事のヒアリング会の事前準備
ヒアリング会をより有意義なものにするために、以下の事前準備をしておきましょう。
・資料は事前にもらって目を通しておく
・現場代理人が出席するように依頼しておく
詳しく解説します。
資料は事前にもらって目を通しておく
質疑応答の時間を長く確保するために、ヒアリング会で使用する資料は事前にもらって内容を確認し、不明点があればまとめてすぐ質問できるようにしておきましょう。
ヒアリング会の資料は以下のような構成です。
1.会社概要
2.工事内容
3.現場の管理体制
4.品質の管理体制
5.安全対策
6.緊急連絡先
7.仮設計画
8.工程表
9.住民へのサポート内容
10.賠償保険やアフターメンテナンス
当日は資料を見ればわかることは端的に説明してもらい、質疑応答に時間をかけたい旨を伝えておきましょう。
現場代理人が出席するように依頼しておく
ヒアリング会には現場代理人も出席するケースが多いですが、必ず来てもらえるように念押ししておきましょう。
現場代理人は、実際に大規模修繕工事の現場を取り仕切る重要人物です。どんなに信頼できる会社でも、現場代理人が力不足だと工事はスムーズに進みません。
現場代理人によって施工品質まで変わります。人柄や経験値を判断するためにも、ヒアリング会には必ず出席してもらいましょう。
大規模修繕工事のヒアリング会で聞くべき5つの質問
ヒアリング会の質疑応答で聞くべき5つの質問を紹介します。どのような会社なのかより深く理解できる質問のため、ぜひ参考にしてください。
(1)応募動機
(2)同規模マンションでの大規模修繕の体験談
(3)現場での職人とのコミュニケーション
(4)管理組合やコンサルタントとの連絡方法と頻度
(5)その施工会社を採用するメリット
順に詳しく見ていきましょう。
(1)応募動機
なぜ今回応募したのか深くヒアリングすることで、オリジナリティのある提案など、自分たちのマンションにとって有益な情報を引き出せることがあります。
逆に、具体的な応募動機がでてこない場合は、あまり考えず手当たり次第に応募していることも。いくつもの応募が重なっている会社は、提案を考える時間的余裕がなくなるため、よい提案が出てこないといった懸念点があります。
(2)同規模マンションでの大規模修繕の体験談
同規模のマンションで大規模修繕を行った際のトラブル事例など、苦労話を現場代理人に聞きましょう。あえてマイナス面の話を聞くことで、トラブルに向き合う姿勢も見えてきます。
また、失敗体験や苦労した体験をどのように乗り越えたのか、その経験を今回の大規模修繕工事でどう活かすのかまで確認することで、現場代理人の経験値もわかるでしょう。
(3)現場での職人とのコミュニケーション
現場代理人が工事に携わっている職人たちとのコミュニケーションをどの程度意識しているか確認します。
現場代理人によっては、各職種(塗装や防水など)のリーダー任せになっており、職人とのコミュニケーションがとれていないことも少なくありません。
現場代理人が職人を気にかけて意識的にコミュニケーションをとることで、工事品質が安定します。最近は外国の方が作業に入ることもあるため、広い視野を持ち現場をしっかり統制できる力を持っていることが重要です。
職人とのコミュニケーションの話から、現場代理人の人柄も判断できるでしょう。
(4)管理組合やコンサルタントとの連絡方法と頻度
管理組合やコンサルティング会社との連絡方法と頻度も現場代理人に聞いておきましょう。
大規模修繕工事は必ず工程通りに進むとは限りません。一般的に月に1回開催される定例会議はありますが、定例会議だけだと話し合いの場が足りないことが多いです。
予定外の事項やトラブルが必ずと言っていいほどあるため、そのときに都度報告や相談をしてもらえるのか、どのような方法(メールやLINEなど)で連絡をとるのか確認しておきましょう。
(5)その施工会社を採用するメリット
その施工会社を採用するメリットについても聞いておきます。営業担当者はプレゼンの場に慣れており会社のコンセプトや強みを明確に答えられるため、必ず現場代理人に質問することがポイントです。
会社のコンセプトや強みは事前に渡される資料にも書いてあるため、同じことを言っているか確認します。魅力的な強みやコンセプトを掲げていても、現場代理人が答えられないと実行できません。
