マンションの耐震診断はやるべき?必要性や費用、実施までの流れを解説

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マンションの耐震診断はやるべき?必要性や費用、実施までの流れを解説
監修者:鬼塚 竜司
監修者:鬼塚 竜司

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

「うちのマンション旧耐震で心配…」
「耐震診断ってやったほうがいいの?」

築年数の古いマンションや旧耐震基準のマンションだと、万が一大きな地震が来たときのマンションの安全性を不安視している方も多いのではないでしょうか。

日本は地震大国で、2025年だけでも震度5以上の地震が複数回生じており、12月には青森県東方沖で最大震度6強の地震が観測された事例もあります。いつお住まいの地域で大きな地震が起きてもおかしくない状況において、マンションの耐震性は決して軽視することはできません。

とはいえ耐震診断さらには耐震改修工事を実施するとなると、多額の費用がかかる可能性があり、踏み切れていないマンションも多いのが現状です。

そこで本記事ではマンションの耐震診断の必要性や費用の調達方法について解説します。とくに注意が必要なマンションの特徴についても紹介するので、マンションの耐震性について不安がある方はぜひ最後までお読みください。

そもそもマンションの耐震診断で何が分かる?

そもそも耐震診断することで何が分かるのでしょうか。

耐震診断は、おもに旧耐震基準の建物が震度6~7程度の揺れにどの程度耐えられるかを構造図などの設計図書や現地調査をもとに評価するものです。

耐震診断の結果にはIS値(地震力に対する建物の強度と粘り強さを考慮した数値)が用いられます。

IS値の基準は以下の通りです。

・0.6以上~倒壊または崩壊する危険性が低い
・0.3以上0.6未満~倒壊または崩壊する危険性がある
・0.3未満~倒壊または崩壊する危険性が高い

IS値が0.6以上だと倒壊の危険性が低いと判断でき、0.6未満だと耐震改修工事の実施が推奨されます。

マンションの耐震診断を実施すべき理由

耐震診断して耐震性が不十分だった場合に、その先の耐震改修工事の費用を捻出できずに「耐震性なし」のレッテルを貼られてマイナスイメージがつく、といった不安感から、耐震診断していないマンションも多いです。

しかしそれでも耐震性に不安がある場合は、以下の理由から耐震診断することをおすすめします。

・震災時の倒壊リスクを把握できる
・マンションの将来の方向性を検討できる

順に詳しく解説します。

震災時の倒壊リスクを把握できる

旧耐震基準のマンションの場合、震度5程度の地震で倒壊・崩壊しないことが目指されており、震度6以上の大地震は想定されていません。しかし同じ旧耐震基準で建てられていても、マンションによって耐震性は異なるため、耐震診断で把握しておきましょう。

また内閣府は「30年以内に南海トラフ地震が発生する確率は80%程度」と発表しており、近い将来マグニチュード8~9クラスの巨大地震が起きることが十分に考えられます。

耐震性がなかった場合は、耐震改修工事が推奨されますが、工事以外にも管理組合で共用部の震災対策をおこなったり個人の防災意識を高め各居住者で備えたりすることもできるため、まずは耐震診断で自分たちのマンションの耐震性を把握しておくことが重要です。

マンションの将来の方向性を検討できる

耐震診断の結果次第で、マンションの将来の方向性を検討できます。

2025年の改正区分所有法の施行により、これまで区分所有者数と議決権の5分の4の賛成が必要でハードルが高かったマンションの建て替えや一棟リノベーションの決議要件が一定の客観的事由 がある場合は、4分の3に緩和されました。

区分所有法の改正に合わせて、耐震性不足のマンションを建て替える場合の容積率や高さ制限についても、特定行政庁の許可を得たマンションは特例措置を受けられるようになり、建替えといった選択肢を選ぶことも現実的になっています。

「耐震改修工事に莫大なお金がかかるため建替えにしよう」もしくは「あまり費用をかけずに工事ができるから延命して住み続けよう」など、耐震診断の結果がマンションの方向性を考えるうえで重要な検討材料になるでしょう。

耐震診断すべき理由については下記動画でもわかりやすく解説しているので参考にしてください。

【注意】旧耐震のなかでもとくに耐震性が低いマンションの特徴

旧耐震基準で建てられたマンションのなかでもとくに耐震性が低いマンションの特徴を3つ紹介します。

・1971年(昭和46年)以前に建築申請を受けている
・マンションの上下で構造が異なる
・マンションの形状が複雑になっている

順に見ていきましょう。

1971年(昭和46年)以前に建築申請を受けている

旧耐震基準は1981年(昭和56年)5月31日までに建築確認を受けた建物が該当します。しかし実は専門家の間では、旧耐震基準のなかでも1971年(1971年)以前に建てられているものはより耐震性が低い可能性がある旧旧耐震基準として、区別しているのです。

