マンションのトラブルでよくあるのが、上の階からの水漏れです。突然天井から水が漏れてくると「どうすればよい?」「どこまで損害賠償してもらえるの?」とさまざまな疑問や不安が頭をよぎることでしょう。
そこで本記事では、マンションの上の階から水漏れしている場合の対処法や原因、賠償の範囲について解説します。火災保険の適用についても紹介するため、上の階からの水漏れの被害が大きい場合もぜひ参考にしてください。
目次
上の階から水漏れしたときの応急処置

上の階から水漏れしているときは、まず被害の拡大を防ぐために応急処置を行いましょう。
応急処置には以下の方法があります。
・家具や家電を保護する
・バケツなどで水を受ける
・被害状況を写真で記録する
順に見ていきましょう。
家具や家電を保護する
水漏れしている場所に設置している移動できる家具や家電は、水の被害に遭わないところに避難させましょう。
簡単に移動できないような大きな家具や家電は、ビニールシートやゴミ袋などを被せて保護してください。
家電は水に濡れると、水が電気の通り道となり漏電する危険性があるため、コンセントを抜いておきましょう。
バケツなどで水を受ける
床材などの内装が濡れないように、バケツなどで漏れてきている水を受けます。
漏れてきている水は不衛生な排水かもしれません。バケツがなくキッチン用のボウルなどを利用する場合は、本来の用途で使えなくなる可能性があります。
不安定な場所で水を受けたい場合は、雑巾や新聞紙を置いて水を吸収してもよいでしょう。
被害状況を写真で記録する
家具や家電を保護したり水を受けたりする環境が整って落ち着いたら、状況を写真に撮っておきます。
水が漏れてきている場所と被害に遭っている場所をそれぞれ撮影しておきましょう。
詳細は後述しますが、損害賠償や火災保険の利用などに際し、写真で記録しておくことが非常に重要になります。
上の階からの水漏れは「管理会社」に連絡する

一通りの応急処置が終わったら、管理会社に連絡して上の階から水漏れがあったことを報告してください。
つぎに以下の対応を依頼します。
・上の階の住民に状況確認してもらう
・修理手配について指示をもらう
・管理組合の保険で対応できる可能性があるか確認する
詳しく見ていきましょう。
上の階の住民に状況確認してもらう
管理会社から、上の階の住人に連絡をとって状況を確認してもらいましょう。
水は毛細血管のようにマンション内を巡って漏れてきます。どこで漏れた水なのか追求するのが困難で、必ずしも真上の部屋から漏れてきているとは言い切れないためです。
トラブルにならないためにも、自分で上の階の住人を訪れるのは避けましょう。
修理手配について指示をもらう
内装などの修理についても管理会社に確認しておきましょう。マンションによっては特定の修理業者に依頼することが決まっているケースがあります。
管理会社へ相談することなく独断で修理を手配してしまうと、本来、費用を負担しなくてよい場合であっても、自費負担になってしまう可能性があるため注意してください。
管理組合の保険で対応できる可能性があるか確認する
上の階からの水漏れは、管理組合が加入している保険で対応できることがあります。
たとえば上の階の住人の過失で水漏れしている場合は、管理組合が包括で加入している個人賠償責任保険が対象になるかもしれません。
管理組合が加入している保険の保証内容によって、今回の水漏れ被害が保険の対象になるか変わるため、事前に確認しておきましょう。
上の階から水漏れするおもな原因

ここでは上の階から水漏れのおもな原因は以下の3つです。
・上の階の住人による過失
・配管の故障や経年劣化
・外壁から浸入した雨漏り
順に詳しく解説します。
上の階の住人による過失
はじめに考えられるのが上の階の住人による過失です。
お風呂やキッチンの蛇口の閉め忘れていたり、洗濯機のホースが外れていたりするのに気がつかずに、水が溢れてしまうことがあります。
在宅していれば下の階に漏れるほど水が溢れる前に気がつきそうですが、不在時やリビングから離れた場所の場合は気づかぬうちに大事になっているケースがあるのです。
配管の故障
見えている部分の配管だけでなく、天井裏や壁のなかの給水管や排水管が故障して水が漏れていることもあります。
故障の原因は、経年劣化が多く、地震など外的要因による破損や接続不良も考えられます。。鉄管や銅管の場合は、経年劣化によりサビて穴が開いて水が漏れることも。
築20年以降の新しいマンションは40年以上もつ樹脂管が採用されていますが、築年数の古いと鉄管や銅管が使われており、築30年頃から水漏れリスクが高まります。
マンションの竣工図面に場所ごとの配管の材質が記載されているため確認してみましょう。
外壁から浸入した雨漏り
外壁から浸入した雨漏りが原因のケースもあります。
外壁のひび割れやサッシなどの開口部のシーリングが劣化した部分から、雨水が浸入して上の階からの水漏れのように見えることがあるのです。
また豪雨によりベランダの排水が追い付かずに、下の階の天井に漏れることもあります。
雨水による水漏れは、雨天時に生じるとは限りません。時間をかけて壁の中をつたって室内に漏れ出てきます。
上の階からの水漏れは誰が賠償する?