現場代理人が自社のメリットを把握していることが重要です。
注意!大規模修繕工事のヒアリング会で談合が疑われるケース
大規模修繕工事では「談合」の危険性があるため、知識をつけておきましょう。
大半のマンションでは、管理会社や管理組合が大規模修繕工事の施工会社を決める際に、設計監理業務を別の会社(コンサルティング会社)に依頼する「設計監理方式」が採用されています。
設計監理方式の場合、悪質なコンサルティング会社が安い費用で設計監理を受託し、施工会社からバッグマージンを受けとる不正が行われる可能性があるのです。
ヒアリング会で以下のような状況がみられる場合はとくに注意してください。
コンサルティング会社が声をかけた会社しか参加していない
あらゆる会社の応募があったのにもかかわらず、コンサルティング会社が声をかけた会社以外、ヒアリング会に参加できていない場合、そうなるように仕向けられた可能性があります。
また、そもそも書類審査の応募数が極端に少ない場合も注意が必要です。談合を知っている施工会社が参入を避けていたり、結託したコンサルティング会社らがほかの施工会社に参加しないように圧力をかけていたりするケースがあります。
1社だけ圧倒的に対応や見積金額が魅力的である
1社だけ見積金額が極端に安い場合は、コンサルティング会社により見積もり操作が行われ、予めその1社が選ばれるように仕組まれている可能性があります。
また、ヒアリング会で1社以外あきらかに対応が不誠実でやる気が感じられない場合も同様です。裏でコンサルティング会社と施工会社らが口裏を合わせていることがあります。
大規模修繕工事の談合の手口や対策については下記記事でまとめていますので、参考にしてください。
マンション大規模修繕工事の談合に注意!手口や疑わしい状況、対策とは
【事例紹介】施工会社選びで不信感があれば第三者に相談するのがおすすめ
談合は巧妙な手口で行われるため、防ぐのが難しいです。施工会社選びで少しでも不信感があれば、早めに第三者に相談することをおすすめします。
ここではさくら事務所が相談を受けて、公正な施工会社選びができた事例を紹介します。
相談のきっかけは、設計監理方式で大規模修繕を進めていたところ、担当者が特定の施工会社ばかり推奨するといった違和感があったことでした。
さくら事務所が調査した結果、施工会社の公募の際に高すぎる条件を設定していたなど特定の施工会社が有利になるような動きがみられました。
そのマンションでは、さくら事務所が再選考や説明会に立会って再び公募を行い、全所有者が納得できる施工会社選定ができ大きな問題になる前に解決できました。
談合を防ぐには小さな違和感に気がついて声を上げることが大切です。
有意義なヒアリング会にして大規模修繕の施工会社選びを成功させよう
大規模修繕工事の施工会社選定で行われるヒアリング会は、現場代理人に直接質問できる貴重な機会です。ヒアリング会では、応募動機・過去の施工事例・連絡体制などを現場代理人に聞くことで、各施工会社の対応力を見極められます。
大規模修繕の施工会社を決定する際は、談合にも注意が必要です。会社選定の過程で少しでも違和感を覚えた場合は、第三者の専門家に相談しましょう。
さくら事務所では、施工会社選びで不信感があったときや判断に悩んだときに相談できるセカンドオピニオンを実施しています。第三者の中立な立場で透明性・公平性を追求し、談合やバッグマージンによる損害から管理組合を守ります。
また施工会社選定を一からやり直すサポートも実施中です。金額だけではなく工事の中身までしっかり比べられるため、談合が起きにくく管理組合の意向やマンションの状態に合わせて工夫を凝らした提案がもらえます。
さくら事務所は1,000件以上の管理組合を支援してきました。これまでの経験で培ったノウハウや分析力で、的確なアドバイスが可能です。大規模修繕でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
専門家がサポートする大規模修繕工事の施工会社選び「修繕★参謀」
以下の動画でも、大規模修繕工事のヒアリング会について詳しく解説しています。