耐震診断しないと特定はできませんが、新耐震基準に変わる前の約10年間はIS値が0.5(合格ラインは0.6)を超えていることも多く、耐震改修工事に多額の費用がかからないケースもあります。

一方、1971年以前に建築申請を受けている旧旧耐震基準のマンションの場合は、IS値が0.3を下回ることも多く、耐震性が脆弱な傾向です。

マンションの上下で構造が異なる

基本的にマンションは壁式構造またはラーメン構造です。壁式構造とは住戸の中に耐力壁があり間取り変更を伴うリフォームがしにくい特徴があります。

ラーメン構造は柱と梁の骨組みで支える構造で、間取りの可変性が高いです。今のマンションの多くはラーメン構造で建てられています。

しかしなかには低層階が壁式構造、上層階がラーメン構造になっているなど、上下で構造が異なっているマンションもあります。

上下階で構造が異なると一般的に耐震性が弱くなる傾向があるため注意しましょう。

マンションの形状が複雑になっている

マンションの構造が上下階で同じでも形状が複雑だと基本的に耐震性は低くなります。具体的には以下のような形状のマンションです。

・ピロティ型(1階部分が柱のみで下をくぐれる)
・L字型
・雁行(がんこう)型(住戸がジグザクに配置されている)
・ひな壇型(ルーフバルコニーがあり階数が上がるほど住戸数が減る)

建物はシンプルな四角形だと耐震性を確保しやすいです。上記以外でも四角形でないマンションは耐震性が低くなっている可能性があります。

下記動画でも耐震性が弱いマンションについて紹介しているため参考にしてください。

マンションの耐震診断・耐震改修の費用相場

マンションの耐震診断・耐震改修工事の費用はマンションによって幅があり、耐震診断だけでも数百万、耐震改修工事は何千万、場合によっては1億円以上かかるケースも少なくありません。

とはいえ、一般的にどのくらいの費用がかかっているのか把握するために東京都都市整備局の調査結果を見ていきましょう。

2013(平成25)年3月、東京都都市整備局は、都内のすべての分譲マンションおよび賃貸マンションを対象とした調査「マンション実態調査結果【概要版】」で、耐震診断費用と耐震改修工事費用について、以下の結果を公表しました。

出典:東京都都市整備局「マンション実態調査結果【概要版】」

耐震診断の費用で最も多かったのが「100超~300万円」、次いで「300超~500万円」でした。耐震改修工事では、「500超~1000万円」がもっとも多く「1000超え~3000万円」が2番目に多い結果になっています。

上記は2013年の結果です。現在は物価高騰などの影響もありさらに高額になっていることが予想されます。また全国的な調査ではないためあくまでも目安として参考にしてください。

耐震診断や耐震改修工事の資金の調達方法

耐震診断や耐震改修工事の資金調達方法は以下3つです。

・計画的に資金を積み立てておく
・補助金や助成金を活用する
・金融機関から借り入れる

順に解説します。

計画的に資金を積み立てておく

時間はかかりますが、最も健全なのが計画的に耐震診断や耐震改修工事の資金を積み立てておくことです。

マンションでは長期修繕計画で、外壁塗装や屋上防水などの大規模修繕、エレベーターや機械式駐車場の設備更新などが予定されており、おおよその費用が計上されています。これらの費用をもとに毎月の修繕積立金の徴収額が決定されているのが一般的です。

しかし耐震診断や耐震改修工事の費用については、一般的に長期修繕計画で計上されていません。そもそも耐震診断にかかる費用は積み立てていない状態です。

耐震診断・耐震改修工事も長期修繕計画に含めて、大規模修繕などと同じ土俵に上げ、優先順位を決めて資金を確保していくという発想が大切になります。

補助金や助成金を活用する

補助金や助成金制度を活用できれば、管理組合の経済的負担を大きく軽減できます。

耐震診断や耐震改修工事に関する補助金や助成金制度を設けている自治体も少なくありません。お住まいの自治体の制度を確認してみましょう。

たとえば東京都港区では、耐震診断に要した費用の全額(限度額450万円)、川崎市では、耐震診断に要する費用と耐震判定委員会の判定に要する費用を合算した額の3分の2(1住戸あたり5万円が限度額)を助成しています。

各自治体によって適用条件や申請の流れなどが異なるため、耐震診断を検討する際にお住いの自治体のホームページや窓口で確認しておきましょう。

参照:川崎市「川崎市マンション耐震改修等事業助成制度」
参照:港区「建築物耐震診断助成事業(診断助成)」

金融機関から借り入れる

補助金や助成金の活用を検討しても大幅に資金計画が崩れる場合は、金融機関からの借入れを検討しましょう。

耐震診断や耐震改修工事の費用を借入なしで用意できる管理組合ばかりではありません。

震災は待ってはくれないため、修繕積立金が貯まってからと考えていると手遅れになることもあります。

借入れにより先に資金を調達し耐震診断や耐震改修を進めていくことも考えましょう。借入れする際は、必ず長期修繕計画を見直して修繕積立金を適正に値上げし返済に備えてください。

