エレベーターの制御盤交換の修繕費は?修繕積立金が値上げされた事例も紹介

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エレベーターの制御盤交換の修繕費は?修繕積立金が値上げされた事例も紹介

この記事はマンション管理士/一級建築士などの専門家が監修しています

築年数が経過したマンションでは、エレベーターの制御盤の老朽化や故障などが原因で誤作動が生じてしまうなどして、修繕・交換を検討しなければいけない場面があります。

エレベーターの修繕は決して安価なものではないため「費用はいくら?」「今すぐ対応するべき?」と不安になる方もいるでしょう。

本記事ではエレベーターの制御盤交換にかかる費用や交換のタイミングについて解説します。エレベーターの修繕費に関する注意点も事例を交えて紹介するため、制御盤交換を検討している方はぜひ参考にしてください。

エレベーターの制御盤とは

まずエレベーターの制御盤とはなにか、どのような役割があるのか把握しておきましょう。

制御盤は内部にある電子部品が組み込まれた基盤があり、エレベーターを構成するさまざまな機器に電気を供給しています。いわばエレベーターを動かす心臓部分です。

具体的には、エレベーターのかごを昇降させる巻上機を調整して運転をコントロールしたり、ドアの開閉を調整したりと重要な役割を担っています。

制御盤に不具合が発生すると、エレベーターが正常に稼働せず大きな事故に繋がりかねません。

エレベーターの制御盤交換の修繕費

エレベーターの制御盤に異常が見つかり交換する場合の費用は、50~80万円が相場です。エレベーターの種類や依頼する業者によって交換費用は異なるため、必ず確認してください。制御盤のみの交換に対応していないケースもあります。

また設置年数によっては、ほかの機器も交換のタイミングがきている可能性があるため、エレベーターの更新工事も視野に入れましょう。

エレベーター更新(交換)工事の種類と費用相場

エレベーターの一部もしくは全部を交換する更新工事は、大きく以下の3つに分けられます。

・制御リニューアル方式
・準撤去方式
・全撤去方式

それぞれ具体的な工事内容と費用相場について紹介します。

制御リニューアル方式

制御リニューアル方式は、エレベーターを構成する機械を動かす制御盤や電動機などの電気関連を中心に交換する方法です。3つの工事の中でもっとも部分的な制御リニューアル方式で、この場合、工期も10日前後とほかの方法と比べて短期間で済みます。

制御リニューアル方式だと、エレベーターの見た目はあまり変わりません。そのため美観を改善したい場合には向いていませんが、制御盤に異常がある場合に採用されることが多いです。

費用相場はエレベーター1基あたり、500~700万円が相場になります。

準撤去方式

準撤去方式は、エレベーターの大部分を交換する工事です。

制御盤などの電気関連に加え、かごや巻上機なども新しいものに交換します。場合によってはメーカー変更も可能です。制御リニューアルよりも工期が長く20日前後かかります。

交換の対象にならないのは、各階の廊下についている三方枠(エレベーターの入り口の枠)やかごが昇降するときに通るガイドレールなどです。

エレベーター1基あたり700~1,000万円で施工できます。

全撤去方式

全撤去方式はエレベーターのすべてを新しいものに変える方法です。新築時と同様の状態になるため見た目も機能も一新できます。全撤去方式なら最新の法令に適合させることも可能です。

工期が30日程度と長いため、メーカーと相談しながら生活に支障が出ないように配慮する必要があります。

費用の目安はエレベーター1基あたり1,200~1,500万円が相場です。

エレベーター更新(交換)工事は補助金が使える可能性がある

エレベーターの更新工事に関する補助金制度を設けている自治体もあります。補助金制度の大半は、防災や安全性の向上を目的とした工事が対象です。
単に機能を回復させる工事は、対象外のケースが多いため注意しましょう。

