エレベーターの基盤の耐用年数や物理的な寿命は?基盤交換時の注意点も

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エレベーターの基盤の耐用年数や物理的な寿命は?基盤交換時の注意点も

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

基盤は、エレベーターの運転動作や速度などを制御する、制御盤の内部にある電子部品が組み込まれたものです。

基盤はエレベーターを安全に動かすために必要不可欠なため、耐用年数がきたら大きな事故が起きる前に交換しましょう。

本記事ではエレベーターの基盤の耐用年数や交換費用、交換時の注意点を解説します。エレベーターの基盤交換のタイミングに悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

エレベーターの基盤などの耐用年数

ここでは以下3つの視点から、基盤を含めたエレベーターの耐用年数を紹介します。

・基盤などの主要部品の耐用年数
・メーカーの計画耐用年数
・エレベーターの法定耐用年数

順に見ていきましょう。

基盤などの主要部品の耐用年数

エレベーターを構成する主要部品や装置の耐用年数は以下のとおりです。

・基盤:20年
・ロープ式エレベーターの巻上機:20~30年
・油圧式エレベーターの油圧ポンプ:20~30年

上記のとおり、主要部品や装置の耐用年数は20年が目安です。そのほか、制御盤の非常電源用バッテリーなど保守点検で数年ごとに交換する部品もあります。

メーカーの計画耐用年数

計画耐用年数とは、物理的なエレベーターの寿命を指します。メーカーが示すエレベーター自体の計画耐用年数は20~25年前後が一般的です。

20年を過ぎたエレベーターはリニューアルが推奨されています。

マンションの場合、2回目の大規模修繕が行われるタイミングでエレベーターのリニューアルも実施されるケースが多いです。

エレベーターの法定耐用年数

エレベーターの法定耐用年数は17年です。法定耐用年数とは、国税庁が公表しているもので、税法上、資産価値がなくなる(減価償却できる)年数のことを指します。

計画耐用年数よりも短いですが、法定耐用年数は減価償却費を計算するための年数に過ぎないため、寿命という意味での耐用年数とは言えません。

耐用年数を迎えたエレベーターの基盤の交換費用

エレベーターの基盤を交換する際の費用は、50~80万円が相場になります。内訳はおもに基盤の部品代と交換費用です。

ただし基盤の交換費用は、エレベーターの種類や依頼する業者によって異なるため、見積もりを依頼して確認しましょう。業者によっては、基盤や制御盤のみの交換を実施していないこともあります。

エレベーターの基盤を交換する際の注意点

エレベーターの基盤を交換する際には以下4点に注意しましょう。

・部品の供給が終了する時期を考慮する
・基盤の交換だけでは不十分なことがある
・確認申請が必要なケースがある
・工事中はエレベーターが使えない

順に詳しく解説します。

部品の供給が終了する時期を考慮する

メーカーから部品の供給終了の知らせがきたら、交換を検討しましょう。

基盤が組み込まれている制御盤などの部品は、おおよそ25年前後で供給が終わります。供給が終了すると、在庫次第では壊れたときに部品交換で対応できず、長期間エレベーターが使えなくなることも。

エレベーターの基盤に問題がない場合でも、部品の供給終了により交換が必要になるケースがあることを覚えておきましょう。

基盤の交換だけでは不十分なことがある

基盤が耐用年数を迎えた場合、ほかの部品や装置も交換が必要になっている可能性があります。

まとめて工事することでトータルの工事期間を短縮できるため、必要に応じて、基板交換だけにとどまらず、エレベーターのリニューアルを検討しましょう。

エレベーターのリニューアルはおもに以下の3通りあります。

・制御リニューアル~基盤など制御関連の機器を中心に交換する
・準撤去リニューアル~各階に付いている枠など一部を残してほかを交換する
・全撤去リニューアル~すべてを交換して新設する

交換する範囲が広くなるほど、工期が長くなり、工事費も高くなります。

エレベーターの工事費用や工期については、下記記事で紹介しているため参考にしてください。

エレベーターの制御盤交換の修繕費は?修繕積立金が値上げされた事例も紹介

確認申請が必要なケースがある

エレベーターの全撤去リニューアルは、原則、確認申請が必要になります。また制御リニューアルや準撤去リニューアルの場合であっても、内容によっては確認申請を求められることも。

確認申請で注意すべきは、現行の法令に適合していない(既存不適格)エレベーターだった場合、是正を求められるケースが多い点です。

既存不適格は違法ではないため、そのまま利用することもできます。しかし確認申請で是正を求められれば、現行の法令に適合させるための工事が増え、費用がかさむため注意しましょう。

工事中はエレベーターが使えない

工事中はエレベーターが使えません。工事の必要性や工程の説明が不十分だと、利用者とのトラブルに発展します。

エレベーターの工事が決まったら、早めにスケジュールを周知するなどして、理解を得ておきましょう。

また工事の時間帯や日数など可能な限りの配慮も不可欠です。非常用の避難経路の周知や身体的な理由で階段を使うのが難しい高齢者などへの対応についても対策を検討しておきましょう。

エレベーターをリニューアルするメリット

エレベーターのリニューアルには、基盤交換だけでは得られないメリットがあります。

・経年劣化による故障防止や意匠性の改善ができる
・現行の法令や社会のニーズに適合させられる

順に見ていきましょう。

経年劣化による故障防止や意匠性の改善ができる

各部品や装置の経年劣化が進むと、不具合が生じる可能性が高まり、安全な運転ができなくなります。

またエレベーターのかご内や枠など目に見える部分の美観も損なわれてくるでしょう。

エレベーターをリニューアルすることで、経年劣化による故障防止や意匠性の改善ができ、安全性や利用者の満足度を高められます。

現行の法令や社会のニーズに適合させられる

確認申請が不要な場合など、既存不適格を解消しなくてもよいケースもあります。しかしエレベーターを安全に使うためには解消したほうがよいことが多いです。

また、リニューアルの内容によっては、耐震性の強化やバリアフリー化、防犯対策など、社会環境の変化により求められているレベルに合わせてグレードアップさせられます。

安全性や利便性を高められるのは、リニューアルの大きなメリットといえるでしょう。

エレベーターは耐用年数を考えて計画的に基板交換やリニューアルしよう

エレベーターの基盤の耐用年数は20年が目安です。メーカーが推奨するエレベーターの計画耐用年数(寿命)も20~25年頃のため、基盤の交換を検討する際はエレベーター自体のリニューアルも視野に入れましょう。リニューアルの方法によって、工期・費用・確認申請の有無が異なります。

エレベーターのリニューアル工事は決して安くありません。エレベーターを安全に使い続けるために、いつどのような工事が必要なのかしっかり計画を立ててメンテナンスしていきましょう。

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佐藤 健斗
監修者

佐藤 健斗

新卒で電鉄系の資産管理会社にて、鉄道会社の保有資産(駅舎・高架下など)の活用や店舗開発を経験。
その後、不動産のコンサルティング会社にて、主に地主様・家主様向けに売買・賃貸管理・有効活用など多角的なコンサルティングを行う。

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