耐震診断したマンションの半数以上は耐震性あり

国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、旧耐震基準で建築されたマンションのうち31.6%が耐震診断を行っており、そのうち17.1%は耐震性ありと判断されています。

参照:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」

耐震改修工事の費用を心配して耐震診断を受けていないマンションもありますが、実際は旧耐震基準で建てられたマンションでも基準を満たしているケースも少なくありません。

耐震診断の結果、基準を満たしている場合は以下のメリットがあります。

・安心して暮らせる
・耐震基準適合証明書を取得できる可能性がある
・資産価値が高まる

以下で詳しく解説します。

安心して暮らせる

耐震診断の結果により、大きな地震に見舞われても倒壊・崩壊しにくい安全なマンションだということを数値や評価で客観的に確認でき、地震への不安を大きく軽減できます。

マンションの状況を正しく知ることで、日常生活でも「このマンションは大丈夫」という根拠を持てるため、過度に心配することなく安心して暮らせるのは大きなメリットといえるでしょう。

耐震基準適合証明書を取得できる可能性がある

現行の新耐震基準と同等の耐震性があると認められると、耐震基準適合証明書を取得できる可能性があります。

耐震基準適合証明書を取得することで受けられる恩恵はおもに以下の4点です。

・住宅ローン控除が利用できる
・住宅ローンの審査に通りやすい
・登録免許税
・不動産取得税が軽減される
・条件により地震保険料が割引される

旧耐震基準で建てられたマンションは、通常、税制優遇されず融資条件が不利になりますが、耐震基準適合証明書を取得できれば、新耐震基準のマンションと同等の扱いに近づくことができるのです。

資産価値が高まる

旧耐震基準のマンションは築年数の古さから、売買取引では不利になります。しかし耐震診断により耐震性があることがわかっていれば、購入検討者にとって安心材料となり、売却時のアピールポイントになるでしょう。

地震リスクが低い物件としての安心感が付加されること、耐震基準適合証明書を取得したマンションが優遇されることにより、旧耐震基準のマンションでも成約しやすくなり、結果として資産価値の向上・維持に寄与する点は大きなメリットになります。

マンションの耐震診断までの流れ

耐震診断までの流れは以下の通りです。

(1)理事会で耐震診断の検討を始める(補助金確認)
(2)管理会社やマンション管理士などの専門家から情報収集する
(3)耐震診断の専門家に費用の参考積もりを依頼する
(4)総会決議(普通決議)をとる
(5)自治体に補助金申請する
(6)耐震診断実施
(7)診断結果の報告

耐震診断の結果は報告書としてまとめられ、建物の安全性や問題点が理事会や総会で共有されます。

必要に応じて耐震改修の要否や工事内容、概算費用の検討に進み、今後の修繕計画に反映させましょう。結果を正しく理解し、住民全体で合意形成を図ることが重要です。

耐震診断で居住者の安全とマンションの将来設計のための一歩を踏み出そう

近い将来起きる可能性のある大地震に備えて、耐震診断で建物の安全性を把握しておきましょう。耐震診断では、建物の耐震性を示すIS値を用いて、震度6~7程度の地震が生じた際の倒壊リスクを評価します。

費用は診断で数百万円、工事で数千万円以上かかる場合もあるため、修繕積立金で賄えない場合は、補助金制度や借入れなどを活用しましょう。診断の結果、耐震性が確認できれば安心して暮らせるだけでなく税制優遇や資産価値の向上につながるメリットがあります。

耐震性がなかった場合も耐震診断の結果をもとに、耐震改修工事や建て替えなどマンションの将来の方向性を決定できるため、前向きに検討しましょう。

さくら事務所では耐震診断・耐震改修工事に関するお問い合わせが増えています。

耐震診断する設計事務所、耐震改修工事をする施工会社からの提案が、自分たちの管理組合にとって「妥当性があるのか」「的を射ているものであるのか」といったことを、専門家としてさくら事務所がセカンドオピニオン的にアドバイスすることが可能です。

耐震診断に悩まれている方は、ぜひこの機会にご相談ください。

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鬼塚 竜司
監修者

鬼塚 竜司

新築工事にてマンションや複合施設の給排水および空調設備の工事管理を経験後、マンション管理会社の修繕工事部門にて、工事企画及び工事管理を14年間経験(管理職含む)。大規模修繕80棟以上、給排水管更生更新30棟以上、窓サッシ改修工事等補助金対応工事10棟以上、機械式駐車場入替、インターホン改修工事など、マンション全般の工事を経験。長期修繕計画の作成500回以上。2021年6月株式会社さくら事務所へ参画。

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