水漏れの箇所や原因によって、誰が上の階からの水漏れ被害を賠償するか決まります。
以下4つのケースに分けて見ていきましょう。
・住人の過失の場合
・設備の老朽化の場合
・初期不良の場合
・原因不明の場合
順に解説します。
住人の過失の場合
もっともわかりやすいのが、住人に過失の場合です。
蛇口の閉め忘れや掃除していなかったことが原因の排水詰まりなど、上の階の住人に過失がある場合は、その部屋の住人が賠償責任を負います。
設備の故障や不具合の場合
設備の故障や不具合が原因で水漏れした場合は「その設備が誰のものか」によって、責任の所在が決まります。
共用部の配管や外壁などに原因があったときは管理組合の責任です。専有部の設備の場合は、その部屋の住人が責任を負うことになります。
配管はマンション内で繋がっているため共用部と専有部の線引きが難しいですが、一般的には以下のとおりです。
・給水管:メーターを過ぎた部分から蛇口までは専有部、それ以外は共用部
・排水管:継手につながる横引き管からが専有部、それ以外は共用部
例外もあるため、必ず管理規約などで確認してください。
初期不良の場合
配管の勾配不足や設備交換したときの不具合が原因の場合は、その工事業者が賠償責任を負うことになります。
ただし、工事請負契約で決められているアフター保証の内容や期間によっては保証してもらえないこともあるため、早期発見と原因追及が重要です。
原因不明の場合
水漏れは原因追及が難しく、だれが責任を負うべきか判断できないケースも少なくありません。
調査しても水漏れの原因が不明の場合は、区分所有法第九条(以下)より、管理組合の責任となります。
区分所有法第九条「建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定」(建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定)
第九条 建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。
上の階からの水漏れ被害はどこまで賠償してもらえる?

上の階からの水漏れ被害に遭った場合、どこまで保証してもらえるのでしょうか。
以下4つの項目について解説します。
・壁紙や床材などの補修費用
・家財はクリーニング費用または時価相当額
・ホテル避難時の宿泊費
・休業損害や慰謝料は基本的に対象外
順に見ていきましょう。
壁紙や床材などの補修費用
水漏れにより被害を受けた壁紙や床材などの原状回復費用は賠償の対象です。
水漏れを調査するのに壊さなければいけなかった壁や床の補修費用も賠償してもらえます。
家財はクリーニング費用または時価相当額
水漏れ被害に遭った家具家電も賠償してもらえます。ただし購入時の金額ではなく時価相当額です。
またカーペットや衣類などクリーニングできるものは、買い替え費用ではなくクリーニング費用になるため注意してください。
ホテル避難時の宿泊費
ホテル避難時の宿泊費も賠償してもらえますが、金額はあくまでも相場です。
相場より高い場合は、相場分のみが賠償の対象になります。ホテル代の相場はその時期やエリアによっても差が大きいです。
具体的な金額は話し合いによって決定します。
休業損害や慰謝料は基本的に対象外
「水漏れ対応に追われて仕事を休んだ」「水漏れで精神的苦痛を受けた」というだけの理由では、基本的には休業損害や慰謝料は認められません。
勤務時間外で水漏れ対応ができなかった、実際に給料が減ったといった事実を証明するのは難しいためです。
また水漏れはあくまでも物損事故のため、内装や家財などの賠償で責任は果たしたと考えられます。
上の階の住人が賠償してくれないときはどうする?

上の階の住人が原因の水漏れだったのにもかかわらず、連絡が取れなくなるなどして賠償してもらえないケースもあります。
その場合は、管理会社に上の階の住人の緊急連絡先に連絡を入れてもらい話をつけるのが効果的です。
上の階の住人に対応してもらうのがベストですが、緊急連絡先に連絡してもらちが明かない場合は、自分が加入している保険で対応することもできます。
上の階からの水漏れで使える保険

上の階からの水漏れで使える保険を以下3つに分けて紹介します。
・自分が加入している火災保険
・相手が加入している個人賠償責任保険
・管理組合が加入している火災保険
以下で詳しく紹介します。
自分が加入している火災保険
加入している火災保険の商品によって保証内容は異なりますが、水濡れ補償が付帯している場合は、床・壁・天井などの内装修理費用を補償できます。
家財にも対応している内容であれば、家具や家電の費用も対象です。
ただし火災保険は、配管などの経年劣化による故障が原因の場合は対象にならないため注意しましょう。
相手が加入している個人賠償責任保険
上の階の住人に水漏れの原因があった場合は、その住人が加入している個人賠償責任保険で対応できます。内装・家財・ホテル避難時の宿泊費などが保証の対象です。
個人賠償責任保険は、過失による場合のみ適用され、故意や経年劣化は対象になりません。上の階の住人に水漏れの原因があった場合は、まず個人賠償責任保険に加入しているか確認しましょう。
なお個人賠償責任保険は、マンションの区分所有者を包括して管理組合で加入しているケースもあります。
管理組合が加入している火災保険
管理組合が加入している火災保険の特約で対応できることもあります。具体的には以下のとおりです。
・施設賠償責任保険~マンションの欠陥や管理不足により発生した水漏れ被害を補償できる
・水漏れ調査費用補償~水漏れの原因を調べるときに係る費用を補償
マンションの共用部が原因の水漏れの場合は、施設賠償責任保険が使える可能性があります。
水濡れ調査費用補償は、あくまでも調査に係る費用を補償するため、水漏れ箇所の修理や水濡れによる被害に関しては補償されません。
定期的な点検やメンテナンスで水漏れを防ごう

上の階から水漏れしているときは、被害が拡大しないように水を受けるなどの応急処置を行い、状況が落ち着いたら管理会社に連絡しましょう。
管理会社に水漏れの事実を報告し、上の階の住人へ状況確認してもらいます。修理の手配や保険についても聞いておきましょう。
上の階からの水漏れの原因は、住人の過失以外にも設備の老朽化などが考えられます。水漏れの箇所や原因によって賠償責任を負う人が変わってくるため、水漏れ調査で原因を特定することが大切です。
火災保険で対応できるケースもあるため、今一度補償内容を確認しておきましょう。
上の階からの水漏れは自分で防ぐのは難しいケースもありますが、管理組合の一員として配管や外壁の点検・メンテナンスをすることで防げることもあります。
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下記動画でも、マンションの漏水事故について分かりやすく紹介しているため参考にしてください。