また、補助金は申請期間や受付上限額が設けられています。補助金の活用を検討している場合は、早めに管轄の自治体のホームページなどで詳細を確認してください。

エレベーターの制御盤を交換するタイミング

エレベーターの制御盤の交換を検討するのは、おもに以下のタイミングです。

・耐用年数に到達したとき
・不具合や異常が発生したとき

詳しく見ていきましょう。

耐用年数に到達したとき

エレベーターのメーカーごとに交換の目安となる耐用年数が設定されており、20年程度が一般的です。20年程度を目途に交換を検討しましょう。また制御盤の規格変更などにより、部品の供給も25年程度で終了することが多いです。

使っている制御盤の生産が終了し部品の在庫がなくなると、故障したときに交換部品が手に入らないことも。メーカーから生産終了の知らせがきたときも交換のタイミングと考えておきましょう。

なお国税庁のエレベーターの法定耐用年数は17年です。しかし、法定耐用年数は減価償却できる期間にすぎないため、17年経過したからといって交換が必要とはいえません。

不具合や異常が発生したとき

耐用年数に到達していなくても、制御盤の経年劣化により不具合が生じることがあります。

ドアの開閉や昇降などに誤作動があったり、安全装置が働かなかったりと、エレベーターに何らかの不具合や異常が起きたときは制御盤が故障しているかもしれません。

事故が起きる前にエレベーターの使用を中止し、業者に点検してもらい必要に応じて制御盤の交換工事を実施しましょう。

【事例】エレベーターの修繕費の誤算に注意

エレベーターの更新工事が長期修繕計画に含まれている場合、修繕費が足りなくなることがないように思いますが、計画自体が間違っている可能性があるため注意しましょう。

実際にあるマンションの長期修繕計画では、エレベーター更新工事に関して1基あたり200万円として3基分600万円で計上されていましたが、本来は1桁違う1基あたり2,000万円で3基分だと6,000万円が必要だったのです。当然払えないため修繕積立金の値上げを余儀なくされました。

エレベーターの修繕費は高額なため、長期修繕計画において正しく予算を確保できていないと深刻な資金不足に陥ります。いざ工事するときに修繕費で困らないように、計画を見直して備えましょう。

エレベーターの制御盤交換の修繕費は計画的に積み立てよう

制御盤はエレベーターを安全に使用するために重要な役割を担っています。経年劣化などにより制御盤に不具合が発生したときは、大きな事故になる前に交換工事を検討しましょう。

制御盤の交換工事にかかる費用は50~80万円が相場です。更新工事全体では最大1,500万円にのぼることも。

長期修繕計画上で修繕費を誤算していて、修繕積立金が値上げされた事例もあります。修繕資金を適切に確保するためには、エレベーターの台数や費用にミスがないのか、現行の法令に順守させられる交換方法で修繕費が計上されているのか、など計画の見直しが重要です。

さくら事務所では長期修繕計画を見直しするサポートを行っています。長期修繕計画は、エレベーターに限らず、本来必要な修繕が含まれていなかったり過剰な内容になっていたりと実態に即していないことが多いです。

計画に妥当性がないと適正に修繕積立金を積み立てられません。さくら事務所では、長期修繕計画の無料診断も実施しているため「分譲時から一度も計画を見直していない」「修繕費用が足りなくて悩んでいる」といった場合は、ぜひご活用ください。

長期修繕計画無料診断(簡易)

こちらのYouTube動画では、エレベーターの更新と、長期修繕計画の見直しについてお話ししています。エレベーターの更新が、長期修繕計画に適切に組み込まれておらず、想定外の出費をすることになった・・・などということがないように、思い立ったら即専門家に相談しましょう。

 

 

 

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三木 幸一郎
監修者

三木 幸一郎

明治大学政治経済学部卒業後、ゼネコン→不動産仲介業・建築業経営を経て→鉄鋼系エンジニアリング会社→マンション管理会社フロント(管理部次長)→さくら事務所

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